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Roblox 2023.08.21

全世界で約14億回アクセス 日本人クリエイターが制作したRoblox内コンテンツ「顔から逃げるゲーム」 火が付いた理由とは?【制作者インタビュー】

世界的人気を誇るゲーミングプラットフォーム「Roblox」で、とある日本人クリエイターの制作したゲームワールドが人気を集めている。その名も「顔から逃げるゲーム」。タイトル通り、巨大な顔から逃げるというシンプルなゲームで、インパクトのある顔に追いかけられる恐怖を乗り越えながら、さまざまなアスレチックをクリアしていくゲームだ。

その人気はすさまじく、アクセス数は約14億回(8月時点)。今年5月時点での1カ月のユニークユーザー数は、5000万を超えたという。今回は、ゲームを制作したマナトさんに、制作経緯や「Roblox」の魅力について語っていただいた。

――そもそも、どういったきっかけで「Roblox」を発見し、ワールドを制作するようになったのでしょうか? これまでの経緯をお聞かせください。

マナト:
ウェブ媒体の名前は覚えてないのですが、3年前に「アメリカで13歳未満の子どもたちの半数以上がプレイしているゲームがある」といった内容の記事を読んだのが最初のきっかけでした。それで私も実際にRobloxのアプリをダウンロードしてみて、プレイしてみたら「滅茶苦茶にアクティブユーザーが多いな」という状況で。

――3年前というと、まだ、日本ではRobloxの名前自体そこまで浸透していなかった印象です。

マナト
そうですね。全然知られていなかったです。当時会社員だったのですが、ちょうど社内でメタバース系の話題があって、「メタバースってどんな感じなんだろう」と思って、試してみたというのもあります。

――最初に遊んだ感触はいかがでしたか?

マナト:難しいなと思いました(笑)。当時は自動翻訳機能がなく、英語を読まないといけなくて「何が面白いんだろう?」と理解できない状況でした。

――そこから本格的にRobloxをやってみようと思ったのは、何故なのでしょう?

マナト:2年半ぐらい前にメタバース系の会社に就職したいなと思ったんです。そのためには、まず人に見せられるようなゲームを何か1個作ろうと思って、Robloxでそれをやってみようと思ったという流れです。それまでは、ウェブアプリのプログラマー兼SEといったキャリアだったのですが、ゲーム制作自体は全くの初心者でした。小学生の頃は、ゲーム開発者になりたいと思っていたのも、理由のひとつでした。

――「顔から逃げるゲーム」はどのような経緯で生まれたのでしょうか?

マナト:最初は美術館のような空間を制作してみたのですが、これが別に面白くなくて(笑)。就職活動で人に見せても、つまらないなと思ったんです。なので、人のインパクトに残るゲームを作ってみたいと考えてみて、ふと思い出したのが、ブラウザゲームの「青鬼」でした。奇妙なモノから追いかけられるゲームってインパクトがありますし、自分で作れないかなと探っているうちに、Roblox内のマーケットプレイスで、3Dの顔のモデルを見つけたんです。「これから追いかけられるゲームを作れば良いんじゃないか」と思い立ったのが、ゲーム制作のはじまりでしたね。

――「顔から逃げるゲーム」はシンプルな構成ながらも、長大な迷路やアトラクション要素をふんだんに取り入れられていますね。プレイヤーたちも、迷子になりながら手探りでゴールを探す面白さがあると思います。こういったゲームにしたのは何故なのでしょう?

マナト:理由はなんとなくではあるんですが、一時期、リアルの脱出ゲームが流行したことがありましたよね。人には「巨大な迷路から抜け出したい」という欲望があるんじゃないかなと思って、あのようなスタイルになりました。

ただ「顔から逃げるゲーム」は途中から迷路ではなくなって、アスレチックを攻略するようなゲームになったのですが、それは僕が単純に迷路を作るのに飽きてしまって(笑)。中盤からは「スーパーマリオ」のようなアクション性の高いゲームへと、方向性をシフトしていきました。

――ゲーム投稿後の手応えはいかがでしたか?

マナト:同時期に「顔から逃げるゲーム」含めて3つほど投稿してくれたのですが、ちゃんと遊んでくれたのは「顔から逃げるゲーム」でした。そもそも投稿しただけでは遊ばれないだろうと思って、TikTokで宣伝動画を投稿したのですが、それによって興味を持ってくれる人がいましたね。ただ当時は、このゲームだけが特段面白かったという実感もなかったんです。そこで、Robloxにいるユーザー、おそらく日本の小学生の子達だったと思いますが、ゲーム内で彼らにどんなゲームを作ればいいのかを聞いてみたら「顔から逃げるゲームが絶対いいよ!」とアドバイスをもらって、制作を続けることにしました。

――遊んでいるユーザーの方々は日本語圏と英語圏の方が中心だったのでしょうか?

