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にじさんじ 2021.08.09

にじさんじのリアルタイムARライブは何がすごかったのか? 「”LIGHT UP TONES”」レポート

にじさんじでは初となるリアルタイムARライブ「にじさんじ AR STAGE “LIGHT UP TONES”」が、7月31日と8月1日の2日間公演で開催されました。

なにより今回の目玉は「リアルタイムARライブ」という、VTuber業界で見てもめずらしい取り組みそのもの。出演者たちのすばらしいパフォーマンスはもちろん、一目見るだけで「これはすごいぞ」と息を呑まされるほど高い技術力が光っており、この2日間だけでVTuberの音楽ライブシーンが大きく一変してしまいそうなほどのインパクトがありました。

本記事では「にじさんじとAR」「VTuberとAR」の関わりについてや、本ライブにおける技術的な注目ポイントを一挙に紹介。その上で、2日間に渡るライブの魅力をレポートします。

にじさんじとARの関わり

本編を振り返る前に、これまでのにじさんじのARとの関わりについて紹介しておきましょう。

にじさんじのARを用いた取り組みは、これまでほとんど見られず、今回のリアルタイムARライブが本格的なAR導入としては初の事例と思われます。

ただし「Virtual to LIVE in両国国技館2019」の連動企画「にじめぐり~にじさんじの街めぐり~」にて、ソニーの「Sound AR」を用いたコンテンツ展開を行っており、にじさんじライバーを「出張」させる取り組み自体は過去にもあります。

また過去のライブイベントを振り返ってみると、樋口楓1stライブ「KANA-DERO」以来、基本的には巨大なスクリーンを用いて、現実の会場にライバーを出演させる形のライブが多めです。その意味では、現実に出張する形のライブを目指しているともいえ、今回のARライブはその発展かつ集大成と見ることもできるでしょう。

なお「にじFes2021 前夜祭 feat.FLOW」にて、今回のライブにて使用されたリアルタイムAR技術と思われるものが先出しされています。同技術はANYCOLOR株式会社の内製であることも踏まえ、2021年の各展開に向けて仕込みは行われてきたものと思われます。

今回のARライブの何がすごかったのか?

上記の流れを踏まえた上で、にじさんじARライブの何がすごかったのかを振り返ってみます。

今回のARライブの重要なキーワードは「”いる”感」です。3Dモデルのにじさんじライバーが、現実のスタジオで本当に立って歌っているような実在感が、非常に強かったのが最たる特徴と言えます。

その「実在感」はどこから感じたのでしょうか? 要因は複数考えられます。

まず大きいのが「影」の存在です。現実のスタジオに対して、出演者ごとの影がしっかりとリアルタイムで描画されていたことが、まず「実在感」の引き上げに大きく貢献しています。単に灰色の像をステージ上へ落とすのではなく、各出演者の姿が反射される形で表示されていたのがポイントで、これによって各人の存在が現実世界により具体的に投影されていいたように感じられていたと思います。

なお、AR合成において「現実世界」への影の投影はいくつかアプローチがありますが、今回はメインの3Dモデルを縦方向へ反転させた3Dモデルを配置する方法を採用していたものと推察されます。

またスタジオの照明効果がリアルタイムで出演者の姿へ反映されていたのも大きいでしょう。単にAR合成しただけなら、現実側が真っ暗になっても、3Dモデル側は明るい部屋にいるような明度のままです。

おそらくスタジオ側の照明情報と全く同じものが、3Dモデルを動かすソフトウェア上でも適用されていたものと推察されます(香盤表をもとに描画していたのかもしれません)。いずれにせよ照明演出とは現実世界側の物理法則であり、これがバーチャルな存在たる出演者に適用されることで、「彼らがこちら(現実)にいる」と強く感じさせるのでしょう。

「段差」の存在も欠かせません。「スタジオ内の高低差」もまた現実世界側の物理的な情報であり、これを忠実にバーチャルな出演者が守るような動きをすることで、現場に存在するような感覚をもたらしています。

原理的には、現実世界側と同じような段差情報を3Dモデル側にも配置すれば実現は可能なはずですが、身長はおろか頭身も異なる出演者たちごとに調整しつつ、さらに「カメラの動き」にも各情報を追随させなければいけないはずで、かなり綿密な調整が必要であったように思われます。まさに職人の技……。

「現実世界のあらゆる法則をバーチャルな存在に適用する」というベクトルでAR技術が作用していたからこそ、「そこに”いる”」と感じさせられたのだと考えられます。上記を全てリアルタイムで生み出していたところに、今回のライブの「すごさ」が結集している……と言えるでしょう。

