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ホロライブ 2023.03.28

大歓声! 大満足! 総勢51名の全92曲を全身で浴びた! ホロライブ最大の音楽フェス「hololive 4th fes. Our Bright Parade」1万字レポート

2023年3月18日、19日の2日間にわたって開催された「hololive SUPER EXPO 2023 Supported By Bushiroad」。

VTuberたちのスペシャルステージをはじめ、展示ブースやミニゲーム、企業出展やコスプレなどを楽しめた、ホロライブプロダクションの全体イベント。会場の幕張メッセには大勢のホロリスが足を運び、体験型のブースの多くでは1時間以上の待ち時間が発生。数年ぶりに「人混みで身動きが取れなくなる」という経験をするほどの盛況ぶりだった。

そんな「SUPER EXPO」と合わせて行われたのが、「hololive 4th fes. Our Bright Parade Supported By Bushiroad」。こちらは4回目となるホロライブの全体ライブであり、しかも今回は2日間で3公演を開催。総勢51名ものタレントが出演し、全92曲を披露する、ホロライブ史上最大の音楽フェスとなった。

幕張メッセの広大なイベントホールに集まった大勢の観客と、人々が作り出すペンライトの光の海の中、大音響の歌と、洗練されたパフォーマンスを、文字どおり全身で“浴びる”ように味わった2日間。しばらくは忘れることのできそうな濃密な体験を、その一端だけでもお伝えするべく、本記事では振り返っていきたい。

2日間で92曲!?否が応でも満足させられてしまう、濃密すぎるライブ体験

2020年1月に開催された「hololive 1st fes.『ノンストップ・ストーリー』」に始まり、ホロライブの全体ライブも早くも4回目。

「30曲以上・2時間以上の音楽ライブ」と銘打たれた1st fes.を、当時は「とんでもないボリュームだ……!」と慄きながら見に行った記憶があるが、あれからはや3年。1st fes.開催当時はデビュー間もなかった4期生もすっかり「アイドル」としての風格を持つタレントとして、今や後輩を引っ張っていく立場にある。また、23人が並ぶ1st fes.のキービジュアルも圧巻だったが、4th fes.では倍以上の51人が出演するほどの大所帯となった。

「2日間で51人が出演する音楽フェス」と書くだけでも並々ならぬインパクトがあるが、今回は「ライブ」としての規模感も尋常ではなかった。2日間で3公演が行われ、そのひとつひとつがとんでもボリューム。「2日間で92曲」という数字だけを見れば、「30曲以上・2時間以上の音楽ライブ」だった1st fes.の、ほぼ3回分と表現してしまっても良いかもしれない。端的に言って、わけがわからない。

冷静になってみると「正気か……?」と思わずにはいられないが、本当にそれを実践し、成し遂げてしまったのだから恐ろしい。とにかく「物量でぶん殴られた」という感覚があり、「音楽ライブ」としての満足感はこの上ないほどだった。

ただ、人によってはもしかすると、「せっかくの晴れ舞台だし、推しのオリジナル曲を聴きたかった」「もう少し一人ひとりにスポットを当ててほしかった」といった思いも少なからずあったかもしれない。それでも、今や大所帯となった「ホロライブの全体ライブ」として通して見れば、「最高だった!!」と満ち足りた気持ちで会場を後にした人が大多数だったのではないだろうか。そのくらい満足度も高く、完成されたイベントだったように思う。

「声出しOK」のライブで広がる、ホロリスの輪

さすがに92曲すべてに言及するのは紙面の都合で難しいため、ここではいくつかをピックアップして振り返りたい……のだが、その前にもう一点、無視できないポイントがある。

それは今回の4th fes.が、全体ライブとしては実に1st fes.以来の「声出しOKの音楽ライブ」だったことだ。実際にライブが始まってからの盛り上がりは言わずもがな、開演前の会場の様子からも、「声出し可」ゆえの期待感と熱量の高さが伝わってきていた。

