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VRゲーム・アプリ 2023.08.31

「SAO」の世界は少しずつ実現しつつあるかもしれない……! MR/VR技術を活用した最新コンテンツを体験

2023年は『ソードアート・オンライン』のゲームシリーズが10周年を迎える年。このメモリアルなタイミングで、約4年ぶりとなるファンイベント「SAOゲーム攻略会議2023 -CONNECTING-」が開催されました。

会場となったベルサール秋葉原には、午前中から大勢の『SAO』ファンが来場。豪華声優陣が登壇するステージイベントや、10月発売予定の最新ゲーム『ソードアート・オンライン ラスト リコレクション』の試遊体験を楽しんでいました。

ほかにも展示や物販などの見どころがあった本イベントですが、Moguliveでは今回、そのなかでも「ソードアート・オンライン Revenge of the Gleam Eyes」に注目。これまでにもXR分野で数々の体験型コンテンツを世に送りだしてきた『SAO』の、その最新作とも言えるMR/VR体験をレポートします。

『ソードアート・オンライン』を再現する試みは、これまで数多く発表されてきた

この10年間で数々のゲームがリリースされてきた『ソードアート・オンライン』シリーズ。家庭用ゲームやスマートフォン向けアプリはもちろん、原作がVRMMOを舞台にした作品であることから、VRコンテンツも以前からたびたび発表していました。

たとえば、日本IBMとコラボレーションしたVR体験型イベント「ソードアート・オンライン ザ・ビギニング」(2016年)や、バンダイナムコエンターテインメントとNTTドコモが制作したVRコンテンツ「ソードアート・オンライン レプリケーション」(2017年)。

VRChatで開催された「ソードアート・オンライン Synthesis -The Period of Alicization Project-」(2020年)では、VR機器があれば自宅から《はじまりの街》を訪れることができ、オンラインVRイベント「ソードアート・オンライン -エクスクロニクル- Online Edition」(2021年)では、ほかのユーザーと一緒に第75層ボスと戦うこともできました。

そして2023年。今回の記念イベントで新たに登場したのが、最新のMR技術を使った技術デモ「ソードアート・オンライン Revenge of the Gleam Eyes」。その名のとおり、第74層ボス《ザ・グリームアイズ》が登場する体験型コンテンツです。

指の動きだけで『SAO』のメニューが開ける! MR技術ならではの新鮮な体験

「ソードアート・オンライン Revenge of the Gleam Eyes」のコーナーが設けられていたのは、イベント会場であるベルサール秋葉原の2階奥。実際に体を動かすタイプの体験型コンテンツということもあってか、かなり広めのスペースが確保されていました。

荷物を預けて、カーテンで遮られた奥の空間へと進むと、まずはスタッフさんの案内にしたがってヘッドセットを装着。ここで頭にかぶるのはナーヴギアではなく、Meta Quest Pro。Meta社のハイエンドヘッドセットであり、VRだけでなくMR機能を搭載しています。

ちなみに、MRは「Mixed Reality」の略。日本語では「複合現実」と訳されるように、リアルの空間の上にCGを合成して表示する技術です。これにより、自分が3Dモデルの後ろに回り込んだり、モノを持ったりも可能。『SAO』で言えば、『オーディナル・スケール』に登場する情報端末「オーグマー」が一番近いでしょうか。

さて、ヘッドセットを装着して準備ができたら、いざリンク・スタート!

目の前には会場のリアルの風景がヘッドセット越しに見えますが、ゲームの世界に飛び込む演出があり、左上には『SAO』作中で見慣れた黄緑色のHPゲージも表示されています。さらに両手を目の前にかざすと、自分の手に重なるようにして、指ぬきグローブを装着したCGの手が表示されるではありませんか! ――すごい! この時点でワクワクする!

この試遊体験で戦う相手は、第74層ボス《ザ・グリーム・アイズ》。

フードをかぶった案内人の説明を要約すると、「この10年間、新しいゲームがリリースされるたびに討伐され続けてきたザ・グリーム・アイズが、積年の恨みを晴らすためにこの会場を狙っている」とのこと。――え? そんなギャグみたいな……え!? そんな感じなんですか!?

(MRパートの案内人さん。ゲームのNPCのような口調と演技で、プレイヤーを作品世界へと没入させてくれていました)

キービジュアルもロゴもカッコいい試遊体験コーナーであるにもかかわらず、展開が意外とメタい……!

