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VRChat 2023.04.01

メタバース学術交流の持つ力とは VRChat最大級の学術イベント「理系集会」の魅力を探る

ソーシャルVR「VRChat」にて、毎月隔週で開催されるイベントがあります。イベントの名前は理系集会。理系分野に属する人たちや、理系分野に関心のある人たちが集まり、交流や特別講義が実施されています。

2021年から続く「理系集会」は、国立研究開発法人・科学技術振興機構より後援を得ており、東京理科大学にて開催されたメタバース学術交流イベントにも協賛という形で参加。その存在感はもはやVRChatの内側にとどまらないものとなりつつあります。

そんなVRChat最大級の学術イベントは、どのように生まれ、どのように運営されているのか。MoguLive編集部は今回、3月開催回に参加。イベントの様子をレポートしつつ、共同主催者に「理系集会」とメタバース学術交流の現在についてお話をうかがいました。

初対面でもOK。専門外の「知」に触れることで広がる世界

「理系集会」は、隔週金曜日の22時からスタートします。開催時間になると、会場となるワールドに続々と人が集まってきます。

入場後、まず最初に行うのは「分野選択」です。ワールド入り口近くにあるパネルから、自分の該当する分野などを選択します。

筆者は生粋の文系なので「文系」を選択。選択した分野は、自分の頭上に表示されます。これで、初対面の人でも「どんな分野に属しているか」が一目でわかるようになります。

分野選択後は、会場に訪れた人と交流していきます。ただ談笑しているように見えますが、話の中には各々の専門分野に関する知見が飛び交います。

これこそ、「理系集会」におけるメインパート「異分野交流」です。分野の異なる人が集まり、コミュニケーションすることで、それぞれの知見を引き出し、自分の知らない知見を得ることができます。

交流の仕方は参加者の自由です。ある程度参加者が集まると、写真のように自然と「集まり」が生じます。どの集まりに参加してもよく、ゆるやかに最近の出来事や自分の興味関心について話しても、深い議論をしてもよく、少し離れたところから傾聴に徹する人も見られます。話しながら隣の集まりの話題にも耳を傾けることもできます。まさに「知見の交流の場」といったところ。そして、話題も別に理系的なテーマに限定しなくても大丈夫です。

今回筆者がいた集まりでは、ニューラルネットワークから話が始まったと思ったら、哲学や心理学について、いま話題の対話型AIや生成AIの実情と使い道、トラッキングデバイス、未来のVR(侵襲型か?網膜投影か?)、そもそもバーチャルリアリティとはなにか、視力を失った人が想像する「世界」……などなど、あまりにも多岐に渡る話題が展開。それぞれの話題に、各分野ごとの知見が絶え間なく飛び交い、ひたすらに飽きない交流が続きました。

この時話していた人は初対面の人が多かったのですが、そんなことは気にせずに話し込めてしまうのは、それだけ内容が刺激的だったからでしょう。自分の専門外の話に触れ、知的好奇心を刺激し、そして初対面の人とも面識を得られるため、二重の意味で「世界が広がる」時間です。

1時間の異分野交流パートの後には記念撮影が行われ、「理系集会」は一区切りとなります。続いては後半戦「特別講演」です。

「水の色は無色透明”ではない”」 ゲスト講師の授業で異分野を深掘り

「特別講演」は、講師を1名招き、専門分野の講義を行ってもらうパートです。この回の講師は八ツ橋まろんさん。学術的な分野に強いバーチャルな人のコミュニティ「VRアカデミア」に所属しており、Unityなどの技術分野にも強いVTuberです。

今回の特別講演のテーマはテーマは「水の色は何色か」。「水の色は無色透明と教えられるが、実際は何色なのか」を出発点として、水の吸収スペクトルについて解説されました。

植物に宿るクロロフィルと比較すると、水は特に光を吸収していないように見えます。しかし、よ〜く見るとわずかに赤系の色を吸収しているため、吸収されなかった青系の色がわずかに残るのだそうです。

なので、実は水の色は「薄い青色」であり、これは3mくらいのプールに水を貯めると青く見えるという実験結果からもわかる、とのことです。さらに「なぜ水は赤系の色を吸収するのか」という理由についても、より専門的な領域から解説がなされました。

