最新のiPhoneやiPadには「LiDARスキャナ」という機能が搭載されています。普段はなかなか起動することのない機能ですが、これを使えば手早くモノの大きさを測ったり、周囲のものを3Dスキャンしたりできます。
LiDARスキャナを活用したサービスも少なくありません。今回は「LiDARスキャナ」で具体的にどんなことができるのかを紹介します。
そもそもLiDARスキャナとは?
(画像は「超幻実 – au 5G × 鬼滅の刃」)
LiDARスキャナは、レーザー光の反射を利用して、モノや地形の「距離」を読み取る機能です。これにより、iPhoneのカメラの機能が向上したり、現実のモノの大きさが計測できたり、3Dスキャンアプリを活用できたりと、さまざまな用途に利用できます。
LiDARスキャナを搭載しているiPhone&iPad
・iPhone 12 Proシリーズ
・iPhone 13 Proシリーズ
・iPad Pro(2020年発売以降のモデルのみ)
まずは使ってみよう
ナイトモードで撮影
LiDAR搭載のiPhoneでは、暗いところでも被写体の顔をきれいに撮影する「ナイトモード」が実装されています。試しに「デフォルト」「ナイトモード(自動3秒)」「ナイトモード(手動10秒)」の3つを比較してみました(フラッシュ無し)。
(左から「デフォルト」「ナイトモード(自動3秒)」「ナイトモード(手動10秒)」)
比べれば分かるとおり、暗いところでも「ナイトモード」を使えば、顔の輪郭がはっきり映っています。オートフォーカスのスピードも速くなっています。
いろんなモノを計測してみる
アプリとして実装されている「計測」を利用してみましょう。LiDARスキャナ実装のiPhoneであればインストールせずとも、あらかじめ用意されています。人の身長やモノの長さなど、自分の計測したいものにカメラを向ければ、すぐに計測可能です。
実際に測ってみました。ちなみに、計測対象者の身長は164cm。立っている場所などの条件によっては、約3~5cmほどのズレがあります。「だいたいの長さ」を測りたいといったときに利用するのが良さそうです。
また、この「計測」の魅力は「縦・横・高さ」といった立体的な計測を瞬時にできるところです。実際にお酒の升(ます)を計測してみたところ、こちらはほぼ正確な数値が出ました。ただし、mm単位の計測は難しいことにご注意を。
色んなモノを3Dスキャンしてみよう!
元々は、上記で紹介したようなカメラ機能やAR機能のために導入された「LiDARスキャナ」ですが、最近では、この機能を利用した3Dスキャンが注目を集めています。
今までの3Dスキャンは高価なPCが必要だったり、高価な機材(モノよっては1000万越えも)が必要でしたが、この機能があれば、安価で3Dスキャンを体験できます。
さらに、複数枚の写真データをもとに3Dモデルに変換する技術である「フォトグラメトリ」も利用可能です。iPhoneのLiDARスキャナは比較的大きいモノ(車やタンスなど)や空間をスキャンする事を得意としている一方、フォトグラメトリはフィギュアや置物などの比較的小さいモノをスキャンできます。立体で記録したいものの大きさに合わせて、3Dスキャンかフォトグラメトリを選べば大丈夫です。
スキャンしやすいモノ、しにくいモノ
iPhoneのLiDARスキャナはスキャンしやすいモノと、スキャンしにくいモノがはっきりと分かれています。
比較的スキャンに向いているのは、岩やコンクリートの様に表面がざらざらしているモノ(表面が反射しないモノ)、絵や様々な模様がペイントされているモノ、あまり複雑ではない形状のモノとなっています。
逆にスキャンの難しいモノは多く、透明なガラスや半透明なプラスチックなどは、レーザー光線が反射しないため、スキャンできません。同じく表面に光沢が存在していたり光を反射させるような鏡、水面、磨かれた金属等も難しいでしょう。
またLiDARのセンサーの性能は空間を認識することに特化しているため、細かい形状の物体や小さい物体のスキャンは難しい場合があります。
LiDARセンサーを使って3Dスキャンをしよう!
