「バイオハザード7 レジデント イービル」や「Five Nights at Freddy’s VR」などを筆頭に、VRゲームの中でもひときわ充実しているジャンルがVR×ホラー。プレイヤーからは「VRはリアルな恐怖体験が魅力!」という感想がよく聞かれますが、実際にお化け屋敷を制作しているような、“プロのホラークリエイター”の目にはどのように映るのでしょうか?
本記事ではプロのホラークリエイターの夜住アンナをお呼びして、実際にVRゲームを体験していただきました。恐怖を演出する上でのコツや、VRならではのホラーの魅力についても満載です。
今回ご協力いただいたホラークリエイター:夜住アンナさん
夜住アンナ/Anna Yozumi:
2017年に東京で開催された協力型ホラーイベント「サマー・キラー」をはじめ、横浜中華街での「THE WITCH」の総合プロデュースや、サンリオピューロランド「PURO HALLOWEEN PARTY~KAWAII MASQUERADE~」の1部企画監修などを手掛けている。従来のお化け屋敷とは一線を画す“美しく怖いホラー”の演出で知られている。
主なお仕事:
美しすぎるお化け屋敷「THE WITCH(ザ・ウィッチ)」
禁断のハロウィンパーティ「Black letter(ブラックレター)」
「バイオハザード7」VRに挑戦!
まずはVRホラーの定番といわれる「バイオハザード7VR」(グロテスクバージョン)に挑戦。バトルシーンの見られる場面まで進行した状態のものをプレイしてもらいました。夜住さんはこれまでいくつかのホラーVRゲームはプレイしたことがあるものの、PSVRは初めてとのこと。
ゲームスタート
――まず絵画が見えてきましたね。普段の企画の際は、こういったものも制作されるのですか?
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夜住:
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自分で作りますね。企画展のテーマに合わせて、呪われてる絵画を描くこともあります。……それにしてもリアルですね。
散らかったキッチンへ…
――「バイオ」では、この家のセットを実際に組んでから3Dスキャンしているそうです。
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夜住:
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だからこんなにリアルなんですね……。自分の場合はこういった廃墟感を出すために、古びた小物を作ることがあります。元々きれいだった雑貨を、絵の具やカビに見える塗料を使って、手作業で汚していきますね。
薄暗い照明がチラホラ
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夜住:
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(空間の)明るさがいいですね。良い雰囲気になっています。
――いわゆるお化け屋敷は「暗い」というイメージがありますが、灯りの位置も工夫されていますか?
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夜住:
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灯りの配置はクリエイターさんによって方針が全く異なりますね。ただ基本的には「ここは落ち着いてほしいな」、「ここは緊迫感を保ってもらいたい」と、相手の心理を操作するのを目的に配置を考えています。このゲームも恐らくそういった心理操作を踏まえて設計されていると思います。部屋によって白やオレンジなど色合いを変えているのも、怖さを煽っていて良いと思いますね。
ユニットバスに潜入
――風呂場やトイレなどの水回りもホラー作品ではよく見る気がしますね。
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夜住:
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定番ですね。水って昔から霊的なものと親和性があると言われています。精霊や神様といった目に見えない存在がその場にいるかもって印象を与えてくれるんです。そういった気持ちもゲームの中で表現されているといえますね。
古びた写真を発見
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夜住:
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こういう写真は大好きです。しっかり顔が写ってないのはお決まりですね。自分でもよくこんな雰囲気のものを撮影します。
ーー以前、ご自身をモデルにした疑似死体写真(※リンク先閲覧注意)を発表されていましたね。
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夜住:
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ホラークリエイターさんでも多分やられている方は他にいないと思います(笑)。私は個人的に写真や死体に美しさを感じるので撮影している感じです。多分、人によってはこの部屋も「怖い」ってだけでなく「美しい」と感じる方はいると思いますね。
しばらく部屋の中を探索
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夜住:
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実は以前お台場で行われていた「バイオハザード7」のお化け屋敷で遊んだことがあったんですけど、私はVRの方が怖いですね(笑)。
ーーそれはどうしてでしょうか?