最高の歌唱力が集結!DAY1レポート

あらためて各日のライブの詳細をレポートしていきます。

筆者は今回、DAY1はライブビューイング会場(新宿バルト9)にて観覧しました。会場内は無発声・無起立、拍手とサイリウムはOKというレギュレーションでしたが、客席の熱量は拍手の大きさからも十分伝わってきました。

DAY1の出演メンバーは樋口楓、緑仙、花畑チャイカ、町田ちま、ジョー・力一、夢追翔、レヴィ・エリファ、加賀美ハヤトの計8名。先日3Dの体を得た町田ちまとレヴィ・エリファも含め、歌唱力に優れた面々がそろった選出です。セットリストはこちら。

  • 1・2・3/夢追翔、レヴィ・エリファ
  • 儚くも永久のカナシ/花畑チャイカ
  • 千両役者/緑仙、加賀美ハヤト
  • 藍ヨリ青ク/緑仙
  • give it back/町田ちま
  • Black Market Blues/ジョー・力一、加賀美ハヤト
  • 逆光のフリューゲル/町田ちま、レヴィ・エリファ
  • 今宵、月が見えずとも/ジョー・力一
  • 絶望遊戯/樋口楓、ジョー・力一、町田ちま
  • WITHIN/加賀美ハヤト
  • かわE/花畑チャイカ、緑仙(ダンス:町田ちま、ジョー・力一)
  • 19才/花畑チャイカ、ジョー・力一
  • 青空を睨む/夢追翔
  • ANIMAる/樋口楓、レヴィ・エリファ
  • カワキヲアメク/レヴィ・エリファ
  • Baddest/樋口楓
  • 点描の唄/町田ちま、ジョー・力一
  • Viking/緑仙、夢追翔、加賀美ハヤト
  • IKIJIBIKI/樋口楓、緑仙
  • みかんのうた/花畑チャイカ、ジョー・力一、夢追翔、加賀美ハヤト
  • カナリヤ鳴く空/緑仙、町田ちま、レヴィ・エリファ(トランペット:樋口楓)
  • Wonder NeverLand/全員

前日特番の中で、加賀美ハヤトは「生バンドでやりたいなっていう曲がたくさんある人たちだったんで今回」「セトリ並べた時の大暴走感というかなんというか」と証言していましたが、フタを開けてみれば納得のいく選曲の数々。なかなかこの手のライブで見られない曲が多くラインナップし、オリジナル曲を持ってくる人もいるという、「攻め」のセトリとなっていました。そして、このセトリを歌いこなす面々がそろっていました。

まずは、にじさんじの3Dライブイベントには初出演となるレヴィ・エリファから。パワフルでよく通る彼女の歌声はバンドサウンドとの相性が抜群です。『1・2・3』では元気に跳ね回ってみせる一方、『カワキヲアメク』ではありったけの感情を歌声に込めるなど、歌ごとに大きく表現を変えてきたのも目を見張るところ。百戦錬磨なDAY1メンバーに肩を並べるアーティストとして、今回特に印象に残った方も多いでしょう。

『ANIMAる』ではデフォルメ表情も! この顔、かわいいですよネ。

町田ちまもにじさんじ3Dライブイベントには初出演ですが、そうは感じさせられないほどのすばらしい歌声が響き渡りました。圧倒的に美しく、壮大な彼女の歌声は、むしろライブでこそ輝くものなのでしょう。ソロの『give it back』、レヴィ・エリファとの『逆光のフリューゲル』、ジョー・力一との『点描の唄』、どれも非常にすばらしいです……

一方、MCパートや『かわE』で見せてくれたダンスはキュートさであふれていました。かわE……

花畑チャイカも大活躍でした。普段あまり歌のイメージがない彼も、ステージの上に立てば「グリーン・ルージュ」の片割れ。『儚くも永久のカナシ』がバッチリとハマる、正統派にカッコいい歌声を披露してくれました。アンコール前のMCパートではめずらしく真面目な様子で「これからは歌もがんばります!」と堂々と宣言しており、このライブが彼の中で大きなきっかけとなったのかもしれません。

そして忘れちゃいけないのが、加賀美ハヤトとのMCパートで披露してしまった「大人ケツ人間」。有料ゾーンなのをいいことに(?)大暴れでした。

そして「グリーン・ルージュ」のもう一方であるジョー・力一。2019年の両国にてMVPともいえる活躍を見せた歌唱力は今回も健在です。『今宵、月が見えずとも』ではどこまでも伸びていく歌声を披露しつつ、加賀美ハヤトとの『Black Market Blues』では治安の悪いかっこよさをを、花畑チャイカとの『19才』ではセクシーさを全身で魅せていき、その変幻自在ぶりもまた魅力的です。

