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ホロライブ 2022.06.27

ホロライブのメタバース「ホロアース」が目指すものとは? 事業担当者と開発中のデモ版を体験

カバー株式会社が現在開発中のメタバースプロジェクトの一角であるサンドボックス・ゲーム「ホロアース」。異世界創造プロジェクト「ホロライブ・オルタナティブ」から生まれた企画で、「VTuber」と「メタバース」を組み合わせた内容になると告知されていることから、ファンの間で大きな注目を集めています。

昨年11月には所属VTuberによるテストプレイ配信が実施され、今年3月にはテスト版アプリが公開。その一部内容は判明していますが、未だに全容のつかめないプロジェクトとなっています。

MoguLive編集部は今回「ホロアース」の開発に携わる、カバー株式会社 メタバース事業本部 プロデューサーの大岡祐輝さんにインタビューを実施。現在開発中の「ホロアース」のデモ版を実際に見ながら、どのようなメタバースを目指して制作されているかをお聞きしました。

「得体の知れないもの」ではなく、ゲームとして触れてもらいたい

――まず⼤岡さんの現在の役職と、取り組まれているお仕事についてお聞かせください。

大岡:
メタバース事業本部でプロデューサーとして、プロジェクト全体を束ねる仕事をしております。

――⼊社当時から同じ仕事をされていたのでしょうか?

大岡:
入社は2020年ごろで、もともと、バーチャルライブイベントのプロデュースとディレクション、タレントマネジメントやスタジオ構築などを手広く担当していました。ホロライブIPをより広げていく新しいチャレンジとして、メタバースプロジェクトが立ち上がったのがちょうど昨年です。当時は私とエンジニアが1〜2名の体制からスタートしていて、私は企画のコンセプトを詰める仕事をしていました。

もともと、「ホロアース」の原案は2019年の冬のコミックマーケットの頃から本として世に出ていたのですが、この世界観を使ってゲームなどのメディアミックスを計画していました。

当初はモバイルゲームを作ろうかという話もあったのですが、ちょうどメタバースが急速に持ち上がってきたタイミングというのもあり、谷郷(※株式会社カバーCEO)や福田(※カバー株式会社CTO)が実現したいと夢見ていたプラットフォーム構想へ合流する形で、メタバース路線へ舵を切りました。

――ちなみに、チームは現在どのくらいの規模なのでしょうか?

大岡:
大体50名ほどです。外部の開発会社などでサポートいただいている方々もいるので、実際はもっと多くの人が関わっています。

もともとゲーム開発会社じゃない会社がいきなり「サンドボックスゲーム(※)作るぞ!」と言い始めて、当初は周囲からも「何を言っているんですか」と言われるところからスタートしましたが、1年ちょっとでこの規模で開発ができているのは、我々としてもすごいことだと思っています。

※サンドボックスゲーム:プレイヤーに明確な目標やストーリーなどを設定せず、自由に行動できるようにするタイプのゲーム。著名なタイトルの一つとして「Minecraft」が挙げられる。

――実際、VTuber事業を担当しつつ、メタバース事業も始めること自体が珍しい事例ですし、驚きがありました。

大岡:
やろうと思っても、普通はやらないですからね(笑)。そもそも「メタバースとはなにか」という疑問は各社さん抱えていらっしゃいますし、ユーザーの方々も同様の思いをもっていると思います。

そんな方向に本気で舵を切れるのは、弊社の魅力の1つかなと思います。それはVTuberというある意味で「(当初は)得体の知れないもの」を扱って、ものすごく急速な成長を目の当たりにした黎明期のメンバーが多いからこそ、今回のようなチャレンジに踏み切れるのではないかなって思います。

――読者の⽅も「ホロアースとは何か?」をつかみきれてないところもあるので、今の時点でどのようなサービスで、何が楽しめるのかを教えていただけますか?

