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VRゲーム・アプリ 2023.07.04

3Dスマブラ風VRゲーム『QUANTAAR』レビュー スナック感覚で遊べる手軽さがポイント

2023年6月7日にリリースされた『QUANTAAR』は、3Dスマブラ風VRゲームである。公式サイトやストアページにVRパーティ大乱闘ゲーム(VR Party Brawler)との記載があり、本作の基本ルールが「攻撃を受けると吹っ飛びやすくなり、ステージ場外に落下したら負け」であることから「スマブラ風ゲーム」と呼んで差し替えないだろう。

スマブラ風ゲームはここ数年のゲーム業界においてトレンド(『Multiversus』『LEGO Bralws』『Brawlhalla』など)であるものの、3Dのフィールドでスマブラ風のルールを採用した例はめったになく、それがVRゲームであることはもっと珍しい。

本作は基本無料であり、対応機種はPCVR(Steam)、Quest(App Lab)とPICOとなっている。なお、本作は操作にボタンとスティックが必須であるため、HTC VIVEのコントローラ(VIVE Wands)はサポートされない。公式でサポートするコントローラはVALVE INDEX、Meta Questシリーズ、PICO 4(PICO Neo 3)であることに注意しよう。

QUANTAARの駆け引きのポイントは?

スマブラ風ゲームへの理解を深めるため、改めてルールをおさらいしよう。ゲームの目的は対戦相手をステージの場外に吹っ飛ばす、あるいは落下させることだ。対戦相手を攻撃することで吹っ飛びやすさを蓄積させることができ、対戦相手は攻撃を受ければ受けるほど吹っ飛びやすくなる。場外に吹っ飛んだプレイヤーがいかにステージに復帰するか、あるいは敵プレイヤーの復帰を阻止するかがスマブラ独特の駆け引きだ。

対戦のとっつきやすさの工夫として、スティックの方向と攻撃ボタンの同時押しのみで、すべての技を出すことができる。また、ダメージによって吹っ飛び方が異なっているので、コンボ技を出しづらくなっている。カジュアルにパーティゲームとして楽しんでもよいし、ガチンコで対戦ゲームとして技を磨いてもよい。

『QUANTAAR』はスマブラの基本ルールをそのまま引用しているが、最大の違いはステージが3次元に広がっていて、キャラクターも3次元に移動できることだ。本作はVRゲームだが、多くのVRゲームのように一人称視点ではなく、キャラクターの背後を追従するか俯瞰する三人称視点となっている。この点さえ覚えれば、なじみ深いルールと操作性のおかげでプレイしやすい。

『QUANTAAR』はフィールドが3D空間になったことによりスティックの方向で「技を上下左右に使い分ける」という概念がなくなった。スマブラはほとんどのキャラクターに各技の方向差分を含めて19個の技が用意されているが、『QUANTAAR』で使える技は8種類(トリガー押し込みの単発攻撃、連打攻撃、空中攻撃、長押し攻撃の4種類が左右トリガーで異なる)と数が絞られている。

敵の攻撃を避けながら連打攻撃をしているだけでも試合に勝てるし、キャラクターの技の種類を覚えれば、相手を意図した方向(空中に打ち上げるか、メテオで落下させるか)に狙って吹っ飛ばせるようになる。3Dスマブラというゲーム性が新しくて類似作のキャラクターが参考にならないだけに、技の数が少ないのは、かえってありがたい。

また、本作は最後の切り札による逆転を重視している。プレイヤーは敵プレイヤーを攻撃することで必殺技ゲージをためることができ、部分的な消費で必殺技を、ゲージ満タン時の消費で最後の切り札を出すことができる。キャラクターごとにムラはあるものの、他の敵プレイヤーたちをほぼ撃墜できるのだ。他プレイヤーを攻撃することで相手の必殺技ゲージも削られるので、必殺技ゲージを巡って攻撃ターゲットを選ぶ余地も生まれる。

アイテムを拾ってプレイヤーキャラクターのみならずプレイヤー同士が直接妨害しあえるなど、パーティゲームらしく状況をひっかきまわすシチュエーションも多彩だ。

しかし、本作の敵を吹っ飛ばす爽快感は、ある一点が足りていない。敵に攻撃をヒットさせたときの効果音やエフェクトはしっかりと用意されていて一定の爽快感が得られるものの、プレイヤーの視界外にキャラクターが吹っ飛んでしまい、敵を仕留めたときのエフェクトが見えないことが頻発する。ステージ全体をもう少し遠くから俯瞰できる手段があれば、相手を仕留めた瞬間を見届けられて手ごたえを感じられやすくなるだろう。

あと少しの視認性と爽快感の改善さえ入れば、本腰を入れて対戦できるゲームとして完成するはずだ。ただ、現時点でもスナック感覚でプレイできるパーティゲームとしての資質を十分に備えている。

手持ち無沙汰にさせないソーシャル機能が優秀

本作は数あるVRゲームの中でもロビー機能がひときわ優秀だ。昨今のPvPゲームで見られるもっともポピュラーなロビー機能が一通り揃っており、ログインボーナスや装備、ショップなどの要素がストレスなく利用可能である。

また、本作のロビーはプレイヤーが一人で暇をつぶしたり、複数人でダーツやボウリングができるスペースが用意されている。VRゲームは「スマホを見ながらプレイ」ができないので、手持ち無沙汰な状態が普通のゲームよりも苦痛に感じるし、試合のマッチングの最中の空いた時間を解消する試みは先進的だ。筆者がフレンドとプレイした際にも、試合と同等なぐらいロビーのアクティビティを楽しめた。

手の出しやすさが魅力、視認性については今後の改善に期待

ただ、本作はリリース直後ということもあって、調整不足な点をいくつか抱えている。本作のQuest版は急激なフレームレートの低下が頻発するためVR酔いが起きやすいし、一部キャラクターのエフェクトなどがPC版とQuest版で描画処理が異なり、Quest版の視認性が著しく落ちている。現状のQuest版でのプレイはオススメできない。

また、キャラクターが空中に浮いているときに足場との距離感がつかめずプレイヤーもCPUも足場を踏み損ねて落下ミスすることが多いし、場外からどれだけ吹っ飛ぶとアウトになるのかの判定も描画されないため、何を基準にしてミスを判断すればいいのかがわからない(本作は3Dのステージかつカメラなので、スマブラ本家のような”画面外”が存在しない)。プレイヤーの判断に直結する部分の描画が不足しているのは、対戦ゲームとして問題がある。

2023年6月時点では4人対戦と2vs2のチーム戦、サッカーの3つが収録されており、後日にカスタムマッチも実装予定。カスタムマッチが実装されれば、そうとう融通が効くようになるはずだが、できればエフェクトや足場など全体的視認性の改善を優先してもらえると、本作のとっつきやすさが増すだろう。

基本無料であるため手は出しやすく、3Dスマブラという斬新なコンセプトやVRゲームのロビーに関心のあるプレイヤーにとって本作は学びが多いはずだ。

公式サイトはこちら。
・Quest版
・Steam版


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