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メタバース 2022.11.30

VTuberとメタバースに”革命”! モバイルモーションキャプチャー「mocopi」最速体験レポ

11月29日(火)、ソニーより発表されたモバイルモーションキャプチャーデバイスmocopiに驚かされた方は多いでしょう。

総重量50g未満のデバイスに、スマートフォンだけでモーションキャプチャーや動画録画ができてしまう手軽さ、そしてソーシャルVR「VRChat」にも連携可能で、価格は49,500円とこの手のデバイスとして安価。突如現れた「ソニーの本気」の威力は、一時Twitterトレンドに乗るほどでした。

では、その実力はどれほどのものなのか。MoguLive編集部は今回、発売前のmocopiを最速で体験する機会をいただきました。筆者の体験も交えながら、大注目の新型モーションキャプチャーの全容に迫ります。

イメージPVそのまま!? 小さなセンサーでアバターが自由に動く!

こちらがmocopiの核となるセンサーと装着用バンドです。

センサーは両腕、両足、腰、頭に装着し、対応部位ごとに色分けされています。6つとも専用ケースに収納可能。ケースには充電ケーブルが接続でき、収納も充電も困らない構造です。

1つのセンサーの重さは8g。ケースとはマグネットでくっつきます。大きさも相まって、ホワイトボードなどに貼り付けるマグネットのように見えます。

そして、各センサーと装着用バンドもマグネットで固定されます。一度装着されたセンサーは、装着バンド側のツメを押さない限り外れない仕組み。見かけよりも頑強です。

装着してもらった状態で実演してもらいました。まずは、専用アプリから「Virtual Motion Capture」へモーションデータを渡す使い方から。VTuberが3Dモデルを全身で動かす時の鉄板構成の一つです。



率直な感想を述べると、「めちゃくちゃ精度がいい」の一言に尽きます。担当者のハツラツとした動きが、アバターに見事に反映されていました。

映像だけでは「VIVEトラッカー」や、下手すれば専用スタジオで収録しているのかと見まごうレベル。モーションのおおまかなイメージは、先日公開されたリリースPVに非常に近いものと考えてOKです。

さらに、体験会場をグルグルと一周したり、挙句の果てには部屋から出て猛ダッシュしたりしても、動きをしっかり検知できているほど。「トラッキング範囲は無限か!?」と震撼するほどの自由な動きが、アバターへしっかり反映されていました。

ついに実現したQuest単騎のVRChatフルトラ

次に、「VRChat」との連携デモも見せてもらいました。構成は、mocopiとスマートフォン、そしてMeta Quest 2のみ。PC版ではなくQuest版のVRChatでの動作です。

大まかなVRChatとの連携の流れは以下の通りです。

  1. スマートフォンとMeta Quest 2を同一Wi-Fiに接続
  2. mocopiとスマートフォンと接続
  3. mocopiのアプリケーション側に、Meta Quest 2本体のIPアドレスを入力
  4. Meta Quest 2側でVRChatを起動し、モーションキャプチャーの入力を受付

技術的には「Avatar OSC」を利用しています。なお、本記事執筆時点ではベータ版のみ利用可能です。


しっかり動いていました。トラッキング精度はもちろんですが、なによりこれまで不可能だった「Meta Quest 2単体でのフルトラッキング」がしっかり成立していることに驚きを隠せません……!

連携までの手順も比較的シンプル。もちろん、身につけているのはとことん軽量なmocopi。頭部のセンサーも、キャリブレーションが成立すればどんな位置でも(なんなら頭頂部でも)OKとのことで、「Eliteストラップ」などを使っている場合でも問題なさそうです。

そして、普段mocopiを使って配信しているVTuberも、Meta Quest 2を買い足せばそのままフルトラッキングでVRChatデビューができるはずです。既存のVRChatユーザーにとどまらない恩恵が得られるでしょう。

どのように動いているのか? 実際に試しながら確認

では、実際のところmocopiの性能はどうなのか。筆者が実際に体験してみた様子を交えながら、技術的な話をしていきましょう。

まず、mocopiの全体的な装着の流れは以下の動画のようになっています。大きな流れはアプリ側でも案内があります。


筆者が装着した様子です。当たり前といえば当たり前ですが、重さは微塵も感じません。ヘタすれば装着していることを忘れてしまうほど。実際、ソニーの中でもテスト中の人が腰にセンサーをつけたまま帰宅しかけることがあるのだとか。

