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VTuber 2018.12.09

みんなを世界に連れていきたい――大舞台に挑戦するバーチャルシンガー「YuNi」の軌跡

約5000人以上の規模にまで成長したバーチャルYouTuber業界(VTuber)。まだ盛り上がってから1年ほどの年月しか経っていませんが、現在進行形で目まぐるしい成長を遂げています。

そのなかでも大きな広がりを見せているのがやはり音楽方面での取り組みでしょう。キズナアイの9週連続楽曲リリースや有名なコンポーザーがVTuberに楽曲を提供するなど、その規模は日が経つにつれて大きくなっています。

VTuberが盛り上がり始めた昨年の末から投稿される動画の傾向を見てきましたが、一時期を境に歌の投稿頻度がグッと上がり続けていました。なにがきっかけでここまでの盛り上がりを見せるようになったのか諸説あると思いますが、歌のみを投稿するバーチャルシンガー「YuNi」の登場も音楽系VTuberが増えた一因だったと考えています。

そこで今回は、YuNiがどのような活動をしてきたのか掘り下げていきます。

音楽一本でYouTubeに切り込む、VTuber界の歌姫

今では多くのVTuberが所属している組織「upd8」ですが、その初期メンバーに選ばれたのがYuNiでした。キズナアイを筆頭に、所属するメンバーの大多数はすでに活動していましたが、YuNiだけはひとつも動画を投稿していない、謎に包まれた子でした。

upd8所属の告知からおよそ2週間後の6月14日、彼女のチャンネルには一本の動画があがります。自己紹介動画かと思いきや、投稿されたのはカードキャプターさくらオープニングテーマ「プラチナ」の歌ってみた。まず最初はどういった人物像なのかを理解してもらうために自己紹介することが多いのですが、YuNiは違いました。このスタートダッシュからは、「私は歌で業界を盛り上げたい」というメッセージのようにも感じました。

活動開始後はアニソンやボカロをメインに歌だけで活動します。YuNiのデビュー以前から歌のうまいVTuberは多くいましたが、その方々には「もっといろんな曲を歌ってほしい」との声を視聴者が寄せていました。しかし、いろんな折り合いもあり、たまに投稿するぐらいに収まっていたという背景があります。そこに歌に特化したYuNiが期待の新星として現れ、歌をもっと聴きたいという人たちから注目を浴びていました。

そんなYuNiのもとに、早くも転機が訪れます。活動開始の翌月7月にアップロードしたボカロ曲「シャルル」が爆発的なまでにヒット。「シャルル」の再生数に付随するかのように彼女の魅力に気づくファンが急増し、ここから彼女の快進撃が始まります。6月末のチャンネル登録者数はまだ数千人でしたが、7月の終わりには6万人もの人が彼女の歌声の虜になっていました。

「シャルル」の投稿からまだ5か月ほどしか経っていませんが、今では400万再生を記録するほどまでになりました。そのほかにも「エイリアンエイリアン」「砂の惑星」も100万再生を突破し、徐々に知名度を伸ばしています。

透き通るような歌声でこちらに訴えかけるように曲を表現したり、ときには「おねがいダーリン」などでかわいらしい一面も視聴者にアピール。バーチャルシンガーと銘打つYuNiですが苦手なジャンルもあるようで、「crossing field」のようなロックは声質的にあまり得意ではないと語っています。

今ではLIVE配信でトークする機会も増えてきましたが、当時は投稿される歌や彼女のTwitterからの情報でしかどんな子か予想できませんでした。しかし、その謎めいた人物像をどうにかして解き明かしたいという追求心が生まれたからこそ、彼女の魅力が深まったのかもしれません。

清らかな乙女丸に名前が決定した裏側

YuNiには、「清らかな乙女丸」という相方がいます。活動当初は特に名前がついておらず、「なんかユニコーンのマスコットキャラクターがいるな、でもしゃべらないのか」、ファンのあいだではそんな認識だったかと思います。


▲今はカッコいい乙女丸にもこんなにかわいい時期がありました

それからしばらくして、「打上花火」でこのユニコーンとのデュエットを披露。その動画を見た視聴者からは「お前、歌えたのか……」「イケボじゃん」といった驚きの声が。

その後、YuNiのTwitterにて、そんなユニコーンの名前を決めるアンケートが行われました。ファンから事前に名前を募り、最終候補に残ったのが「NiCo」「コロネ」「こじろう」「清らかな乙女丸」の4つ。ここで選ばれたひとつがユニコーンの名前になるわけですが、事前情報が「打上花火」だけだったらユニコーンと関連性のあるNiCo一択だろうと。もちろん、筆者もNiCoに入れていました。

アンケートの最終結果は52%でNiCo。1位を勝ち取ったNiCoがユニコーンの名前になっているはずですが、今現在、活動しているのは清らかな乙女丸。なにかがおかしい。

なぜNiCoではなく、清らかな乙女丸なってしまったのか。それについては、「大人の事情」だと第1回のLIVE配信で告げていました。普段はYuNiをイケボなユニコーンではなく、別のユニコーンがサポートしているので、正しかったのかもしれません。(命名当初はおっさん丸と呼ばれていた悲しい過去があります)

かしこまりの「パンディ」や響木アオの「コアパン」、ときのそらの「あん肝」など、ほかのマスコット的存在にはちょっと変わったインパクトのある名前が付けられているため、清らかな乙女丸になったとも考えられます。

清らかな乙女丸はYuNiには欠かせない存在なわけですが、放送内ではちょくちょく冷たい態度を取られて凹む姿が見られます。また、「ぽんぽこ24リターンズ」では嫁についてのトークを迫られ、最近は乙女丸の定番ネタになってきています。フィギュアを捨てられた過去を明かしたり、ちょっとかわいそうと思えるときも。頑張れ、乙女丸! 負けるな、乙女丸!

