FacebookとOculusは、10月11,12日の2日間開発者向けのイベントOculus Connect 4を開催しています。11日(日本時間12日)に開催された基調講演では、FacebookのCEOマーク・ザッカーバーグ氏らが登壇し、両社の今後のVRの方向性やハードウェア・ソフトウェア等に関する発表が行われました。
Mogura VRではリアルタイムレポートで速報をお伝えしましたが、本記事では改めて発表内容をまとめていきます。
目次
マーク・ザッカーバーグが示したVRの道筋
ハードウェア:2種類の一体型VRヘッドセットで普及を見据える
199ドルの一体型VRヘッドセット「Oculus Go」
動き回れる真の一体型VRヘッドセット「Santa Cruz」
Oculus Riftの値下げとビジネス版の登場
ソフトウェア:VR体験のさらなる向上
VR用インターフェースに革新をもたらすRift Core 2.0:DashとHome
パフォーマンス向上:Multiview(マルチビュー)などの開発ツールの強化
アバター:よりリアルに、クロスプラットフォームに
セーフティ:嫌なユーザーはアプリをまたいでブロック
ストア:お勧めのコンテンツを最適化して表示
シェア:Facebookでの実況などの機能強化
MRキャプチャ:体験の様子をわかりやすく
ソーシャル:Facebook Spacesのさらなる拡張
要素追加ー新たな遊び場としてのSpaces
VRで作ったものをVRで楽しむ:VRペインティングツールQuillなどが対応
Facebook 3D Posts:3DオブジェクトをFacebookニュースフィード、ARへ
Live 360とOculus Venue:ライブストリーミングを友人と
コンテンツ:2018年は「無限の可能性」の年になる
マーク・ザッカーバーグが示したVRの道筋
まず登壇したFacebook CEOのマーク・ザッカーバーグ氏は、これまでのVRの盛り上がりを振り返り、まだVR普及への道は始まったばかりであることに触れました。「未来は信じる人たちが作る、それはここに集まった皆さんだ」と語りました。
リハビリでの導入事例や老若男女がVRを楽しんでいると紹介しました。ほかにも、シリコンバレー周辺の通勤時の渋滞などに触れ、VRで働き方も変わっていくとして、Facebook社内で毎週開催している定例会議をソーシャルVRアプリ『Facebook Spaces』で行っていることを明らかにしました。VRでの会議はジェスチャーなどもあり、ビデオ会議よりも効果的と感じているとのこと。
VRが今後世の中をさらに良くするものであり、その普及に向けて走り続けることを改めて強調しました。ザッカーバーグ氏は目標を「世界で10億人にVRを普及させること」と明確に打ち出しています。
ザッカーバーグ氏の登壇後は、FacebookのVR担当副社長ヒューゴ・ベラ氏を中心にOculusのメンバーが様々な発表を行いました。
ハードウェア:2種類の一体型VRヘッドセットで普及を見据える
まずはハードウェアの発表です。Oculusはこれまで、PC向けのハイエンドなVRヘッドセットOculus Riftとモバイル向けのミドルレンジのVRヘッドセットGear VRを展開してきました。新たにそのラインナップに2種類のVRヘッドセットが加わります。
199ドルの一体型VRヘッドセット「Oculus Go」
「PCもスマートフォンも使わず、コードレスな一体型ヘッドセットがVR普及の鍵を握る」(ザッカーバーグ氏)として、一体型VRヘッドセット「Oculus Go」を発表しました。安価で高品質なVR体験が可能であるとし、199ドルで2018年前半の出荷を予定しています。
Gear VRのコンテンツが互換するとのことで、発売時に1,000以上のアプリ・ゲームが体験できます。開発者版は2017年11月の出荷を予定しています。
動き回れる真の一体型VRヘッドセット「Santa Cruz」
OculusはOculus Riftのような動き回れるVR体験を実現するハイエンドな一体型VRデバイスSanta Cruzを開発しています。基調講演では新たにコントローラーが発表されたほか、2018年には開発者版が出荷されることが明らかになりました。
Oculus GoとSanta Cruzについては以下の記事で判明しているスペック情報など詳細をまとめています。
(関連記事)
