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ホロライブ 2019.09.25

VTuber事務所「ホロライブ」 夏の戦略の手応えは? 担当者に聞く

ときのそらをはじめ、白上フブキや湊あくあなど個性豊かなVTuber(バーチャルユーチューバー)が所属している事務所「ホロライブ」。今年の7月9日からは「ホロライブ・サマー2019」の開幕を宣言し、3D水着配信やコミケ出展、夏のイベント出演など、さまざまなプログラムを展開。VTuberファンを大きく驚かせました。

そんなホロライブは、どのように今回の戦略を練り上げたのでしょうか? また普段はどのような方針で運営を行っているのでしょうか? カバー株式会社を直接訪問し、マーケティング本部/本部長の畠野さんに詳しい話を聞きしました。

ファンからの期待感を高めるために打ち立てた戦略は?

――「ホロライブ・サマー2019」はどのようなきっかけで始まったものでしたか?

畠野

夏の始まる以前より、ホロライブ全体で「夏に合わせてどう動いていくか」を検討していました。さかのぼっては今年の2月14日に秋葉原で行われた「ホロライブ×TSUKUMO バーチャルチョコレートお渡し会」だったと思います。アキバというコンテンツ業界の聖地で予想以上に多くのファンの方々に参加していただいたことで、コンテンツ力に自信がつき今年の夏はよりイベントに力を注ぎたいと考えました。

また6月1日から実施されたアトレ秋葉原とのコラボレーション企画がかなり好評だったのも、プロジェクトを進める上での支えになりました。アキバに積極的に訪れるような熱量の高いファンの方々にむけて、ホロライブを打ち出しても通用するという確信を得ることができました。

――ホロライブのVTuberたちが次々と水着をお披露する流れには驚かされました。

畠野

最初は「夏といえば水着でしょう!」と、正直な話ノリで考えていました(笑)。そこで、せっかく発表するのであれば、ひとつひとつのプログラムが大きな流れに繋がるようにして、ホロライブ全体が盛り上がっているようアピールする仕掛けを作れたと思います。

https://www.youtube.com/watch?v=whtFqKfz2DM

そこで夏コミ前までに、広告やコラボ企画で当社ファン予備軍を意識した露出と連動しながら、少しずつ水着お披露目配信を行ったり、全体曲を発表したりして、ファンの方に徐々に期待して頂けるようにしました。そしてコミケ直前に、商品ラインナップや参加していただくコスプレイヤー(えなこさん)の情報などを発表して、大きなムーブになるよう仕掛けたという具合です。

――発案ベースだったものが、次第に綿密な企画になっていったのですね。実際、今年の夏コミではどれほどの手応えを感じられましたか?

畠野

結果として、来場者の方からは非常に高い評価をいただけました。今年は4日間での開催でしたが、いずれの日も人波が途絶えることはありませんでした。当社ブースで発表した特別PVにも大きな人だかりが生まれていました。物販の売上に関しても、こちらの予想以上の成果が出ています。コミケで出展されている他の企業様と肩を並べるくらい、ホロライブに力がついてきているのではと、運営としても自信が持てるようになりました。

――この短期間で、コミケの準備と並行しながら水着配信や他イベントの進行などを行うのは、かなり大変だったと思いますが、実際の状況はいかがでしたか?

畠野

おっしゃるとおり大変でしたね。特に水着に関しては、衣装などを制作されるクリエイターやスタッフの方々の機動力があったからこそ成立したと思います。

ファンとの距離感をどのように保つべきか?

――そもそもホロライブを応援しているファンはどのような層の方々が多いのでしょうか?

畠野

アンケートやアナリティクスを見た限りでは、20代から30代の男性の方が多い印象です。また、PCの所有率も比較的高いように感じます。最近はアジアからのファンも多く流入するようになりました。

――今後事業を拡大するにあたり、ファン層をより広げていきたいと考えていますか?

