米メディア・ブルームバーグは、アップル社にAR(拡張現実)に関する取組について、2019年にはAR専用ヘッドセット(以降、ARヘッドセット)の市場投入の準備が整い、2020年の早期に出荷するなどの詳細なリークを報じています。
これまで、アップルのCEOティム・クック氏はARに関して「ARは現実世界を向上させる、だからこそ素晴らしい」など積極的な姿勢を見せてきました。
そして、ARに関する取組の第一歩として、2017年9月からアップデートが行われたiOS11では、条件を満たした世代以降のiPhoneやiPadでAR機能「ARKit」が使えるようになりました。ARKitは、スマートフォンなどのカメラを通して現実空間の構造を一部認識し、バーチャルな物体を置くことが可能になります。
本件に関して、アップル社はコメントを控えているとのこと。ブルームバーグが本件に詳しい匿名の情報筋から得たものとされています。
一体型で独自のチップとOSを内蔵
ブルームバーグが報じるところによると、このARヘッドセットは、スマートフォンやPCなどを使わずにヘッドセット単体で動作する一体型ヘッドセットです。独自のスクリーンとOS、チップセットを搭載しています。2019年に市場投入の準備が整い、2020年の早期に出荷を開始する計画とのこと。「現在、開発は非常にアグレッシブな計画で進められており、変更はありうる」ともされています。
搭載されるチップセットは、ARヘッドセット用にグラフィックプロセッサ、AIチップ、CPUをまとめたものになり、Apple Watchのようにアップルが内製します。ARヘッドセット向けには既存のプロセッサーよりも小型である必要があり、さらに省電力で動作しなければなりません。
アップルはこれまで、Apple TV向けにtvOSを、Apple Watch用のWatchOSなど、デバイスごとに専用のOSを作ってきました。ARヘッドセットのソフトウェアを動かすオペレーティング・システム(OS)も「rOS」(Reallity Operating System:リアリティ・オペレーティング・システム)と呼ばれる独自のOSを開発しているとのことです。
いずれのOSでもアプリケーションはApp Storeで統一的に展開されていますが、ARヘッドセット向けのアプリもApp Storeで配信されます。
開発はHTC ViveやiPhone専用VRヘッドセットを使用
アップルのARチームでは、現在、ARでの操作方法が試行錯誤されています。ARヘッドセットは依然として開発中のため、PC向けVRヘッドセットのHTC Viveを使用したり、Gear VRのようにiPhoneのパフォーマンスを最大限発揮できるモバイルVRヘッドセットを内部で開発して使用しているとのこと。
ARアプリの開発をさらに促進するためにARKitを機能強化
ARヘッドセットの登場までは、2年の年月があります。アップルは、ARアプリの開発をさらに促進するために、ARKitのソフトウェアツールのアップデートを2018年の早期に行う予定とのこと。このアップデートにより「Persistent Tracking」(永続トラッキング)が実装されるとのこと。現実空間に置いたバーチャルな物体の場所を正確に記憶することが可能になります。カメラを動かしてもまたもとの方向に向けると置いた物体が残り続けます。Tangoプラットフォームを展開し、ARで先行しているグーグルはこの機能を「空間記憶」と呼んでいます。
これまで特許などの情報により、アップルのARデバイスに関しては眼鏡型になるのではないか、との憶測もありましたが、今回のブルームバーグによるリークには外見に関する情報はありませんでした。
Mogura VRではARの主要企業の動向や技術の仕組みなどを解説し、将来への道筋を予測したコラムを公開しています。理解を深めたい方はぜひ併せてご覧ください。
(参考)
Apple Is Ramping Up Work on AR Headset to Succeed iPhone / Bloomberg(英語)
https://www.bloomberg.com/news/articles/2017-11-08/apple-is-said-to-ramp-up-work-on-augmented-reality-headset