CGの祭典SIGGRAPH2016は例年以上にVRに注目

CG界の一大イベントSIGGRAPHが、今年も7月24日からアナハイムで開催されます。

SIGGRAPHは、コンピューターグラフィックスの学会でもあり、毎年新しいテクノロジーを用いた芸術、映画、ビデオゲームや、その他CGを用いたあらゆるものが発表される場ともなっています。VR関連の作品はまとめて、VR Villageというセクションで展示されています。今年は VRがSIGGRAPHの見どころと言っても過言ではないほどVR Villageは力の入った展示になっています。

SIGGRAPH2016

以下は、VR Villageの総合責任者であるデニス・ケセネル氏がお勧めしたいくつかの作品を紹介します。

今年のSIGGRAPHにおけるVRの位置づけは、過去と比べてどう変化したか

ケセネル氏によると、今年は「様々な異なるテクノロジーの世界に、VR/ARはどう普及していけるのか」に焦点を当てた展示が行われているとのこと。現在、VRやARの商業化が進んでいて、様々な産業との結びつきが始まっています。今回のSIGGRAPHで展示されている全ての作品には、何らかの形でVR/ARの技術が利用されている、とまで言っています。

今年のVR Villageは、いくつかの最新技術が初お披露目される舞台となっています。一例として『Experience Presentations』というスピーチ用のコンテンツが紹介されました。プレゼンの際にこれを利用すると、プレゼンターの話している内容がVRを通して可視化されるため、プレゼン内容に関する専門知識を持っていない人でも、話の内容をより深く理解しながらプレゼンを聞けるようになるそうです。

SIGGRAPH2016

ケセネル氏は、『The art & science of immersion』という作品を、プログラミングなどに興味のある人のお勧めしたいと語っています。グーグルアースの映像をVRの世界に持ち込んだ作品です。

健康やソーシャル・ウェルネスに重きを置いた作品の『Agents of change』も紹介されています。VRを用いて病気を抱えた子どもたちに痛みを感じなくさせられるのではないかと研究している全米の小児科とオハイオ大学、そしてVR界の先駆者でもあるスタンフォード大学のウォルター・グリーンリーフ氏の共同で作成されたコンテンツです。

VR StoryLab』も要注目とのこと。これは、ナレーターの声を聞きながらVRを通じて「物語を体験」できるようにする作品です。具体的な仮想体験のコンテンツとしてはこれまでに、近年アメリカで問題視されている警察官による一般市民への暴力、火星の表面でのドライブなどが発表されています。

SIGGRAPH2016

今年のVR Villageで展示されるプロジェクト

ケセネル氏によれば、今年は「どのプロジェクトも目に見えるコンテンツ内での環境や風景だけでなく、ユーザーに訴えかけるインターフェースやデザインにまで思案が張り巡らされているものばかり」とのこと。どの作品も細部までこだわりが行き届いているものばかりで、今年のVR Villageはとてもクオリティの高い展示となっています。

SIGGRAPH2016

こだわりの行き届いた作品の一例としてケセネル氏は視界を交換するソニーコンピューターサイエンス研究所の『Parallel Eyes』をあげています。

この作品を利用するとユーザーの視界が共有できるようになり、人間がどのように視覚行動を発達させ、またコンテンツを楽しんでいるのかの概念が可視化されます。ユーザーは、自分の視点から映像を見るのと同時にそれぞれ他のユーザーの視界を体験できるようになるので、「VRを用いたかくれんぼが楽しめる」とケセネル氏は語っています。

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Ghost in the shell』も紹介されています。これはスリル満点のコンテンツで、ケセネル氏も最初は思わず叫んでしまったほどだそうです。

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現在ではある特定の産業に携わっている人とそうでない人との間の知識量の差がしばしば問題となります。こういった知識量のギャップを埋められるのではないかとして、ケセネル氏は『VR StoryLab』と『Experience Presentations』に期待を寄せています。

VRの使われ方、過去と現在

最近になって注目されるようになったVRの使い方として、視点の動きや心臓の鼓動など、人間の身体的な変化の観察をVRに取り入れる試みをケセネル氏は挙げています。

例えばユーザーの身体的変化のデータを採取し、リアルタイムでVRコンテンツに盛り込むことはとても難しく、従来の技術では成し遂げられませんでした。しかし今日では高いクオリティーを保ったまま、リアルタイムでデータをVRコンテンツに反映できるようになりつつあるとのことです。

VR Villageで展示されているものでは、南カリフォルニア大学の映像芸術学部が作成した『Inner Activity』をその一例としてケセネル氏は紹介しています。『Inner Activity』は、Subpacと呼ばれるウェアラブル端末とVRとを組み合わせたことによりVRとセラピー技術が結合され、やすらぎやヘルスケアを目的に作られたコンテンツです。

SIGGRAPH2016

ケセネル氏は以下のようにも語っています。「HMDを用いて体験者の目の動きを観測することはもはや珍しいことではありません。この、観測された目の動きに合わせてヘッドマウント内の映像が映り変わらせていく技術には、体験者の目を疲れさせれてしまわないよう様々な注意が凝らされています。このように体験者のストレスレベルに応じてコンテンツを自動的に変化させていくことは、今のVRの技術では不可能です。今後この技術をどうVRに適用していくか、は注目すべき点です。」

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(参考)
http://uploadvr.com/virtual-reality-siggraph-2016/
Virtual reality a major focus at SIGGRAPH2016 – UPLOAD

※米UploadVRはMogura VRとパートナーシップを結んでいます。

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