Oculus、VR普及に向けて一体型VRヘッドセットに照準 199ドルの「Oculus Go」は2018年発売
Oculus Riftの値下げとビジネス版の登場
PC向けのVRヘッドセットOculus Riftは、10月11日当日よりハンドコントローラーのTouchとのセットが399ドルに値下げされます。日本では5万円と、発売当初の10万円強の半額以下で購入可能になりました。
合わせて商用利用可能なビジネス版も発表されています。詳細は以下の記事でまとめています。
(関連記事)
Oculus Rift、定価5万円へ値下げ 商用利用可なビジネス版も登場
ソフトウェア:VR体験のさらなる向上
続いてソフトウェア・エンジニアリングに関しては、様々な機能拡張が発表されました。
VR用インターフェースに革新をもたらすRift Core 2.0:DashとHome
Oculus Riftを起動し、アプリなどの検索・起動などを行うホームシーンは2Dのパネルが表示されるものでした。Oculusはこのインターフェースを刷新する「Rift Core 2.0」のアップデートを発表しました。2017年12月からベータ版を無料配信します。
このRift Core 2.0には2つの要素が含まれています。
1つは「Dash」と呼ばれるユーザーインターフェースです。PCのタスクバーのようなスライダー式のアプリ一覧が下方に並びます。そこからアプリを起動し、さらに別のアプリへの切り替えも可能になります。さらにPCのデスクトップアプリをVR内に持ち込み、ウィンドウを空間に展開したり、複数同時に表示することも可能なります。Dash自体はVR内でもデバッグが可能です。
一方、「Home」は自分だけの部屋を作れる機能です。部屋の中に置く装飾品なども自由なモデルを置くことができ、部屋の中を自由にカスタマイズできるほか、友達を招待し、一緒にミニゲームなども追加することができるようになります。
パフォーマンス向上:Multiview(マルチビュー)などの開発ツールの強化
ほかにも開発者向けに開発ツールの機能強化が発表されました。GPUメーカー等とのパートナーシップにより、Multivew機能が実装されます。シングルパスレンダリングにより、CPUの処理にかかるドローコールを最大40%削減できます。このMultiviewを活かしてモバイルVRではありえなかったグラフィックを実現した最初のVRゲーム『Republique VR』はGear VR向けに配信予定です。本作は本格的なステルスアドベンチャー『Republique』のVR版となります。
また、デバッグ用のOculus Debug Toolに、フレーム落ちを確認するためのLost Frame Capture機能が搭載されます。
アバター:よりリアルに、クロスプラットフォームに
VR内でのアイコンの役割を果たしている「Oculus Avatar」がアップデートされます。多色から、カラフルで表情のあるよりリアルなアバターになります。
さらに、2018年にはSteamとDaydreamといった他のVRプラットフォームにクロスプラットフォームに対応することも発表されました。異なるプラットフォーム間でも同じアバターを使用可能になります。
セーフティ:嫌なユーザーはアプリをまたいでブロック
ソーシャルVRで問題になるといわれているのが迷惑ユーザーへの対応です。
VRで交流のできるソーシャルVRアプリで不快な行動をするユーザーがいた場合、ブロックすることで、そのユーザーと他のソーシャルVRアプリでもブロック可能になる機能が2018年前半に実装されます。
ストア:お勧めのコンテンツを最適化して表示
VRコンテンツを購入するためのストアは、ユーザーの好みなどに応じてお勧めのコンテンツを表示する「Explore」機能が追加されます。この機能を利用するためのExplore APIが本日より公開されています(Gear VRのみ、Rift向けは2018年公開)
シェア:Facebookでの実況などの機能強化
VRを体験中のユーザーが自分の視点をライブ配信を行う実況機能は、コメント表示などの機能や実況に友達を呼ぶ機能などが追加されました。
MRキャプチャ:体験の様子をわかりやすく
VR体験中の様子とVR内の様子を合成して表示する「MRキャプチャー」機能が公式にサポートされました。PV制作などに活用できます。
(参考)