スラリと伸びる手足を存分に活かした振付も、今回の力ちゃんの見どころのひとつ。指先まで妖しくクールにキマってます。

加賀美ハヤトも存分に魅せてくれました。Zepp福岡にて鮮烈なステージを作り出して以来、にじさんじの音楽シーンの第一線に立ち続けている一人として、今回のライブでも”激打”な選曲をぶつけてきました。中でも生バンド版『WITHIN』は圧巻の一言。本ライブオリジナルMCパートも含め、「2021年の加賀美ハヤト」を、そして「2021年のにじさんじ」を最強のパフォーマンスで彩っていきました。

にじさんじ随一の治安の悪さは今回も健在。赤い照明とステッカーだらけのメガホンがこれほど似合う社長もそうそういないでしょう……!

緑仙は今回のライブでは様々な顔を見せてくれました。『かわE』ではポップでコミカルなステージを作り、『千両役者』では荒々しいかっこよさを叩き込み、フルver初披露となったオリジナル曲『藍ヨリ青ク』では儚く多感な感情を歌い上げ、その表現は千差万別。音楽に注力するにじさんじライバーのひとりとして、さらに進化したステージを作り出してきました。

前日特番内では「Zepp札幌では棒立ちだった」ことを課題として挙げていましたが、今回はステージを縦横無尽に使い倒したのも印象的でした。アーティストとして、その表現力はさらに磨きがかかっています。

夢追翔はオリジナル曲『青空を睨む』にて、「ステージ上にもうひとりの自分を映す」というARならではな演出に挑みました。ノイズまじりの「落ち込んだ様子の夢追翔」に向けて歌う夢追翔という構図は、歌詞とのリンクも感じられるものとなっています。ここまで楽曲の中身に深く踏み込んだ演出は、シンガーソングライターという出自だからこそ生まれたもののように感じられました。

またレヴィ・エリファとともに『1・2・3』でトップバッターを担い、終盤のMCパートでは巧みに場を温めて終盤戦へつなげるなど、要所要所での活躍が光っていました。さらに、このライブではひさびさに「le jouet」の3人(緑仙、夢追翔、加賀美ハヤト)が集結。まさかの初公開の新曲『Viking』を披露するサプライズも見せてくれました。

そして、元祖・にじさんじ発アーティストである樋口楓。メジャー2ndシングル『Baddest』を抜群のパフォーマンスで歌い上げ、本ライブの終盤戦を最大の熱気とともにスタートさせていきました。また、緑仙とは『IKIJIBIKI』で、レヴィ・エリファとは『ANIMAる』で、ふだんはなかなか見られないデュエットも披露。力強くもバランスの良い彼女の歌声が活きる、新鮮な組み合わせが多く誕生しました。

『カナリヤ鳴く空』ではトランペット演奏を担当。バンドサウンドとも見事に噛み合う演奏を見せてくれました。本人の演奏はもちろんですが、運指トラッキングも見事に実現しており、今回のライブの技術力の高さがこんなところからも垣間見えます。

最後は全員で、にじさんじ3周年記念プロジェクト「PALETTE」の第1弾楽曲『Wonder NeverLand』にて締めくくり。まるで夏フェスのような活気にあふれたDAY1は、8色のアーティストが集う「バラバラのパレード」として大団円を迎えました。

七色の組み合わせが結集! DAY2レポート

熱気冷めやらぬまま迎えたDAY2の出演者は、月ノ美兎、剣持刀也、叶、ドーラ、魔界ノりりむ、葛葉、椎名唯華の7名。DAY1と比較すると、DAY2はなかなかにめずらしい組み合わせの出演陣となっていました。セットリストはこちら。

  • Flyers/ドーラ
  • 革命デュアリズム/葛葉、ドーラ
  • 心絵/葛葉
  • ビーバー/叶
  • はくちゅーむ/椎名唯華、魔界ノりりむ
  • シル・ヴ・プレジデント/魔界ノりりむ
  • 青と夏/剣持刀也、椎名唯華
  • 幽霊東京/椎名唯華
  • まっさらブルージーンズ/月ノ美兎、ドーラ
  • 宿命/叶、葛葉
  • Ready Steady/葛葉、椎名唯華、魔界ノりりむ
  • ダーリンダンス/月ノ美兎、魔界ノりりむ
  • 誰かの心臓になれたなら/剣持刀也
  • ray/月ノ美兎、剣持刀也
  • みとらじギャラクティカ/月ノ美兎
  • 廻廻奇譚/叶、剣持刀也
  • スーサイドパレヱド/叶、葛葉、剣持刀也
  • Virtual Strike/剣持刀也、ドーラ
  • ガヴリールドロップキック/椎名唯華、月ノ美兎、ドーラ、魔界ノりりむ
  • Wonder NeverLand/全員

