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VR動画 2021.02.27

【VR映画ガイド第37回】ムンクの叫びを“体験”できる作品が登場

今までなかった没入感の高いVRアート作品

「The SCREAM VR -ムンクの叫びVR」は、歪められた顔で多くの人たちの想像力を刺激した有名な絵画、エドヴァルド・ムンクの「叫び」を取り上げています。アーティストのムンクの心の奥深くに入り込み、作品が生まれた背景や秘密に迫ります。

3つの章に分かれ、火山と燃えるような空、暗い部屋を一周する残忍な精霊、同じギャラリーにある無地の鏡などのシーンを通して、ムンクの「叫び」を体験します。

ここまで没入感の高いアートVR映画作品は今までなかったと思います。制作したSandra Paugam監督はアートとカルチャーカルチャーに関するドキュメンタリー映画に携わっており、Charles Ayats監督は大学でインタラクティブ・デジタル・エクスペリエンスの学位を取得しています。この新しい体験型のドキュメンタリー作品を制作できたのは両監督の今までの知識や経験の結集だったのではないでしょうか。

オススメのポイント

1. 1つの絵から広がる作品世界

各シーンの空間表現が巧みです。冒頭、誰もいない真っ白な美術館の中から始まります。体験者の目の前にはムンクの「叫び」の絵が飾られ、静寂の中しばらくその顔と対峙することになるのですが、あまりの静けさが恐怖感に繋がりました。

体験者が絵画に触れることでムンクの「叫び」の世界に引きずり込まれ、真っ赤な空の下に火山があるシーン、空間内が黒いクモの糸だらけのシーン、恐ろしい亡霊が飛び回るシーンなど何とも奇妙な体験をすることになります。気づくと完全に作品に没入していました。

2. 体験を主体に置いた作品

私が2019年にベネツィア映画祭で初めてこの作品を体験した際は、巨大な真っ白いキャンバスの前にHTC Vive proとLeap Motion(手のジェスチャーで様々な操作ができる装置)の設置されているブースの中でした。

全てはユーザーが絵画に触れることから始まります。実際にやってみると、絵画に触れる感触があり、驚きました。(現実の)真っ白いキャンバスに手が触れるので、作品の中の絵画に触れている感触が伝わってくる設計になっていたのです。

現在オンラインで公開されている作品ではコントローラーを持って体験するバージョンということで、絵画に触れた時、振動する設計になっています。実際にムンクの「叫び」に触れることはできませんが、このような体験はVR映画ならではの演出だと思います。

3. 独自の視点で語られるストーリー

この作品はアートのお勉強的な作品ではありません。「叫び」を描いた時のムンクの状況、背景、心の奥底を考察し、監督の独自な視点で新たな作品を制作しています。

海外ではVRを使って、既存のアートを新たな見せ方で表現している作品をよく見かけます。日本ではこのような表現をあまり見かけませんが、VR上での再解釈という手法が馴染まないのかもしれません。

しかし、このような挑戦が、これからアートの魅力を伝える新たな方法になるかもしれませんし、実際、今まで知り得なかった作家の苦悩や悪夢を体験することで、名作の制作過程を体感で学ぶことができました。

作品データ

タイトル

The SCREAM VR -ムンクの叫びVR

ジャンル

アート

監督

Charles Ayats 、Sandra Paugam

制作年

2018年

本編尺

約15分

制作国

フランス

視聴が可能な場所

Steam
https://store.steampowered.com/app/1097120/The_Scream/ 
VIVEPORT https://www.viveport.com/1a6c042e-2728-40f6-911b-946f2dee57a5 

Trailer

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