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話題 2023.10.18

Niantic×カプコンの共同プロジェクト『Monster Hunter Now 』の向かう先は? プロデューサーインタビュー

9月14日、ついに始動した位置情報ゲーム『Monster Hunter Now(モンハンNOW) 』。これまで「ポケモンGO」や「ピクミンブルーム」など、人気コンテンツの位置情報ゲームを制作してきたNianticと、「モンスターハンター」を生み出したゲームメーカーカプコンの共同制作ということもあり、事前からの注目度は非常に高く、事前登録者数は300万人以上を突破。リリース後も大きな盛り上がりを見せている。

大きなポイントとなるのは、そのゲーム性である。従来の「モンスターハンター」シリーズとは違い、プレイヤーは現実のフィールドを歩きながら、モンスターを見つけ、アクションフェーズでハントすることになる。またARモードで、現実の風景にモンスターをリアルに出現させる表示が可能で、モンハンの世界が現実に侵食してきたような体験となっている。

今回は、Niantic プロデューサーの大隅栄氏に、ゲーム企画成立の経緯から制作上のこだわりについて、詳しい話をお聞きした。

積み重ねた4年間の試行錯誤

――今回は、カプコンとの共同制作で実現した企画ですが、この企画自体はどれくらいの時間をかけて制作されたのでしょうか?

大隅:
私は今回のプロジェクトの立ち上げメンバーとして、企画の初期段階から関わっていました。カプコン側に企画を提案したのが2019年頃で、そこで話し合われたコンセプトをもとに、4年ほど制作を続けていた次第です。その後まもなく、コロナ禍がはじまった影響で、制作体制をリモートメインにするという抜本的に変更しなければならない苦しい状況もありましたが、そういった意味でリリースまでこぎつけられたことは非常に感慨深いものがあります。

――4年間でようやく完成にまでたどり着いたときの心境はいかがでしたか?

大隅:
この4年間で実に色々な試行錯誤がありまして……少しずつ積み上げてきたものであったり、うまくいかずに作り直してきたものであったりと、そういったものが熟成され、磨き上げられた作品なので、チーム全体の苦労の証だなと思っています。

リリースまでは不安もありましたね。我々が一番恐れていたのは「モンスターハンター」ファンの方々から「これはモンハンじゃない」と言われることでした。また、位置情報ゲームファンの方にも満足いただけるのかといった心配もあり、両方から受け入れられるにはどうすれば良いか頭を悩ませていました。

幸いなことに、事前のβテストでユーザーさんから、多くのポジティブなフィードバックや応援をいただいたおかげで、公開までこぎつけられたのだと思います。その中には「散歩が楽しくなった」「外で遊びたくなった」といった感想もあり、そういったものが開発の励みになりました。

「モンスターハンターの位置情報ゲーム」のアイデアは自然と湧き出た

――先ほど、企画の初期段階から関わられているというお話がありましたが、最初に企画が立ち上がった際の経緯について、あらためてお聞かせいただけますか?

大隅:
ナイアンティックは、ご承知の通り「Ingress」や「ポケモンGO」といったプロジェクトをこれまで進行してきましたが「次にどういったものを発表したいか?」といった話し合いをチームメンバーと繰り返す中で「『モンスターハンター』の位置情報ゲーム」というアイデアが自然と湧いてきました。社内には、モンハンを常日頃から遊んでいる人が多かったことも要因ですね。

「(『モンスターハンター』を)外に出かけて誰かと協力しながらプレイするのは、とても楽しいだろうね」「みんなで狩りに成功したらハイタッチしてみたい!」という直感的なイメージが元になっています。それこそ、すでにコンセプトをまとめた企画書を用意しているメンバーも何名かいましたね。そういった奇跡的なタイミングで、みんなが「モンハンをやりたい」となったことで、今回の企画が実現したんだと思います。

――当時、企画を提案した際、カプコン側の反応はいかがでしたか?

大隅:
こちらで生まれた原案を手に、カプコンさんを訪問したところ、「いいですね! ぜひやりましょう!」と、その場でご快諾いただけましたね。もともと、カプコンさん側も位置情報ゲームにとても関心を持たれていたこともあり、意気投合したというかたちですね。

――これは余談ですが、編集部でもタイトルの発表が告知される事前のタイミングで「きっとモンハンが来るだろう」と、盛り上がっていました。

大隅:
やはり、そうだったんですね(笑)。あらためて「モンスターハンター」と「位置情報ゲーム」のふたつの組み合わせについて考えてみたときに、「(モンスターの生息する)生態系を現実の世界に再現する」という表現をできる点で、相性が良いだろうと思っていました。

また、AR技術を用いて、カメラで迫力のあるモンスターの姿を捉えられるといったところも面白いポイントだろうと。例えば、鳥取砂丘のような広大な砂漠地帯で、ディアブロスを見つけたときの感動は大きいでしょうね。

――「ポケモンGO」でも、街中でポケモンを見つけたかのようなAR写真を投稿する人が多数見受けられますが、「モンハンNOW」でも、そのように楽しむユーザーが増えていきそうですね。

