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VR動画 2021.05.15

【VR映画ガイド第48回】講談社VRラボが仕掛けたVR映画の底力

講談社VRラボの第1弾作品

2017年、講談社が国内最大手のデジタルアニメーションスタジオ株式会社ポリゴン・ピクチュアズと設立したのが「講談社VRラボ」です。現在、世界に発信するコンテンツの製作目的に様々なジャンルのクリエイター達とコラボレーションし、最新のテクノロジーを最大限生かしたストーリーテリング作品を探求しています。

その第1弾作品となるのが「Last Dance」です。監督は、フリーランスの映像作家として活躍する半崎信朗監督。プロデューサーはVRアイドルユニット「Hop Step Sing!」やVR動画「オタワムレ」など様々な分野のVRコンテンツをプロデュースしている石丸健二氏です。

石丸氏はこの作品について「半崎監督と二人三脚でオリジナルの物語を練り上げ、弊社スタッフを中心に多くの世界のクリエイティブと技術が結集し、VRというメディアの良さを生かし切った素晴らしい作品に仕上がりました。」と語っています。

作品の舞台は近未来の地球。戦争を止められず滅んだ人類に作られたAIが、人類再生のミッションを授けられます。しかし、人類文明を何度も再生させるものの、絶滅を避けられないというところから話は始まります。

AIは滅亡を前に踊り続ける一人の女性の存在に気がつき、死を目前にして「最後のダンス」を踊る理由を尋ねるために初めて地球に降り立つことにします。このAIと女性の出会いが何を引き起こすのか、詳しくは作品をご確認ください。

作品公式サイト
https://www.kodanshavrlab.com/original/lastdance/

オススメのポイント

1. シームレスなシーン転換

VR映画において非常に重要なのがシーン転換です。フレーム映画のようなカットでのシーン切り変えや、オーバラップ等で簡単にシーンを切り替えようとすると、体験者としては突然、自分がいる世界が変わってしまうので、立ち位置や存在する世界がわからなくなってしまいます。

「Last Dance」のシーン転換に関しては360度の空間を考えて非常に丁寧に行われていると感じました。爆破に伴って光の粒が弾けるのと同時にシーンを変えたり、360度の空間に、360度のスクリーンを作って違和感なくシーンの転換を行ったり、見せるポイントを絞り込んで回想シーンを見せたり、通常のフレームとは違うVRならではのシーン転換が全体的に行われていました。

2. 視聴と体験の両方で楽しめる作品

基本的にAIの主観目線が体験者に与えられた役割だったと思います。しかも今回はこの世界を作った全能なAIなので、神に近い目線で物語を見ていました。

AIとして悩んだり、考えたりはしていますが、実体を持っているわけではないので、第三者的な感覚で物語を追うことができます。

主観視点で世界を作るような体験シーンがいくつかありましたが、人類滅亡を客観的に見つめるような感覚でも楽しめ、体験者の視点設定をとてもよく考えられていると思います。

3. VRのために考えられた深いストーリー

今回、講談社VRラボの第1弾のVR映画ということもあり、VRとしてのテーマや物語をかなり考えて制作されているのだと思います。

シンギュラリティ(技術的特異点。AIが人類の知能を超え人間より賢い知能を生み出すことが可能になる転換点)を迎え、体験者は全能のAIの視点から人類滅亡を繰り返す人間たちのことをどのように見るのかを体験できます。

実際には体験者は人間なのですが、この作品の中では世界を創造する全能のAIとして、人間たちの愚かな行動を見つめているという立ち位置が興味深かったです。今まさに人間の今後の判断と行動が問われる中、この作品を通して色々考えるきっかけになるような気がします。

講談社VRラボは年間1本程度ストーリーテリングのショートアニメーションを制作する予定で、現在も新作が進んでいるそうです。またVR映画にとって挑戦的な作品を手がけているようなので、今後の作品にも期待したいです。

作品データ

タイトル

Last Dance

ジャンル

アニメーション

監督

半崎信朗

制作年

2020年

本編尺

約23分

制作国

日本

視聴が可能な場所

VIVEPORT:https://www.viveport.com/7d34a4db-1d1a-41fd-8b12-9c185f6e941e
STEAM:https://store.steampowered.com/app/1576860/Last_Dance/

Trailer

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