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VTuber 2023.10.31

大手ライブ配信プラットフォーム「17LIVE」のVライバー事業戦略とは? Vライバーで世界進出を目指す

2023年に入り、大手ライブ配信プラットフォーム「17LIVE(イチナナ)」内で、大きな変化が起きている。Vライバーユニット「武士来舞(BUSHILIVE)」がデビューし、今年の7月にはTV番組「喰らえ!Vナナ飯店」がスタート。さらに、アプリ内で、VRoid Hub連携が導入され、VRM形式のアバターでVライバー活動が可能となった。

これまでも、17LIVEではVTuber(アプリ内ではVライバー)が多数活動しており、17LIVE主催のリアルイベントなどにも多く出演していたが、今年以降の注力ぶりは目覚ましいものがあるといえる。そこには、どのような戦略、思想があるのか? 事業責任者の柳 里沙氏に話をうかがった。

(Vライバー事業責任者:柳 里沙氏)

台湾のリアルイベントから感じたVライバー事業の手ごたえ

――今年に入ってVライバー分野を大きく開拓している印象です。この注力の理由はどういったものでしょうか?

柳:
弊社ではバーチャル配信の事業を、2018年の8月に「Vライバー」というジャンルで発足しており、今年でちょうど丸5年を迎えました。私自身も立ち上げ時期から今までこの事業に携わっておりますが、当時と比較しても業界全体の盛り上がりを非常に感じております。

そんななかで、昨年、弊社全体の経営体制が大きく変わりまして、グローバル展開をより一層意識する方針が打ち立てられました。現状17LIVE全体の売り上げ業績は、日本がけん引している状況なのですが、日本から生まれているVライバーというジャンルを、よりグローバルに向けて広めていきたいという考えがありました。これには、実際に事業を運営してきたなかで、Vライバーというジャンルが拡大し、リスナー層も増加しているという手ごたえがあったことも加味されています。そこで、2023年から注力事業として、Vライバー事業をガッツリと取り組んでいきたいという決定を行い、各種サービスのローンチに至っています。

――グローバル展開のお話がありましたが、御社のVライバー事業を日本国外でも展開しようと考えたのには、何かきっかけがあったのでしょうか?

柳:
2019年ごろから、台湾でVライバーを紹介するイベントを実施しています。台湾現地の反応をみると、こうしたVライバーという存在自体が新しいものなので、複数のメディア取材がありました。その時期から、「Vライバーは台湾でもウケるコンテンツだ」というのを肌身で感じていました。

2023年6月に開催された「LIVER EXPO in 台湾」の様子

2023年6月に開催された「LIVER EXPO in 台湾」の様子

2023年6月に開催された「LIVER EXPO in 台湾」の様子

さらに今年の6月にライバーEXPOというイベントを台湾で開催したのですが、設置されたVライバー専用ブースに、かなり多くの方が見に来てくださいました。「これは一体どういうものなんだろう?」といったかたちで、通りかかった人たちがのぞきに来るような感じでした。

そこで、日本でのVライバー事業を拡大しつつ、台湾でもVライバー事業に積極的に注力していこうということで、さまざまな企画を準備しております。少しずつですが、台湾で活動するVライバーの数も増えてきています。

――台湾での手ごたえが、Vライバー事業のグローバル展開注力のきっかけになったわけですね。

柳:
実際にホロライブさんも、台湾の西門町で大きな盛り上がりを見せていた事例もありましたし、台湾自体が日本のアニメカルチャーに興味を持たれる方が非常に多いので、Vライバーのカルチャーに対しても興味を持たれやすいのだと思います。

そもそも、17LIVE自体が台湾発祥のサービスで、グローバル展開をする上での基盤として、さまざまなVライバーのコラボ企画を打ち出しやすいという利点があります。例えば、弊社は、台湾のプロバスケットボールチーム「高雄スティーラーズ」のオフィシャルスポンサーなのですが、そうした団体やグループとのコラボなどについても、比較的低いハードルで相談しやすいですね。

タイミング的にも、台湾を含めたアジア圏でもVTuberカルチャーの広がりを感じられる頃合いだったので、台湾をハブにしたグローバル展開については、今後も推進していけるのではないかと思っております。

リアルライバーとVライバーが共存することで生まれる独自の文化

――「17LIVE」と同じように、VTuberアバターを使用して配信できるプラットフォームとしては、他に「REALITY」や「IRIAM」などがあります。そういった競合アプリと比較して、「17LIVE」ならではの強みといったものはどういったものでしょうか?

