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話題 2022.12.26

「アイドルマスター」初のカンファレンス開催 アイドルプロデュース体験と複合現実が生み出す、新たなアイドル像に迫る

12月26日(月)、「アイドルマスター」シリーズのカンファレンス「PROJECT IM@S カンファレンス」が開催されました。

シリーズ初となるカンファレンスでは、2025年に迎える25周年とその先に向けた、新たなIP軸戦略「PROJECT IM@S 3.0 VISION(サードビジョン)」が発表されました。

カンファレンスでは、新プロジェクト「PROJECT IM@S vα-liv」も発表されるなど、「アイドルマスター」シリーズの大きな拡大を予感させる内容となりました。本記事にて、その概要をお伝えします。

新たな「アイドルプロデュース体験」を創造する「3.0 VISION」

最初に、株式会社バンダイナムコエンターテインメント 第3IP事業ディビジョン・ディビジョン長 執行役員の田中快氏が登壇。バンダイナムコの「IP軸戦略」について触れながら、新IP軸戦略「PROJECT IM@S 3.0 VISION」を発表。合わせてイメージPVが公開されました。

イメージPVでは、これまでの「アイドルマスター」シリーズの歩みを振り返った後、「3.0 VISION」のイメージとして、テレビのお天気コーナーに出演する天海春香さんや、ランウェイを歩く星井美希さんに伊吹翼さんなど、「現実のワンシーン」に現れるアイドルの姿が映されています。スマートフォンから仮想空間のようなものへアクセスし、ライブ観覧(あるいはプロデューサーとしての出勤?)に参加する、現実の人々の姿も描かれました。

次に、バンダイナムコエンターテインメントの第3IP事業ディビジョン 765プロダクション・ゼネラルマネージャーの波多野公士氏が登壇。今回のカンファレンスのキモとなる「PROJECT IM@S 3.0 VISION」について、具体的な発表が行われました。


(スタジオに映される、シリーズに登場してきた300人超のアイドルたち)

「アイドルマスター」シリーズは、現時点で300人を超えるアイドルが存在します。波多野氏は、アイドルを育てていく「アイドルプロデュース体験」が、シリーズのコアな価値であると強調しました。

シリーズを展開する「PROJECT IM@S」の歩みにも触れられました。2005年から2009年にかけては「ゲーム作品としての確立」、続いて2009年からは「2nd VISION」として「メディアミックス・シリーズ拡大」のフェーズだったと、これまでの変遷について説明がなされました。

そして2023年2月、東京ドームで開催されるシリーズ合同LIVE「THE IDOLM@STER M@STARS OF IDOL WORLD!!!!! 2023」をもって新たなフェーズ「PROJECT IM@S 3.0 VISION」へ移行する、とあらためて発表されました。

「3.0 VISION」のアクションスローガンは「CRE@TE POWER WITH YOU ! あなたらしさが、きっと誰かの力になる。」。これを「アイドルマスター」シリーズの展開における共通指標に設定するとのことです。軸となるのは、「アイドルプロデュース体験」「複合現実」です。

「複合現実」の具体的な方策は2つ。一つは7月に発表された「“MR”-MORE RE@LITY-プロジェクト」です。シリーズに登場するアイドルをゲームの中に留めず、様々な領域での「アイドル活動」を推進するこのプロジェクトが、さらに強化されていきます。


本プロジェクト発表以後、企業や自治体とのタイアップが進みつつあることに触れつつ、次なるステップとして2023年に「765 MILLION ALLSTARS」のアイドルによる興行イベント「THE IDOLM@STER 765 MILLIONSTARS ”MR”フェスティバル(仮称)」を開催することが発表されました。

さらに、情報掲載サイト「アイドルマスター OFFICIAL WEB」をリニューアルし、新たな”バーチャル拠点”となるアイドルマスター ポータルを開設することが発表されました。


「アイドルマスター ポータル」は、「全てのプロデューサーが行き交うバーチャルオフィス」というコンセプトのもと、シリーズの情報へのアクセスはもちろん、プロデューサー同士の交流も見据えた場を目指すとのこと。カンファレンス開催日である12月26日に早速ローンチされ、UIが大幅にアップデートされたほか、バンダイナムコIDを導入により、プロデューサー一人ひとりにあったパーソナライズ機能が提供されるとのことです。