今回は実際にホテルの部屋を「Metascan」というアプリでLiDARスキャナして、その結果を動画にしました。これらの動画をもとに説明していきます。
スキャンする時の注意事項
iPhoneでスキャンしようとすると、障害物が邪魔で理想的な移動ができなかったり、モノにぶつかって怪我をするリスクも。どのように対象を撮るか、どのようなルートで移動するかを事前にシミュレーションしておくのがおすすめです。
iPhone用のカバーなども事前に外しておきましょう。LiDARスキャナはiPhoneのCPUを最大まで使用してスキャンを行います。そのため、カバーをした状態だとすぐに熱暴走を起こしてしまい、モデルの形状やテクスチャ品質に大きな悪影響を及ぼします。
また、スキャン中はiPhoneをゆっくりと動かすこと。iPhoneを急激に動かしてしまうと、今どこをスキャンしているか分からなくなり、3Dモデルを作成した時にズレや抜けが発生するからです。
スキャン自体はホテルの1室で大体2~3分の時間があれば、3Dモデルまで作成可能です(今回だと2分以内に3Dモデルまで作成しています)。そのため、サッとiPhoneを取り出して、パッと3Dスキャンできます。スキャンしたデータは写真と違い、さまざまな角度から好きに見られるのがポイント。また、リアルスケールで3Dスキャンしているため、後から幅や高さなども計測できます。
3Dスキャンしたモデルはそのままアプリから閲覧できるほか、「STYLY」や「Sketcfab」といったプラットフォームにアップロードもでき、「ARモード」や「VRモード」などでも体験可能です。自分が今いる空間や見ているモノを、遠く離れた人にもそのまま共有できるのが魅力と言えます。写真や動画と違って、よりリアルに思い出を追体験できる点も面白いところです。
また3Dモデルのため、複数の部屋を同倍率で縮小して、同じスケール感で比較するといったこともできます。
3Dスキャンにオススメのアプリは?
Metascan(年額5500円)
Metascanの特徴は広い範囲のスキャンがしやすい点とVR表示が簡単にできることです。Metascanはスキャンアプリで唯一上空から見下ろした視点でLiDARスキャナを利用できます。これにより、どこをスキャンしていないかを見分けやすくなります。
また、クラウド共有リンクをVRヘッドセットMeta Quest2のブラウザで簡単に開けるのもポイント。VRで3Dスキャンモデルを気軽に見られます。
Scaniverse(無料)
Scaniverseの特徴は、エッジの表現がトップクラスに綺麗な点です。他のスキャンアプリではモノの角の部分が丸まってしまうことが多いのに対して、Scaniverseは角の部分がしっかりと表現されているため形状をしっかり表現したい時に活躍します。
また、LiDARスキャナを使ったローカル処理のフォトグラメトリが可能です。通常、フォトグラメトリを行う場合、クラウドサーバーに写真をアップロードすることで3Dモデルを作成しますが、Scaniverseの場合はスキャンしたiPhone一台だけで可能です。そのため、ネット回線が不要の状態でも小物の3Dスキャンが可能となっています。
品質はクラウド処理タイプの3Dモデルには劣りますが、1~2分程度でスキャンできる点が魅力。他よりも短時間で3Dモデルが作成できるという利点があります。
その他の利用方法
他にも「LiDARスキャナ」を利用したアプリは多くリリースされています。
特に話題となったのは、「超幻実 – au 5G × 鬼滅の刃」です。小さくなった禰豆子をスマートフォンで呼び出し、一緒に散歩したり動画を撮影したりできます。
また子どもの成長記録アプリ「せいくらべ」にも「LiDARスキャナ」が活用されています。このアプリを使えば、写真撮影と身長計測が可能で、子どもの成長を細かく記録できます。
今後もこういった「LiDARスキャナ」を活用したアプリは増え続けていくと予想されます。まずは、気軽に試してみませんか?
執筆協力:iwama