2017年5月10日~14日まで、海外とゲーム開発者を密につなげるためのイベント「東京サンドボックス」が渋谷と秋葉原で開催されました。
5月14日は東京・秋葉原、UDX アキバ・スクエアでインディゲームの体験展示が行われる、東京インディーズ・ゲームフェスティバルゲームショーが開催されました。同じ会場ではVRコンテンツを集めたVRラウンジゲームショーが併設され、日本だけでなく海外からも出展がありました。
海外の作品は配信コンテンツは海外の制作会社が多いですが、配信前のコンテンツは日本では遊べる機会は少なく、開発者と話せる機会も少ないです。開発者は日本語を使える人は少ないですが、通訳ができる人がお手伝いについているブースもあり、開発者と体験者が交流することも可能になっていました。
声をだすと先が見える恐怖『Stifled』
『Stifled』は一風変わったホラーゲームです。始まりは、暗闇の中、車が事故を起こしたようなブレーキ音と衝突音からです。視界が広がると、ひっくり返った車と森の奥へと続く血痕。血痕の後を辿って森の中へ進んでいくと、車の光が届かない完全な闇の中です。
すると、地面を踏みしめる自分の足音に反響して木々の輪郭が、潜水艦のソナーを当てたように浮かびあがってきます。すると目の前にはメッセージウインドウが開き、「自分の声をだしてください」と書かれています。「ワ―」と声を上げると声の大きいほど周囲の見える範囲が広がります。
進んでいくと近くから滝が落ちる音でも、滝と周囲の木々の形が表れます。
『Stifled』はイルカやコウモリが音で周囲の状況を察知する能力 エコーロケーションによって周囲を認識して進んでいくゲームです。
何も音を出さなければ周りは真っ暗で、ゲーム機が壊れたのかと思うほどです。音を出すと、白い線で周囲の形が描かれていきますが、音が消えていくように線もまた消えていきます。
森を抜けると地下水道のような場所にたどり着きます。水路とよく反響する空間のため、進みやすくなりますが、時折見える血痕や、片方だけの靴、どこからか聞こえる悲鳴などで何かが存在することだけが伝わってきます。
VRヘッドマウントディスプレイを被ると孤独に感じるため、ホラーゲームとは相性がいいものですが、恐怖を演出するための装飾物がわざとらしくて気になり、恐怖を軽減してしまうことがあります。
『Stifled』は映像の情報量を極力減らした結果、そこの暗闇に何か存在が潜んでいる、という想像力が生み出す怖さを感じさせます。
怖くなって叫ぶほど、遠くが見えてさらに、潜んでいる怖いものをひきつけます、声を出したり、足音を立てることで次の瞬間に何かが見えるかもしれないという恐怖、でも何もしないと真っ暗になるという恐怖を体験できる、アイデアがユニークなホラーゲームです。
配信予定は2017年、展示はPSVRで行われましたが、HTC Vive、Oculus Rift、OSVRにも対応とのこと。
来場者数43万人になった台湾最大のゲームショウ、台北ゲームショウ2017でも「BEST INNOVATION賞」を受賞し、他にも多くのイベントで賞を受賞している本作、リリースが楽しみな作品です。
使用デバイス:PlayStation VR(PSVR)
制作:Gattai Games
国:シンガポール
転覆事故の死者を鎮魂する『Big Blue -Memory』
『Big Blue -Memory』は2014年に転覆した韓国のフェリー「セウォル号」の犠牲者を悼むために作られたインタラクティブ要素のあるアクションゲームです。
プレイヤーはクジラを動かしながら、セウォル号が沈没した海を探索します。途中に金の輪をジャンプしてくぐるとワープしたり、イベントが起こるようになっています。
海の中に潜るとクラゲが漂っていたり、舩を連想するような物が沈んでいるところが見られます。
作品全体は40分程ですが今回はデモ展示のため約10分の体験です。
セウォル号で大きな犠牲がでたことを忘れないため、またゲームとして楽しく体験できるようにと作られたとのこと。
体験の終盤では海中に大きな黄色い風船が大量に沈んでいますが、風船の数は犠牲者の295人と同じとのこと。進んでも進んでも途切れない黄色い風船の多さに犠牲者の数を実感し、風船の数だけ命が失われたことの重さを思い知らされます。
犠牲者の大半は高校生でした。もし何も起きていなければ、会場にいる人と同じく、ゲームで遊んだり、ゲーム制作している人もいたかもしれないと思うとやるせない気持ちになります。
グラフィックスは非常に美しく、何度も空へ還るイメージのシーンがあるため非常に心に残ります。
気になる点はクジラのスピードがかなり速く、方向転換で酔いやすいところでしょうか。
ゲームとしてプレイすれば難易度は高くはないので物足りなく感じる人もいるかもしれません。しかし、鎮魂をテーマに掲げたゲームは珍しく、犠牲者に対する悲しみと遺族への真摯な気持ちが伝わってくる体験でした。
https://www.youtube.com/watch?v=4P_p9R7n8Vo&feature;=youtu.be
使用デバイス:Oculus Rift
制作:StudioRO
国:韓国
『Light Tracer』
『Light Tracer』は、プレイヤーが神となり、手のひらサイズの美少女をゴールに導いてあげるアクションゲームです。
右手に持った杖から出る光線を辿りながら、少女が歩いたりジャンプして進みます。進む通路は細く、はるか上空に浮かんだ立体迷路になっています。迷路は左手でつかみ見やすい角度に動かすことができます。
実際に迷路を進む美少女に顔を近づけると、こちらを見つめてきます。神様であるプレイヤーが見えるようです。美少女が見つめてくるのが可愛らしくて思わず頭をなでると、顔をうつむき嬉しそうに撫でさせてくれました。爪の大きさ程しかない少女の手に自分の手を近づけると手を繋いでくれるなどVRならではの演出に癒されます。
迷路は好きな角度に傾けることができるため、油断すると光をうっかり通路からはずれたところに当ててしまうことも。彼女はそのまま突き進むと通路から足を踏み外し、落ちてしまいます。
使用デバイス:HTC Vive
制作:Void Dimensions
国:中国