YouTubeチャンネルで公開されている無料チラ見せパートでは、その様子を垣間見ることができる(52:47あたりから)。

開演を今か今かと待っている、幕張メッセのイベントホールを埋め尽くすほどの観客と、色とりどりのペンライトの光。そんな場内を行き来するカメラの映像が、現地でもステージ前方のスクリーンに映し出されていたのだが、そこでちょっとした「遊び」のようなやり取りが発生していたのもおもしろかった。

カメラを向けられて大きく映し出された人が、ノリノリで手を振ったり、グッズやぬいぐるみで自分の「推し」をアピールしたり。そのたびに歓声や拍手が起こるなど、カメラを通してファン同士の交流が生まれていた。ライブ開演前のあの独特な高揚感と期待感を久しぶりに感じられたことも、4th fes.の印象的な出来事のひとつだったように思う。

そして、開演後の盛り上がりっぷりは言わずもがな。数年ぶりに声を出してライブを楽しめる空間で、推しに向けて自身の声を直接届けるべく、多くの人が歓声を上げながら、心から楽しそうにペンライトを振っていた。久しくYouTubeのコメント欄やTwitterの呟きでしか見ることのなかった「ホロリス」たちの姿が、そこにはあった。

パワフルなユニットパートと、サプライズがアツい!「hololive stage DAY1」


「キラメキライダー☆」

最初からクライマックスと言わんばかりに、「キラメキライダー☆」でスタートしたDAY1。この日の出演者が勢ぞろいしたステージを見て、ある人は「やっとこの場所に来れた!」と、またある人は「帰ってきた……!」と、各々に想いを込めてペンライトを振っていたのかもしれない。このライブが“最高の時間”になると確信させられる幕開けとなった。

全体曲のあとは、DAY1の出演者が入れ代わり立ち代わり登場するソロパートへ突入。合間合間にMCが挟まれはするものの、3〜5曲が休みなく立て続けに歌われるので、立ちっぱなしでペンライトを振り続ける人たちのことが少し心配になるレベルだった。――体力ではなく、情緒的な意味で。


沙花叉クロヱ「擬態ごっこ」


ワトソン・アメリア「ChikuTaku」


七詩ムメイ「My Dearest」


さくらみこ「サクラカゼ」

というのも、続けざまに登場するホロメンの“生”の姿と、1曲1曲が全力のパフォーマンスを見て、推しの過剰摂取で情緒がぶっ壊れるんじゃないか――。思わずそう心配せずにはいられないほどの、パワフルで洗練されたステージが繰り広げられていたからだ。さくらみこさんの「サクラカゼ」では、感激のあまり爆散した35Pがいないか心配になるほどだった。

ソロパートだけでもお腹いっぱい、大満足でふわふわした心地になっていた人も多かったかもしれない。しかし、DAY1はまだまだ終わらない。この時点で山盛りの26曲を堪能させられていたというのに、自身のソロステージの後に登場したときのそらさんの話によれば「この後もいろんな曲が続いていく」らしいのだ……ガチィ?

すでに満たされきった表情をしているホロリスのテンションをさらに加速させるべく、アユンダ・リスさんとアイラニ・イオフィフティーンさんの「トンデモワンダラーズ」から、ユニットパートがスタート。キュート系の3曲とMCを挟んで、この2日間でも特に観客の熱量が爆発していたフィーバータイムに突入する。


夜空メル、ロボ子さん、AZKi「可愛くてごめん」


小鳥遊キアラ、一伊那尓栖、ワトソン・アメリア、七詩ムメイ「スキちゃん」


癒月ちょこ、大空スバル、姫森ルーナ「とまどい→レシピ」


赤井はあと、クレイジー・オリー「ロストワンの号哭」

その先陣を切ったのが、赤井はあとさんとクレイジー・オリーさんの2人による「ロストワンの号哭」。歌いながらお互いに熱を高めていくようなパワフルな熱唱に、どんどん激しさを増していく赤のペンライトの光の波。この時点で会場のボルテージは最高潮に達していたように思う。


ときのそら、角巻わため「ETERNAL BLAZE」

かと思えば、次の曲はまさかまさかの「ETERNAL BLAZE」。しかも歌うのは、ときのそらさんと角巻わためさん。2人の歌唱力とハーモニーにぶん殴られつつ、もはや懐かしさすら感じるコールが幕張メッセを揺るがすのを聞いた瞬間、2010年代にアニソンライブやボカロイベントによく行っていた筆者は「帰ってきた」と思わずにいられなかった。平成のオタクのみんな……! 生きていたのね……!


