2019年10月11日に登場した「VIVE Cosmos」が、翌年に3つの製品ラインナップを追加で発表。2020年3月27日には「VIVE Cosmos Elite」が発売され、VIVEシリーズの展開は直近で非常に活発となっています。
しかし、あまりに多種多様なモデルが登場したため「いったいどれを買えばいいんだ?」と迷ってしまう方も多いはず。そこで、初代VIVEからVIVE Cosmosまで、2020年4月現在のシリーズの最新情報を一挙に紹介します。
目次
1. そもそも、HTC VIVEとは?
2. VIVEシリーズ、それぞれの特徴は?
3. 周辺機器について
4.VIVEシリーズ徹底比較
5.結局どれがオススメ?
6.これからのVIVEシリーズはどうなる?
そもそもHTC VIVEとは?
HTC VIVEは、HTCとValveによって共同開発されたVRヘッドマウントディスプレイです。
初代VIVEは2016年4月5日に発売。以後、上位機種のVIVE Pro、後継機種のVIVE Cosmos、一体型機種のVIVE Focusなど、様々なバリエーションが登場しています。
初代発売以来、コンシューマー向け(※VIVE Focusのみ法人向け)PC用VRヘッドマウントディスプレイとしては、Oculus RiftやRift Sと人気を二分しています。2020年現在でも、定番の一台として真っ先に名前が上がることが多い機種です。
VIVEシリーズそれぞれの特徴は?
VIVEシリーズは、大きく分けると4種類あります。
HTC VIVE
いわゆる「初代VIVE」と呼ばれる機種。PCに接続し、2台のセンサーによるアウトサイドイン形式のトラッキングによって、ルームスケールで安定したVRを体験できます。ヘッドホンを追加するオーディオストラップや、後述するVIVE Trackerなど、拡張機器も豊富。ただし同機種はすでに終売状態です。
VIVE Pro
初代VIVEの上位機種として登場した機種。解像度が大きく向上し、ヘッドホンがデフォルトで併設されているのが特徴です。よりハイエンドなVR体験を求めるユーザーのみならず、法人向け用途にも応える機種として発売されました。後にアイトラッキング機能も追加された「VIVE Pro Eye」が登場しています。
VIVE Cosmos
初代VIVEの後継機種に位置づけられている、VIVEシリーズでは初となるインサイドアウト形式を採用した機種。外部センサーが不要で、解像度はVIVE Proに匹敵します。エントリーモデルの「Cosmos Play」、従来のルームスケールトラッキングに対応した「Cosmos Elite」、MR体験が可能な「Cosmos XR」などのバリエーション機種の登場も予告されており、いずれもパーツ交換によって上位機種へアップグレード可能です。
周辺機器について
様々な周辺機器による拡張性の高さもVIVEシリーズの売りのひとつ。とりわけ有名なものといえば、VIVE Trackerでしょう。
VIVE Trackerは外付けのトラッキングセンサーで、物体に装着すればVR空間内にて対象の物体の位置情報を検知できます。平たく言えば「現実の物体をVRに取り込む」ということです。
国内では、身体の各所に装着し、疑似的なモーションキャプチャスーツのように利用する運用が注目され、2018年には国内の在庫が一時枯渇する事態にも発展しました。
現在はだいぶ落ち着いてきていますが、一般のユーザーでも利用可能なボディトラッキングシステムとして、利用価値は依然として健在です。「バーチャルキャスト」や「VRChat」などで、アバターの動きのクオリティを限界まで突き詰めたい場合に最適です。
1個で1万円以上とお値段もそこそこなので、導入は計画的に!