柳:
「REALITY」さんや「IRIAM」さんと弊社サービスが大きく異なる点は、リアルのライバーもVライバーも活動しているところですね。私たちとしては、そのふたつのジャンルが共存していくことを強く意識して運営しています。

――現状、リアルライバーの方とVライバーの方の活動割合を見ると、どちらが多いのでしょうか?

柳:
現状はリアルライバーの方が多い状態です。ただ、リアルライバー側で、Vライバーとしてのデビューに興味を持たれている方は非常に増えています。一般的なVTuberの方々は、現実のボディを出さない、よく使われる言葉としては、「中の人」「魂」といったものを見せないことが通例となっていますが、弊社アプリ内では、リアルライバーが自分のコンテンツのひとつとして、Vライバーとしての姿をカジュアルに活用されているケースも多い印象です。そういった意味で、様々なスタンスを持たれている方の自由な選択を許容できるサービスとして提供できているのではないかと思っています。

――今のお話を聞くと、アプリ内の雰囲気も大きく変わってくるのではと思うのですが、Vライバー事業により注力するようになった結果、目に見える変化はありましたか?

柳:
先日、リアルライバーとVライバーがコラボしたオフラインイベント「MIRAI STAGE〜Virtual×Real MUSIC LIVE in “harevutai”〜」を開催したのですが、リアルライバー側から「Vライバーとのコラボが楽しかった」「自分もアバターを作ってみたい」というポジティブな声がありました。

また、配信サービスのひとつに「グループコール」(※複数人で通話しながら配信できる機能)があるのですが、リアルライバーとVライバーが一緒に活用する機会が増え、交流が盛んになっている傾向があります。

――リアルとバーチャルのライバーで交流が分断しているのではなく、むしろ融和していっているということですね。

柳:
もちろん弊社としては、それぞれの文化を急速に融和させてしまうと、衝突も起きてしまうため、強引に押し進めていきたいわけではありませんが、それぞれの領域のライバー同士が自然に出会えるような機会を設けることで、自発的なコラボや交流が増えていくことを期待しています。それによって、これまでリアルライバーしか追っていなかったリスナーの方々がVライバーの方にも興味を持たれるといったことも起き、リアルとバーチャルの交流の垣根は少しずつ無くなっていくのではないかと思っています。

――現在、YouTube側でのVTuberの動きをみても、リアルタレントの方との交流などに対してかなり積極的な方が増えてきているので、「17LIVE」側でそういった大きな動きがあるというお話は非常に興味深いところです。

柳:
2018年にVライバー事業を立ち上げたころから、リアルとVの垣根を崩していくことが重要だと考えていました。それは、Vライバーだけのコミュニティでの活動に固執するよりも、ライブ配信業界のバリエーションを広げていった方が、これまでの活動では出会えなかったファン層に発見される機会が増えるので、Vライバー当人にとっても、今後の活動の上でプラスになるのではないかと、個人的に思っていたからですね。

これまでにも、そうしたリアルとVのライバーが出会うきっかけづくりを少しずつ増やしつつあったのですが、2023年のタイミングでより本格化しはじめたという次第です。そういった長年の施策が結果を出し始めたので、自分としては、とても嬉しく思っています。

ライバーの夢を実現するためにプラットフォーム側ができること

――御社では、今年からVライバーユニット「武士来舞(BUSHILIVE)」のデビューを発表し、TV出演などのPRを大々的に行っています。この企画の狙いはどういったものでしょうか?