ラプラス・ダークネス、風真いろは、沙花叉クロヱ、鷹嶺ルイ、博衣こより「常世リペイント」

オタクのテンションを爆上げる2曲が続いたことで、「この後の流れ、どうなっちゃうの……?」と一瞬だけ心配になるも、それもすぐに杞憂だったと気づかされた。

そう、まだユニットパートに出ていない、あの面々がいるではないか。我らが総帥が統べる、秘密結社holoxが……! ついにライブ会場の現地で聴けた5人(ラプラス・ダークネスさん、風真いろはさん、沙花叉クロヱさん、鷹嶺ルイさん、博衣こよりさん)の「常世リペイント」に、大勢のホロクサーがぶち上がっていた。

ユニットパートの最後に登場したのは、「しらけん」こと不知火建設の面々(不知火フレアさん、さくらみこさん、尾丸ポルカさん、白銀ノエルさん)。

一転して穏やかに、それでいて高々に歌われる4人の「群青讃歌」に聴き入っていたところ、なんと間奏で星街すいせいさんが登場! 最後の最後に仕込まれた最高にエモーショナルなサプライズ演出に、会場からは驚きと歓喜の悲鳴が上がっていた。

もしこの日のライブが声出しNGだったとしても、声が漏れ出るのを我慢できた自信がない。一瞬にして青い光に染め上げられた幕張メッセで、サビで鮮やかに広がる5人の歌声を聴きながら、「しらけんは青春……」と涙していた人も多かったんじゃなかろうか。


不知火フレア、さくらみこ、尾丸ポルカ、白銀ノエル、星街すいせい「群⻘讃歌」

最後は全体曲「Our Bright Parade」を出演者全員で歌い終えたところで、DAY1は幕を閉じる。25人が同時に並び立つステージは、本当に夢のような光景だった。

尖った選曲で大盛りあがり!? 新曲披露もあった「hololive stage DAY2」

「Shiny Smily Story」

最初からクライマックスと言わんばかりにライブが始まったのは、DAY2も同様だった。1曲目から全体曲「Shiny Smily Story」でスタートダッシュを切り、ソロパートの1人目は白上フブキさん。オリジナル曲「Hi Fine FOX!!」で会場を全力であっためて、ファンへの愛を大声で響かせつつクールに去っていった。

その後の「前半に出演者一人ひとりのソロパートがあり、後半はユニットによるパフォーマンスがある」という構成もDAY1と変わらない……のだけれど、改めてDAY1のセットリストと並べて振り返ってみると、DAY2はどことなく変化球も多く、DAY1とは違う意味で感情をぶっ壊されていたような気もする。


百鬼あやめ「かわ世」


夏色まつり「ゼッタイ王政カーニバル!」

たとえば、百鬼あやめさんの「かわ世」に、夏色まつりさんの「ゼッタイ王政カーニバル!」と、新曲が連続で披露されたこと。ライブでの新曲披露は定番と言えば定番だが、まさか2連続でくるとは……! 百鬼組とまつりすにとっては、特に嬉しいサプライズだったはず。

続く兎田ぺこらさんと猫又おかゆさんも比較的新しい自身の曲を歌っていたため、オリジナル曲の流れが続くのか……と思いきや、ここで急展開。桃鈴ねねさんは「学園天国」、戌神ころねさんは「走れマキバオー」、がうる・ぐらさんは「メグメグ☆ファイアーエンドレスナイト」と、時代もジャンルも異なるカバー曲が立て続けに歌われる謎展開に。どうしてこうなった。いいぞ、もっとやれ。