大岡:
例えばiPhoneは「電話ですよ」と渡されれば、⼀般の⽅々はすぐに分かると思うのですが、「スマートな未来のデバイスなんですよ」と渡されても「はて?」ってなるはずですよね。おそらくメタバースも同様で「メタバースで遊んでください」と言われても、そもそも「自分が求めてたものなのかが分からない」状態だと思います。

なので、いきなり「得体の知れないもの」を世に出すのではなく、「サンドボックスゲーム」を軸に開発を進めています。リリース当初は、よくある「普通のゲームが楽しめる」と思ってくだされば大丈夫かと思います。

「なぜ、サンドボックスゲームなのか?」といった理由は2点あります。1つは、弊社所属のタレントの方々に遊んでもらって「配信での撮れ高」を作っていただくこと。ゲームがタレントさんの役に立つというのが大きな目標となっています。

もう1つは「ゲーム以外の利用の仕方、つまりメタバースとしての活用を想定している」ことです。実際、現在メタバースの本流にあるサービスでは「渋谷を再現しました」「博物館を設立しました」「学校の入学式を実施しました」といった、ゲーム的な機能を利用しつつゲームにとどまらないイベントを提供していますよね。

「ホロアース」では、ゲームの「マッチングロビー」に相当する部分で上記のようなメタバースのサービスを実施する予定です。そのロビーでは、ゲーム本編に⼊る前に、誰かと打ち合わせしたり、パーティメンバーを探したりといったユーザー間でのコミュニケーションができます。さらに週末には⾳楽ライブやファンミーティングが⾏われる予定です。こういったロビーを中心とした形でのメタバースサービス提供を考えています。

――プレイヤー側からすれば、普段はゲームを遊びつつ、さらにロビーで交流イベントや音楽ライブといったサービスも受けられるわけですね。

大岡:
弊社としては、まず「ゲームとして遊んで欲しい」からスタートしていただきたいと思っております。そして「ゲームとして遊べるんだけども、⼟⽇は音楽ライブにも行けるよ」、「映画館でホロライブの動画を見られるよ」といった展開の広がりを見せていく予定です。

また、もう1つの⼤きな柱として、アバターのクリエイト機能を作ろうと考えています。このアバター機能は、バーチャルイベントやコミュニティスペース、ゲームを⽀える機能の⼀つと考えています。弊社タレントはすでに自分の肉体を持っていますので、それをメタバースに降臨させる形で考えていますが、それとは別にユーザーがタレントと触れ合うためのアバターとして、自分のキャラクターを作れるような機能を提供したいと考えています。

――先ほど「ゲームとして遊んで欲しい」との言葉がありましたが、このゲームでは具体的にどういった要素を楽しめるのでしょうか? アイテムや家具を制作するクラフトに焦点を置いたゲームなのか、それともRPGのような壮大な物語が展開されるゲームなのか気になるところです。

大岡:
ジャンルとしては「サバイバルゲーム」になるかと思います。なので、敵モンスターとのバトルはありますし、家具やアイテムをクラフトをする要素も当然あります。壮大なストーリーを追体験する遊び方とは異なり、従来品を例に出せば「Minecraft」や「ARK: Survival Evolved」のような作品と近いイメージのものになります。

サンドボックスゲームなので、人それぞれ自由な遊び方ができるよう、様々なプレイスタイルを用意したいと思っています。

ゲームの遊び方の一例を紹介すると「クエストが発生し、それをクリアするとアイテムがもらえる」という感じで、クエストを進めるプレイスタイルがあります。

例えば、ホロライブ所属のタレントに関連したイベントクエストが発生して、それをクリアすると、そのタレントにちなんだぬいぐるみや家具がゲットできるといったことも企画アイデアとして考えています。

そのため「特別なアイテムをゲットするためにクエストをクリアしよう!」といった目的で楽しく遊んでいただけるとかなと考えています。

それから、サンドボックスゲーム側で報酬としてポイントがもらえて、それを用いてロビーで自分の服などを買えるようにするといったことも構想中です。ゲーム内で手に入れた服をロビーなどへ持ち込み、ライブなどへ参加する際にオシャレとして活用してもらうといったイメージですね。

ロビーで他のユーザーから「そのアイテムってなに?」と聞かれて、「ボスを倒したらゲットできたよ」といった会話が弾むと「じゃあ明⽇倒しに⾏こう!」とモチベーションも上がるのではないかと。

――オンライン上で特定のフレンドと交流できるような、いわゆる「フレンド機能」もあるのでしょうか?

大岡:
「フレンド機能」自体はゲームの開発機能リストの中に含まれています。コミュニティ機能や連絡機能なども実装されていくことにはなると思いますが、ローンチ時点で含まれているかどうかは調整中です。

そして「ホロアース」が作られていく過程も、ライブエンタメとして提供していこうと考えています。「未完成のものをそのまま出すのは恥ずかしい」とは思わず、制作進行中のものを順次公開していき、これが一体どのようなゲームなのかをアピールしていこうと思っています。

――リリース時期の目安などはあるのでしょうか?

