2017年1月17日、秋葉原のDMM.make AKIBAでVAQSO Inc.が開発中のVR内の映像にあわせて匂いを出すデバイス『VAQSO VR』のデモゲーム発表会が開催されました。VAQSO Inc.はもともと、店頭で匂いだすことで集客等を図る事業を展開していたザーズ株式会社から新たに設立されたものです、
匂いとVR
現在の多くのVR体験はVRヘッドマウントディスプレイを被り、ヘッドホンを着け視界と聴覚を覆うことで、目の前には存在しない世界の中に入っているように錯覚させます。
人間の五感には視覚、聴覚以外、触覚、味覚、嗅覚があります。今回の『VAQSO VR』は嗅覚を錯覚させることで更に没入感や臨場感を得られることを目指しています。
現実には多くの匂いがあります。映像と音だけでも、現実にあるかのような錯覚を起こしますが、映像と音に適した匂いがタイミングを合わせて匂えば、更に現実に近く感じられるでしょう。
そのため匂いを出すデバイスは、これまでもいくつか開発されています。顔全体を覆う「FeelReal」、鼻の下あたりを覆う「Nosulus Rift」、VR用というわけではありませんが映画館等で使われる「AROMA SHOOTER」など。
匂いは拡散もしますが、いつまでも匂い続ける場合もあります。VRで使用する場合、タイミングがずれれば逆に没入感を損ないます。海辺のシーンで磯の香りがすれば、映像と波の音以上に海辺にいる感覚を得られるでしょうが、ミカンを持っているのに焼肉の香りがすれば気になって没入感を損なうでしょう。そのため匂いを演出で使用するためには瞬間的に匂いをだし、映像が変わればすぐに前の匂いは消えないとならないのです。
カートリッジ交換式の「VAQSO VR」
今回発表された『VAQSO VR』は開発中の現在は1つのカートリッジに1つの匂いを小さなファンで外部に出すようになっています。現在はカートリッジ3個入れられますが、製品版には5~10個のカートリッジを入れられるようにするとのこと。
ピーナッツとヌガーが入っているチョコ菓子「スニッカーズ」とほぼ同じ大きさで、各種VRヘッドマウントディスプレイの下に取り付けるようになっています。匂いを出すON/OFFはゲームエンジンUnityで制御しているため物が壊れたときなどに匂いが出る設定をすることもできます。
1回の充電で約2時間。カートリッジの寿命は1プレイ1時間として約1ヶ月持続します。
ワイヤレスで非常に小さく薄いためVRヘッドマウントディスプレイにとりつけても気になりません。
経験しない匂いを嗅いでも効果は薄い…?
デモゲーム『ZaaZ VR Demo』(制作Syanmon)は手をVR内に持ち込めるOculus Touchを使用します。内容は、奥にある大砲から発射されたサッカーボール、大きな桃、樽などを両手に持った拳銃で撃つシューティングゲームです。
銃を撃つと燻製の匂いに感じる硝煙の匂いが広がります。飛んでくる桃を撃つと桃が爆発し桃の甘い香りが出ます。
筆者が体験したときは機材トラブルで硝煙の匂いしかでていなかったようです。硝煙の匂いも実際に嗅いだことがあれば、現実で本物の銃を撃っているような感覚を得られたかもしれませんが筆者は硝煙の匂いは初めて嗅いだため、没入感が強められたという印象は少ないです。
映像と音と匂いが完全に合えば、今まで以上に没入感を感じられるようになりますが、いままで嗅いだことがない匂いの場合は没入感を強く感じるかは疑問が残ります。
過去に女性が近づいてきて香水やシャンプーの香りを嗅いだ体験をしていると、VR内で女性キャラクターが近づいてきたときに、実際に匂いがでてなくとも香水などの香りを感じる「クロスモーダル現象」が起こることがあります。香りを感じると目の前のキャラクターがさらに人間のように感じられます。
女性がつける香りを出すことができれば、個人の経験にかかわらずキャラクターにさらに実在感を伴わせることも可能ですし、香水なのかシャンプーなのかでもキャラクターの性格付けの幅が広がります。
「VAQSO VR」は、今後、ファンの強さを変えることで匂いの元に近づくほど強く匂うようにさせることも考えているとのこと。匂いの強さを変えられれば距離や時間の演出に幅ができるようなり、VRの没入感が更に強まりそうです。
法人向けは2017年春、一般販売予定時期は2017年冬予定とのこと。価格は未定。(2017年1月時点)