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話題 2023.03.13

VRChat向けアバター販売は同人誌の黎明期と似た匂い 「ツクルノモリ」が見据える「アバター市場」とは?

ツクルノモリ株式会社は、著名なイラストレーターやクリエイターとコラボして、クオリティの高く可愛らしいVRChat向けアバターを数多く手掛けてきました。

2019年発売の第1弾「if the ♭(イフ・ザ・フラット)」から数えて、今年3月3日発売の「宵闇ねこる」で第15弾目。いまや、VRChatアバターを手掛ける企業の”老舗”となりつつあります。

MoguLive編集部は今回、ツクルノモリ 佐々木課長へメールインタビューを実施。ツクルノモリが継続的にアバター事業に注力している理由や、今後の展望などをお話いただきました。

――VRChat向けアバターに参入したきっかけはどのようなものだったのでしょうか?

ツクルノモリ株式会社の母体である株式会社虎の穴は、同人誌というニッチな業界の黎明期より参入し、ただ販売者として参加するだけではなく、ともに市場の拡大のために関係各所と協力することにより市場形成の一翼を担い、業界最大手と呼ばれるまでになりました。

私たちはこの経験から、今流行りの市場ではなく、むしろ黎明期で将来性のある市場にこそ可能性があると考えておりました。そういった前提で新たな市場を模索していたところ、弊社所属の社員より「VRChatアバター市場への参入」の提案がありました。

VRChatアバターの市場は、個人の3Dモデラーが趣味の範囲でアバターを作成し販売するという同人誌の黎明期と似た匂いがありました。またアバターの複製が容易なため、権利関係の保護が難しく企業が参入しにくいという点も、同人誌と同じだと感じました。つまり、私たち以外の企業はでは取り回しが難しい市場なのではないか。この仕事は私たちがやるしかないのではないか。というのが参入を決めたきっかけになります。

――アバター製品を作る上で大切にされていること、こだわりなどはありますか?

ツクルノモリのアバターは著名なイラストレーターをキャラクターデザイナーに迎え、また著名な3Dモデラーの方々にモデリングを担当していただいております。一見派手に見えるのですが、製造コストの面を考えると、すべてを内製化し製造コストを抑えた方がビジネスとしては勝算があります。

そうしないのは私たちがただの販売者ではないからです。未成熟な市場を成長させるためには、多くの著名クリエイターの参入によって新規ユーザーを引き込む必要性があります。市場を盛り上げていくためには不可欠な要素だと考えています。

また、すでにVRChatを長く楽しんでいただいているユーザー様への配慮もかかせません。今をときめく一流のデザイナーにデザインをしていただいておりますので、3Dモデルのヴィジュアルにはとても自信を持っています。ただ、見かけだけでは既存ユーザー様にはご納得していただけませんので、使い勝手や機能面でも最新の技術や表現、使いやすさを考慮し、熟練のユーザーの方々にも満足のいくものを作り上げております。

――現在に至るまでのアバター事業の手応えはいかがでしょうか? ユーザーからの感想などもぜひお聞かせいただければ幸いです。

おかげさまで、弊社アバターをご利用いただいた多くのユーザー様からは高い評価をいただいております。むしろ、発売されるアバターに対して否定的な意見は皆無と言っていいくらいです。

ただ、アバター事業としての手応えはどうか?との質問に対しては、少し回答が違ってきます。弊社は2021年5月に第3弾の「ヴェスピア」を発売以降、業界での注目度をあげるためにアバターの毎月発売にチャレンジいたしました。そして毎月売上が上がることにより事業として継続していけると考えたのです。しかし、結果は違いました。実際に毎月購入するユーザー様は少なかったのです。

価格帯は違いますが、アバターはマイカーのようなものと考えられます。一度お気に入りの車に乗ると、そうそうは乗り換えません。お気に入りの車を自分好みにカスタマイズし、長く使っていく人が多いのです。もちろんたくさんの車を車庫に並べるのが趣味という方もいらっしゃいますので一概には言えないのですが。そういった購入頻度の商品ですので、事業を継続していくにはまだまだ市場ユーザー数は足りていないと考えています。

――これまで発売したアバターの中で特に反響の大きかったものはどのアバターでしょうか?

第2弾「猫山苗」、第5弾「ティコ」、第6弾「狐九里るる」、第12弾「エポナ」については特に大きな反響をいただきました。

――第13弾の「御咲ライネ」では、対応衣装製作モデラー募集やテスター募集などを実施しています。こうした新展開の意図などをお聞かせください。

業界を盛り上げていくためには、一方的な発信では盛り上がりません。多くのクリエイターやユーザー様が、ひとつのキャラクターのもとに色々な形で関わっていくことがとても大事です。ツクルノモリのアバター制作には、今後も多くの方に関わって頂きたいと考えております。

――ツクルノモリにとって「アバター」はどのようなものでしょうか?

ツクルノモリのアバターは、日本が世界に誇るアニメ、ゲーム、コミックなどのオタクコンテンツの延長線上にあります。日本発のオタクコンテンツが世界を席巻しているように、アバターの世界でも「Maid in Japan」と胸を張って言えるアバターをバーチャルの世界に提供していきたいと考えています。

――今後の展開について、お話できる範囲でお聞かせください。

まずは市場規模を大きくすることが第一です。VRChatを始めたばかりの方も「オリジナルのアバターを使ってみたい」と思われる方は多いと思いますが、右も左もわからない状態でいきなり5,000円以上のアバターを購入することは躊躇してしまうでしょう。そこで現在、安価で可愛く、かつ使い勝手の良いアバターの制作を進めております。

また、より多くのユーザーの方が制作に関わっていただけるよう、会員制サークルの創設なども考えております。ぜひ今後もツクルノモリの活動と業界の盛り上げにご協力をお願いいたします!

ツクルノモリ公式BOOTHショップはこちら。
https://tsukurunomori.booth.pm/


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