いわゆるアーリーアクセスに近い形でリリースに踏み切るかもしれません。みなさんが思ってる以上に早いタイミングでお届けできるように考えています。開発期間としては正味2年ぐらいを予定しており、現時点で1年ほど経っていますので、もう1年後に出来高を確認した上で、みなさんに手にとっていただきたいですね。

当然、ゲーム会社ではなかったところからスタートしているので、チャレンジづくしではありますし、予定がどのように変動していくかは未知数な部分もあります。ただ、こうしたゲームを作る会社が国内にあまりなかったからか、「やっぱこういうものを作りたかったよね!」と言ってくれる仲間が多く集まっています。

今のメンバーも百戦錬磨の面々が集まっていて、私自身が思っている以上に開発は順調に進んでいるのを見ると、みなさんのご期待に添えるのではないかと希望的に感じているところです。

開発中の「ホロアース」の画面を見せていただいた

ここから、開発途中のデモプレイを見ながら「ホロアース」がどのようなゲームであるかを語ってもらいました。

――アバターがすでに完成されているのですね。

大岡:
6月の半ばぐらいに公開するプレスリリースの中で、アバターキャラクターのデザインを初披露します(※取材は5月末に実施)。アバター⾐装と、アバターキャラクターが掲載されたキービジュアルが公開される予定です。

――アバターが⼿に持ってるものは……?

大岡:
盾と剣です。これで敵と戦えます。

――あそこに敵もいますね。倒すと素材になると。

大岡:
戦闘用のスキルも使えますね。これを活用して戦うかたちです。

――アイテム⾃体はエリアで集めていくのでしょうか?

大岡:
そうですね。基本的には⼀般的なクラフトゲームと⼀緒で、素材を集めて作っていくのが主です。⽊を切ったり、敵を倒したりできる。いまはなんでも一発で粉砕できる「デバッグ用のハンマー」を使っていますが、本来はアイテムごとに強度の概念があります。

――去年、⽩上フブキさんの先行プレイ(※)を拝見したきりだったので、そこから大幅に要素が増えていますね。狩猟サバイバルゲームとして完成度が上がっている印象です。

※⽩上フブキさんの先行プレイ:2021年11月23日に実施された、⽩上フブキさんと大神ミオさん、裏方の友人Aさんによるテストプレイ配信。

大岡:
これが「観測データ」を収集するオブジェクトです。「観測データ」を集めていくと、いろいろな機能がアンロックされていきます。それによって探索の意欲が生まれるようになっています。

――フレンドの建てた家などには行けるのでしょうか?

大岡:
ゲーム本編に入る前に個別のサーバーを立てることができます。ホストとして自分のサーバーを立てて、そこにフレンドをゲストとして招待すれば、参加できるようになる予定です。

大岡:
これがクエストです。

――「タレントからの依頼」という形なのはファンにとってうれしいですね。赤井はあとさんは「タランチュラシチュー」ですか……。

大岡:
一応料理もできるので、本実装されるかはわからないですが、タランチュラを使って料理することも可能になるかもしれません(笑)。

――クラフト素材も増えたのでしょうか?

大岡:
そうですね。かなり増えているし、クラフトの仕組みもかなり変わっています。

――クラフトアイテムにもホロライブらしい小ネタが仕組まれているのもうれしいですね。そればかり作る⼈も出てくるかもしれませんね。

大岡:
クラフトアイテムは開発段階で日ごとに増殖していて、もう私が知らないものがあります(笑)。

――クラフトは「Fortnite」的で、慣れ親しんでいる人にはすぐ馴染みそうですね。拠点作りが重要になりそうですが、建物が壊されることもあるのですか?