中でもインパクトがあったのは、やはり「走れマキバオー」だろうか。スーパーフィジカルモンスターころねさんによる早口実況と連続側転、そして、そもそもの選曲に対して、驚愕や困惑、爆笑や感激といった数多の感情が観客のあいだを飛び交っていた光景は、「カオス」の一言である。さすがはCrazy Cute Doggo。


戌神ころね「走れマキバオー」

また、後半のユニットパートもユニットパートで、なかなかにカオスな展開が待ち受けていた。

天音かなたさん、宝鐘マリンさん、百鬼あやめさんの3人による「Bad Apple!! feat. nomico」に始まり、猫又おかゆさん、戌神ころねさん、大神ミオさんの「ウマーベラス」、紫咲シオンさん、がうる・ぐらさんの「恋は渾沌の隷也」という流れに、軽くテンションが迷子になりそうになりながらも大盛りあがりのホロリスたち。それ以外も特定の層に刺さりそうな選曲が多く、会場のあちらこちらで歓喜の悲鳴があがっていた。


オーロ・クロニー、セレス・ファウナ、ハコス・ベールズ「summertime」


雪花ラミィ、アキ・ローゼンタール、夏色まつり、桃鈴ねね「放課後ストライド」

兎田ぺこら、獅白ぼたん、白上フブキ「ワールドワイドフェスティバル」

そして迎えた終盤は、一言で説明するなら「パワー」と「エモ」でぶん殴られた展開だったように思う。森カリオペさんとIRySさん、2人の歌唱力モンスターによる「怪物」によって急上昇させられた会場のボルテージは、ムーナ・ホシノヴァさん、パヴォリア・レイネさん、アーニャ・メルフィッサさんの「夜咄ディセイブ」で最高潮に。

そんなカオスなDAY2のユニットパートのラストを飾ったのは、星街すいせいさん、湊あくあさん、常闇トワさんが歌う「空奏列車」。ライブ前の金曜日に動画が公開されたばかりの、Startendの3人によるカバーである。それをまさかこの大舞台で、しかも最後の最後に聴けるとは……!


星街すいせい、湊あくあ、常闇トワ「空奏列車」

2日間のライブを改めて振り返ってみると、DAY1もDAY2もストーリー性のあるユニットがトリを務めたことで、エンディングでもある全体曲「Our Bright Parade」にバトンを渡しつつ、ライブを通しての満足感にも一役買っていたように思う。

もちろん、しらけんとStartendだけではなく、ホロライブ内にはさまざまなユニットやグループがあり、それぞれに物語がある。普段の活動を通して自然と紡がれてきた数多のストーリーが、ある種の結実を迎えるステージ。当然そこで終わるわけではないものの、歌とダンスのパフォーマンスだけにとどまらない“物語”の文脈を感じられることもまた、全体イベントの大きな魅力なのかもしれない。


「Our Bright Parade」

昼公演もたっぷり20曲!5周年の挨拶もあった「holo*27 stage」

さて、DAY1とDAY2の2公演に加えて、今回の4th fes.ではもうひとつ、新たに設けられていたステージも外せない。それが「holo*27 stage」だ。

holo*27は、DECO*27さんとホロライブがタッグを組んで展開中の音楽プロジェクト。DECO*27さんによる総合プロデュースのもと、3月15日には「holo*27 Originals Vol.1」「holo*27 Covers Vol.1」の2タイトルがリリースされている。holo*27 stageは、その2つのアルバムに収録されている楽曲を楽しめるコラボレーションステージだ。

実際に2日目昼に行われたライブでは、両アルバムに収録されている全20曲が次々に披露された。


さくらみこ、兎田ぺこら「モッシュレース」


夜空メル、癒月ちょこ「ヴァンパイア」

ライブ冒頭では、さくらみこさん&兎田ぺこらさんの2人によるオリジナル曲「モッシュレース」に始まり、夜空メルさん&癒月ちょこさんの「ヴァンパイア」、姫森ルーナさんの「シンデレラ」、大神ミオさん&博衣こよりさんの「アニマル」が続けて歌われた。

