※2021/06/01……Oculus Rift Sは2021年内に販売が終了します。フェイスブックが販売中のOculus Quest 2についての記事はこちらのページへ。
2019年5月、フェイスブックから発売されたVRヘッドセット「Oculus Rift S(オキュラス リフト エス)」。本記事では、このOculus Rift S(以下「Rift S」)を徹底解説。初代Oculus Riftや一体型VRヘッドセットOculus Questとの違い、スペックなどを紹介します。
目次
1.RiftとRift S、その違い
2.Rift Sを購入するには
3.Rift Sの使い方と対応PC
4.QuestでもRift向けコンテンツが遊べる?
5.結局、どのヘッドセットを買うべき?
1.RiftとRift S、その違い
Rift Sは、2016年に発売された「Oculus Rift」の後継モデルです。ディスプレイの解像度が向上、その他トラッキング方式やヘッドセットの装着方法など、使い勝手に関する部分が改良されています。
よりキレイな画質でVR体験が可能に
Rift Sのディスプレイ解像度は、片目1,280×1,440。Oculus Riftの解像度(1,080×1,200)と比較すると、その差は歴然です。Rift SのディスプレイはLCD(液晶)を使用しており、OLED(有機EL)が使用されていたOculus Riftと比べると、解像度の数値以上の画質向上を実現しています。
ヘッドセットだけでトラッキング可能
Oculus RiftとRift Sは、共に6DoF(※)のトラッキングを実現しているVRヘッドセットです。しかし、両ヘッドセットではトラッキングに使用されている“方式”が大きく異なります。
(※6DoF:デバイスの向きと位置情報の両方を認識するトラッキング。VR内で自由に動くことができる)
Oculus Riftでは、トラッキングを実現するために最低2つの外部センサーを周囲に設置する必要があります(アウトサイドイン方式)。この方式は正確なトラッキングを実現しますが、周辺機器が必要なことと、センサーの設置場所が要求されることから、一般ユーザーが気軽に使用するにはややハードルが存在します。
一方Rift Sは、VRヘッドセット本体に内蔵された5つの光学カメラで周囲を認識してトラッキングする、インサイドアウト方式となっています。このトラッキング方式は本体のみで完結する仕様になっており、追加の外部センサーは必要ありません。対応するスペックのPCに接続するだけでVRを楽しむことができます。
コンテンツはどちらでも同じものが体験可能
2020年1月現在、Oculusの公式ストアであるOculus Storeやゲーム配信プラットフォームSteamで配信されているVRコンテンツは、基本的にRiftとRift S、どちらのVRヘッドセットでもプレイすることができます。なおOculus Storeの両ヘッドセット向けコンテンツの一部は、クロスバイに対応しており、Rift(S)版を購入することで、Oculus Questでも無料でプレイすることができます(逆のパターンも可能)。
その他の変更点
Rift Sにモデルチェンジするにあたって、ヘッドセット使用中に各種操作を行うためのハンドコントローラーのデザインが一新されました。この変更は先述したトラッキング方式の変更から生じたもので、最大の違いは、Oculus Riftのコントローラー(Oculus Touch)では下向きに取り付けられていた円形の構造物が、Rift Sのハンドコントローラーでは上向きになっている点です。
各種ボタンやスティックについては、若干の位置調整が施されているものの、配置や機能に違いはありません。なおRift Sのコントローラーは、Oculus Questのコントローラーと共用となっています。
(1枚目がOculus Rift、2枚目がRift S(Quest)のハンドコントローラー。)
頭部固定用のストラップにも変更が加えられています。Oculus Riftでは左右の側面と頭頂部のマジックテープでVRヘッドセットを固定する必要がありましたが、Rift Sでは、前面を額を覆って固定し、後方はトグルを回転させて締めて安定させるタイプに改良されています。また音響システムがヘッドフォンから内蔵スピーカーに仕様変更されたほか、IPD(※)の調整機能が、ソフトウェア側に変更(起動後オプションか公式アプリから設定)されました。
(※IPD:瞳孔間距離/Interpupillary distance。詳細はこちら)
RiftとRift Sのスペックの比較表は以下の通りです。
Rift |
Rift S |
|
解像度 |
1,080×1,200×2、OLEDパネル(ペンタイル配列) |
1,280×1,440×2、LCDパネル |
レンズ |
フレネルレンズ |
新型フレネルレンズ |
リフレッシュレート |
90Hz |
80Hz |
視野角 |
110度 |
Oculusによれば“Riftと同程度” |
サウンド |
ヘッドホン一体型(着脱可) |
スピーカー内蔵 |
トラッキング |
外部センサー(赤外線カメラ)(アウトサイドイン方式) |
5つの内蔵式光学カメラ(インサイドアウト方式) |
IPD調整 |
ハードウェア側で調整 |
ソフトウェア側で調整 |
重量 |
約470g |
Oculusによれば“Riftよりわずかに重い”程度 |
(Rift Sの内部。Riftからデザイン変更が行われ、メガネ使用時でも支障なく使用可能になりました。)
2. Rift Sを購入するには
2020年1月現在、Rift Sを国内向けに(正式に)販売しているのは、Oculus公式とAmazonのみです。販売価格は49,800円(税込)など。店頭販売などは行われていません。本稿の執筆時点では、両サイト共に在庫の存在は確認されています。
