クリエイターが挑む360度映像の世界の最前線。「全天球映像万博 2016春」レポート

3月29日(火)恵比寿amuにて、VRCクリエイターズトーク Vol.4「渡邊課提供 全天球映像万博 2016春」が開催されました。体験会と制作者講演が行われ、コンテンツ体験とそれがどのようにつくられたのか、最前線で活躍するクリエイターから直接聴ける機会となりました。5チームの作品を体験・講演の順にまとめています。

アイドルグループGRAZIE4 360度MV

体験できたのは、360度動画を使用したアイドルグループ『GRAZIE4』のMV『君にありがとう』。今回が全天球第2作目で、YouTubeでも閲覧可能です。渡邊徹氏おすすめの『テニスボール視点』は、テニスボールになった感覚を味わえるというもの。これをヘッドマウントディスプレイを被って見てみると面白い!平面で再生する時と、感覚が全く違うものでHMD装着時ならではの面白味を体感できます。

https://www.youtube.com/watch?v=mN8Q1JdvytM

同グループの1作目『おゆ おゆ おふろ』も360度MVがあります。舞台は本物の温泉。ポスターや洗面器といった細かいディティールの隅々までを見ることができます。アイドルがカメラをのぞき込んだりする視点を活かしながらダンスを踊るMVは数ある全天球映像の中でもおすすめの1作です。

https://www.youtube.com/watch?v=RI8ZM0QVafk

全天球映像万博 2016春

渡邊課は、全天球作家渡邊徹氏を中心としたチーム(Concent Inc.所属)。『水中ニーソ』等、全天球映像を活かしたミュージックビデオ(MV)制作やプロモーション施策を行っています。

全天球映像万博 2016春

今回は、渡邊氏に加え、『GRAZIE4』のメンバー5人も登壇。

撮影される側にも、全天球撮影ならではの苦労があった事が語られました。それは、普段左右に振れる動きが多い振り付けを全天球PV用に変更したこと。カメラに近づいたり離れたりという動きが意識されたMVになっています。各MVにはストーリーがあり、それに沿った形で物を考えて配置。隠れQRコードを見つけてアクセスすれば、隠しライブに参加可能等、「とにかく細かい所まで是非見まわしてほしい」と話していました。第2弾の『君にありがとう』ではSP 360 4Kを使用。GoProで撮影するよりもカメラ台数が少ないので、「切れる」事が少なくなったと言います。

こちらは、テニスボール視点撮影で使われたRICOH THETA。
全天球映像万博 2016春

博士と万有引力のりんご

全天球映像万博 2016春

全天球映像万博 2016春

まず、体験したのはCHAORU氏が制作する全天球アニメーション『博士と万有引力のりんご』。独特な世界観をフルCGで制作しており、まるで絵本の中に入り込んだかのような感覚。これまで、OcuFes等のイベントで出展されてきましたが、さらにコンテンツの細部までテクスチャが貼りつけられ、世界観がだんだんと詰められてきたという印象を感じました。

全天球映像万博 2016春

「VRはあくまでも切り出された映像と違い、違う世界に降り立った感覚がある。」と制作者のCHAORU氏は語ります。制作のきっかけは、もともとVR関連の仕事に就いていたから。自分の世界観をVRを組み合わせ新しい表現を生み出しています。完成は2016年6月を見込んでおり、最終的には10分弱のコンテンツになるとのこと。

HUG

手軽に360度映像配信ができるサービス『HUG』。2月にβ版を公開して以来、100か国以上のTHETAユーザーに使用されています。会場では、プロジェクターによってTHETAからリアルタイム配信される映像を壁に直接映し出しました。