大岡:
はい。家具はダメージを受けると壊れます。めちゃくちゃ強い敵がでてくると壊されると思いますね。

――家具が本当にお洒落ですね。

大岡:
ちょっとモダンな家具のデザインになっています。

――あれ……?「寒くてお腹が空いてしまう」って……こんなステータスもあるんですね。ウカウカしていられない。

大岡:
サバイバル要素もあるので、私の場合は家具作りに夢中になっていると、気がついたら死んでいることも多いです。ただ、弊社のタレントの方々に配信企画をお願いした際にも「一般的なサバイバルゲームです」と伝えただけで、難なくプレイしていただけたので、⼀般ユーザーの方でも遊びやすいゲームになると思います。

――ユーザーの方にも「配信で見たこういうゲームですよ」と認知されている段階なので、「こういうものが遊べる場ですよ」と導入しやすそうですね。

「よくあるゲーム」から、「世界」が広がっていく体験を目指して

――今回驚かされたのは、クラフトの幅が広がっていたことで、原始的なサバイバルから文化的ハウジングまで可能な充実したゲームになっている点です。

大岡:
もしかすると、序盤は原始⽣活のようになるかもしれませんが、ゲームをやりこんでいくとモダンな家をちゃんと作って楽しめるようになると思います。そこは⼀般的なサバイバルゲームとちょっと違うところですね。

――たしかに、ハウジングをメインに据えたサバイバル・サンドボックスゲームってあまり見られないですね。

大岡:
デザイナーには現代的な家になるように、家具や建材などは意図的にモダンなデザインにしてほしいと伝えています。まず「⽣活すること」が楽しく、そして土日にはロビーからイベントに⾏ったり、ということもできればと考えています。

とても⻑期的な話ですが、ユーザーさん⾃⾝が家具や洋服を作って販売するといったUGC要素(※ユーザーが主体となって生成できるコンテンツの総称)や、クリエイターマーケット的なプラットフォーム運営にまで手を広げられると良いなという話をチームの中では交わしています。ゲームの⽴ち上がりが順調であれば、そういった要素とかにも⼿をつけていくことになると思います。

――UGC要素とマーケットプレイスなどが用意できると、「Roblox」のような、ユーザー主体のコンテンツ経済圏が生まれますし、既存のメタバースにも対抗できると思います。とはいえ、一般にイメージされる「メタバース」と比べると、独特なものがあると思っています。

大岡:
最初はゲームからスタートしつつも、そこから世界がどんどんと拡張していくことで、「ホロアース」という異世界で生活して、遊び、人生を送っている、という体験を提供していきたいですね。現実の空間で弊社のタレントのライブが開催されている時に、「ホロアース」の中でライブビューイング会場が立ち上がりロビー内で鑑賞できる、といったことも想定しています。

――今後のリリースまでの具体的な予定などについて教えてください。

大岡:
まず、ロビーの常設化を⽬指してます。なるべく年内には前回テストさせていただいたようなロビーをより安定させる形で公開し、ホロライブ所属VTuberによるミニライブなどを開催できればと思います。最初は技術検証として、入場料などは取らない形になるかとは思います。

――開発側から⾒て、ファンの方にはどういうところに期待してほしいポイントはありますか。

大岡:
一見すると普通のゲームで、世にある名作ゲームと比べると「こんなものだよね」と思われるかもしれません。しかし、タレントが頻繁に出入りをしたり、ライブが行われたり、アバターファッションを楽しめたりといった、これまでのゲームにはない要素が入ってくると思います。いわゆる「ゲームにはとどまらない」ところに期待していただきたいです。

――拡張性そのものに期待してほしい、ということですね。

大岡:
今でこそサンドボックスゲームですが、将来的には全く別のゲームが遊べるようになるかもしれませんし、ゲームじゃない何かになっているかもしれません。UGC要素としても、アバターのスキンを販売する機能も検討中です。ユーザーさんが自分で衣装を作って販売することで、アパレルショップ・ブランドを展開できる、というようになっていければ良いかなと。

――ホロライブのVTuberがリアルタイムにそのままゲームに現れるという体験は、他のサービスではなかなか無い体験かと思いますので、その点に期待しているファンも多いかと思います。

大岡:
そうですね。ただその一方で、弊社タレントの方々はやはり「ゲームの配信者」としてはトップクラスの方々なので、実際にゲームを配信して「⾯⽩いよね」と思われるものを作らなければいけないと思っています。

ファンの⽅々はもちろん「ホロライブを知らないけどサンドボックスゲームが好きな⼈」もターゲットに入れていて、そこからホロライブを知ってファンになってくれることも⾮常に期待しています。

先ほど話したとおり、タレントさん⾃⾝が配信の「撮れ⾼」をしっかりと作れて、ゲームとして楽しく遊べるという方針はズラさず、我々としても頑張っていきたいと思っています。

しっかりと「面白い!」と言ってもらえるものを目指しています!

――ありがとうございました。完成を期待しながらお待ちしております。

ホロアース公式サイトはこちら。
https://holoearth.com/


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