いざVTuberとしてデビューして収入を得た際に必ず向き合わなければならないのが「税金」です。個人VTuberの場合に必要な手続きは? 兼業の場合はどうすべき? そもそも確定申告って何……?など、さまざまな疑問があるはず。
今記事では「VTuber活動をする上で、知っておきたい確定申告の基礎知識」を紹介。税理士の小川勝さんに詳しいお話を聞きました。
小川勝プロフィール
税理士事務所VOICE代表。勤務時代は、中堅中小企業の税務、組織再編、相続税申告業務など様々な業務に従事。現在は、特にクリエイターなど創作活動を行う法人、個人事業主に対する税務・会計を得意とし、法人化の検討や節税のご提案、業務効率化支援など、お客様の意向や事業内容に沿ったオーダーメイドサービスを提供している。
確定申告が必要となる条件は?
――個人でVTuberをはじめた方は、どういった条件になると確定申告が必要になるのでしょうか?
小川:
まず、用語を簡単にご説明をします。
・売上-経費=所得金額
・所得金額-所得控除=課税所得
この言葉を踏まえた上で質問にお応えしていきます。
まず「VTuberを専業として活動されている方の確定申告」について紹介します。VTuberとして活動した結果の「課税所得」がゼロ以下の場合、確定申告をする義務はありません。
所得控除には、大抵の方に基礎控除48万円がありますので、所得金額が48万円であれば課税所得がゼロとなり確定申告不要となります(※所得金額2400万円を超える高額所得者は48万円の基礎控除が受けられなくなりました)。
つまり所得金額が48万円より上であれば確定申告が必要。それ以下であれば不要ということになります。
次に「VTuberを兼業として活動している方の確定申告」について。例えば、普段はサラリーマンとして勤めており、副業でVTuberを兼務している場合は、所得金額20万円以下の場合、確定申告をする義務はありません。
ただし、2ヶ所で給与をもらっている人は例外的に確定申告する必要がありますので、ご注意ください。また、売上から源泉徴収されているような場合には、確定申告義務がなくとも確定申告をすることで税金が還付される可能性もありますので、その点も踏まえて申告されるかどうかをご検討ください。
――もし、10代(成人未満、保護者の扶養に入っている)の方が、VTuber活動を行い、グッズやイベントなどで収益を得ていた場合、確定申告の手続きはどうなりますか?
小川:
未成年の方であったとしても、先ほどの回答のように一定の条件を満たす場合には確定申告をする義務があります。また未成年の方の確定申告については、ご両親が代理で確定申告を行うことができます。
本人の所得が上がると、親の扶養から外れてしまい、思わぬ税金が生じることもありますので、必ず親の同意は得ておきましょう。
確定申告の準備をしよう
――活動1年目のVTuberが、まず、その年の確定申告で必ずやらなければならないことはどういったことでしょうか?
まずは所轄の税務署に「個人事業の開業届」を提出しましょう。開業届には、マイナンバーや住所(事務所となる場所のもの)、屋号(事務所名)を記載する欄があります。
・国税庁[手続名]個人事業の開業届出・廃業届出等手続:
https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/shinkoku/annai/04.htm
そのまま確定申告をする場合は「白色申告」での申告となります。税制上の優遇は比較的少なめですが気軽に申告ができ、サラリーマンと兼業している場合によくこの申告方法が利用されます。
また、もし白色申告ではなく「青色申告」に挑戦したい場合は、開業届と同時に「所得税の青色申告承認申請書」提出も必要になります。
・国税庁[手続名]所得税の青色申告承認申請手続:
https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/shinkoku/annai/09.htm
青色申告特別控除65万円・赤字の繰り越し等といった所得税の計算において優遇を受けることが可能になります。ただし、複式簿記による帳簿が必要になるなど白色申告より申告書の作成が難しくなります。
ご自身の働き方や所得状況を踏まえて、選択すると良いでしょう。
――そもそも「税金に関する基礎知識がない」「確定申告で何をすればいいのか分からない」といった方は、まず何から始めれば良いでしょうか?
小川:
ご自身で確定申告を行うのであれば、税金計算の流れ・確定申告とは何かを理解して頂くために、書籍もしくはYouTube等で大枠を抑えて頂くのがオススメです。
おすすめの書籍:「日本一わかりやすい ひとり社長の節税」
(国税庁公式チャンネル「確定申告書等作成コーナーからe-Taxで確定申告する方法」)
大枠を抑えた後は、税務署等で帳簿作成や申告書の作成の指導を受けることも可能ですので、そちらをご利用しても良いかと思います。
・国税庁「国税に関するご相談について」:
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/sodan/denwa-sodan/index.htm
税理士事務所に依頼する場合には、本業に専念できる、節税のご提案や経費のご相談ができるといったメリットがありますが、税理士費用が発生しますので、その点を踏まえて依頼するかご判断いただく形になります。
――VTuberという活動で確定申告が必要な場合、帳簿を作成する際に注意すべきポイントはなんでしょうか?
小川:
普段の業務としては、毎月の売上と経費の資料をまとめておくのが重要です。売上については、売上明細や支払通知をまとめておきましょう。経費については、領収書やカード明細等を月毎にファイリングしておくと良いでしょう。
なお、経費の範囲については個人で事情が異なりますので、まず何が経費になるか精査して頂く必要があります。これらの資料の準備が整ったら会計ソフト等を利用して帳簿を作成していくことになります。
注意点としては、例えば売上の計上時期は「現金主義(※お金を受け取った時に売上計上を行う方法)」ではなく「発生主義(※お金の流れではなく、取引自体が発生したタイミングで売上計上を行う方法)」で処理しているかが重要です。
また、年末時点で抱えている在庫に関しては経費から除外しているか、家事按分比率(※「家事」と「仕事」のそれぞれで使用した経費のバランス。自宅で仕事をしていた場合に、家賃や光熱費などの経費を算出する際に重要となる)は合理的な基準に基づいて計算しているか などがあります。
――これからVTuberデビューを目指す方へのアドバイスや心がけておいて欲しいことなどをお聞かせください。
現在VTuber市場は伸びており、年々売上が増加し税金面で不安になっているお客様も多くなってきていると思います。幣所にご依頼頂くお客様でも、過去の申告書を確認すると、経費に出来るものを計上しておらず多額に納税してしまっているケースや、逆に経費にできないものを経費として計上し、いわゆる脱税状態になっている方もいらっしゃいます。
また、確定申告をご依頼頂くタイミングが年末近くに増える傾向にあるのですが、そのタイミングですと決算対策等を行うことが出来ないため、もう少し早くお申込み頂ければ、といったことも頻繁にあります。
まずは一度お気軽に税理士事務所にご相談していただければと思います。
――ありがとうございました。