これらのセンサーは、スマートフォンとはBluetoothで接続されます。このため、一般的な衣服であれば、下に隠れていても問題なく通信できるとのことです。


(腕のセンサーをシャツの袖の下にしまってみる。もはやなにがあるか外からわからない)

このため、長袖・長ズボンを着て、パーカーのフードや帽子をかぶってしまえば、mocopiを装着したまま屋外に出てモーションを取得する、ということもできるのだとか。「街中でダンスを踊っていたと思ったらモーション記録中だった」という光景も夢ではなさそうです。

そして実際に動いてみました。今回はスマートフォンのアプリで動いている様子を確認しています。アプリ側ではアバターの動きをモーションデータか動画として記録できます。


デモの段階でだいぶ感動していたのですが、いざ自分で動かすと、まったく機材を装着している感覚がないのにモーションキャプチャーが成立していることに驚かされます。大きな動きから何気ない動きまで、アバターへしっかり反映されています。

装着していない関節などの動きも、センサーの位置からディープラーニングによる推定によって反映されます。その場でしゃがんだり、ジャンプしたりだってできます。

一方で、片足立ちしていると若干トラッキングがズレてくる場面も。これは、mocopiが「両足が接地している状態」をモーションの基本としているためで、ジャンプのように「一瞬だけ足が離れる」動作は問題ない一方、片足立ちのような「一定時間片足が離れ続ける」ような場面は、若干不得手なのだとか。

また、mocopiは加速度センサーを採用しているため、「大きくて早い動き」のほうが得意とのこと。太極拳のようなゆっくりとした動きよりは、ダンスなどの激しい動作の方が、アバターがより生き生きと動く傾向にあるようです。

一方で、加速度センサーの採用により、常に比較的安定したトラッキングができているのも事実。地磁気センサーを採用したモーションキャプチャーなどと比べると、「使用できる環境」の幅は広めです。

なお、センサーとスマートフォンの距離はかなり離れていてもトラッキングが成立します。広めの会議室の対角線上で最大まで離しても問題なし。ただし、これは電波が壁で反射しやすい室内だからというのもあり、屋外だともう少し有効距離は縮まるかもしれないとのこと。


(11月29日実施の株式会社HIKKY記者会見にて)

また、特殊な条件ですが、「様々な電波が飛び交う場所」でも動作に影響はあるかもしれないとのことでした。一例ですが、同日に実施された株式会社HIKKYの記者会見にて、mocopiのデモンストレーションが披露されましたが、開発中の「unlink」へのモーション転送であることに加え、多数の記者がWi-Fiにつなぐ環境下ということもあったのか、たまにトラッキングが飛ぶ場面も見られました。

とはいえ、普通に使う分にはまるで問題なし。こんなに手軽にアバターを動かせてよいのかという感動は、長らくVTuberもVRも見てきた身であるゆえに大きいものでした。

「当たり前のクリエイション」を3DCGにも――mocopi誕生の経緯を聞く


(写真右:相見猛さん、写真左:佐藤聡さん)

驚愕の一言に尽きるモーションキャプチャーデバイスを、今回ソニーが生み出したのはなぜか。ソニー株式会社の新規ビジネス・技術開発本部の相見猛さんにお話をうかがいました。インタビューには、同じく新規ビジネス・技術開発本部の佐藤聡さん――もとい、「Virtual Motion Capture」の開発者・あきらさんにも同席いただきました。

――今回、ソニーがメタバースも視野に入れたモーションキャプチャー領域に進出されたことに驚きです。mocopiの開発に至った経緯をお聞かせください。

相見:
ソニーは今年より、グループ全体でメタバース領域へ注力することを全面的に打ち出しています。各グループで様々な取り組みが展開されていますが、ソニー株式会社としての取り組みはプラットフォームではなく「クリエイター支援」に定めました。

カメラがあれば写真が撮れるような「当たり前のクリエイション」が、3DCGの領域ではまだ実現しているとは言えません。だからこそ、複雑さも排除したシンプルなデバイスとアプリケーションを展開し、多くの人に3DCGを使ったクリエイションや、アバターを介したコミュニケーションを広めたいと考え、mocopiの開発に踏み込みました。

――mocopiのメインターゲットはどのように設定されているのでしょうか?

相見:
まず、アバター・3DCGを用いるクリエイターでもあるVTuberさんに利用いただきたいですね。その延長線上に「みんなが当たり前にアバターを使う時代」があると考えており、私たちはそれを「メタバース」と考えています。なので、最終的な「エンドユーザーの数」でいうと、VRメタバース利用者の方が多くなるかなとも考えています。

――VRChatとの連携にも非常に驚かされました。どのような形で実現したのでしょう?