かわいい曲からかっこいい曲まで、幅広いレパートリーがそろいつつも、歌う人の組み合わせもまためずらしいものが見られました。定番ユニットによる盤石なパフォーマンスから、レアなユニットによる化学反応まで楽しめる、これぞにじさんじと言えるライブとなっています。

トップバッターを務めたのはドーラ。開幕の『Flyers』に加え、葛葉との『革命デュアリズム』、剣持刀也との「PALETTE」の第2弾楽曲『Virtual Strike』など、エネルギッシュで安定感のある歌声が存分に炸裂していました。基本的に姿勢がものすごくよい方なので、立ってるだけでも歩くだけでも絵になっていました。お美しい……

月ノ美兎とは『まっさらブルージーンズ』にて見事なダンスも披露してくれました。茶番から入りながらも見事なキメっぷりは、さすがはド葛本社のオカンです。

特に注目を集めていた出演者といえば、やはり叶でしょう。なによりこのライブにて、私服姿の新3Dモデルが初登板となったからです。パジャマを脱いで、現デフォルト衣装に着替えた姿にコメント欄も黄色い声援一色。甘くもクールな歌声も相まって、にじさんじのメンズアイドルとしてより魅力が高まったといえます。

さらに『ビーバー』にて見事なダンスを披露してくれました。事前特番にて「自分の中でパフォーマンスってものができた」と語っていたのですが、その言葉に恥じぬキレッキレの踊りは要チェックです。

叶とくればこの人も欠かすことができない、葛葉です。年々その歌唱力とパフォーマンスに磨きがかかっている彼ですが、ARライブでの歌声は過去一といっても過言ではないでしょう。『革命デュアリズム』の爆発力、『心絵』の豊かな表現力、『Ready Steady』クールなラップ……どれをとってもハイクラスに仕上がっていました。

もちろん、ChroNoiRコンビでも一曲お届けされています。ふたりによる『宿命』では、とても優しげな声色の葛葉を拝むことができます。ちなみに『心絵』も『宿命』も野球に縁のある曲。監督を務める神速高校の夏を告げる選曲だったのかもしれません。

椎名唯華は3Dモデルのブラッシュアップ(※主に顔まわり)を行っての参戦となりました。日頃のイメージとは裏腹に、実はライブイベントではかなりレベルの高いパフォーマンスを見せてくれるのがこの人。今回もダウナーでウィスパーな歌声と、軽やかでアクティブなダンスで、まるでアイドルのようなステージを作り出していました。

デュエット楽曲ももちろんよかったのですが、真価を発揮していたのがソロの『幽霊東京』。声質があまりに曲に対してドンピシャで、さらに彼女は(一応)霊能力者。イメージにもピタリとハマる一曲となっていました。原曲MVリスペクトの演出も必見です。

ずしりの「り」である魔界ノりりむは、にじさんじライブイベント初出演な一人。3Dモデルに角を生やしての出演となりましたが、ただただ「かわいい」の一言に尽きます。初出演とは思えないほど歌とダンスも仕上がっており、そしてそれがとにかく”かわいい”……。本記事のためにスクショを撮影している中で、間違いなく撮影枚数が一番多くなっています。本当にかわいい。

『シル・ヴ・プレジデント』の決めポーズもバッチリきまっています。そのかわいさに触発されたのか、『ダーリンダンス』で共演した月ノ美兎は舞台袖からクラウチングスタートを仕掛けにいきました。そしてアンコール後のMCパートにて、成長を感じさせる健気な感想に筆者は心を打たれました。

剣持刀也も大いに魅せてくれました。年々歌唱力の成長を続ける一人で、本ライブでもソロ、デュエットともに見事な歌声を聴かせてくれました。彼らしいノリノリな曲はもちろんですが、ソロでは『誰かの心臓になれたなら』を選曲。どこかシリアスな一曲も、感情を込めて見事に歌い上げています。

MCパート内では「ボイトレで音域を広げている」と語っており、その言葉に偽りなく、とにかく高音が非常にきれいに出るようになっています。その高音が最も顕著に現れるドーラとの『Virtual Strike』は、未だ成長を続けるエンターテイナー・剣持刀也の姿が垣間見えることでしょう。