なお、「アイドルマスター ポータル」の発表に際しては、「デジタルツイン」「Web3.0型」といったキーワードも登場しました。こうしたキーワードが、「アイドルマスター ポータル」をいわゆるメタバースとしての発展や、ブロックチェーン技術の導入を示唆しているのかは、今回の発表の範囲では明かされていません。

さらなる展開拡大への一歩。「vα-liv」が目指す先とは

そして、さらなる展開拡大に向けた取り組みとして、「アイドルマスター」シリーズ最新プロジェクトPROJECT IM@S vα-liv(ヴイアライヴ)が発表されました。

「PROJECT IM@S vα-liv」は、ライバー(配信者)がアイドル候補生となり、配信活動を通してアイドルデビューを目指すプロジェクトです。視聴者全員がプロデューサーとなり、配信を通して候補生をデビューへ導くという、新たな「アイドルプロデュース体験」になるとのことです。

概要を聞く限りでは、「アイドルマスターシリーズがVTuber業界参入」とも捉えられます。質疑応答の時間では、この件についていくつか質問が投げかけられました。

「既存ブランドとの関係はどのようなものか」という質問に対しては、合流はまだ未定であるものの、ゆくゆくは「研修生制度」のような立ち位置を目指したい、とのこと。活動範囲は「ライバーとしての配信活動」のみとなる一方、特定のプラットフォームを名指しはせず、「どこで配信するか」は明言を避けました。

「これはVTuberなのか」「キャストとキャラクターが共存する形なのか」という質問に対しては、「まさに現在議論中です」という回答がなされました。筆者所感ですが、これまでの「アイドルマスター」シリーズの魅力と、バーチャルタレントが持つインタラクティブ性とで、どのようにバランスを定めるべきか、言葉を慎重に選んでいた印象です。

「PROJECT IM@S vα-liv」のみならず、社会貢献への取り組みとして、「アイドルマスター シャイニーカラーズ」と環境省によるコラボが行われることも発表されました。一連の展開拡大は、「アイドルキャラクターからストリーマーへ」「エンタメから社会貢献へ」というような、これまで「アイドルマスター」が立っていた領域から大きく飛び出す一歩と鳴る、と捉えられるでしょうか。

ゲームを飛び出し「アイドル」へ

今回のカンファレンスで主に提示されたのは、「アイドルマスター」シリーズ全体に定められた「今後の事業展開」と言えるでしょう。その中核となる方向性は、「アイドルを現実にも進出させる」と思われます。「“MR”-MORE RE@LITY-プロジェクト」を皮切りに、「アイドルマスター」のアイドルを現実へ押し出していく……そんな動きが予感されます。

そしてこのカンファレンスに、「アイドルマスター」の看板ともいえる天海春香さんが登場していたことが、「3.0 VISION」の具体的事例と言えるでしょう。カンファレンス開始前に、参加者へ向けての諸注意を展開する姿は、もはや「キャラクター」ではなく「現実で活動している存在」と表現するのが適切でしょう。

「PROJECT IM@S vα-liv」は新機軸ぶりに目が行きますが、実は2020年7月に、星井美希さんがSHOWROOMにて配信を行うという大きな先例があります。

この配信において、終始「765プロの星井美希」というスタンスを守り、決して「VTuber星井美希」ではありませんでした。「PROJECT IM@S vα-liv」が目指す方向性がどうなるかはまだ不明ですが、こうした「見せ方」を「アイドルマスター」シリーズは大切にしてきたことは、念頭に置くべきでしょう。

いずれにせよ、「3.0 VISION」への突入によって、「アイドルマスター」はさらに現実へと飛び出していくかもしれません。「ゲームのアイドル」から「アイドル」へ。さらなる拡大へと転じる、「アイドルマスター」シリーズの今後に要注目です。

「PROJECT IM@S カンファレンス」に関する発表については、バンダイナムコエンターテイメントによる以下プレスリリースもご参照ください。
https://www.bandainamcoent.co.jp/corporate/press/top/single.html?q=xaXDQ6wFG

©窪岡俊之 THE IDOLM@STER™& ©Bandai Namco Entertainment Inc.


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