20分ほどの講演のあとは、質疑応答の時間が設けられます。わかっていないところに対する質問や、さらに深掘りする質問(例えば「氷はどうなのか」)など、質問もかなり多角的。その道に詳しい人との交流を通して、分野外についての知見を深め、視野を広げる時間となっています。

特別講演が終了したところで自由解散となります。参加者には最後にアンケート回答が依頼され、学術交流の定量評価に必要な声が集められます。

その後も会場に残って講師にさらなる質問を試みる人もいれば、参加者同士の交流・談笑に花を咲かせる人もいます。イベント終了後まで、学びを求める人たちのコミュニケーションが続く場所が、「理系集会」なのだと感じられました。

主催インタビュー


(写真左:Kurolyさん、写真右:hinorideさん)

イベント終了後、共同主催者であるKurolyさんとhinorideさんにインタビューしました。

インタビュー参加者

Kuroly
VRChat内で現役の研究者から院生、博士課程学生等の若手研究人材まで、様々な層が学術交流を行う場を提供する「理系集会」を運営。大学や公的機関との共同企画・後援を通じて学術×メタバースを発信。

hinoride
「理系集会」共同主催。現在は摩擦・摩耗・潤滑を取り扱う学問分野「トライボロジー」の研究に従事している。またVRChat上に摩擦を体験できる空間「トライボロジーワールド」を作成し、トライボロジーの知名度向上に努めている。

はじまりは「集まったらおもしろそう」から

――「理系集会」はどのようなイベントなのか、あらためて教えてください。

Kuroly:
「理系集会」は、「VRChatで学術交流をアバターを介して行なう」という趣旨のイベントで、隔週金曜日に開催しています。

イベントでは最初に1時間の分野関係なしの異分野交流を行ってもらいます。このパートの目的は、普段自分の分野にこもってるだけでは分からないような新しい知見や考え方を得ることです。そして後半の1時間は「特別講演」を実施し、20分間の講演を通して特定の分野について深掘りしてもらい、更に関心を広げてもらいます。

これが「理系集会」本体の活動で、ほかにはメタバースにおける学術交流を盛り上げるために、アカデミアにおけるメタバースイベントの支援や、外部での講演や啓発活動、研究者のVR関係の研究を支援するツール開発などを行っています。

――集会イベントを実施するだけでなく、学術コミュニティ全体を発展させる中核のような役割なのですね。

Kuroly:
とはいえ、僕たちがコミュニティ全体を掌握したいというわけではなく、いろいろな人たちが学術交流を楽しめる土壌を、縁の下から応援するようなスタンスでいます。

――「理系集会」の開催のきっかけや、これまでの沿革を教えてください。

hinoride:
2021年8月の真ん中ごろに、「VR方言酒場のまってら」というVRChatのイベントで、僕とKurolyさんが出会ったのがきっかけです。偶然となり同士で座ったら意気投合して、そこで「理系の人が集まれる場所があったらおもしろいよね!」っていう話が出てきたんです。

その日は解散したんですが、次の週に僕がKurolyさんのところに行ってみたら、「集会やります! スタッフやってほしいです!」と告げられたんですね(笑)。そしてその週の金曜日に、第1回「理系集会」が開催されました。

――ものすごいスピード感で立ち上がったんですね!

Kuroly:
ただ、僕らも始めるまでは「集まったらおもしろいよね」が出発点だったので、最初からいまみたいな構想までは考えていなかったんです。

でも、開催している中で、「明らかにメタバースは学術交流の場として適しているのでは?」と、スタッフたちもだんだんと気づき始めていったんです。そこで、第5回から第6回のころに「もっと外部に発信して、いろいろなことに手を出して盛り上げていこう!」という方針に転換していきました。

――現在の参加者の規模はどのくらいでしょうか? 分野比率や、文系参加者の割合なども、可能な限り教えていただけると幸いです。

Kuroly:
毎回100人前後の方に参加いただいています。2月の初旬の時点で、第1回からの累計参加者は約4000人に達しています。

hinoride:
分野でいうと、情報学が一番多いですね。ついで電気工学、機械工学、化学、生物学、製造学という順です。文系の方は各回で平均5%〜10%くらいはいらっしゃいますね。

Kuroly:
一方で、各回ごとの来場者の分野は、特別講演の内容によって変わることが多いです。今日の特別講演の内容は思いっきり化学だったので、化学タグをつけている方が多かったですね。

――VRChat団体が科学技術振興機構の後援を得ているのは、相当めずらしいことだと思います。どのような経緯で得られたのでしょう?

