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VR動画 2021.05.09

【VR映画ガイド第47回】1978年のNYを舞台にしたパンクな女子2人の青春物語

作品から伝わるすごい熱量と疾走感

世界の様々な映画祭で話題になっていた「BATTLESCAR: Punk Was Invented By Girls」がついにオンラインストアで公開されました。私は2019年のベネツィア映画祭でこの作品と初めて出会ったのですが、他のVR作品の多くが少し実験的で慎重に制作している中、作品から伝わってくる熱量と疾走感が違いました。

監督は世界で活躍するクリエイター集団、1stAveMachineのNico Casavecchia監督とMartin Allais監督です。Casavecchia監督は「A Boy and His Atom」という作品で“原子の粒”を使った世界最小のストップモーション映画を製作し、ギネス記録に認定されたというニュースが世界で話題になりました。またAllais監督もCMやミュージックビデオの監督として活躍しています。

今回の作品はそんな2人の才能を融合させた初のVRプロジェクトになります。作品は3部構成の約30分のVRアニメーション映画です。ドラッグや犯罪が問題になっていた1970年代のニューヨークを舞台に、パンクバンドで有名になることを夢見た10代の女子2人が成長する姿を描いています。

主役の1人ルーペの声を「メン・イン・ブラック2」や「シン・シティ」シリーズに出演しているハリウッド俳優のロザリオ・ドーソンが務めています。

オススメのポイント

1. VR映画における絶妙な物語のリズム

VR映画の難しいところの1つは、なかなか物語にリズムがつけづらいところだと思います。

フレーム映画のようにリズム良くカットを変えたり、カメラを移動させてリズムをつけることが難しいので、シーンによっては間延びしてしまったり、途中で飽きてしまう恐れもあります。

「BATTLESCAR: Punk Was Invented By Girls」は音楽作品でもあるので、物語の中でリズムが非常に重要になっています。体験者がVR空間を認識する十分な時間を残しつつ、物語のリズムをきちんと構築しています。

作品にリズムを与えられたのは、Unityのタイムライン機能を使ったからとのこと。動画編集ソフトのように音楽や動画、字幕などをトラックに配置してVR作品を制作できるので、映像制作してきたクリエイターには使いやすい機能かもしれません。

2. VR演出のアイデアがてんこ盛り

作品内ではVRならではの演出があちこちに使われています。例えば、この連載でもよく出てくるジオラマ演出を予想してしまうシーンでは、とんでもなくでかい人が現れて、スケール感を壊してきます。

また客観視点の作品かと思ったら主人公の主観になったり、目の前の日記を読ませるシーンかと思ったら絵の中に入っていくような演出になっていたりと、本当に数々の新しいVR演出を体験させてくれます。

様々なフレーム映像を演出してきた監督たちの経験が色々なところに活かされていて、まさにVR演出のアイデアがてんこ盛りの作品になっています。

3. 既存のフレーム映画の概念を壊そうとしたVR映画

フレーム映画の良さも取り入れつつ「VRらしいことをやろう」という意識を感じました。全編を見ると30分ほどの作品で、VR映画の中では長尺の作品だと思います。

シーンごとに新しい演出が凝らされているので、それを見るのが楽しくて、2度でも3度でも見たくなります。「面白いことをしたい」という熱意が、全く新しいVR映画作品を生み出すのだと思います。

作品データ

タイトル

BATTLESCAR: Punk Was Invented By Girls

ジャンル

アニメーション

監督

Martin Allais, Nico Casavecchia

制作年

2019年

本編尺

約28分

制作国

フランス、アメリカ

視聴が可能な場所

Oculus Store:https://www.oculus.com/experiences/quest/2985592331490872/
STEAM:https://store.steampowered.com/app/1367270/BATTLESCAR_Punk_Was_Invented_By_Girls/

Trailer

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