VRは、PC向けのハイエンドなVRヘッドセットや一体型VRヘッドセットを使用せずとも、スマートフォン(スマートフォン)とVRゴーグルを組み合わせることで体験できます。しかし、家電量販店や通販サイトでは様々なVRゴーグルが販売されており、どれを選べばいいのか分からない……ということも多々あります。
今回、Mogura VR編集部ではAmazonで人気のスマートフォン向けVRゴーグル4種類を実際に購入し、体験・比較します。VRゴーグルを選ぶ際の参考になれば幸いです。
・EchoAMZ V5
・SAMONIC V7
・CanborVR 1006
・Canbor VR 101
なお、今回はスマートフォン用のVRゴーグルを比較していますが、いずれも体験できる没入感は最低限でローエンドの機種です。もし予算があるという人は、いかなるVRゴーグルよりも「Oculus Go」や「Gear VR」、「Daydream View」、「Mirage Solo」といったミドルレンジクラスのワンランク上のVRヘッドセットの利用をお薦めします。没入感は大きく異なります。
VRゴーグルを選ぶ時のポイント
VRゴーグルを購入する際に最低限チェックするポイントは以下の4つです。
・きれいに見えるかどうか(レンズの質)
・視野角が広いかどうか
・瞳孔間距離(IPD)や焦点距離の調節機能はあるか
・装着のしやすさなど使いやすいか
レンズの質
まずはきれいに見えるかどうか。VRゴーグルでは、レンズを通してディスプレイを見ることでVR体験を行うため、レンズの質は体験の質を左右する要素です。映像の歪みが少なく、発色ができるだけ良いもの、明度の高いものを使うことで、VR体験の質はぐっと向上します。
また、「DMM VR」など多くの人気コンテンツではゴーグルの「立体視」を使って奥行きのある映像を見せるVR専用動画(ステレオ動画)があり、きれいに立体視ができるかも重要です。
視野角
ゴーグルを被ってVRの世界を見たときに、その視界を広さを示すのが視野角です。視野角が広ければ広いほど、現実を見ているのに近い自然な見え方が実現します。逆に狭い場合は、左右の端に黒い枠が見えてしまい、まるでのぞき窓から覗いているような違和感の強い体験となります。
瞳孔間距離(IPD)
そして瞳孔間距離(IPD)は、人の左目と右目の瞳孔がどのくらい離れているかを表す値です。英語ではInterpupillary distanceと呼ばれ、頭文字を取ってIPDと表記されています。
今回検証するような両目で覗き込むタイプのVRゴーグルでは、レンズと眼球の中心が完全に一致することで最大のパフォーマンスを発揮します。レンズと眼球の中心が一致していない場合、眼精疲労の原因になると考えられています。したがって、瞳孔間距離が調整できるものを選ぶことで疲れにくくなり、かつクリアな映像を見ることができます。
焦点距離
続いて焦点距離。いわゆるピントを合わせる昨日です。こちらは調整機能の有無がVRゴーグルによって異なるため、なるべく「焦点距離調整ができるもの」を購入した方がよいでしょう。焦点距離を合わせることで、よりクリアな映像を見ることができます。
装着のしやすさ
VRゴーグルは様々なサイズのスマートフォンで使用できます。そのため、「スマートフォンをゴーグルに固定する方法」がゴーグルごとに異なります。VRでは左右のレンズに映っている映像を立体視することで奥行きのあるVRを体験できるため、ゴーグルの前面にあるカバーを開けてディスプレイであるスマートフォンをしっかりと固定することは重要です。ゴーグルによってはスマートフォンを固定しづらいものがあります。
また、頭に固定するヘッドバンドの機構は使用中の快適性に影響します。
比較検証に使用するアプリ・スマートフォン紹介
使うデバイスの都合上、スマートフォン向けVRゴーグルは、従来のPC向けVRヘッドセット等に比べてできることが限られます。360度動画を見る、といった用途であればある程度は問題なく可能となるため、今回はグーグルによる360度動画アプリ「Google Spotlight Stories」(iOSはこちら、 Androidはこちら)の作品や、YouTubeのVR動画「透明少女」などを試しています。
今回検証の際に使用したスマートフォンは約4.7インチのiPhone6S、および約4.6インチのXperia X compact SO-02Jです。
今回比較するVRゴーグル
今回試した4種のVRゴーグルには共通の部分がいくつかありました。個別のVRゴーグルに言及する前に、共通部分に触れたいと思います。
左から、「Canbor VR 101」、「SAMONIC V7」、「EchoAMZ V5」、「CanborVR 1006」