Kuroly:
何回か開催していくうちに、これは現実のアカデミアにも波及させていくべきだし、学術交流という文脈では「現実の場よりも価値がある」という共通認識を持ち始めてきました。そう思ったときに、いくらVRの内側で「これはいいぞ!」と言っても、外の人には伝わらないと気づいたんです。

そして、もっと外向けに発信していく上では、やはり信頼を公的機関から得る必要があると考え、戦略的に後援を取りに行こうという話になりました。たしか「理系集会」を始めてから5ヶ月か6ヶ月経ってからだったと思います。

「メタバースの匿名の集団」が公的機関の後援を得るのって本当に大変だったんですけど、熱い思いで粘って、なんとか後援を得ることができました。多分、日本国内のあらゆる公的機関を見渡しても、日本初の事例になると思います。

――最初はある程度軽いノリからスタートしたものが、ここまでの熱量をもって成長していったのは本当にすごいですね……

Kuroly:
「VRChat・メタバースで学術交流をやることってやっぱ意味あるよね」というスタッフの共通認識があったのが大きいですね。僕一人で意気込んでいるだけじゃなく、みんなで一丸になりやすい、真に意味のあるスローガンを掲げて活動してきたので。

メタバースだからこそなし得る、ハードルの低い異分野交流

――直近では東京理科大学イベントにも協賛していますよね。VRChatの外へ、こうした学術交流の認知はいま広まっているのでしょうか? あるいは、もともと学術交流の流れは存在していたのでしょうか?

Kuroly:
「異分野間で交流する場を設けなければいけないよね」という話は、研究界隈やアカデミアなどで十数年前からずっと言われ続けていました。けれども、その成果がまだ十分に芽吹いていない、というのが現実世界の実情です。

「サイエンスカフェ」というものがありますよね。2010年代から、いろいろな大学がいくつも立ち上げた時期があったんですけど、これがあまりうまくいかなかったんですよ。なぜなら、結局身内や関係者しか集まらなくて恒常的に続かなかったり、単発のイベントで大きく開催する、ということしかできていなかったからなんです。

ハードルとしてあるのは「人はよほどの関心がないと現実の場に集まらない」ということですね。もともと、サイエンスコミュニケーションという分野は、本当にその分野が好きな人しか集まらないし、来たとしてもすでに共通認識がある人しか集まらない。異分野交流の場を作ろう、と言うのは簡単なんですけど、それを実現するのが極めて難しく、現実の研究世界の方は長年ずっと苦しんできたという歴史的背景があるんですよ。

ところが、VRChatではこうして夜中22時過ぎから50人以上も集まって、いろいろな分野の人たちが、いろいろな分野の話をしています。これ、現実世界じゃ絶対にありえないんですよ。これこそ「現実ではなし得ない価値」のひとつで、研究の最初のアイデアを得たり、いろいろな分野の方と知り合う場として、メタバースってすごく意味があるんです。そうした話を、アカデミアの人たちに伝え続けています。

――いつでも、世界各地から集まることができる、メタバース/ソーシャルVRの特性がうまく作用していますね。

Kuroly:
他分野の学会に行く先生もなかなかいないんです。よっぽど関心がある人じゃないと足を運ばない。でも、VRChatならば「学会に行く」ではなく、ちょっとソーシャル欄を眺めて「なんかやってるな」と思えばすぐにアクセスできる。この心理的なハードルの差がすごいし、本当に大事な価値だと思っています。

――アカデミアの方にとっては「忙しくても行ける」というのは相当に大きなポイントですよね。

Kuroly:
そうしたメタバース学術交流の良さを発信し続けた甲斐もあって、最近は「理系集会」やそのほかの周辺イベントに、本職のアカデミアの先生などが5〜6人は常連としていらっしゃっています。

あと、アカデミアの先生方への還元だけではなく、こういう場所に来ることで元々そこまで関心がなかった人が、アカデミアや科学領域にすごく関心を持つ、ということも起きています。

すごく大きな事例としては、「理系集会」をきっかけに、大学を卒業した社会人の方が、大学院にもう一回進学し直したっていうことがあったんですよ。この話を最初に伺ったときは、「本当にやっててよかったなぁ」とグッときました。

――「理系集会」以外にも、VRChatにおける学術交流コミュニティは近年広まっているのでしょうか?

