【CEDEC 2015】『サマーレッスン』から学ぶVRゲーム開発 -プロデュース編-

8月26日から28日の3日間、パシフィコ横浜にて開催されたゲーム開発者向けカンファレンス『CEDEC2015』。最終日の28日、「VR空間でキャラクターとコミュニケーションする新しい娯楽」をテーマとした技術デモ『サマーレッスン』に関する「プロデュース編」、「テクニカル編」、「開発者ディスカッション編」といった、3コマのセッションが行われました。今回は実際の制作に入る手前の企画段階についての「プロデュース編」のレポートです。

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同講演を担当したバンダイナムコエンターテイメントの原田勝弘氏(右)、とプロデューサーの玉置絢氏(左)  

https://www.youtube.com/watch?v=wIl2-5f8NTo

「サマーレッスン」はどんなきっかけで作られたか?

「サマーレッスン」を制作し、原田勝弘氏が率いている「鉄拳プロジェクト」は、ポリゴン黎明期から「人体モデル」、「人体アニメーション」の製作をするなど、3Dゲーム業界を牽引してきたプロジェクトです。今回の「サマーレッスン」の企画の発端は、「キャラクターをもっと好きになってもらいたい」という思いからだったと原田氏は語りました。

『キャラクターをもっと好きになってもらう手法』としては、好きなキャラクターには食事シーンを見せる事でプレイヤーに親近感を湧かせるなど様々な方法あります。より親近感を感じさせるにはどうしたらいいのかということから、「人の視界の80%以上を覆うとリアルに近い錯覚を起こす」という点に着目しました。このためにはVRヘッドマウントディスプレイ(VRHMD)が最適だったのです。

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まず、既存の作品である「鉄拳」をVRHMDに対応させたところ、鋭い眼光で睨まれ、パンチとキックも凄い事から、『格闘家と対峙すると怖い』という当然の事にようやく気付いたと言います。「現実世界で感じる事は基本的にVRでも同様の体験になる」ということは意外と忘れがちですが重要なことですね。

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ここから、現実と同じようにコミュニケーションをとる事がVR体験で可能ではないかとと考え、「サマーレッスン」のための研究が始まりました。仮想世界でのキャラクターコミュニケーションを実現するために原田氏が設定した目標は、体験者に「実在感」「緊張感」を感じさせ、「また会いたい」と思わせること、の3つでした。

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VRコンテンツのプランニングの苦悩

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プランニングを担当した玉置氏は、原田氏3つの軸を実際の企画に落とし込まねばなりませんでした。サマーレッスンの企画を担当するにあたっては、( VRコンテンツの企画を始めるにあたって)多くの開発者が直面するであろうことに向き合うことになりました。それは、前例無しで正解不明というVRコンテンツの性質上、「どこでどのような試行錯誤をすればいいか」、「どこで時間がとられるか」、つまり「限りある開発資源をどこに集中すれば、話題を呼ぶことができるのか?」ということでした。

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玉置氏が行った「なんちゃってSWOT分析」によると、鉄拳チームの強みは、1人あたりのクオリティが高く、どういう事にも貪欲にやっていこうという意識の高いベテランアーティストが在籍している事です。しかし、「闘い」という要素をいれると、どうしても本職なのでこだわり過ぎてしまい、開発期間が短かった「サマーレッスン」にとっては弱みになると考え、「戦闘」はいれない事にしました。さらに他社との差別化を考慮した結果、「キャラクターとの近距離体験」を軸とするゲームシステムとなりました。

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最終的に玉置氏が導き出した企画の根幹になるのがこちらのスライドです。

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キャラとの近距離体験を目玉に、プレイヤーの間近にキャラクターが来るという体験をつくれば、他にない魅力と話題を取れるのではないか」という仮説のもと、キャラクターを可能な限り接近させ、近さに関連して驚くようなデモ台本と部屋の設計が行なわれました。

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VRにおいて、「派手な映像」や「見晴らし」の良さといったポイントが注目される中、VRならではのキャラクターのプレゼンス感(実在感)に焦点を絞っています。

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次回は、「テクニカル編」のレポートを掲載します。

・CEDEC公式サイト
http://cedec.cesa.or.jp/2015/

VRコンテンツの制作ノウハウを取り上げた記事はこちらでまとめています!

この記事を書いた人

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    先端技術好きなデザイナー。VRでは、MVコンセプトアート制作や360度カメラを使用した企画に関わる。多摩美術大中退、CI開発から書籍装丁等の様々なデザイン業務に従事。 THETA LOVERだゾ。

    Twitter:@sayamecci

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    http://www.moguravr.com/writers/