Home » 「レースゲームはVRと親和性が高い」「グランツーリスモ7」PlayStation VR2対応を、山内一典氏が語る


VRゲーム・アプリ 2023.02.10

「レースゲームはVRと親和性が高い」「グランツーリスモ7」PlayStation VR2対応を、山内一典氏が語る

2月22日に発売を控えているPlayStation VR2(以下PS VR2)。「グランツーリスモ7」(PS5/PS4用ソフト。発売元:ソニー・インタラクティブエンタテインメント)はPS VR2の発売と同時に無償アップグレードによりPS VR2対応となる。今回の無償アップグレードでは、ゲーム内のほぼすべてがPS VR2で遊べるようになるほか、「VRショールーム」といった鑑賞モードが追加実装されます。

MoguLiveではメディア合同インタビューで、「グランツーリスモ」シリーズ クリエイター山内一典さんにお話を聞くことができました。VRを想定して開発を進めていたとのことで、開発秘話を語っていただきました。

開発当初からVRを想定して進めていた

ーーVRに対応させていく上で苦労した点を教えてください。

山内:
今回のPS VR2対応については、「グランツーリスモ7」(以下「GT7」)を開発している時からターゲットにしていたもので、VRを前提に作っていました。これは僕の想像ですが、後からVR対応させるのはものすごく大変なんですね。

過去に「グランツーリスモSPORT」(前作。PS4用ソフト)のときに後からVR対応をやり大変だったんですね。
「GT7」は開発当初からVR対応を念頭におき、4K60FPSのVRネイティブに対応させていたので制作はスムーズに進みました。ただしネイティブで4K60FPSで動かすということは、あるいはVRでフルゲームを動かすというデータそのものを相当軽く作らないといけません。「GT7」の開発を通じて、負荷を大きく上げずに画のクオリティをキープするのが1番苦労した点ですね。

ーーPS VR2に対応した「グランツーリスモ7」ですが、「DualSense」(PS5用ワイヤレスコントローラー)とハンドルコントローラーのみ対応となっています。PS VR2には専用のコントローラーがありますが、非対応となった理由をお聞かせください。

山内:
車の運転の仕方を想像すれば、僕らが「PS VR2 Senseコントローラー」にあえて対応しなかった理由がわかると思います。車の運転ってシートに座って、アクセルとブレーキ、ステアリングだけで済むものですから、元々ある「DualSense」が持っている機能だけで充分だったのですね。

「GT7」のユーザーはハンドルコントローラーを持って、本気でプレイされる方が結構多いんです。PS VR2とハンドルコントローラーの体験は本当に車の運転とまったく同じ体験が得られるので、その2つを重視したということですね。

ーーPS VR2の仕様書が届いたときにどう思いましたか。

山内:
仕様書が届く以前からハードウェアのチームとコミュニケーションしていました。概ね2022年に求められているスペックは満たしているんじゃないかなと思っています。HDRの表現ができる様になったことや片目それぞれ2K(2,000×2,040)の解像度があるなど、実際にその通りになったと思います。

ーー「グランツーリスモSPORT」でもVRに対応させていましたが「前回ではできなかったことを今回の「GT7」で実現できた」といったことはありましたか?

山内:
「グランツーリスモSPORT」の頃のPS VRは今ほど解像度が高くなかったので、どこまできちんとレンダリングしても解像度の低さにも起因する酔いや不自然さがあったと思います。今回のPS VR2でパネルの解像度が上がったこと、またPS5のパワーで60Pで描画する、パン・チルトを動かすのをリプロジェクションで120FPSで描画できるようになったことなどで、酔いにくくなりました。以前は連続して30分、1時間で運転することは考えられなかったですけども、PS VR2とPS5の組み合わせがあれば、そういったことも可能になっています。

PS5でもオーバースペックなモデルで制作したことが生きた「VRショールーム」

ーー「VRショールーム」を見たときに、VRで鑑賞する上でここまで近くで見られる3Dモデルがあるのかと思いました。車の3Dモデルを作る際にどこまでVRを想定して制作していたのでしょうか。

山内」
「グランツーリスモ」は一定のレンダリングリソースがあった時にその多くを車の表現に注いできたタイトルではあります。現行のPS5世代でもはるかにオーバースペックな車のモデリングで制作しています。VRになったときにそのモデル自体が通常のゲームでは見られないようなディテールまで作り込んであるので、「VRショールーム」みたいなフィーチャーが生きるんですね。

ーー「VRショールーム」でウィンカーやライトをオンオフできる機能があり、芸の細かい面白かった機能の1つだったのですが、エンジンをかけたりコックピットを操作してみたりといった「VRショールーム」のアップデートを考えていますか。