VIVEシリーズ徹底比較
各シリーズの特徴の紹介に引き続き、価格やスペックを比較してみましょう。
比較①:各シリーズの価格とスペック
HTC VIVE |
VIVE Pro |
VIVE Cosmos |
|
価格 |
(終売) |
139,545円(税別・フルキット) |
89,882円(税別) |
ディスプレイ |
対角3.6インチ 有機EL×2枚 |
対角3.5インチ 有機EL×2枚 |
対角3.4インチ、LCD(フルRGB)×2枚 |
解像度(左右の合計) |
2160×1200 |
2880×1600 |
2880×1700 |
リフレッシュレート |
90Hz |
90Hz |
90Hz |
視野角 |
110度 |
110度 |
110度 |
トラッキング |
アウトサイドイン形式(SteamVR) |
アウトサイドイン形式(SteamVR) |
インサイドアウト形式 |
視野角やリフレッシュレートはすべて同じですが、ディスプレイ解像度ではCosmosが一歩リードしています。また、HTC VIVEやVIVE Proと異なり、フルRGBのLCD(液晶)を使っているため、数値上のスペックよりも映像がキレイに見えるでしょう。
HTC VIVEおよびVIVE ProはVIVE Cosmosとトラッキング形式が異なっており、センサー設置などの手間はかかるものの、より精確かつ隙のないトラッキングを実現しています。
比較②:VIVE Proシリーズの価格とスペック
製品ラインナップが豊富なVIVE Proシリーズを簡単に比較してみます。
Proフルキット |
Proスターターキット |
Pro Eye |
|
価格 |
139,545円(税別) |
99,990円(税別) |
162,880円(税別) |
ベースステーション |
SteamVR 2.0 |
SteamVR 1.0 |
SteamVR 2.0 |
コントローラー |
SteamVR 2.0 |
SteamVR 1.0 |
SteamVR 2.0 |
アイトラッキング |
非対応 |
非対応 |
対応 |
HMD本体の基本性能に差はなく、Eyeにのみアイトラッキング機能が搭載されています。
付属するベースステーションとコントローラーは、スターターキット以外SteamVR 2.0対応のベースステーションとセンサーが同梱されています。
SteamVR 1.0はベースステーションを2台まで使用できるのに対して、SteamVR 2.0は最大4台まで使用可能で、最大で10×10mの範囲までルームスケールを設定できます。
なお、VIVE ProはHMD単体でも販売しており、すでに初代VIVEを使用している人は、HMDを交換すればアップグレードできます。単体の販売価格は70,455円(税別)。
比較③:Cosmosシリーズの価格とスペック
Cosmosシリーズも比較してみましょう。(※「Cosmos Play」は詳細なスペックが未発表のため、開示情報範囲で記載しています。また「Cosmos XR」は現時点では不明点が多いため、今回は除外)
Cosmos |
Cosmos Elite |
Cosmos Play |
|
価格 |
89,882円(税別) |
109,990円(税別) |
500ドル(約5.5万円) |
解像度(左右の合計) |
2880×1700 |
2880×1700 |
2880×1700 |
リフレッシュレート |
90Hz |
90Hz |
90Hz |
視野角 |
110度 |
110度 |
110度 |
トラッキング |
インサイドアウト形式(内蔵カメラ6台) |
アウトサイドイン形式(SteamVR) |
インサイドアウト形式(内蔵カメラ4台) |
コントローラー |
Cosmosコントローラー |
SteamVRコントローラー |
Cosmosコントローラー |
ヘッドセットの基本性能には差がありませんが、フェイスプレート(ヘッドセット前面のパーツ)によって違いが出ています。
「Cosmos Elite」は従来のVIVEシリーズと同様のアウトサイドイン形式のトラッキングに対応。付属コントローラーもSteamVR 1.0対応のコントローラーです(同様に付属ベースステーションもSteamVR 1.0)。
「Cosmos Play」はオリジナルと比較してトラッキング用のカメラが4台に減少すると発表されており、トラッキング精度は下がるものの、価格は大幅に落ち着くと予想されます。
比較④:各シリーズの推奨PCスペック