最後に我らが委員長・月ノ美兎です。1stアルバム発売が間近に迫り、11月にはワンマンライブも控えている彼女は、今回特にダンスに注力。『まっさらブルージーンズ』に『ダーリンダンス』と、キュートでアクティブな姿を多く見せてくれました。剣持刀也との『ray』では初音ミクに迫る高音域の歌声を披露しており、楽曲そのもののメッセージ性と剣ちゃんとのハモりの美しさは、DAY2のMVPに推挙できるほどでしょう……

そして、1stアルバム収録曲から『みとらじギャラクティカ』が初お披露目。ポップでカオスでにぎやかなこの曲は、今回はライブverとして、今回の出演者もガヤなどで登場しています。そしてなにより、ARならでは演出がフル投入されているのが最大の見どころ。最先端の技術で、あえてアナログな「ハリボテのラジオブース」をつくったり、「洗濯機の爆発」で自ら吹っ飛んでみせたり、鬼才・月ノ美兎のクリエイティブが光るステージに仕上がっていました。

DAY2最後も『Wonder NeverLand』にて締めくくられました。7色の様々な組み合わせから芽生えた魅力的なステージの数々は、まさに「バラバラのパレード」という言葉がふさわしいものでした。決まった組み合わせなどなく、そこに集まってできた景色すべてが「にじさんじ」なのだなと思わせてくれる、そんな楽しいライブでした。

VTuberとARの関わりと今後の展開

ARライブを振り返ったうえで、あらためてVTuber業界全体でのARを用いた取り組みを見てみましょう。

その歴史をたどってみると、古くは2018年のE3。電脳少女シロが現地会場へARで降り立ち、現地スタッフへのインタビューを交えるレポート放送を実施しています。

またホロライブではプロモーションの場面などでたびたびARを採用しています。AR合成写真を撮影できるスマホアプリ「ホロリー」も展開しており、ARの採用には比較的積極的です。

ライブイベントへの活用事例を見ていくと、ホロライブの「hololive 2nd fes. Beyond the Stage Supported By Bushiroad」の最後で用いられていたり、アメノセイが生バンドつきのARライブを実施しています。特にアメノセイのARライブは、にじさんじARライブに近しい特徴が見られます。

2021年にはキズナアイが「Kizuna AI 2nd Live “hello, world 2020”」にて、ARライブとバーチャルライブの複合ともいえるようなライブを開催しており、技術的な注目を集めました。こちらは「現実とバーチャルの融合」というアプローチとなっており、「現実への出張」を主としたにじさんじARライブとはまたちがったベクトルともいえそうです。

プラットフォーム側に視点を移すと、SHOWROOMが提供しているライブプラットフォームアプリ「SHOWSTAGE」は、スマホアプリ側ではライブ会場と出演者を現実へAR合成可能です。直近では(VTuberからは少し離れますが)スマホゲーム「ユージェネ」でも、ライブ配信中のキャラクターをARで呼び出す機能が備わっています。

https://www.moguravr.com/showstage-srlive/

そうした事例から考えてみると、VRが「(ユーザー側が)バーチャルな存在のいる場所へと訪れる」というアプローチだとするならば、ARは「バーチャルな存在をこちら(ユーザーのいる現実世界)へと招く」というアプローチといえます。その魅力は何より「距離の近さ」。画面の中だけでしか見たことがないバーチャルな存在が、眼前で大地を踏みしめている姿は、「彼らは本当にいたんだ!」という衝撃とよろこびをもたらしてくれます。

今回のにじさんじリアルタイムARライブは、その衝撃とよろこびを最大限に拡散させていきました。これを機にARライブはVRライブに並ぶ、バーチャルな存在を表現する選択肢として、大きく立ち上がっていくのではないでしょうか。

VRが持つ「自由度と創造性の高さ」と、ARが実現する「バーチャルな存在の実在性の創出」。どちらが適しているかは当人のスタンスや、そのときに実現したいことによって左右されるはずです。そうした選択肢の拡大そのものが、技術投資なども含めて、業界全体により大きな活気をもたらすでしょう。バーチャルな存在たちの新たな行き先を、「”LIGHT UP TONES”」は照らし出しています。

「にじさんじ AR STAGE “LIGHT UP TONES”」
有料配信アーカイブ(タイムシフト)が現在公開中。
DAY1:8月13日(金) 23:59まで
DAY2:8月14日(土) 23:59まで
詳細は公式サイトを確認ください。
https://event.nijisanji.app/arstage_lightuptones/

執筆:浅田カズラ


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