Kuroly:
間違いなく広がってます。学術イベントの数自体、「理系集会」を始める前と比べると、明らかに増えているんです。なおかつ、その中のいくつかは「理系集会がきっかけでできた」と教えてくれたイベントもあり、「理系集会」がエコシステムに寄与できているのかなとは思っています。

――メタバースでの学術交流のメリットとして、先ほど「アバターを使って交流する」というのも挙げられています。実際、アバターは学術交流においてなにか影響を与えているのでしょうか?

Kuroly:
「場所と時間をいつでも超えられる」というメリットだけなら、なにもこんな重たい機材をかぶらなくても、Zoomで十分なんですよ。最近学会もZoomを使ってオンラインで開かれてます。それでもメタバースでやる価値があると感じる点が2つあります。

ひとつは、同時にいろいろなところで会話が起こり、会話に膠着が生じないこと。Zoomとかだと、一人がしゃべっている間は、他の人って誰もしゃべれないじゃないですか。だけどもここでなら、複数人による会話が同時に発生し得る。このメタバースならではの特性は、いろいろな分野や価値が集まる、セレンディピティ(予期せぬ出来事・発見)が発生するきっかけにもなります。

もうひとつがアバターの存在です。例えばですけど、めっちゃ偉い教授の方との対等な意見交換って、現実じゃ難しくないですか?

――厳しいと思います。たぶん、なにか言おうにも気後れしてしまいますよね。

Kuroly:
その原因は見た目から生じる権威・オーラだと思うんです。でも、VRChatでかわいいアバターやデフォルメされたアバターを使うことで、それがめちゃくちゃ緩和されるんですよ。


(東京理科大学イベント「メタバースで『創域』の可能性を探る~VRChatで異分野交流を~」にて)

Kuroly:
東京理科大学のイベントでも、副学長や教授といった大学の要職とVRChatユーザーが、ラフに談笑しながら交流できていました。これは現実では絶対にできない。交流を促進するという観点で、アバターは心理的ハードルを下げる大きな一因になっているかなと思います。

一方で課題もあります。アカデミアの場でメタバース学術交流を実施しようにも、VRデバイスはまだまだ重いし、学内のWi-Fiも不安がある。技術的な課題があります。

あと、とある場所で登壇した際に、ある方が講演後に「アバターで交流することでしゃべりやすくなるとのことですが、逆に私からすると美少女の姿から男性の声がすることに戸惑いを感じます」とコメントされてたんですね。僕ら若い世代は順応していますし、やがて慣れるものだと思うんですが、そうした年配者の方達の心理的な課題もあるなと。

――東京理科大学という大きな前例こそありますが、まだまだアプローチすべきところがある。

Kuroly:
本当に学術機関にこうした場や機会を普及させるためには、もっと本気で取り組まないといけませんね。とはいえ、エフォートとの関係もあるので、色々と考えている次第です。

――その東京理科大学が第一歩だとすると、現在はどれだけ進んでいると感じられていますか。

Kuroly:
割と進めている感触があります。去年の東京理科大学のイベントのほかにも、科学技術振興機構主催の「サイエンスアゴラ」でメタバースイベントを開催したり、東北大学のシンポジウムをメタバースで同時開催するのを手伝ったりとか、大学の方々から相談を受ける機会は多いです。あと、全国の高専の方が集まるシンポジウムにも登壇して、メタバースが学生にとっても教授にとってもいいですよとプッシュしていました。

「メタバース×学術」の良さについて、種は蒔けていると思います。僕らができるのはこうした啓発活動と、実際にメタバースに来たときに訪れてもらう場を作っておくことぐらいです。あとはアカデミアの方々が、ご自身でやりたいと思っていただかないといけないですね。

VRChatにいる人は、誰もがなにかの専門家

――VRChatで学術交流を求める人、というのはどんな人が多いか、また、どんな人が向いていると思いますか?

Kuroly:
やはり「新しいことが好きな人」が一番向いていると思います。現実で仕事や研究などをしていると、他の分野を見る機会は本当にないです。でもそれは時間がないからで、興味がないからではないんですよ。

時間がない人にこそ、ぜひ一度でいいからVRChatを始めてもらって、ふらっと1時間だけでもここに来てもらえれば、きっとその楽しさがわかるんじゃないかなって思います。

――ここまで様々な「VRChatで学術交流を行う利点」をお聞かせいただきましたが、より広く「学ぶ」という意味で、VRChatが強いところはなにか考えられますか?