最各機種を動かす上でのPC推奨スペックを比較します。
HTC VIVE |
VIVE Pro |
VIVE Cosmos |
|
プロセッサ |
Intel Core i5-4590 または AMD FX8350 の同等品以上 |
Intel Core i5-4590 または AMD FX 8350 の同等品以上 |
Intel Core i5-4590 または AMD FX 8350 の同等品以上 |
GPU |
NVIDIA GeForce GTX 970 もしくは AMD Radeon R9 290 の同等品またそれ以上 |
NVIDIA GeForce GTX 970 もしくは AMD Radeon R9 290 の同等品またそれ以上 |
NVIDIA GeForce GTX 970 4GBまたはAMD Radeon R9 290 4GBの同等品以上 |
メモリ |
4 GB 以上 |
4 GB 以上 |
4 GB 以上 |
ビデオ出力 |
HDMI 1.4、DisplayPort 1.2 以降 |
DisplayPort 1.2 以降 |
DisplayPort 1.2 以降 |
USBポート |
USB 2.0またはそれ以降(1個) |
USB 3.0またはそれ以降(1個) |
USB 3.0またはそれ以降(1個) |
OS |
Windows 7 SP1、Windows 8.1 以降、Windows 10 |
Windows 7、 Windows 8.1、 Windows 10 以降 |
Windows 10 |
これらの推奨スペックは「最小構成」に近いため、より快適なVR体験を求めるのであれば、プロセッサ、GPU、メモリはさらに上のものを用意し、OSはWindows 10に設定しましょう。
結局どれがオススメ?
①初めてVRを体験してみたい
VIVEシリーズでVRデビューするなら、現状VIVE Cosmosがオススメです。今後「Cosmos Play」が登場すれば、さらに低価格な選択肢が生まれます。
とにかくセンサーの設置が不要で、HMDをPCに接続すればすぐセットアップができるお手軽さがポイント。解像度もトップクラスで、非常に高画質なVR映像を堪能できます。
またパーツ取り替えによる拡張性があるので、デバイスごと機種変更する必要性もなく、コストパフォーマンスが良いといえます。
デバイスの特性上、「ゆっくりと観る」という用途に向いているため、VR映像コンテンツや、clusterのようなVRライブに参加してみたい人にはオススメの選択肢です。
②VRゲームを堪能したい
VRゲームをガッツリ遊び倒したい人には、VIVE Proシリーズがオススメ。
VIVE Proシリーズの外部センサーを用いたSteamVRトラッキングは、非常に早い動きも正確に捉えられます。「VRChat」のような長時間装着するアプリでも、重心バランスがちょうど良いといえます。
様々なVRゲームに相性良好のため「映像やライブよりもゲーム!!」という人には心強いでしょう。同様のトラッキング性能に、拡張性もプラスしたい場合には、「Cosmos Elite」も候補に上がります。
③VTuberになりたい!
3DモデルのVTuberになるべくVIVEを利用するなら、「VIVE Pro Eye」が最もリッチな選択肢です。アイトラッキング機能によって、アバターの表現力は大幅に上昇するでしょう。
さらに後述するVIVE Tracker、コントローラーにVALVE INDEXコントローラーを採用すれば、商用のモーションキャプチャーシステムに匹敵し得る3D環境が構築できます。
とはいえコストも跳ね上がるため、十分に検討を推奨します。またアイトラッキングに対応しているコンテンツが少ない点にも注意。
これからのVIVEシリーズはどうなる?
現在発売中のラインナップはVIVE Cosmos、VIVE Pro、法人向けにVIVE Focusです。しかし、これらの製品ラインナップにもさらなる刷新の予兆が確認されています。
筆者の所感ですが、今後コンシューマー向けはCosmosシリーズ、法人向けはVIVE Pro/VIVE Pro Eye、およびVIVE Focusシリーズになるでしょう。しかし、VIVE Proの安定感はコンシューマー用途でも輝くため、 非常に高価な買い物ですが、今後も選択肢としては十分に挙げられる機種になるはず。
またCosmosシリーズが高い拡張性によって、さらなる進化を遂げる可能性があるかもしれません。VIVEシリーズの動向は2020年も注目です。
執筆:浅田カズラ