畠野

もちろん、ホロライブ全体として視聴者の拡大を目指していますが、現状の方向性を無理に変えてまで新規層を取りに行くことはしません。あくまで所属しているVTuberさん方がやりたいことに合わせるようなかたちで、ファンの方々を獲得できていければと考えています。別途男性VTuberさん方が集まっている「ホロスターズ」もあるので、それぞれに成長していければいいですね。

――ホロライブではどのような方針で、VTuberたちの活動を支えているのでしょうか?

畠野

特にこちらで彼女たちの活動を強制することはありません。本人たちの夢や希望をサポートするのが大事だと考えています。

もちろん、全てを好き勝手にやるというよりは、本人と会社が一緒に成長できるような活動になっているかを見極めながら日々動いています。彼女たちが悩んでいれば相談に乗りますし、休憩が必要だと判断すればそのようにアドバイスすることもあります。マネジメントでは、VTuberと運営との密な連携が重要だと思います。

――ファンからの信頼を獲得するために必要なことはどういったことだと考えていますか?

畠野

ひとつは積極的な情報公開だと思います。ホロライブではイベントやキャンペーンが始まる度に、細かめにプレスリリースを配信しています。プレスの文章も企業向けではなく、一般のファンが読むことも想定した書き方にしております。これは、ホロライブの運営が今は何に向けて動いているかを理解していただく狙いがあります。ただ情報出しが直前になってしまうこともありまして、そういった運営の活動が見えない状態はファンの方々に不安を抱かせる原因にもなりますので、今後改善していきたいポイントのひとつだと考えております。

また、物事を進めていくうちにトラブルが起きた際には、代表の谷郷が旗振りして、社全体で迅速に問題に対処するようにしています。谷郷がnoteやSNSでVTuberや業界の未来に関する考えを表明していることもあって、社内だけでなくファンも含めた周囲からの信頼を獲得できているのではないかと思います。社内でも谷郷の提示したビジョンをもとに、一丸となって活動できていると思います。

「ホロライブ」のビジョンとこれから――Tokyo XR Startups出身起業家インタビュー(第一回:カバー株式会社CEO 谷郷 元昭氏)
https://www.moguravr.com/tokyo-xr-startups-interview/

ホロライブというブランドを成長させるためには?

――ホロライブが現状の課題としていることは何でしょうか?

畠野

運営のスタッフ増加を含めた、体制強化ですね。ファンの方々の期待に応えていくためにも、しっかりとした組織づくりが必要です。繰り返しになりますが、8月から9月にかけてはイベントが多くて大変でしたから、今後、企画がより大きくなっても無理が起きないようにしたいですね。VTuberさん方の積極的な活動にもさらに対応できるようにしていきたいです。

――今後、ホロライブが力を注いでいきたいことはどういったものですか?

畠野

ファンの方々からの期待に応え、今後に残していくためにも、個性あるブランドとして独り立ちさせていきたいと考えております。

そのための活動の一貫として、毎週日曜に更新しているWEBアニメ『ホロのぐらふぃてぃ』があります。アニメを通して、それぞれのVTuberの個性を理解してもらえれば幸いです。やがてはTVアニメ化できるほどの大きなコンテンツに成長させていきたいです。

また大神ミオさんが現役の占い師の方に占いを学んだり、湊あくあさんがスクウェア・エニックスのゲーム「ラストイデア」と公式コラボしたりといった、外部活動も増えています。彼女たちがさまざまなジャンルに絡むことで成長していき、ホロライブならではのオリジナリティが作られていくのを期待しています。

――ホロライブならではの個性が今後、重要になってくるということですね。

畠野

幸いにしてホロライブには、3Dスタジオと配信設備が整っており、演出力も日に日にアップしています。7月7日に実施した「第一回ホロライブカラオケ女子会」では、複数のVTuberたちを同時に撮影できる技術があることをアピールできました。

引き続き、こうした充実した環境を活かして、親しみのあるコンテンツを制作していきたいと思います。今年の夏は通過点のひとつと捉えているので、今後も目を離さないでいただきたいです!

執筆:ゆりいか
協力:カバー株式会社


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