グーグルが挑むVRアニメ最新作 覆面プロレスラーの家族の絆を描く

グーグルの研究開発部門Google ATAP内にあるスタジオ「Google Spotlight Stories」が新作の360度アニメーション『Son of Jaguar』をスマホアプリとYouTubeで公開しました。「Google Spotlight Stories」はVRのストーリーテーリングを研究する研究機関です。これまでにも複数の360度映像を公開しており、人気バンド「ゴリラズ(Gorillaz)」の360度MVやアカデミー短編映画賞にノミネートされた『Pearl』などが代表作です。

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本作の『Son of Jaguar』の舞台はメキシコ。主人公は巨大な体躯の片足のプロレスラーです。メキシコのプロレス「ルチャ・リブレ」は、ロープワークを駆使した空中技が魅力ですが、主人公は片足が義足で階段を登ることすら苦慮するという有様です。主人公のプロレスラーが大事な一戦の前に、家族と代々伝わるマスクを前にしているところからアニメーションは開始します。なお全て英語の作品となります。

題材はラテンアメリカの祝日「死者の日」。メキシカンレスラーのマスクの左右に骸骨が置かれています。

巨大な体躯のプロレスラーの主人公とその家族。天井が低く描かれており、プロレスラーの巨大さが強調されています。

部屋のドアを開けるとリングまで続く通路に。先ほどの部屋は家ではなく控え室だったことになります……。また通路の壁面には歴代の覆面レスラーの絵が描かれています。

片足のレスラーである主人公はリングに登ることですら苦慮している様子が描かれます。満身創痍でリングに上がる主人公というミッキー・ローク主演の映画『レスラー』を思い出させる演出です。

派手にリングに降りてくる敵役のプロレスラー。主人公は階段を登ってくるのに対照的です。

敵役のレスラーに義足を奪われて、絶体絶命のピンチに。ここから奇跡的に逆転していく展開が胸熱です。

敵役のレスラーを見下ろす主人公。ルチャ・リブレの見せ所であるトップロープからのドロップキックなど、空中技を行う直前の様子で、主人公の横には奇跡的な逆転劇のキーになる子供の姿も。

細かく描かれた試合会場も本作品の魅力の1つです。アニメーションの動きを滑らかにするためか、観客は動かないことがほとんどですが、本作も同様に動きがありません。しかし、丁寧に描き込まれているため、安っぽさを感じることはありませんでした。また試合終了直後に観客席から札束やコイン通過がリング投げ込まれ「金の雨」が降るのをリング上から見上げることができるのは、日本のプロレスファンでも嬉しく感じる、VRならではの演出と言えるでしょう。

本作の監督は2014年公開・20世紀フォックス配給の3Dアニメーション映画『The Book of Life』のホルヘ・グティエレス監督です。ホルヘ・グティエレス監督は『The Book of Life』でゴールデングローブ賞を受賞するなど、ハリウッドを代表するアニメーション監督です。


メキシコ出身のホルヘ・グティエレス監督

筆者が、VRアニメーションとして新鮮な演出だと感じたのは、試合中に主人公以外の時間がストップする場面です。主人公が絶体絶命のピンチに時間が止まり、奇跡的に主人公がピンチを脱するというストーリーで、物語の進行はナレーションの情報から頭に入れつつ、ゆっくりと周囲を見回すこともできるので、安心して物語に没入することができました。ストーリーが進む中、360度見るのはなかなか難しい面もありので、360度の映像演出ではより効果的なように感じます。

また、過剰にデフォルメされた巨大なプロレスラーが狭いリング上で戦うことで、視聴者は激しく視点を動かさなくても良いように工夫されているのが感じられました。

英語の作品かつ映像時間が約9分と360度動画作品としては少々長めですが、キャラクターの動きの面白さやコミカルさから、飽きることなく楽しめました。「Google Spotlight Stories」は360度映像の新しい演出方法を提示することが多く、今後の作品にも引き続き注目したいところです。

本編(YouTube)

https://www.youtube.com/watch?v=e5_EE7Hpr6I

Steam(HTC Vive、Oculus Rift)

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この記事を書いた人

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