相見:
あるタイミングで、VRChat社のヘッドクォーターとカジュアルトークをする場面があり、そこからCTOの方とも話がつながりました。VRChat社も、mocopiに対してものすごく好意的なリアクションをしていただいて、そこからエンジニアリングレベルで共同で開発を進める形になりました。

――発売後のmocopiはどのように発展していくか、ロードマップなどは決まっているのでしょうか?

相見:
まだ公にできないのですが、本日(11月29日)発表された株式会社HIKKYの「unlink」(※)との提携、のようなことが予定されています。mocopi自体も今後アップデートを続けていく予定です。


(※unlink:株式会社HIKKYのメタバースエンジン「Vket Cloud」にて、外部デバイスと連携が可能となるソリューション。第一弾としてmocopiとの連携が発表された)

――ソニーとしては、今後メタバースにはどのように注力をされていくのでしょうか?

相見:
ソニー株式会社としては、今後も一貫して、クリエイターサイドのエンハンス(向上)を行っていきます。XR・メタバースのデバイスやソフトの展開は今後も予定しております。

――ソニーグループでは近年、「VEE」「VERSEⁿ」といったVTuberグループの展開も精力的に行われています。VTuber事業との連携はあるのでしょうか?

相見:
緊密に連携しております。mocopiの開発にあたっても、VTuberの活動目線からフィードバックをいただいており、開発の参考にさせていただきました。

――余談ですが、あきらさんってソニーの方だったんですね……?

佐藤(あきら):
実は今年の8月から入社しました。いちおう公開情報です(笑)。

相見:
もともと、mocopiと「Virtual Motion Capture」の連携は、VTuberさんが使う上で必須のニーズととらえていたので、早い段階から協業という形で「Virtual Motion Capture」との連携を考えていました。ところが、たまたま彼も前職が一区切りついたタイミングだったため、入社という形でご協力いただこう……ということになりました(笑)。

――「Virtual Motion Capture」との連携を必須と考えていらっしゃったとなると、相当深くリサーチされたのでしょうか?

相見:
かなり念入りにリサーチしました。実際にVTuberさんにも「どういったものがほしいか」という話をかなり深く聞いてきた上で、mocopiの開発につなげています。「しっかりと調べ、理解した上で生まれたプロダクト」であることは、ぜひプッシュしていきたいですね!

――おのずとその熱量も感じられるプロダクトかと思います。本日はありがとうございました!

VTuberにもメタバースにも”革命的”なデバイスになり得る

ひさしぶりに、「とてつもないデバイス」が出ました。そう思わざるを得ないほど、その利便性は次元違いでした。

上記のとおり、得手不得手こそありますが、少しくらい不得手な条件・環境でも、ある程度動かせているのがポイント。それ以上に、装着していることすら忘れる軽さと、スマホとつながればどんな場所でも自由に動ける、圧倒的なメリットがあります。

そして、デバイスの定める照準がVRメタバースだけでなく、「3DCGモデルを持つ全ての人」に向いているのが最大のポイントです。mocopiは言わば、携行可能になったモーションキャプチャースタジオ。これまで「Perception Neuron」や「VICON」といったプロ向けの設備がなければ実現できないあらゆることを、総重量48gのセンサーとスマートフォンだけで実現するためのソリューションと捉えられます。そのくらい、実現できそうなことがとても幅広いのです。

VTuber業界も、メタバース業界も一変させる、”革命的な”デバイスになる可能性は非常に高いでしょう。バーチャルに携わるあらゆる人に、ぜひ触れていただきたいデバイスです。

「mocopi」は、2023年1月下旬に発売予定。ソニーのインターネット直販サイト「ソニーストア」で購入・予約でき、予約開始は12月中旬を予定しています。ソニーストアでの販売価格は49,500円(税込)です。

公式サイトはこちら。
https://www.sony.jp/mocopi/

「XR Kaigi 2022」にて展示決定!

12月22日から12月23日に開催される、国内最大級のXR・メタバースのカンファレンスXR Kaigi 2022のオフライン会場にて、「mocopi」の展示が決定しました!

ソニーの出展ブースにて、おそらく国内初となる実機体験ができます。どんなデバイスなのか気になる方はぜひ足をお運びください!

チケット購入はこちらから。

https://www.xrkaigi.com/


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