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VIVE 2017.10.05

VRのビジネス活用事例集 HTCディレクター・デイビッド氏講演レポ

9/21(木)-22(金)、東京・お台場においてAutodesk主催の「Autodesk University Japan 2017」が行われました。VRなどのテーマを含む様々なセッションの中から、本レポートではVRデバイス「HTC Vive」の展開などを行うHTC社による、産業界におけるVR活用の事例紹介を取り上げます。


登壇したのは台湾から来日したHTC開発・パートナーシップ統括ディレクターのデイビッド・CM・チャン氏。「HTC VIVEはPCベースのVRデバイスです。VIVEはゲームやエンターテインメントだけのものでもありません。産業に近い事例もたくさん出ています」と、チャン氏はVIVEについて話をはじめます。

VIVEの性能概要


まずチャン氏は「VIVEは座った状態でも立った状態でも、部屋の中で自由に動き回りながらでも体験できます。パートナーやお客様にVR空間の中でいろいろな角度から製品のCGを見せたいとき、VRの中を歩いてみたいときにはVIVEが活用できます」とHTC VIVEについての説明をしていきます。


VIVEでは体験者の動きをVRに反映するためにLighthouse(ライトハウス)というトラッキング技術を使っており「ふたつのライトハウスが、ユーザーがどんな動きをしても、コンピュータが正確に見るべきものを機械に示してくれます」とチャン氏は言います。

ビジネスにおけるVR


チャン氏はIBMリサーチが発表した今年のリサーチを提示しました。「IBMが言うには、様々な業界でVRが使われている、あるいは検討中ということです。医療、エネルギー、工業生産、国防、商業マーケティング、観光、保険、医療などでも使われています」とチャン氏は言います。
 
自動車産業ではすでにVIVEを使って、設計レビューをしているメーカーもあるとのことです。チャン氏は「自動車産業の場合は自動車を設計するのに3年4年かかります。設計の段階でデジタルモックアップが何度も作成され、それに対して設計者が様々な意見を出します。VIVEを使えば毎回のモックアップを簡単に作ることができますし、設計に対してすぐにフィードバックを得ることができ、時間や作業、コストの大幅な削減ができます」と説明していきます。

またVRでは日本とヨーロッパのような離れた地域でも同じものを見ることができるので、会議などのために出張費を使う必要がなくなること、そしてコラボレーションが容易になることも付け加えました。 

教育・トレーニング分野でのVR活用


次にチャン氏は教育分野におけるVIVEの事例を紹介します。「HTCはすでに多くの大学と協業しています。学生たちがどのような財務状況にあっても、世界のベストの大学やそういったところで勉強ができるような、VRのプラットフォームを使った新しい教育を行っています」とチャン氏。


「NASAも新しいシステムのテストをする時に、私たちのテクノロジーを使っています。宇宙空間を地球上で作ることはできませんので、その環境をVRで作り上げてのテストを行っています」とのことで、この様子を写した映像はYouTubeにもあがっています。
 


次にチャン氏は新入社員のトレーニングについての事例をあげます。「新入社員の育成のためにトレーニングは必要ですが、VIVEを使えば、トレーニングのために生産ラインを止めたりビジネスオペレーションを止める必要がありません。VIVEで全く同じクオリティのトレーニングをすることができます」とチャン氏。VRを使ったトレーニングでは仕事を覚える記憶が20~90%良くなるという結果もあるとも、チャン氏は言います。

フォルクスワーゲンの事例


次にチャン氏はフォルクスワーゲンの事例をあげます。「フォルクスワーゲンには11のブランドがあり、世界中に120の工場、そして従業員は60万人にのぼっています。フォルクスワーゲングループの全員が同じレベルのトレーニングを受けているということが重要ですので、彼らはVIVEを使って色々な国々でトレーニングを行っています」。

フォルクスワーゲンはすでにVIVE用の様々なコンテンツを作っており、ユースケースもたくさんできているそうです。「VRを使うことによって、世界中の人たちが簡単なセットアップで3Dモデルを使うことができるようになります。VRがこれから先、世界の自動車メーカーに大きな影響を与えると思っています」とチャン氏はフォルクスワーゲンの言葉を伝えます。

スマートマニファクチュリングの現場における事例


チャン氏は、生産ラインのデジタル化を推し進めるいわゆる「インダストリー4.0」向けのVIVEの活用についても紹介しました。「スマートマニュファクチャリングと呼ばれるインタストリー4.0ですが、VRで工場の設計・計画ができます。たとえばスマートフォンの生産ラインを、VRの機械の生産ラインに切り替えようということが我々の会社ではありました。その時にスマホの生産ラインは稼働していたわけです。そこでVRを使って、今のスマホの生産ラインを乱すことなく将来の生産ラインを計画しました」とチャン氏は自社の事例を紹介します。

続けて「VRでは様々な詳細も設計段階で視覚化することができ、実際に工場の中を歩き回る感覚で確認できるので、新しい欲求が出てきてもすぐに設計の変更をすることができます」と言います。

展示会における事例


「さて、VIVEは大きな展示会にも使うことができます」とチャン氏。「製造機器の展示会をするのは簡単なことではありません。デモ用の設備が巨大になっており、機器を送るには時間も手間もかかります。セットアップにも時間がかかります。一方でブーススペースには限りがあります。また非常にノイズの高い環境でやらなければならないという悩みもあります。でもVIVEはまさにそういった状況で最適なソリューションになります。世界各国の展示会でVIVEが使われることが増えています」とチャン氏は主張します。

「たとえば最新の一押ししたいモデルだけを現実に展示し、その他のものはVRを使って来訪者に見せる。また来訪者は没入型の経験を得ることができますので、周りの音も広さが限られていることも縛りになりません。さらに、展示会が終わった後でもお客様に見せることが可能です」とVRを使うメリットを提示します。
 


最後にチャン氏は「VRというのはただ単に面白いだけでなくて、ビジネスの用途があることが分かって頂けたと思います。VRは産業にとってなくてはならないもの。皆様方にとって本質的になくてはならないものになるでしょうし、ますますその価値は高まっていくと思います」とプレゼンテーションをしめくくりました。


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