山内:
(今後のアップデートについて)確かなことはお話しはできないですね。僕らも今回エンジンをかけたかったです。「VRショールーム」に入った瞬間に一瞬エンジンの始動音は入っていたかと思います。なぜできなかったかというと、エンジンをかけた瞬間に計器などのエンジン始動のアニメーションが入るので…そこまでは作り込むことができなかったのがあります。課題としては認識しているのですが、450台以上すべてに追加でできるのかというと、そこはまだわからないですね。

「GT7」とPS VR2は現在得られる最高のVR体験の1つ

ーー今回PS VR2版を初めてプレイする方へ、どういったところに注目してもらいたいでしょうか。

山内:
レースゲームはVRと親和性が高いと思っています。自分が座った状態で、自分の操作によって車が動くわけですが、その車の動きは基本的には前後の動きで、左右方向の動きなど多種多様な動きに制約されています。例えば静止した状態で真横に動くといったことはできません。ステアリング(※乗り物の進行方向を任意に変えるハンドル)を切ったときも、ゆっくり回転して自分の意思で曲がっていく。(想定外の思いがけない動きが少ない、自分の意思で動かした通りに動く)そういった事が組み合わさることで、酔いにくくなるんですよね。

VRって「ヘッドセットをかぶると酔っちゃう」って思っている方も多いと思いますが、今回のPS VR2と「グランツーリスモ7」の組み合わせというのは、かつてのVRが持っていた悪い点は少なくなっているので、体験してみる価値があると思います。

もう1点、僕らはこれまで「グランツーリスモ」の歴史を通じて、世界中のさまざまな美しい景観、リアルなサーキットを紹介してきましたけども、テレビのスクリーンで表示している限り、どんなにリアルに作り込んだとしても限界があったんですよね。

VRで体験することで、本当に「ニュルブルクリンク」や「筑波サーキット」そのものの景色を体験できることはいくら強調しても強調しきれないところです。「グランツーリスモ7」とPS VR2の組み合わせは現在得られる最高のVR体験の1つであろうと思っています。

ーー今回いろんなコースを体験してもらって背景に目が行くことがあったのですが、山内さんのオススメの背景を教えてください。VRになって一番進化したと思われる背景はどこでしょうか?

山内:
幾つかありますが、「東京エクスプレスウェイ」は上や横に広がる立体的な構造物に囲まれているようになっていますが、オープンカーで走りながらコースを眺める楽しさがあります。あんまり早すぎない車でゆっくりドライブするぐらいの感覚で「東京エクスプレスウェイ」を流すってのは、1つのVR体験の面白いところですね。

もう1つは「ニュルブルクリンク」といったアップダウンの激しいコースになりますね。これまでレースゲームでは画角が狭くてアップダウンを表現できなかったですよ。VRでは、とてつもない壁のような上り坂であったり、崖から落ちていくような下り坂といった表現が本当に自然な距離感で認知することができます。

僕らも作ってみて分かったのですが、ブレーキングポイントを探すのもすごく楽になりました。自分たちが普段感じているような認知と全く同じ形で認知ができるので「このへんでブレーキを踏んでおかないとヤバいかも」といった感覚は、VRのほうがより確かに分かります。

レースゲームが次のステージに行ったことを実感してもらいたい

ーーファンに向けて細かいけどもここは見てほしい、気づいてほしいポイントはありますか。

山内 「VRショールーム」で見られる車の作り込みのすごさみたいなことは見ていきたいと思います。やはりレース体験そのものが根本的に変わって車に乗っている感覚そのものになるので、2023年になってレースゲームが次のステージに行ったことを実感してもらいたいと思っています。

ーー最後にこれから体験するユーザーに向けてメッセージをお願いします。

山内:
レースゲームとして新しい時代が始まったということです。走行体験、運転体験が限りなく本物と同じようにできるようになった事は、すごく大きな進歩です。VRというと酔うイメージがあると思うのですけども、きちんと作ればそうならないことも伝えていきたいです。いまVRってこんなことができるんだと、ぜひ皆さんに体験してもらいたいです。

PS VR2の発売は2月22日、発売時点で「グランツーリスモ7」も無償アップグレードでPS VR2対応となる。先行体験で試遊した際は、インタビューの通りVR前提の仕様となっていたこともあって、かなり快適に遊ぶことができました。「グランツーリスモ7」が新たなVRゲームの流行を生み出すと期待しています。

「グランツーリスモ7」の詳細はこちら。
https://www.gran-turismo.com/jp/gt7/top/


VR/AR/VTuber専門メディア「Mogura」が今注目するキーワード