1つ目の共通部分はコントローラーです。4つとも全く同じものが同梱されています。側面にAndroidとiOSの切り替えのボタンがありますが、iOSとは互換性が悪く音量調整しかできなません。取り外しに手間のかかるスマートフォンVRにおいてコントローラーは便利ですが、互換性には注意が必要です。
(共通で同梱されていたBluetoothコントローラー、全く同じ機能・形状のものだ)
また、2つ目の共通点は「顔と直接触れる部分」の素材です。いずれも素材はメッシュの合皮素材で、適度な柔らかさがあります。密閉性もあり、体験中に外の光が入ってくることはあまりありませんでした。
一方素材は同じでも形状は4つ中「CanborVR 1006」以外の3つが同じ。「CanborVR 1006」との形状の違いは「鼻の部分にもスポンジがあるか否か」です。
(CanborVR 1006(左)のみ、鼻の部分にもスポンジが存在)
鼻の部分にスポンジがあるものはさらに光が入りにくくなるため、気になる方は鼻の部分にもスポンジが付いているものをおすすめします(他の3機種もスポンジがかなり分厚いため顔に密着し、鼻の部分にスポンジが無いものでも光はあまり気になりませんでした)
なお、いずれのVRゴーグルも眼鏡をかけている場合は眼鏡をスポンジに押し込むことが必要でした(検証では通常の広さの眼鏡を使用)。使えないことはない、という印象です。幅の広い眼鏡をかけている人は、使えない場合があることに注意が必要です。
3つ目の共通点は、スマートフォンの装着部分の横に穴が開いていること。これはイヤホンジャックを使ってのオーディオ機器使用や、排熱を考えての構造だと思われます。その半面、小さいサイズのスマートフォンで利用するとここから光が入ってきてしまうことがあります。使用可能とされている範囲の中でも大きなスマートフォンを使用することをおすすめします。
4つ目の共通点は、ヘッドホン一体型ではない、ということです。音を聴く場合はスマートフォンのスピーカーから直接聴くか、もしくはイヤホンをスマートフォンの端子に挿してゴーグルの横からケーブルを出して使います。
個別に比較
EchoAMZ V5
まずは「EchoAMZ V5」。このVRゴーグルはシンプルな作りで、スマートフォンVR初心者も簡単にスマートフォンを装着して使えるVRゴーグルであるという印象です。
スマートフォンを中に入れるカバーを止めるのには磁石が使われており、固定する力は強すぎないため楽に開けられます。スマートフォンを置く下や背面にもスポンジが付いています。スマートフォンが小さいとやや固定しづらい印象です。
横のつまみを回すことで、設置したスマートフォンごと正面のパネルが前に出る仕組みになっています。これで前後の焦点距離を調整します。
上に設置されているダイヤルを回すことで瞳孔間距離(IPD)を調整できます。レンズにはブルーライトカットのレンズが採用されていますが、発色も悪くなく、シンプルながら映像もきれいに見ることができました。
デバイス名 |
EchoAMZ V5 |
価格 |
1,880円(2018年9月時点) |
視野角 |
不明 |
IPD調整 |
可 |
焦点距離調整 |
可 |
眼鏡使用 |
可(フレームが細いものを推奨) |
対応サイズ |
4.0~6.0インチ |
Amazon URL |
SAMONIC V7
「SAMONIC V7」は先に紹介した「EchoAMZ V5」と構造がほとんど同じVRゴーグルでした。EchoAMZ V5と異なる点は数カ所あり、それが横のつまみの形状と正面のパネルの形状、固定用バンドの頭頂部を通る部分にパッドがあるかどうかです。ブルーライトカットのレンズや焦点距離調整、IPD調整の構造などほとんどの部分が同じものでした。
(横のつまみと正面のパネル。「EchoAMZ V5」と微妙に異なっているがほぼ同じ)
正面のパネルが1台目よりも深い分スマートフォンを支えるスポンジの後ろにスペースがあり、そこにプラスチックの土台が設置されていました。また、個体差なのか磁石の種類や構造自体が違うのか、1台目よりも閉じる力がやや強かったように感じました。小型のスマートフォンの固定のしづらさは変わりません。
(頭に当たる部分にパッドが設置されている点も異なる。装着感に与える影響は軽微)
付属品でカナル型のイヤホンが入っていましたが、音質はあまり良くありませんでした。メインはVRゴーグルでそのオマケ、といったところでしょう。価格はイヤホンが付属していたり、パッド部分が変更されていることから「EchoAMZ V5」より少し高めの2,280円となっています。
デバイス名 |
SAMONIC V7 |
価格 |
2,280円(2018年9月時点) |
視野角 |
不明 |
IPD調整 |
可 |
焦点距離調整 |
可 |
眼鏡使用 |
可(フレームが細いものを推奨) |
対応サイズ |
4.0~6.0インチ |
Amazon URL |
(1台目と2台目の比較。ロゴとつまみの形状などが違うくらいでそっくり)