でも言われてみれば、ゲームの中で散々倒され続けるのみならず、作品によってはチュートリアル的な立ち位置で倒されていた気もする、ザ・グリーム・アイズくん。第75層ボスのスカル・リーパーと比べると、なかなか不憫な存在に感じてきましたね……。

気を取り直して、体験を進めていきましょう。案内人から言われるとおりにメニュー画面を開いて、クエストを受注します。

『SAO』で「メニューを開く」と言えば……そう! 人差し指を上から下へとスライドする、あの動作! 動かした途端、これまた見慣れたメニューが表示されたのを見て、テンションが上がらずにはいられません。

そういえば、前述の「レプリケーション」(2017年)でも同様のギミックはあったものの、その時は「手に持っているコントローラのトリガーを押しながら手を下にスライドさせる」という動作だったそう。それが今回は、コントローラーを持たずに、指の動きで開けるようになったわけです。たった数年でここまで進化したんですね……!

さらに、メニューのアイテム欄から「資料」を選択すると、無数のディスプレイが周囲の空間に浮かび上がります。

そこに映し出されていたのは、これまでにリリースされた『SAO』のゲームの数々……と、それぞれのゲーム内で無慈悲にも倒されまくるザ・グリーム・アイズの姿。――うん、これは恨まれても仕方ない。でも、これからまた倒されに行くんですよね……。

(まるでザ・グリーム・アイズのメモリアル写真集のよう)

そうやってザ・グリーム・アイズに思いを馳せていると、近くの壁を突き破るようにして「ご本人」が登場。左側の壁を破壊し、周囲に瓦礫をぶち撒けて、右側のエリアへと去っていきました。

これが思っていたよりド迫力! デカい! 強そう! 現実の会場の風景が見えるMR体験だからこそ、そこに現れたモンスターの異質感と大きさが際立って感じられました。

そのままグリームアイズを追うのかと思いきや、その前に戦闘前の準備タイム。

見れば、テーブルの上にはポーションやコイン、転移結晶といったアイテムなどが置かれており、物によっては「持つ」こともできるようです。

(写真で見ると、テーブルだけが置かれた殺風景な空間ですが……)

(ヘッドセット越しに見ると、大きな樽やアイテムが!)

(なぜか第1層ボス《イルファング・ザ・コボルドロード》のデジタルフィギュアも)


(ポーションは手に持って……)

(飲むこともできる!)

実際には何も掴んでいないのに、手を近づけて「握る」ような動作をすると、ポーションを手に持って、さらに口元に近づけると「飲む」こともできる。一見するとなんでもない動きですが、「コントローラーもなしに物(データ)を持てる」のはなんとも不思議な感覚。想像以上の実在感があり、VRに慣れている身からしても新鮮に感じる体験でした。

ソードスキルの「原作再現」ができるVR体験は初!?

いよいよザ・グリーム・アイズとの戦闘です。さすがに素手で戦うわけにはいかないため、その場で武器――もとい、コントローラーを手渡されます。この時、コントローラーは両手に持っていますが、剣が表示されているのは右手だけ。「黒」を基調とした、キリトのトレードマークでもある片手剣《エリュシデータ》ですね。

ヘッドセットを装着したまま右手のスペースへ移動すると、大きな扉が出現。見上げるほどのサイズ感に圧倒されつつ、扉を開けてフロアボスの待ち受ける空間へと進みます。

(キービジュアルの描かれた壁で仕切られているのが、先ほどまでいたMRパートのスペース。こちらの広い場所に移動し、現れた大きな扉を開くと、VRパートに突入します)

扉を開けると、そこはもう『SAO』の世界(※このタイミングで、ヘッドセット越しに見える空間も「MR」から「VR」へと切り替わっています)。

今まで見えていた会場の風景は消え去り、目の前に映るのは広大なボス部屋と、そこに佇む1人の少女。血盟騎士団の鎧に身を包んだ「閃光のアスナ」の姿が、そこにはありました。アスナから促されるままメニューを開き、ザ・グリーム・アイズと戦うためにパーティーを組みます。――オレが、オレたちがキリト、ってコト!?

アスナとのやり取りを終えると、《The Gleam Eyes》の文字が大きく表示され、グリームアイズが登場! 複数のHPゲージを持つ、恐るべきボスモンスターが――10年間にわたって倒され続けた恨みを晴らすべく――こちらへと襲いかかってきます。

戦い方はシンプル。ザ・グリーム・アイズが大剣で攻撃してきたら、右手の剣を構えてパリィ! 攻撃を弾き返してできた隙で、おなじみの「ソードスキル」を発動して反撃します。詳しくは後述しますが、個人的にはこのソードスキルこそが、今回の体験の肝であるように感じました。

ソードスキルの発動方法は、「目の前に表示されるガイドにしたがってポーズを取り、トリガーを引く」というもの。うまく発動できると剣の色が変わり、発動音が鳴ったら、目の前に浮かび上がる斬撃のエフェクトのガイドに沿って剣を振るいます。

(剣を構えて、トリガーを押したら……)

(勢いよく斬りかかる!)