Kuroly:
見逃しがちなんですけど、VRChatには様々な分野の人がたくさんいます。誰しもがなにかの専門家なんですよ。なんなら普段遊んでるフレンドだって、ちゃんと深掘りしたら、なにかしらについて特化した知識を持ってたりするんですよね。

究極的な目標としては、「理系集会」みたいな場がなくても、みんなが異分野交流をして、分野の知見を常時交換できるようになるのが最高なのかもしれない、という話はよくしています。

――それこそ、「ポピー横丁」でワイワイとお酒を飲んでいる最中に、お互いの専門領域を深掘りしていくような場がもっと広がればいいですよね。

Kuroly:
そうそう。「実はこんなことができます」とみんなが発信していけば、もっといろんなイベントが生まれていくと思うんです。みんながイベントを開催し、新しいコンテンツを作り続けていくことで、飽きない場所にしていく。それは、VRChat全体の持続性にもつながる話ですよね。

だからこそ、こうしたイベント文化はもっと注目されてほしいですね。学術交流のみならず、ダンスでもDJでも、リアルの枠を超えて楽しんでいる場が存在するんだっていうことがわかったら、もっとみんな興味を持つと思うので。

――アバターやアパレル、ワールドなども魅力ですが、ほんとうにたくさんのイベントがVRChatでは開催されているのはすごいですよね。

Kuroly:
そうですね。しかし一方でコロナがぼちぼち収束しそうですし、そうなると今までメタバースが推進されていた理由が、現実回帰によってだんだんと弱っていくのが目に見えています。

そこで押し出していくべきは、「リアルの代替としてのメタバース」という文脈でも、デジタルツインでもなくて、「メタバースでしか生み出せない価値」だと思っています。それを外向けに発信していかないと、誰も見向きしなくなるんじゃないかなって心配があるんですよ。もっと外へ発信されていってほしいですね。

「理系集会」はVRChatの外へ

――今後の展望や、直近で告知したいことなどあれば、ぜひお願いいたします。

Kuroly:
4月から、イベント名が「理系集会」に変わりました。今後はVRChat以外も視野に入れていこう、ということで。イベント自体はなにも変わらないのでご安心ください。

あと、学術コミュニティをちゃんと可視化できるようにしなきゃということで、学術系に特化したイベントカレンダーを作りました。「理系集会」のホームページから見ることができるので、学術イベントにご興味のある方、ぜひこちらもチェックしてみてください!

hinoride:
個人的な取り組みなのですが、去年7月くらいに公開した、自分の専門分野である「トライボロジー(摩擦学)」について学べるワールド「Tribology World」を大規模改修中です。ワールド全体もそうですが、学べる内容も追加し、遊べるワールドにまでしようと改修を進めていて、今年の春ぐらいに公開できたらなと思っています。


(VRChatワールド「Tribology World」)

――公開されたときに拝見しました。摩擦についてなにもわかっていなくても、実際に動くギミックや解説でイチから理解できる、実物提示教育のお手本のようなワールドでしたね。

hinoride:
学べるワールドって探すといろいろあるんですけど、「理解するためには数学的・物理的知識が必要」っていうワールドが多いんですよね。いろいろいじれるパラメータがあり、動かすと「すごいね」ってなるものの、一般人にとっては「じゃあこれはなに? 結局なにをしているんだろう」という感じになってしまう。

それって、学びとしてちょっと足りないよなという気持ちがあるので、僕のワールドでは体験もでき、なぜそうだったのか説明から学ぶこともできる、というのを目指しています。摩擦ガチ勢はもちろんですが、摩擦に興味がない人でも「来た甲斐があったな」って思ってもらえるワールドにしようとしています。公開された暁にはぜひ来ていただけるとうれしいです!

Kuroly:
このほかにも様々な仕込みを準備しています。今年度もぜひご期待いただければ、と思います。

――最後に、理系集会に興味関心のある人に向けてメッセージをお願いします!

Kuroly:
新しいことに触れたり、知ることが好きな人は、ぜひVRChatに来て、「理系集会」だったり、いろんな学術イベントに顔を出してみてください。絶対に後悔させません!

「理系集会」公式サイトはこちら。
https://www.vrc-science-assembly.com/


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