マナト:韓国のユーザーの方もいましたね。一番最初は日本人ユーザーから火がついた印象です。実際どれくらいの人たちが最初に来てくれたのかはわからないのですが、おそらく10人ほどが来て、それでRoblox上に「今、フレンドが遊んでいるワールドはこれです」と表示されるので、それをきっかけに広まったんじゃないかなと思います。

――Roblox内で口コミや評判が広がっていきやすいという状況が今の盛り上がりを生み出したわけですね。

マナト:Robloxにおいては、面白いゲームさえ作れれば、確実に広まるだろうなという実感があります。

――ゲームを制作する上で注力したポイントはなんでしょうか?

マナト:計算してつくったわけではなく、僕が遊んで面白いかどうかが重要でした。ゲーム開発に関しては素人なので、作ってみて上手くいかなければ修正するというのを繰り返してました。

――ユーザーの反応を見ながら変更するというのもあったのでしょうか?

マナト:それもありましたね。遊んでくれているユーザーの動きや反応を見ながら、難易度を調整するかたちで。Roblox自体はボタンひとつで簡単にアップロードできるので、そういった点では開発しやすいと思います。

――「顔から逃げるゲーム」に関しては、結果として14億以上のアクセスを獲得しています。ここまで伸びたことに関しての、ご感想はいかがですか?

マナト:不思議ですね。実感はあまりないのですが、海外のYouTubeインフルエンサーがワールドを紹介してくれたことも大きかったのかもしれません。

――ここまで伸びた理由については、どう考えていますか?

マナト:どうなんでしょう……やはり、あの顔ですかね(笑)。あの顔って最初は怖いんですけど、ちょっと笑えるところもあるような、絶妙なバランスのものなんですよ。遊んだ感想をプレイヤーに聞いてみると、特に子どもは素直に「めちゃくちゃおもしろかった」「もっと遊びたい」とコメントしてくれていて。

――バーチャルアイドルグループのGEMS COMPANYとのコラボワールドの登場や、テレビ朝日のメタバース番組でもゲームが取り上げられるなど、注目度が高まっている印象です。

マナト:注目されて嬉しいです。日本ユーザーにも徐々にRobloxが浸透してきている印象があって、特に今年ぐらいからはYouTube実況など、さまざまなメディアでの取り上げが多くなっている印象です。

――個人的には、Robloxの魅力とはどういったところにあるとお考えですか?

マナト:作り手の視点から言えば「簡単に作れる」っていうのが大きいと思います。ハイスペックなPCも不要ですし、プログラミングの仕組み自体もシンプルです。動作が軽いために、細かなテストをしやすいのもポイントですね。そのため、クリエイターの参入障壁はとても低いのではないかなと思います。気軽に自分のアイデアをぱっと出しやすい作りですね。

――Robloxでは、ワールドやゲームを制作したクリエイターへの収益化プログラムもありますが、実際の利益としてはいかがですか?

マナト:自分の場合、先月であれば、3桁万ほどにはなっていますね。当時は、あんまり収益に繋がるというイメージはありませんでしたが、100万を超えることがあるのかと思ったのは驚きでしたね。おそらく、僕の方はまだまだ大したことは無くて、Robloxのトップクリエイターであれば、もっと夢のある話が聞けるのではないかと思います。

――マナトさんのように、Roblox内でゲームや開発を行う人たちというのは増えている印象がありますか?

マナト:Robloxをメインとした開発コミュニティがあるんですが、徐々に増えている印象です。10代の若いクリエイターさんたちも関心を寄せているみたいです。個人的には、Roblox自体の(コンテンツを開発するための)クオリティがもっと上がって、ポリゴンの上限数なども拡大していくと嬉しいなとは思っています。そうなると、より多くの人が参入しやすくなるんだろうなと。

――今後はクリエイターとして、どういった方向性で活動していく予定でしょうか?

マナト:自分が面白いと思ったものを作っていくという、満足感を求めて色んな方向に手を広げていきたいです。Robloxについて言えば、前作は1人で脱出するタイプのゲームだったので、チームで協力しながら謎解きをするマルチプレイのゲームを作ってみたいですね。また、幼い頃からずっと映画を作りたいなと思っていて、自分が好きなものを詰め込んだモノをこれからも作っていければと思っています。

――ありがとうございました。

「顔から逃げるゲーム」へのアクセスはこちら(アプリのインストールが必要)。


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