ソフトウェアの発表に関するOculus開発者向けブログ
https://developer.oculus.com/blog/new-dev-tools-and-platform-updates-from-oculus-connect/
ソーシャル:Facebook Spacesのさらなる拡張
Facebookが2017年4月に公開したFacebookのVR版アプリ『Spaces』も機能拡張が行われます。
要素追加:新たな遊び場としてのSpaces
Facebook Spacesで友人と会っているときに目の前にあるテーブルをゲームの舞台にしたり、さらに多くのミニゲームを遊び、3Dオブジェクトを使うことができるようになります。
ミニゲームは、公式のものだけでなくサードパーティ製のものも追加されていくとのこと、パートナーを募集中です。基調講演ではモバイルVR開発を進めるResolution Gamesの釣りが紹介されました。
VRで作ったものをVRで楽しむ:VRペインティングツールQuillなどが対応
さらに、VR内で創作ができるツールの『Spaces』への対応が発表されました。Oculus純正のペインティングツール『Quill』と『Medium』が対応します。VRで作られた3Dオブジェクトやアニメーション作品をVRに持ち込んで体験することができます。
Facebook 3D Posts:3DオブジェクトをFacebookニュースフィード、ARへ
また、VRで制作したモデルをFacebookのニュースフィードに投稿する「Facebook 3D Posts」機能が実装されます。ニュースフィードでは単純に3Dオブジェクトの方向や拡大・縮小をするだけでなく、「ドアを開ける」など干渉することも可能です。今後Facebookに実装されるARカメラ機能を使えば現実に3Dオブジェクトを配置することも簡単にできるようになります。
Live 360とOculus Venue:ライブストリーミングを友人と
Spacesでは360度静止画、動画を友人と視聴することが可能でしたが、ライブストリーミング「Live 360」も実装されます。
また、ライブやスポーツの中継をVR内で世界中から大人数が同時接続して体験できる『Oculus Venues』も発表。配信は2018年を予定しています。
(参考)
ソーシャルの発表に関するOculus公式ブログ
https://www.oculus.com/blog/building-connections-through-creativity-and-opening-vr-to-everyone/
コンテンツ:2018年は「無限の可能性」の年になる
コンテンツに関しては、Oculus RiftやGear VR向けの新作注目タイトルも発表がありました。Oculusは、2017年はコンテンツの年ということでコンテンツ制作を支援してきました。Oculus RiftとGear VR合わせて2,000作品以上が配信されているほか、3つの映像作品がエミー賞を受賞しました。Rift向けの『Lone Echo』が海外のゲーム格付けメタスコアで89点を獲得するなど高評価のゲームも増えてきています。
2018年にはさらに強力なタイトルが登場するとして「無限の可能性」の年と銘打っています。ここでは簡単に各作品を紹介していきます。
高評価の無重量アドベンチャー『Lone Echo』のFPS派生『Echo Combat』
2017年末に公開される映画『ブレードランナー2049』のVRコンテンツ『Blade Runner 2049: Memory Lab』
こちらも2017年末に公開される映画『ココ』ディズニーとピクサーが制作したVRコンテンツ『Coco』。Gear VR向けは11月15日、Rift向けは11月22日配信予定。
魔法対戦バトル『Unspoken』の1人向けストーリーモード『The Unspoken: Acolytes』
マーベルのヒーローになって大暴れできる『MARVEL Powers United VR』にはマイティ・ソーの参戦が発表。ハルクなどは発表済。最終的なプレイアブルは20キャラ程度になります。2018年配信予定。
AAAタイトル『タイタンフォール』などで知られるRespawn EntertainmentがVR向けゲームを開発していることが発表されました。2019年配信です。
基調講演の全編はこちらで視聴可能です。