セットリストからもそこはかとなく文脈を感じられる組み合わせになっており、また、有名な楽曲も多かったことから、アルバムをまだ聴けていない人でも楽しめるステージとなっていたのではないだろうか。

個人的には、元気いっぱいにぴょんぴょん飛び跳ねながら「夢嵐」を歌い上げた風真いろはさんや、人気曲「乙女解剖」を蠱惑的な歌とダンスで魅せたムーナ・ホシノヴァさん、“Smol”な体で歌って踊るポップなMVとは異なる「Sweet Appetite」を堪能できた、がうる・ぐらさん&ハコス・ベールズさんのステージが印象的だった。


風真いろは「夢嵐」


ムーナ・ホシノヴァ「乙女解剖」

また、オリジナルとカバーが混在したセットリストで、DECO*27さんの音楽にどっぷりと浸かれることもholo*27 stageの魅力だが、ほかにも2点、特筆すべきポイントがあったように思う。ひとつは、このステージに立つホロメンが、見慣れた姿でパフォーマンスをしていたこと。


がうる・ぐら、ハコス・ベールズ「Sweet Appetite」

出演者全員が新たなアイドル衣装(ブライト衣装)を身にまとってステージに立った2日間の夜公演に対して、昼のステージに現れたホロメンは、全員がいつもの服装だった。普段の配信やショートアニメ「ホロぐら」でもおなじみの、慣れ親しんだ格好で歌って踊る姿を見ることができたのも、holo*27 stageの見どころの1つと言える。

もちろん、「アイドル」を前面に押し出したブライト衣装は4th fes.を象徴する姿であり、間違いなく今回のイベントの大きな見どころだった。しかし一方で、見慣れた「普段着」で幕張メッセの大きなステージに立って歌う姿も、それはそれで良い演出だったように思う。昼と夜の2つのステージでそれぞれ別の服で歌うホロメンの姿を見られたのは、個人的にも嬉しいポイントだった。

そしてもうひとつは、最後の1曲を歌う前にステージに立った、ときのそらさんのMCだ。

両日の夜公演と同様に、合間合間でMCを挟みながら、たっぷり20曲を楽しめたholo*27 stage。先ほどから繰り返しているように、たくさんの出演者と楽曲を濃縮したライブ体験は4th fes.全体を通しての魅力だが、一方では、良くも悪くも「詰め込まれている」と捉えることもできたように思う。

トラブルらしいトラブルはなく、曲の合間の準備時間も最小限におさえられ、テンポ良く進んでいくステージ。それは、「ライブ」としては文句の付けようのない、最高の体験だ。ただ、これだけの曲数と出演者を前提として時間を確保しようとすると、どうしてもMCの尺や登場する人数を削る必要が出てくる。「MCが短くて物足りなかった」とまでは感じなかったものの(むしろ絶妙なバランスだった)、若干の忙しなさを感じたことは否めない。

その「テンポが良すぎる構成」はholo*27 stageも同様だったが、そんななか、ときのそらさんの最後のMCに関しては、尺が少し長めに取られていたように感じられた。――いや、尺の長さというより、どちらかと言えば「そらさんが自然体で話している(ように見えた)」ことと、その話の内容に聴き入ってしまったことで、濃縮されたライブ体験の中でも強く印象付けられた時間になったのかもしれない。

見慣れた姿でステージに立った彼女が話したのは、5周年を迎えた「ホロライブ」と、その「これから」について。

「いつも応援してくれてありがとうございます!」と会場に向かって元気いっぱいに呼びかけながら、でもどこか緊張しているようにも見えたそらさん。彼女の口から続けて語られたのは、ライブの合間に挟まれる「MC」というよりは、5周年を迎えての「挨拶」のような言葉だった。

「今ここで支えてくださっているスタッフのみなさん。そして私の大事な後輩の仲間のみなさん。そして何よりも! 応援してくれているみなさんの笑顔が、私を幸せにしてくれていると思っています! これからも、私たちと一緒に、幸せな時間を共有してくれますか? これから先、5年と言わず、10年、15年と、ずっとずっと、一緒にいてくれますか!?」