大隅:
ゲーム内の地形については、日々ランダムに変更する仕様となっているのですが、川沿いや海沿いなどの地域では、比較的そのあたりに生息していそうなモンスターが出現しやすい傾向となっています。なので、ARでの写真撮影を楽しむ際に、現実の地形とマッチしたモンスターの写真を撮りやすくなっています。そういった点も楽しんでいただければ。

もちろん、日替わりでマップの景色は変更されるので「今日は家の回りが森林エリアだから、少し足を延ばして、砂漠エリアまで行ってみよう」といった楽しみもあるかなと思います。

――また、今作では協力プレイできる点も強くプッシュされている印象です。

大隅:
そうですね。もちろん、1人でも十分にお楽しみいただけるのですが、共同ハンティングが2人、3人、4人と増えていくにつれて、よりプレイを楽しめて、喜びを分かち合えるようにしたいと思っていました。「自分だけでは倒せないけど、仲間がいれば……」といったシチュエーションでも、モバイルゲームなら気軽に集まりやすいのがポイントですね。開発側としては、友だちや会社の同僚などと休み時間に集まって、一緒に遊ぶ姿というのをイメージしていました。

また、このゲームでは半径200m以内にいるプレイヤーから「ひと狩りいこうぜ」とお誘いがくるようなシステムになっています。さらに、現実側での比較的大きい公園や広場は、モンスターが多く出現しやすい傾向にあります。そのため、例えば、自分ひとりで公園に散歩に向かった際に、どこかの誰かから狩りのお誘いが届くかもしれません。そういったハンター同士の偶然の共同プレイといったものも楽しみのひとつとなっています。知らない人にいきなり「一緒に狩りをしませんか?」と声をかけるのは大変だと思いますので(笑)、顔が見えなくても、その場にいれば自然とプレイに参加できるといったシステムも、意図的に作りました。

「モンスターとの立ち回りの駆け引き」が本作のコア

――先ほど「モンスターハンターファンに受け入れられるか?」に注意していたとの話がありましたが、今回のゲームを制作するにあたって、特に「モンハンらしさ」を出そうと注力したのは、どういったところでしょうか?

大隅:
開発当初にチーム内で議論して、まず注力すべきポイントとなったのは、モンスターのバトルの部分でしたね。もともと、モンスターハンターシリーズは、とてもアクション性が高く、一体を狩るのにも、武器や防具の相性を事前に考える戦略性が必要です。そのため、ボタンを連打していればモンスターを倒せるといった作業ゲームにはしたくありませんでした。モンスターの行動パターンを学んで身をかわしたり、回り込んで尻尾だけを集中的に攻撃するといった立ち回りの駆け引きを再現するべきだろうと。

なので、モンスターの行動パターンを覚えてもらえるようなゲームデザインには注力しました。例えば、モンスターの予備動作をちょっと長めに見せることで「これから攻撃がはじまる」と勘づかせるようにしたり、大技の前にはモンスターの身体が発光するような仕様にしたりといったことですね。

その一方で、外出時に遊ぶゲームなので、モンスター一体を狩るのに何時間も費やす仕様にはできません。なので、バトルに制限時間(75秒)を儲けて、狩りをよりスピーディーなものに濃縮しました。そのため、原作にあった一部アクションに関しては省略したものもありますが、ゲームのコアとなる駆け引きの部分に関しては、その魅力を残せたのではないかと思います。

目指すは、シリーズの垣根を超えたモンスターのオールスター集合

――これから「モンハンNOW」を遊ばれるプレイヤーの方に楽しんでもらいたいポイントをお聞かせください。

大隅:
「モンスターハンター」シリーズのファンの方にとっては、今まで自宅のテレビ画面で遊んでいた世界が、外の世界にまで広がったという体験を楽しんでほしいですね。これまでオンラインでプレイしていた仲間たちと一緒に外に出掛けるといったような、みんなで集まるきっかけになってくだされば嬉しいです。

また、初めてモンスターハンターに触れるという方には、このゲームを通して、シリーズの魅力を知っていただければ良いなと思っています。これまで「なんだか難しそう」と、二の足を踏んでいた方でも、気軽に触ってもらいやすいゲームになっていますので、とりあえず試してみて、本作の魅力に気づいていただければ幸いです。チュートリアルやストーリークエストなども、迷わずにプレイできるような体験にしていますので、慣れはじめたら、お友達を誘って遊んでみてください。

――ありがとうございます。最後の質問です。今後「モンハンNOW」は長期的にサービスを展開していくことになるかと思いますが、現在はどういった目標を掲げて運営されているのでしょうか?

大隅:
ゆくゆくは「モンスターハンター」シリーズに登場した歴代のモンスターが続々と登場し、オールスターが集合してくるような作品にしていきたいと思っています。これが大きな目標のひとつですね。これは作り手側だけではなく、ファンの方にとっても興奮できる夢のある話なのではないかと思います。

毎月何かしらのイベントを実施したり、新規モンスターや新規武器の追加を予定しているので、そういった点を楽しみにしていただければ幸いです。今後もブラッシュアップしていきながら、サービスを展開していきます。

――ありがとうございました。

モンスターハンターNOW公式サイトはこちら。


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