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テック 2022.07.22

マイクロソフトが自律型ドローンのバーチャルシミュレーションプラットフォームを発表、AI訓練に活用

2022年7月18日、マイクロソフトは自律型航空機のシミュレーションプラットフォーム「AirSim」を発表しました。Microsoft Azure上で動作するシミュレーションプラットフォームによって自律型航空機(自律型ドローン)を安全に訓練・テストできます。2022年7月現在は限定プレビュー版の段階で、2023年に一般プレビュー版が公開される予定です。

機械学習の深い知識なしでも利用可能に

マイクロソフトはこれまでもオープンソースの「AirSim」を提供していましたが、これにはコーディングと機械学習の深い知識が必要でした。今回マイクロソフトは、このオープンソースツールをエンドツーエンドプラットフォームに変更し、より簡単にシミュレーション環境で自律型航空機のテストと訓練を行えるようにしました。

「AirSim」を使えば、開発者は事前学習済みのAIモデルにアクセスできるようになります。事前学習済みのAIモデルには障害物の検出・回避や精密な着陸などを行うための高度なモデルがあります。こうしたすぐに使える機能により、深い機械学習の専門知識が不要になり、自律型航空機の訓練を開始できる人の範囲が広がります。

また、「AirSim」上でAIモデルは数百万回のフライトを数秒で実行し、雨、みぞれ、雪などさまざまな条件でどのように動作するべきか訓練できます。また、離陸から巡航、着陸までの飛行の各段階において、Azureの力を使って膨大な量のデータを生成して訓練できます。また、Bing Mapsや他のプロバイダーのデータを使ってAirSimのユーザーは何百万もの詳細な3D環境を作成することもできます。

早期アクセスプログラムで企業と連携

ドローンを使って検査を行う企業airtonomyは、風力発電所の検査や野生動物の調査、石油タンクの漏れの検出などに「AirSim」を活用しています。「AirSim」を用いて自律的に撮影するルーチンを作成することで、自動的にインフラを検査できます。これにより、遠隔地に作業員を派遣する時間、コスト、リスクを伴わず迅速かつ安全に遠隔点検を実施できます。

一例として、ベル社はドローンの自律着陸能力の向上に「AirSim」を活用しています。「着陸地点が雪や落ち葉、水などで覆われていたら機体はそれを認識できるか」「ローターブレードがほこりを巻き上げ、機体の視界を遮ったらどうなるのか」など、現実の世界で重要な操作をする前に、数千もの「もしも」のシナリオでAIモデルを訓練し、ドローンの性能向上に役立てています。

また、自律型飛行機により荷物のラストワンマイル配送や、遠隔地からの電線の点検など多くのことが可能になります。マイクロソフトのテクノロジー&リサーチ部門ビジネスインキュベーション担当副社長ガーディープ・パル氏は、「現実的な仮想世界で自律型飛行機を使ったシステムを安全に訓練する必要があります。AirSimは、ビットの世界とアトムの世界をつなぐ重要なツールであり、産業用メタバース(※企業がソリューションを構築し、テストし、磨き上げ、現実世界に導入する仮想世界)の力を示しています」と述べています。

(参考)プロジェクトページブログ


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