HTCは、2021年5月12日にVRヘッドセットVIVEシリーズの新製品を2機種発表しました。その片割れである「VIVE Pro 2」は、その名の通り「VIVE Pro」の後継機種として位置づけられているPC接続型VRヘッドセットです。
ハイエンドVRヘッドセットの代表格として、法人ユーザーのみならず一部のコンシューマユーザーにも愛されたであろう「VIVE Pro」の後継にふさわしく、5K画質、120Hzリフレッシュレート、視野角120度と、現行機種としては最強クラスのスペックを有しています。そして、1次予約は「VIVECON 2021」終了から数時間で完売したとのことで、多くのVRユーザーが注目している一台です。
今回、発売前の「VIVE Pro 2」をHTC JAPANオフィスにて先行体験しました。本記事では、いま多くの注目を集める「VIVE Pro 2」の実力に迫ります。
デバイス概要
写真を見れば一目瞭然ですが、構造やデザインはVIVE Proとほぼ同一です(レンズの形状だけ変更があります)。人間工学に基づいて設計されたVIVE Proは構造面の信頼性が高く、そうした理由からVIVE Pro 2へも全面踏襲されているとのことです。実際、全体的な装着感もVIVE Proそのままなので、これまでVIVE Proを愛用してきた人にもなじみ深いものになるはずです。VIVEトラッカーやVIVEフェイシャルトラッカーも、VIVE Proに引き続き併用可能です。
一方、性能面に関しては、
解像度 |
リフレッシュレート |
視野角 |
|
VIVE Pro |
片眼 1440 x 1600 ピクセル(合計 2880 x 1600ピクセル) |
最大90Hz |
110度 |
VIVE Pro 2 |
片眼 2448 x 2448 ピクセル(合計 4896 x 2448 ピクセル) |
最大120Hz |
120度 |
と、前世代から大きな向上が見られます。とりわけ解像度は両目合わせて5K相当であり、現行機種ではHP Reverb G2(片眼2160 x 2160 ピクセル)を上回ります。
なお、性能向上に比例して要求スペックも上昇しており、5K画質かつリフレッシュレート120Hzで動作させるには相応のマシンスペックが必要になります。ただし、フルスペックを発揮できないマシンであったとしても、GPUメーカーと開発した技術によってVIVE Proよりも映像はきれいになるとのことです。
圧巻の5Kを体験
今回のVIVE Pro 2体験会では「the Blu」を体験しました。映像の美しさをはかるベンチマーク的なVRアプリとして有名なタイトルで、筆者もVRヘッドセットを検証する際にほぼ確実に起動しています。よって、どのようなコンテンツなのかは100%把握していたつもりなのですが、結論から言えば初めて体験したとき以上の感動をおぼえました。
とにかく、文句のつけようがないほどきれいな映像が広がります。ピクセルが見えて網目を感じさせるスクリーンドアはゼロといっても過言ではなく、いよいよ肉眼と遜色のない見え方です。また、体感では発色がおだやかに感じられたので、高解像度も相まって目の負担は皆無。むしろ「見ていて心地よい」とすら感じられるほどです。ディスプレイパネルは、VIVE Proの有機ELから液晶に変更。液晶はバックライトがあるため有機ELよりも暗いシーンの暗さを苦手としますが、VIVE Pro 2ではこの弱点も克服。暗所の見え方もより「暗さ」が感じられるようになり、海底のシーンでは、仮にこれがホラーVRであれば「前に進みたくない」と思わされるような、リアルな「暗さ」が広がるようになりました。
そして、非常に鮮明な見え方をするおかげか、これまで気づかなかったような細かいところまで見えるようになっていました。「the Blu」は数多く体験しているはずなのに、「このクラゲってこんな肉感なのか……」「あんなところにカニいた!?」といった気づきが連発。「一度体験したコンテンツで新たな発見を数多く体験する」というなかなかにない体験は、5K相当という最高クラスの解像度がもたらす効力かもしれません。
これほどの解像度に加え、リフレッシュレート120Hzと、なにより信頼性の高いSteamVRルームスケールトラッキングが共存しており、装着感のよさはVIVE Proゆずり。きわめて鮮明に見える海中を自由自在に動き回る体験もまた、大きな没入感を生み出していました。
2021年の最上のVRがここに
VIVE Proの正当進化にして、VIVEシリーズの傑作機種。VIVE Pro 2は、そのように断言してもよいほどに完成された「2021年のハイエンドVRヘッドセット」でした。最高品質のVRを求める人にとっては、これ以上にない選択肢が現れたといっても過言ではありません。
VIVE Proユーザーであれば間違いなく手放しで「アップグレードしてOK」とおすすめできます。これから高品質なPCVRの世界に踏み込みたい方にも、できることなら検討してもらいたい一台です。VRとは体験であり、体験は良質であることに越したことはありません。解像度も、装着感も、トラッキング精度も全てが高次元に収まっている本機は、その価格に釣り合う価値をもたらすはずです。
ただし、その真価をフルで味わいたいならば、マシン側の要求スペックも高くなる点には留意が必要です。場合によってはPCの新調も検討する必要があるかもしれないので、お手元のマシンのスペックはよくよく確認しておきましょう。
総じて、VIVE Pro 2は現行のVRでは満足できなくなった、VRヘビーユーザーにこそふさわしい一台かもしれません。そして、より”上”のVRを体験したい人にとっては、VIVE Pro 2はほぼマストバイな一台でしょう。
VIVE Pro 2のヘッドセット単体価格は税込103,400円。日本国内では6月下旬に発売予定。公式ストア、ヨドバシカメラなど各種ECサイトで予約を受付中です。
執筆:浅田カズラ