体験中に使えたのは、《ソニックリープ》《バーチカル・アーク》《ホリゾンタル・スクエア》の3つの片手剣スキル。どれも原作に準拠した動きになっているらしく、しばらく使っていなかった(アニメやゲームで見ていなかった)筆者は、少しだけ焦る場面もありました。

というのも、ガイドが表示されているので斬り方はわかるのですが、「ホリゾンタル・スクエアって何連撃だっけ!?」と一瞬固まってしまった格好です。覚えていなくても問題なく発動できますが、覚えていればもっと爽快に動けたんだろうなあ……と。ちなみに《ホリゾンタル・スクエア》は水平斬りの4連撃です。そういえば「スクエア」でした。てへ。

そしてザ・グリーム・アイズ戦といえば、もちろん原作の「アレ」もあります。一定のダメージを与えたところでアスナとスイッチし、メニューを開いて二刀流スキルに変更すると、左手に《ダークリパルサー》が出現。

――そう、本編よろしく、《スターバースト・ストリーム》を発動できちゃうんです! オレがキリトだ!!

(アスナとスイッチしたタイミングで……)

(アニメ同様にメニュー画面を操作して……)

(二刀流スキルを発動!)

おなじみの16連撃二刀流スキルですが、このスキルに関しては、発動後はどのように動いてもOK。自由に、思うがままに、カッコよく、両手の二刀を叩き込んでやりましょう。

筆者が体験したときは、ほかのスキルと同様に斬撃のガイドが出るのかと思っていたので、ここでも一瞬固まってしまいました。ここにきてアドリブとは……いやー、最高ですね!!

《黒の剣士》に憧れて、何度もアニメを見返して、《スターバースト・ストリーム》の動きを真似しようとしたことのある人へ。――その経験を活かせる機会が、ついにきました。クロス切りのモーションしか覚えておらず、あとはフィーリングで両手をぶん回していただけの筆者ですらめちゃくちゃ爽快に動けて楽しめたので、完全再現ができたら、きっと最高に気持ちいいはず。

もし今後のイベントなどで機会があれば、ぜひ覚えて行って、実践してみてください。

(ありがとう……ザ・グリームアイズ……次の10年もよろしく!)

『SAO』という作品を通して、技術の進歩を体感する

ザ・グリーム・アイズを撃破し、最後にスコアが表示されたところで、体験は終了。筆者はSSランクでした(SSSが最高ランク?)。スコアに関してはおそらく、ソードスキル発動時のポーズの正確性や、斬撃の速度などが考慮されていたのではないでしょうか。獲得できる称号もランクによって違ったようです。

終わってみればあっという間の体験でしたが、個人的には期待以上! 「準備パートと戦闘パートを分けて、それぞれでMRとVRを活用した体験ができる」という点も新鮮でしたが、過去に『SAO』という作品に魅了された経験のあるファンとしては、何よりも「自分の体を動かしてソードスキルを発動できるのがたまらん!」というのが正直な感想です。

もちろん、過去の『SAO』の体験型コンテンツでも同様のボス戦はありましたし、実際に体を動かし、剣を振るうタイプの体験もありました。筆者自身、2021年のVRイベントではスカルリーパー相手に剣をぶん回して楽しんでいた記憶があります。ですが、ここまで原作のシステムに近い形で「ソードスキル」を発動できる体験は、おそらく今までなかったのではないでしょうか。

コントローラーのボタン1つで発動するのではなく、自由に剣を振り回すのでもなく、「スキルごとに決められたポーズを取る」ことで発動する、ソードスキル。『SAO』という作品ならではのギミックを、原作に限りなく近い形で、この記念イベントの場で実現し、実際に“発動”することができたのは、いちファンとしても記憶に残る体験となりました。

(※原作では「発動後は自動で体が動いて攻撃してくれる」というシステムだったかと思いますので、厳密には「原作そのまま」とは言えないかもしれません……が、でもせっかく体を動かせるVRの体験ですし、やっぱり剣は振り回したいですよね!)

MR/VR技術を活用したコンテンツとして、想像以上に刺激的だった「ソードアート・オンライン Revenge of the Gleam Eyes」。

2023年になってもなお『SAO』という作品を通じてこのような体験ができることを嬉しく思いますし、早くも「次」が楽しみでなりません。フルダイブVRをプレイできる日はまだまだ遠そうですが、その実現につながるかもしれない試みを、『SAO』を通して体験できている――そう考えると、ちょっとワクワクしてきませんか?

今回は取材ということもあって遠慮がちなプレイになってしまったので、もしまた別のイベントなどでこの体験をできる機会があれば、全力で体を動かし、キリトのごとくポーズを取りながら、ザ・グリーム・アイズを倒しに行こうと思います。

――スターバースト!! ストリーム!!!

公式サイト:https://sao-game.jp/10th/event/

X(旧Twitter)アカウント:https://twitter.com/sao_gameinfo


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