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にじさんじ 2022.06.01

なぜ人気? にじさんじVTuber壱百満天原サロメの底知れない魅力を語る

おそらくこの1週間、VTuberファンならずとも多くの人がニュースで名前を目にしたであろう、そして「漢字で書け」と言われると迷うであろう、壱百満天原(ひゃくまんてんばら)サロメ

5月24日、VTuberグループ「にじさんじ」からデビュー、5月31日時点で登録者数68万人越え。同時接続者数、深夜24時に10万人越え。こういった記録が出るのは音楽ライブやお披露目配信、ゲーム大会などイベントごとのときにあるかどうかのレベル。ただのゲーム実況で、ゴールデンタイム以外にそれを成し遂げてしまったのだから、異常事態だ。

確かに、その突飛なパフォーマンスで、多くの視聴者から「やべーやつ」と呼ばれるほどのキャラの強さはあるが、インパクトだけではない。彼女の評価はそれを後押しするトーク力の高さと、配信の丁寧さにも現れている。

規格外だった初回配信

初配信では自分をよく知ってもらうためにと、住民票、履歴書、マイナンバーカードを(一部黒塗りにしつつ)写真で紹介。挙句の果てには、胃カメラの写真(モザイク無し)を公開するという暴挙に出た。インパクトは絶大で、胃カメラの子として彼女の名はネットを駆け巡った。

彼女はお嬢様ではなく、お嬢様に憧れる一般人だ。けれどもしゃべりは、いにしえの漫画アニメに出てくるタイプの「ですわ」口調。しかも何にでも「お」をつけるような、やや強引な過剰丁寧語だ。

初回配信だけで彼女のキャラクター性は完全に視聴者に叩き込まれた。はちゃめちゃなだけでなく、シンプルに突き抜けていてわかりやすいのだ。しかもこの時の配信時間は30分とかなり短くコンパクトに、自分の個性を詰め込んでいる。

配信予定表はVTuberファンを驚かせた。1週間の予定表のうち7分の6が「バイオハザード7」。色々な層にアプローチしたり、自身の個性を知ってもらうため、なるべくデビュー時は色々なジャンルのゲームや企画を入れる方がよさそうなものだが、彼女は一点突破。なんらかの意図がないと、この予定表は出て来ない。

中毒性の高い「ですわ」の魔力

壱百満天原サロメの配信はクセがものすごく強いようにみえて、とてもユーザーフレンドリーで観やすい構成になっている。VTuberを普段観ない人もハマっている様子がTwitterなどで見られる。

壱百満天原サロメは「ですわ」口調を絶対崩さない。ゲーム内文章も「ですわ」に翻訳する。しかも「ですわ」部分は声のトーンが高い。どうしても伝染する。コメント欄はいつの間にか、ほぼ全員が「ですわ」でしゃべるようになっている。

初回は笑っていることを意味する「草」がいっぱいあったのに、今となってはみんなそろって「おハーブですわー!」と返す。口がいいのか悪いのかわからない「きったねえですわー!」「くっせぇですわ!」など言語センスが抜群によいため、コメントでつい真似をしてしまう。コールアンドレスポンスだ。

配信の最初では、前回までのあらすじをイラスト紙芝居で説明している。VTuberの配信は誰もが毎日観られるわけではないし、じっくり見つめているわけではなく作業のBGMがわりに流している人も多い。そういう人への配慮としてのありがたい施策だ。

これまでの配信では、ほぼ24時スタートで、1時間前後で終わるよう調節されているのも大きな特徴だ。配信の感想を見ていると、翌朝に仕事や学校がある人にとって、「1時間楽しんで寝る」というスタイルが取れるのはかなりポイントが高いようだ。

トークのネタが幅広く、特にちょっと昔のオタクネタに精通している彼女。さらっと「ここでインド人を右にですわ!」「力こそパワーですわ!」「汚物は消毒ですわ! 」と口から出てくるあたり、大人のオタクを刺激してくる。

こうなると「オタクスラングを言う縦巻きロールお嬢様(風)」と、アニメキャラ的な強度が高い。だから人に、ものすごく紹介しやすい。独特な発言だらけなので、切り抜き動画も作りやすい。漫画「ゲーミングお嬢様」を連想した人の声もちらほら見られ、この漫画の原作者の大@naniもとても高い評価で彼女の配信を観ているようだ。

また「マウントセレブ金田さん」のニャロメロンや「ジャイアントお嬢様」の肉村Qがファンアートを描いていたり、「ローゼンメイデン」公式が「蒼星石との魂の鍔迫り合い」発言をリツイートしていたり、その作者であるPEACH-PITが「おバイオ7やりたい」と発言していたりと、お嬢様コンテンツを築いてきた作家たちも、壱百満天原サロメの出現で熱量があがりはじめている。

お嬢様と言えば、にじさんじ内にはジョー・力一のチャンネルに出てくる鹿鳴館キリコがいる。誇張された「お嬢様キャラ」によるセレブギャグが楽しい。壱百満天原サロメは性格や生い立ちや吹っ切れ方がだいぶ違いつつも、強固なキャラクター性を持った存在という点ではベクトルは近い。

真正お嬢様の鷹宮リオンは「ふたりとコラボすることがあったら面白そうなのでぜひ実現してほしいと思いますが、わたしが逆に浮きそう」「ふたりは『ルネッサンス(髭男爵の公爵をキャラ化したネタ)』なわけよ」「わたしが一番『俗』です」(ソース)と語っている。同じ「お嬢様」でありつつも、存在のあり方の違い、人格の出し方の差、お嬢様観のレイヤーの違いが見られる。

剣持刀也は「めちゃめちゃいいよね。久々に『こういうの!』ってなりましたね、昔からのVTuber好きとしてはね」(ソース)と感想を述べていた。2018年初期は属性やキャラクター性が強めな「話しかけてくるアニメキャラ」という印象のVTuberが多かったことを指しているのかもしれない。

「俗に言うお嬢様言葉? これ生まれた時からずっとそうでしたので、ですわ口調のコンテンツにすごく助けられて来たんですのよね、わたくし」「ですわ口調のコンテンツを見ますとわたくしだけじゃございませんわと思って」(【就職】トラックの運ちゃんになりましてよ!【ですわ】

あらゆるジャンルの「ですわ口調のコンテンツ」への敬意を深く払い、その上で「ですわ」エンターテイメントを見せてくれる壱百満天原サロメ。声量の圧はあるものの、決して高圧的ではなく、むしろ腰が低く優しいのも安心して楽しめるポイントだ。

Twitterの使い方も配慮に満ちている。ファンの発言に対して自身を保ちつつ、エレガントに誘導しているのは見事だ。

ファンもVTuberたちも「ですわ」が伝染しまくりの現在。まだ観たことがない人は、どの回から観てもちゃんと楽しめるようになっているので、ぜひコメント欄の「ですわ!」コールに参加してみてほしい。


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