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MoguraVR

2017.01.28

360度映像に、つい涙 目の前に蘇るあの頃の思い出

まるで現実ではない場所にいるかのように感じさせるVRは、体験する人によって全く異なる反応になります。たとえば、アーティストが目の前でパフォーマンスを繰り広げてくれる360度映像の場合、そのアーティストが好きな人と興味がない人では全く反応が変わります。

1月14日、仙台にあるauショップ「au SENDAI」では、Gear VRを使った体験会が開催されました。体験できたコンテンツは2015年に閉館となった宮城県松島にあるマリンピア松島水族館を閉館前に撮影した360度動画でした。体験に集まったのは、水族館のファンクラブメンバーや当時のスタッフの方々。2日間の展示で一般の体験者は350名以上になりました。

既に存在しない水族館をVRで体験することが、体験した方々にどのような印象を与えたのか、現地で取材を行いました。

「懐かしい」気持ちになる水族館 マリンピア松島水族館

マリンピア松島水族館は、宮城県の沿岸、日本三景・松島に位置する日本で2番めに長い歴史をもつ水族館として1927年から2015年まで営業していた水族館です。2012年の東日本大震災では被害を乗り越えたものの、2015年に老朽化のため88年の歴史に幕を下ろしました。

宮城県の地元の水族館としてペンギンやイルカなどの海の生き物たちが暮らしていた松島水族館は、非常に愛されていた水族館だった、と元職員の川村隆さんは語ります。

ファンクラブの皆さん、スタッフが持ち寄った水族館のグッズ

体験会場にきていたファンクラブの女性に話を聴くと東京在住ながら、訪れた松島水族館に魅力を感じてファンクラブに入ったとのこと。大規模でないながらも「展示もスタッフの手作りの説明などに溢れていて、飼育員さんの気持ちが詰まっていて、とても懐かしい気持ちになる水族館でした」と閉館を心から惜しみながら語っていました。

「もっと撮っていてほしかった…」

360度動画は振動機能付きのVR体験用チェア「Telepod」に座り、Gear VRを装着して体験しました。

内容は、松島水族館のエントランスをくぐった直後にあるペンギンたちの暮らす「ペンギンランド」や大水槽の中で撮影したものなど、様々な角度から水族館を体験できるものでした。

親子2世代で体験していたのはファンクラブを立ち上げた女性とその娘さん。「『泣かない』と決めていたのですが、途中からつい涙が出てしまいました」とのこと。

元職員の川村隆さんは、「今は何もないあの場所に、1 年7 ヶ月ぶりにまた戻ったような体験をさせてもらいました。自分の見たいものを360 度そのまま見られるので、本当にその場にいるような臨場感がありました。(VR 体験者には)それぞれの方に思い出があると思うので、このVR 体験を機にマリンピアを思い出してもらえれば嬉しいです。」と語っていました。

写真やビデオでの保存は多くされていることもあり、VRデバイスで観る360度動画の違いを質問したところ「全然違います」と即答、「不思議な感覚でした。上を見ても下を見ても水族館の光景が広がっています。目の前にあるものを本当に自分の目で見ている感覚でした」。

会場では12歳以下の子ども用に、デコレーションされた巨大ハコスコが用意されていました。

「もっと撮っていてほしかった…」

多くの人に惜しまれる中、閉館した松島水族館。もう行くことができない水族館を記録した360度映像は体験した方々にとって、強く感情を揺さぶる体験だったようです。

水族館好きの筆者も体験しましたが、思い出がないと「ペンギンがかわいい!」という普通の水族館の360度動画です。しかし、体験する人によって360度動画はまるで万華鏡のように姿を変えます。

体験者がふと漏らした「もっと撮ってくれていたらよかったのに……」という言葉が印象的でした。

360度撮影では、現実には消えてしまう空間や2度と繰り返されることのない時間をそっくりそのまま残すことができます。それが人々の思い出と結びついたとき、記憶が「体験」そのものとして強烈に蘇る。そういった効果が360度動画にはあるのではないでしょうか。

今回の松島水族館の360度映像の制作を手掛けたのは360度コンテンツの撮影を行う株式会社EJEです。「必要な人たちに必要なコンテンツを届けることが重要です。当初はHMDをつけるだけで多くの人たちが驚いていましたが、今はもう次の段階に来ています。必要としている人に見せることでで新たな感動が生まれる」と同社執行役員、待場勝利氏は話します。

360度カメラはRICOH THETA SCが3万円程度で、スマートフォンに装着する「Insta 360 Nano」(iOS)が2万4399円、「Insta 360 Air」(Android、2月発売予定)が2万円で手に入ります。

360度撮影のとても身近な可能性を痛感させられた取材でした。

松島水族館の360度映像はGear VR、iOS、Android向けに配信されているアプリ『VR Cruise』で一般配信されています。

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この記事を書いた人

すんくぼ(久保田 瞬)

慶應義塾大学法学部政治学科卒業後、環境省に入省。環境白書の作成等に携わる。ECベンチャー勤務を経て、現Mogura VR編集長、株式会社Mogura代表取締役社長。VRジャーナリスト。
VRが人の知覚する現実を認識を進化させ、社会を変えていく無限の可能性を感じ、身も心も捧げている。VR/AR業界の情報集約、コンサルティングが専門。また、国外の主要イベントには必ず足を運んで取材を行っているほか、国内外の業界の中心に身を置きネットワーク構築を行っている。Boothにて書籍「寝転んでNetflixを観ると、 VRの未来が見える」販売中

Twitter:@tyranusii

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