LIVE配信やTwitterではおちゃめな一面も

YuNiはこれまで自分がどんな人物か明かさないミステリアスな子でしたが、7月末からだいたい月一間隔でLIVE配信を行うようになります。これをきっかけにおおよその人物像が見えてきます。おっとりしていてマイペース、そんなような印象を放送から受け取ったはずです。また、Twitterでも稀に彼女がどんな子かイメージできる動画を投稿していました。

いろんなテーマでトークをしている今では、YuNiは『ファイナルファンタジー』が好きなことがわかっています。ここで、LIVE配信していない時期の動画のツイートを見返してみると、好きな『FF』をオマージュした作りになっていることに気づきます。放送以前からちょっとしたところに彼女の好みを反映していたみたいですね。

ちなみに『FF』はⅤ~ⅩⅤまでプレイしているらしく、ナンバリングとしては『FFⅨ』が好きなんだとか。キャラクターではビビがお気に入りとのこと。人気の高いⅦやⅩを一番手に挙げないあたり、どことなくツワモノな予感がします。

https://twitter.com/yuni_vsinger/status/1048182689138802691

https://twitter.com/yuni_vsinger/status/1048902045992869890

彼女が好きなのは音楽だけかと思いきやゲームやアニメなどなど、ほかのエンターテインメントにも興味があることがLIVE配信では判明します。先日行われた「デラとハドウ」のデラがゲストとして訪れた放送では、二人でアニメについてトーク。

https://www.youtube.com/watch?v=0EqFhGFhieo

今期アニメをしっかりチェックしていたり、『シュタインズゲート』がイチオシだと語ったりと、お題に沿った会話がなされるので、これまで知り得なかったことが山ほど出てきます。そのため、放送を取りこぼしのないよう確実にチェックしたくなるのです。

ここ最近はコラボでの歌動画も増えてきました。普段、ひとりのときはメッセージを込めるように真剣な表情で歌っていることの多いYuNiですが、コラボはとことんまで楽しむスタンス。周りと打ち解け、和気あいあいとしている姿を見ていると、なんだかこちらもつられて笑みがこぼれます。

歌ってみたではありませんが、響木アオのチャンネルで行ったゲームバトルはこれまでのコラボのなかでもイチオシの動画。YuNiと響木アオのいる遊戯部でゲームをし、みごとすべてのチャレンジにクリアーするとスマホ用の壁紙がもらえるというモノでした。

これがなかなかに凝っていて、上記のように選択肢がいくつか表示されます。ここからどれを選ぶかで結末が変わってくるのです。正しい答えを選べれば次のゲームへ、間違った解答をしてしまうとそこでゲームオーバー。

全部で14通りほどのパターンが用意されているうえに、どれも反応が違うので見ごたえがあります。この動画は、YuNiがTwitterで見せてきたおちゃめな姿を初めてYouTube上で披露した瞬間でもありました。よりYuNiの魅力に触れられる内容になっているので、ゆにチルもそうでないかたも必見!

休止期間を乗り越え、YuNiは新たなステージへ

10月12日に投稿した「ultra soul」を最後に、YuNiは活動を一時休止します。いきなりの活動休止に、ほかのVTuberやファンからは心配の声が挙がっていました。その2週間後、LIVE配信の告知が行われ、YuNiはオリジナル楽曲「透明声彩」を引き下げ、復活を遂げることに。

放送には、泣きながらにこれまでの活動内容や音楽について語るYuNiの姿が。どのように歌うのか、フレーズひとつひとつにどんな想いを込めるのか。歌うなかでさまざまなことを考え、そして苦悩してきたことも口にしていました。そこまで考えて歌ってきたからこそ、多くのファンは彼女の歌声に惹きつけられて、応援しているに違いありません。

また、視聴者には「みんなを世界に連れていくことが最大の恩返し」だと伝え、「最後までぜひ見届けてほしい」と真剣な眼差しでコメントしていました。あそこまで堂々とした意思表明をされてしまったら、見ていたファンは最後まで見届ける以外の選択はできないでしょう。

https://www.youtube.com/watch?v=AhVCL5EUp40

今後、彼女の取り組みとして12月24日にはVRライブプラットフォーム「VARK」にて、ライブを行うことも決まり、VR上での年越しイベント「Count0」にも参戦。そして、年始には「NHKバーチャルのど自慢」への出演も決定しています。

世界へ飛び立つことを目標に、歌一本で大舞台に挑戦するYuNiがこれからどんな景色を見せてくれるのか楽しみでなりません。この記事を見てくれたかたにも、ぜひ彼女の勇姿を最後まで見届けていただきたいです。


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