CanborVR 1006
3台目は先ほど述べた「鼻部分にもスポンジがついている」タイプのVRゴーグル「CanborVR 1006」です。今回の4機種の中では唯一、白がメインのデザインです。瞳孔間距離(IPD)と焦点距離の調節機能はこのゴーグルにも備わっています。調整は他の機種と同様の仕組みを採用しています。
「CanborVR 1006」はスマートフォンを装着する機構に難があります。正面のスマートフォンを格納した後に閉める部分が磁石ではなく、プラスチックの出っ張りを引っかける機構を採用。
スマートフォンを固定するためのストッパー部分は少し固め。またカバーの中に金属製の板がついているのですが、こちらも固く、スマートフォンが本当に正しく収まっているのか少し迷うかもしれません。
スマートフォンを格納する受け皿となるの部分の土台は可動式になっており、対応サイズのスマートフォンであればフィットします。VRゴーグル使用後にスマートフォンが取りやすくなるよう、ゴーグルの底面にボタンが付いており、それを使うことでスムーズに取り外せます。
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(土台の部分、最も広げた場合(左)と最も狭めた場合(右))
(底面の取り外しボタン(スライド式))
排熱用に上部も空いており、効率の良い排熱と軽量化を実現しているようです。しかし、スマートフォンのサイズによっては上が空いていることで光が入ってきてしまい、没入感を損ないます。大きいサイズのスマートフォンを使うことを推奨します。
こちらのデバイスでは鼻の部分にもスポンジがあることで鼻下からの光は遮ることができる一方、眼鏡をかけての体験はかなり難しい構造です。
デバイス名 |
CanborVR 1006 |
価格 |
2,900円(2018年9月時点) |
視野角 |
120° |
重量(VRゴーグルのみ) |
約280g |
IPD調整 |
可 |
焦点距離調整 |
可 |
眼鏡使用 |
不可 |
対応サイズ |
4.0~6.3インチ |
Amazon URL |
Canbor VR101
4台目は3台目と同じCanbor社製のVRゴーグル。今まで紹介したものよりもサイズも大きく、装着すると重量も305gと他の3機種に比べて重めに感じられます。
他のものと同じように、早速スマートフォンを入れようと手前の蓋を取りました……が、そこはスマートフォンを格納するスペースではありませんでした。
ではどこに収納するのかと言うと、この下にある蓋を外すとスマートフォンを格納する場所が。目の近くにあるレンズ以外に、スマートフォンの近くの部分もガラス張りになっています。スマートフォンはプラスチックの台でガッチリと固定するタイプ。他の3機種と比べると最もしっかりと固定できますが、本体横に音量調整ボタンなどがついているタイプのスマートフォンだと誤作動することもあります。
瞳孔間距離(IPD)と焦点距離の調節機能はきちんと搭載されており、ツマミ型のパーツで調整します。横移動させることでIPDを調整し、縦移動で焦点距離を調整します。しかしこの移動は固めであまりスムーズではなく、快適に調整できるとは言いがたいところ。
なお、今回比較した4機種のうち視野角は最も狭く感じられました。体験中は左右の黒枠が気になります。他の3機種に比べて難点が多いVRゴーグルです。
デバイス名 |
CanborVR 101 |
価格 |
2,000円(2018年9月時点) |
視野角 |
102度 |
重量(VRゴーグルのみ) |
305g |
IPD調整 |
可 |
焦点距離調整 |
可 |
眼鏡使用 |
不可 |
対応サイズ |
4〜6インチ |
Amazon URL |
今回のおすすめ
今回試したAmazonで人気のVRゴーグルのうち、見え方とスマートフォンの固定しやすさを考慮すると「EchoAMZ V5」がオススメとなりました。価格が2,000円前後で装着感も重くなく、映像も比較的キレイです。装着方法も簡単で、今までVRゴーグルを使ったことがなくとも、説明書なしでも使用できると思います。
しかし、「EchoAMZ V5」もこれまでMogura VR編集部で紹介してきた中で最高評価の「DMM VR動画スターターセット」(販売終了済)と比べると見え方や使いやすさの点で劣る点にはVRゴーグルの限界を感じました。また、本記事の冒頭で述べたように、少し予算をかけれるのであれば、ミドルレンジの「Oculus Go」などのVRヘッドセットを強くオススメします。同じ動画でもその没入感は段違いです。
また、スマートフォンでVRを楽しむにはVRゴーグルだけではなく、VR対応アプリが必要になります。Mogura VRでは、下記の記事にておすすめのスマートフォンVRコンテンツ等も紹介しています。