Amazonの場合は通常の通販と同じような流れで購入できますが、Oculus公式に注文する場合は、氏名や住所などを英語(ローマ字)表記で入力することが必要になります。
入力の際は、以下の表を参考にしてください(各項目の内容は架空のものです)。
姓 |
もぐら |
Mogura |
名 |
太郎 |
Tarou |
電話番号 |
080-1234-XXXX |
+81-80-1234-XXXX |
町名・番地 |
もぐら山 1-123-1234 |
1-123-1234, Mogurayama |
市区町村 |
葛飾区 |
Katsusika-ku |
都道府県 |
東京都 |
Tokyo |
郵便番号 |
125-XXXX |
125-XXXX |
なお、Oculus公式サイトで使用できる支払い方法は、クレジットカードかPayPalのみとなっています。
3.Rift Sの使い方と対応PC
接続方法とセットアップ
Rift Sは、本体に搭載されているケーブル(途中で2本に分岐)を使用してPCと接続します。分岐したケーブルはそれぞれPCのUSB 3.0ポートとDisplayPortに挿す仕組みとなっています。これらの接続ポートが存在しないPCでは、Rift Sは使用できないので注意が必要です。
なお、Rift SにはDisplayPortケーブルをMini DisplayPortに変換するアダプターが同梱されています。このアダプターを使用することで、ノートPCなどMini DisplayPortのみが搭載されているPCでも、Rift Sを楽しむことが可能です。
(公式のセットアップ解説動画)
Rift Sの初期設定は、Oculus公式サイトからダウンロードできるRift(S)向けアプリを使用して行います。アプリは日本語化されているので、英語に不慣れな人でも説明に従って操作を行えば簡単にセットアップが可能です。同アプリからは、VRコンテンツが購入できるほか、支払い方法の変更なども行えます。
ある程度のPCスペックは必要
Rift Sは、接続先のPCの演算・描画能力(メモリやGPU)を使用して機能するVRヘッドセットです。よって快適なVR体験を味わうためには、PC側がある程度のスペックを有している必要があります。
Oculusの公式サイトには、Rift(S)に対応するための必要PCスペックが掲載されています。詳細は以下の通りです。
最小スペック |
推奨スペック |
|
グラフィックカード |
NVIDIA GTX 1050Ti / AMD Radeon RX 470以上 |
NVIDIA GTX 1060 / AMD Radeon RX 480以上 |
代替可能なグラフィックカード |
NVIDIA GTX 960 / AMD Radeon R9 290以上 |
NVIDIA GTX 970 / AMD Radeon R9 290以上 |
CPU |
Intel i3-6100 / AMD Ryzen 3 1200、FX4350以上 |
Intel i5-4590 / AMD Ryzen 5 1500X以上 |
メモリ |
8GB以上のRAM |
8GB以上のRAM |
ビデオ出力 |
DisplayPort 1.2 / miniDisplayPort(アダプター同梱) |
DisplayPort 1.2 / miniDisplayPort(アダプター同梱) |
USBポート |
USB 3.0ポート1つ |
USB 3.0ポート1つ |
OS |
Windows 10 |
Windows 10 |
4.QuestでもRift向けコンテンツが遊べる?
2020年1月現在、Rift(PC)向けのVRコンテンツは、3つのOculus系ヘッドセット(Oculus Rift、Rift S、Oculus Quest)で体験可能です。Oculus Quest(以下Quest)は一体型のVRヘッドセット。同ヘッドセットでは、これまではグラフィックなどが簡略化された専用のコンテンツしか遊ぶことはできませんでした(※)。しかし2019年12月、PCと接続することでRift向けのVRコンテンツをプレイ可能にする機能「Oculus Link」が実装されました。
(※:搭載されているプロセッサがモバイル向けで、PCと比較すると性能が劣るため。)
「Oculus Link」を使用するには、QuestをUSB 3.0ケーブル(Type-C、AtoCどちらでも問題なし)を使用してPCと接続します。Oculusからは専用ケーブルが販売されていますが、市販のケーブルでも、多くの場合は問題なく同機能を使用することができます。
結論から言うと、「Oculus Link」を使用したQuestでも十分に高品質な状態でPC向けのコンテンツを体験することができます。ただし、同VRヘッドセットにあわせたグラフィックの簡略化などは行われているため、よりハイエンドVR体験を味わいたい人は、Rift Sを選択するのがベターでしょう。トラッキングに関しても、Rift Sの方が内蔵カメラの数が多いため、より激しい動きに対応しています。
5. 結局、どのヘッドセットを買うべき?
Questは、Rift Sとは異なり(「Oculus Link」非使用時は)ワイヤレス、かつスタンドアロンの状態で遊ぶことが可能です。一方Rift Sでは先述の通り、最高品質のVR体験が楽しめる反面、単体では使用できません。また、遊ぶためにはVRに対応するPCを所有していることが必須です。
「とりあえずVRを体験してみたい」という人はQuestを購入し、より深い体験がしたくなった段階で「Oculus Link」を使用する(対応するPCがある場合)と良いでしょう。そして、最初から高品質なVR体験に浸りたい、あるいはOculus Riftからの買い替えを検討している人は、Rift Sを手に取ることをオススメします。