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夜住:
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VRの一人称の視点が孤独感を生み出すからでしょうね。リアルのお化け屋敷ではキャストさんやお客さんが1人か2人は必ず近くにいるので、怖いと思いながらも、どこかでちょっと安心感があるんですよね。逆に今はキャストが全く見当たらないという状態になれるので、より怖さが引き立ちますね。
突然画面に現れた主人公の妻
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夜住:
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うわ、びっくりした!
突如、妻が豹変! チェーンソーで腕を斬りつけられる
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夜住:
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……あ、腕が片っぽ斬られちゃいましたね。なかなかハードコア……。
――こういった演出もVRならではでしょうか?
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夜住:
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お化け屋敷では、お客さんに”痛みを想像させる”演出はできても、もちろん実際に身体を傷つけることはできません。そこができるのがVRの良いところですね。1人称プレイヤーの損傷や切断を表現すれば、視覚を通して肉体的恐怖を実感できますね。
銃をゲット!
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夜住:
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ハンドガンですか。従来の和風なお化け屋敷では基本的に登場しないですけど、最近は銃が使用できるホラーイベントも流行っていますね。それこそ「バイオハザード」や「メタルギアソリッド」などが好きな参加者の方は撃つことを楽しみに、よく挑戦されています。やはり武器を持っていると安心しますね。(お化け屋敷に来る)お客さんも銃があるとないとで、心の持ちようが全然違ってくると思います。
さっそく試し撃ち
――実際、(VRゲーム内の)銃の感覚はいかがでしょうか?
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夜住:
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照準を合わせやすいですね。顔を動かせば狙いをすぐに定められます。普通のゲームだと画面の向きを変えるのにいちいち苦労するのですが、VRだと振り向くだけで済むのはすごいと思います。
謎のマネキン人形を発見
――夜住さんは以前、人形をテーマとした企画展も実施されていましたね。
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夜住:
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そうですね。こうしたマネキンのような人の形をしたものって、パッと見ると人間だと誤認識してびっくりするので、そうした反応を狙って仕掛けることがあります。人間に見える何かって「急に動き出すんじゃないか」という恐怖もありますね。
突然の妻の強襲
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夜住:
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おおおぉ! あっイヤですね。これはやばい。足が遅い!!
逃げ切れず…
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夜住:
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……ゲームオーバーですね……。
――お疲れさまでした。VR版の「バイオハザード7」を体験していかがでしたか?
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夜住:
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腕を斬られるところが特に良かったです。それから、妻の顔が至近距離で迫ってくるシーンがありましたが、私個人としてははっきりと姿が見えるのでうれしい(笑)あんな風に見えた方が少し安心するんですよね。
安心の笑顔
――全体的な怖さはいかがでしたか?
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夜住:
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怖かったですよ! かなりリアルなお化け屋敷に近いホラーの雰囲気があると思います。特に舞台の色合いにこだわりがあるように感じられます。照明の当たり方が全体的に明るいんですけど、ちゃんと気持ち悪く見える。単純な「暗い=怖い」ではなく、明るさを利用して、冷たく汚い雰囲気を家全体に統一させていますね。
その点がユーザーの心を底冷えさせるように工夫がなされていると思いました。家の中のセットのみで、ほとんど情景を変えずにゲームの満足度を高められるのはすごい技術だと感動しましたね。
――作り手の配慮が行き届いていると。
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夜住:
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お風呂にあったシャワーカーテンのヌメりなども質感があって、ひとつひとつ丁寧に作り込まれていることが分かりますね。ちょっとチープなVRゲームだと質感まで伝わってこないことが多いので(笑)。それから「バイオハザード7」は、非日常ではなくリアルに寄せられていると感じました。より本物に近づくほどに、本物以上の怖さが浮かび上がってくるんだと思います。
後編では深夜のピザ屋警備バイト「Five Nights at Freddy’s VR」に挑戦! 夜住アンナさんのホラーコンテンツへのこだわりについても迫ります。