柳:
弊社としてはVライバー事業を盛り上げるためのきっかけとなる存在を作りたいと考えていました。もちろん、これまで活動されているVライバー関連の取り組みは引き続き実施しつつ、今までチャレンジしてこなかった新規IP事業である「武士来舞」に取り組むことで、Vライバー事業そのものの認知度を向上させていきたいという狙いがあります。

なぜ戦国時代の武将をテーマにした「武士来舞」というユニットにしたのかというと、先ほど述べたグローバル展開を視野にいれた際、日本独自の「和の文化」に対する海外ユーザーの人気を鑑みた結果ですね。今後は「武士来舞」の海外展開を見据えた動きというのも徐々に発表されていくと思います。

武士来舞「初」のオリジナル楽曲「Rock繚乱(ロックりょうらん)」

まだデビューしたばかりではありますが「17LIVE」アプリ内の公式番組にサブMCとして出演したり、外部プラットフォームにも露出したりと、大きな活動にも関わっていくことで、注目度は高まっている印象です。YouTubeやTikTokなどをきっかけに「武士来舞」を知っていただき、そこから「17LIVE」アプリで活動するライバーの方々にも興味を持っていただきたいと考えております。

――今年の7月にはTV番組「喰らえ!Vナナ飯店」がスタートし、武士来舞はもちろん、さまざまなVライバーも出演されています。こちらも大型の施策ですが、放映後の手ごたえはいかがでしたか?

柳:
活動を頑張れば、TVに出演できるという機会が生まれたことを、弊社のVライバーにはとても喜んでもらえましたし、外部からの反響も非常に大きかったと思います。

――自身が出演できるかもしれない番組が登場したことが、Vライバーにとっても活動のモチベーションになったわけですね。

柳:
そうですね。実際、この番組の出演権をかけたオーディションイベントを実施していたのですが、そちらのイベントに対して、とても熱量高く参加してくださいましたし、合格した方も、とても喜ばれていました。こういったことを継続的に実施していきたいと改めて思いましたね。

弊社の大事にしていることとして、ライバーの方々の夢をかたちにしていくことがあります。「TVに出たい」「歌手になりたい」など、それぞれに大きな夢をお持ちだと思うのですが、そういった方々のエンターテイメント面でのキャリアのサポートや、メディア露出の機会を提供したり、大きな舞台に立つチャンスを作ったりといったかたちで、バックアップをしていきたいということです。今回のTV出演企画のように、皆さんの活動の出口をしっかり提供していきたいですね。

――「17LIVE」のライバーの方々にとっては、そういった表舞台に露出できる機会があることが、活動のモチベーションに大きく繋がっているということですね。

柳:
ライバーの皆様の中には、ご自身の活動を広くしたい、大きくしていきたいと考えている方々も多い印象ですね。

2023年8月に開催された「イチナナVライバー 5th Anniversary Party」の様子

2023年8月に開催された「イチナナVライバー 5th Anniversary Party」の様子

2023年8月に開催された「イチナナVライバー 5th Anniversary Party」の様子

2023年8月に開催された「イチナナVライバー 5th Anniversary Party」の様子

そういった施策のなかで最近、特に印象的だったイベントですと、「17LIVE」のVライバーの5周年記念パーティ(イチナナVライバー 5th Anniversary Party)がありました。ライブステージはもちろんのこと、ライバーのグッズ物販や、リスナーの方の手掛けた多数のファンアートの設置、数百名のVライバーのデビュー日をまとめたものを発表するなど、さまざまな企画を実施したのですが、ひとつひとつのコンテンツに対して、ライバーもリスナーも非常に喜んでくださいました。初期から応援されている方から、とても熱量のある感謝のお言葉をいただくこともありましたね。2018年から5年をかけて積み上げたVライバー事業の盛り上がりを実感できるイベントで、私自身も非常に感動しました。

今後もVライバーがチャレンジできるような環境については今後も提供していきたいですし、そういったことができるのが弊社アプリならではの特色になっていると思っています。

――ありがとうございます。最後に、今後の「17LIVE」の長期的なミッションについてお聞かせください。

柳:
海外事業展開の拡大はもちろんのこと、リアルライバーとVライバーの垣根を無くし、それぞれがコラボしやすい土壌を作っていきたいと考えています。今後「これって、そういうことだったのか!」「Vライバー業界がそこに進出するのか」というような話題の施策も次々と打ち出していく予定です。ぜひ、応援しながら楽しみにしていただければと思っております。

――ありがとうございました。どういった施策が発表されるのか、今後も注目させていただきます。

「17LIVE」公式サイトはこちら


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