多くのVRユーザーに「名機」として愛されている「Valve Index」。その理由はヘッドセットの構造にもありますが、なにより指の動きや手の圧力を検知できる専用コントローラー「Indexコントローラー」の存在が大きいでしょう。
未だにオススメVRコントローラーの筆頭として挙がるほどですが、直近では公式での取り扱いがほぼストップしており、入手性には大いに難があります。故障の確率もそれなりにあるため、ヘッドセットともども乗り換え先を検討している人もいるかもしれません。
そんな中、世界的に流通している「Meta Quest」シリーズのコントローラーを”Indexコントローラー化”するという、興味深いアプローチが登場しています。その一つが、グローブ型デバイス「ContactGlove」を手掛けたDiver-Xによる「ContactSheet」。「貼り付けるだけでハンドトラッキング機能を付与する」という驚きの拡張パーツです。
今回、筆者はDiver-Xオフィスにて、予約販売を開始した「ContactSheet」を体験しました。本記事にて、その概要や実力をお伝えします。
外観チェック:持ち手の装着はとっても簡単
「ContactSheet」は、「Meta Quest」シリーズのコントローラーに装着する拡張パーツです。持ち手に取り付けることで、Indexコントローラーのように指の動きなどを検知する操作感を実現します。
(※試作品のため黄色いマスキングテープを巻いていますが、製品版にはありません)
今回体験したのは、「Meta Quest 2」用Touchコントローラー向けの「ContactSheet」。最終調整中ではあるものの、形状は写真のものでほぼ確定とのことです。
「ContactSheet」内部には、写真のようなシート状の静電容量センサーが包み込まれるようなかたちで設置されています。このセンサーが指の接近などを検知することで、Indexコントローラーと同等の入力を実現します。
装着した様子がこちら。VRデバイス向けアクセサリーの「AMVR」製のハンドストラップが製品に付属しており、基本的にはこれとの併用が推奨されています。というのもIndexコントローラーと同様に、手を開いたりする操作が発生する都合上、「手自体に固定する」という装着方式が最適なためです。
装着方式は内側の両面テープによる物理的な接着となっていました。基本的には取り付けたらそのままの想定です。装着した状態でも、電池蓋の開閉を妨げる構造になっていないため、電池交換は従来通り行える設計です。
装着感は問題なし。グリップ感も装着前と大差なく、通常のコントローラーのように扱えます。ただし、今回は片手のみの体験だったため、両手のコントローラーに装着した際の操作感については未知数です。
動作体験:操作感はほぼIndexコントローラー
ここから実際に「ContactSheet」の動作を体験してみました。今回は、「Virtual Desktop」と「Air Link」の2つの方法で、それぞれ「The Lab」、「Resonite」、「VRChat」上での動作を確認しました。
前提として、「ContactSheet」は「Meta Quest」とPCを接続した、PCVRモードでの動作が想定されています。そして、PCとの接続に利用できるのは、公式機能の「Quest Link」および「Air Link」と、有償アプリ「Virtual Desktop」、無償アプリ「Steam Link」です。
加えて、「ContactSheet」の動作には「DivingStation」という基幹ソフトのインストールが必要です。Diver-Xのグローブ型デバイス「ContactGlove」でも用いるソフトウェアで、指のキャリブレーションや感度設定、「SteamVR」への接続など、動作に必須となるあれこれをまとめて行ってくれるものです。
また、PC側には事前に専用ドングルを取り付けます。「ContactGlove」とは別のドングルになりますが、共存が可能で、同時差しでもOK。その場合、どちらのデバイスを使うかは「DivingStation」側で決定します。
正しく動作すれば、「SteamVR」側に「ContactSheet」とTouchコントローラーの2つが認識。内部動作的には、Touchコントローラーの位置情報をトラッカーとして認識し、「ContactSheet」の入力情報(=指の動きなど)を、Indexコントローラーとして扱う、ということが行われています。このため、「SteamVR」の基幹画面には、TouchコントローラーとIndexコントローラーが2つ重なりあうように表示されます。
まずは「Virtual Desktop」経由で「The Lab」を体験しました。率直に言えば、操作感は良好です。ボタンやスティック操作はそのままに「手の動きによる操作」も行えるため、操作感覚はIndexコントローラーにかなり近いです。
唯一の違いは「握ってつかむ」操作。Indexコントローラーはそのまま手で握り込むことで「ものを持つ」操作が可能ですが、「ContactSheet」の場合はTouchコントローラーのグリップボタンがその役割を担います。ふだんIndexコントローラーに慣れていると「おや?」となりますが、ボタンひとつで「ものを持つ」操作ができるため、Indexコントローラーより疲れにくそうだなと感じました。
続いて「Resonite」。こちらは純粋な手の動きのみをチェックしましたが、これもIndexコントローラーのように自由に手の形を再現できています。
そして「VRChat」。こちらもIndexコントローラーのように手の形を作ることができます。今回の体験では、ハンドサインに連動した表情は発生しなかったのですが、これは「DivingStation」側でハンドサイン入力を識別・送信する機能がリリースまでに実装されることで解消予定とのことです。
なお、このあと「Air Link」経由での動作も体験してみましたが、全体的な操作感は「Virtual Desktop」経由と比較して、明確な差異は確認できませんでした。Diver-Xによれば、「Air Link」と「Virtual Desktop」との差異は「配信品質の違い」のみ。つまり、「ContactSheet」の挙動には一切影響がないとのこと。一方が有償アプリなこともあり、環境をあまり選ばず利用できるのはユーザーにはうれしいところです。
Questコントローラーをお手軽アップデートできる拡張パーツ
10分程度の体験ではありましたが、ザッと使ってみた所感としては、なかなかにアリです。特別大きな作業も必要なく、コントローラーに貼り付けるだけでIndexコントローラーに近い挙動にできる、お手軽便利な拡張パーツと言えるでしょう。お値段も16,500円と比較的お手頃です。
唯一ネックになりそうなのは、コントローラーとまた別に充電が必要になる点。連続稼働時間は約10時間ほどなので、フル充電すればしばらく使い倒せますが、さすがにコントローラーとまとめて充電はできません。いざという時の充電切れには注意しときたいところです。
とはいえ、多くの人が使う「Meta Quest」をより便利にするものであることは間違いなし。「Meta Quest」ユーザーはもちろんですが、Indexコントローラーが壊れて困っている方にも選択肢になるかもしれない拡張パーツです。
「ContactSheet」は現在、6月下旬発送予定で予約受付中です。購入リンクはこちら。
https://store.diver-x.jp/products/contactsheet