全天球映像万博 2016春撮影を行う高木氏と、壁にリアルタイムで映る360度映像

全天球映像万博 2016春

登壇したのは、開発元であるダックリングズ株式会社CEOの高木紀和氏。フィンランドのロックバンドがHUGを利用した配信を行ったのを例に挙げ、「バンドメンバーがカメラを囲んで演奏する事で、まるで自分のために歌ってくれているかのように感じた」と語りました。コメント機能がついているため、ファンのリクエストをその場で聞いて音楽を演奏するコミュニケーションが成り立っていたとのこと。20か国以上からコメントがあったそうです。フル充電の状態で配信をすれば、9時間以上の配信も可能とのことで、自分の家のペットを監視するために使っている人もいるのだとか……。現在はまだPC経由での配信になるため屋外の配信はやや困難。今後、スマホベースでの配信を可能にできるように開発を進めていきたいと語りました。

フリースタイルモトクロス観戦

『P.I.C.S TECH』は、フリースタイルモトクロスを360度で見る事ができる映像を制作。普段なら危なくて近づけないコースの中からジャンプを間近で見られます。コースの中に視点があるため、新鮮な目線で楽しめます。

全天球映像万博 2016春

こちらは、動画の各フレームをマスキングして静止画として起こしたもの。GoPro6台を使用した撮影を行っており、GearVRで閲覧します。画質はかなり綺麗に仕上がっていました。ライダーが一瞬一瞬でどのような体勢でジャンプをしているのか空間的に把握できる面白味と新しさがあります。

全天球映像万博 2016春

登壇したのは、P.I.C.S TECHの坂本立羽氏。「高さも実感しながらひねりも見れます。全天球ならではの新しい表現方法」とコメントしました。一方で、ライダー目線(一人称視点)の撮影を行った際の反省点を紹介。目線としては面白いが、見ていて30秒で酔ってしまう。いかに水平を維持するかが課題となった事を紹介しました。水平を保つために使うカメラのスタビライザーが画面に映り込んでしまうなど、全天球映像にて主観映像を行う難しさを語りました。

Sports VR、東京マラソン360度中継

今回体験できたコンテンツは2つ。SPORT VRはVRクリエティブアワード2015で優秀賞を受賞しているコンテンツです。スキ―やフィギュアスケート、キックボクシングなどのスポーツをアスリート目線で楽しめるというもの。もう一つは、東京マラソン360度中継。奇抜な飾りものを付けて参加する事で有名なジョセフ・ティム氏にカメラ付きのヘルメットを被ってもらい、ライブストリーミングするというものです。ライブ配信の臨場感が伝わってきます。

全天球映像万博 2016春

東京マラソンで使用されたヘルメットには画角が250度のレンズが2つ装着されています。

全天球映像万博 2016春

全天球映像万博 2016春

登壇したのは、カディンチェ株式会社代表取締役の青木崇行氏。同社は、PANOPLAZAやハコスコストアといったパノラマ動画のコンテンツプラットフォーム開発を行っています。

青木氏は東京マラソンの中継の苦労話を披露しました。東京マラソン42.195キロを、ジョセフ氏は6時間程で完走。バッテリーが持つ間のみの配信でした。当初、GoPro6台とMacBookProを背中に背負って配信を行わなければいけませんでした。それでは現実的でないため、カメラの台数やPCの軽量化を進めました。カメラの揺れがかなり安定しているのが印象的なのですが、そのスタビライズはSONY研究所の研究成果とのこと。もともとSports VRでも使われていた画像処理によってスタビライズをかけ、水平の安定化させる技術を東京マラソンではリアルタイム処理で行いました。配信には、SIMカードを3本挿せるようなデバイスが必要だったとのこと。これからの配信では、「現場に応じたサーバー構成が必要になる」とコメントしました。

今回の企画では、VRという新しいメディアを利用したコンテンツを体験しました。講演では、この未開拓の分野でクリエイターがどのように技術を研ぎ澄まし、試行錯誤をして作品を生み出しているのかを聴く事ができました。

この記事を書いた人

  • image00

    先端技術好きなデザイナー。VRでは、MVコンセプトアート制作や360度カメラを使用した企画に関わる。多摩美術大中退、CI開発から書籍装丁等の様々なデザイン業務に従事。 THETA LOVERだゾ。

    Twitter:@sayamecci

    Mogura VRのライター一覧はこちら
    http://www.moguravr.com/writers/