それは紛れもなく、「ときのそら」という等身大の女の子の言葉だったように思う。

ホロライブを、カバーを、ひいてはバーチャルYouTuberの世界を、初期の頃から引っ張り続けてきた彼女。たくさんの経験をして、いくつものステージに立って、最前線で活動をしながらファンの近くで声を届けてきた、1人のバーチャルアイドル。けれど、他の誰よりも多くの経験をしてきたということは、他の誰よりも多くのものを背負っていたとしてもおかしくはない。

どれだけ有名な人でも、たくさんの経験を重ねてきた人でも、大勢が関わる大舞台に立てば、緊張で声を震わせてしまうことだって当然ある。この日のそらさんのMCからは、そんな緊張感と、リアルタイムで会場とやり取りをしているがゆえの“生”の感情が見て取れていた。隠しきれないドキドキを抱えながら大舞台に立つ、等身大の女の子の姿が、そこにはあった。


ときのそら「愛言葉Ⅳ」

それでもいざ音楽が流れて歌い始めれば、その姿は「アイドル」そのもの。holo*27 stageのトリを飾る彼女が歌ったのは、「愛言葉Ⅳ」だ。

オリジナルは2022年5月27日に投稿された楽曲であり、2009年から続く「愛言葉」シリーズの第4作目。DECO*27さん自身の複数の楽曲から歌詞やメロディが引用されており、その多くはこのステージでも歌われている(ヴァンパイア、妄想感傷代償連盟、乙女解剖、ヒバナ、ゴーストルールなど)。

DECO*27さんを象徴する1曲とも言えるこの曲を、ホロライブを象徴するアイドルでもあるときのそらさんが、4回目の全体フェスで、5周年の感謝を述べたあとに歌う――。

それだけでもういろいろな文脈を汲み取れそうだが、改めて振り返ってみると、あの会場でステージを見ている最中は、そんなことはどうでもよくなっていた。数分前の緊張なんてなんのその、堂々とした面持ちで歌って踊る彼女の姿を、1秒でも長く見ていたい。見逃したくない。最後の最後までライブを楽しみたい。その一心で、ステージに視線を注ぎ続けるばかりだった。

その日、キラッキラのステージで歌う“普通の女の子”の姿は、やっぱり最高に輝いて見えた。

とまらないホロライブは、ひろがるホロライブへ

2日間で、92曲。

とにかく尋常ならざるボリュームが強く印象に残った4th fes.だが、その中にもドラマがあり、ホロメンにとってはライブのために積み重ねてきた努力があり、ホロリスにとっても念願叶っての「現地」だったという人も多かったかもしれない。特に海外ニキ――イベントのために日本の外から駆けつけたホロメンも想像以上に多く、SNSではライブを全力で楽しむ様子も話題になっていた。

また、「ホロライブ」としては4回目の全体ライブだが、同時にそこは、誰かにとっては「初めて」の夢の舞台でもある。

仲間とおそろいの衣装を身にまとい、ちょっと恥ずかしそうに――でも心から嬉しそうに――「本当のアイドルになれました……!」と話していた、森カリオペさん。あるいは、不調によって活動休止を余儀なくされていたラプラス・ダークネスさんの、「諦めないで良かった、ありがとう」というツイート

あのステージに立った51人全員に別々の想いがあり、物語があり、さらには壇上のアイドルたちを応援していた大勢のホロリスたちも、きっとそれぞれに特別な気持ちをいだきながら、あの場所に集っていた、あるいは配信を見ていたのだと思う。

ときのそらさんを筆頭に、とまらずに歩み続け、ステージをこえてアイドルとして花開き、たくさんの世界とつながってきたホロライブ。5周年を迎えてますますひろがり続けるホロライブの5年後、10年後を、ここから、これからも追いかけ続けたい。そう思わずにはいられない、最高のイベントだった。

公式サイト:https://hololivesuperexpo2023.hololivepro.com/
SPWN(アーカイブ配信):https://virtual.spwn.jp/events/23031801-jphololive4thfes

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