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ゲーム・アプリ 2016.02.19

PS VRを使った共感覚体験。『Rez infinite』で水口哲也氏が実現した思わずハマるグルーヴ感

2月10日(水)、慶應義塾大学日吉キャンパスで、「没入する身体 Rez infinite Synesthesia Suitが生み出す新たなゲーム体験」をテーマに、パネルディスカッションが行われました。

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パネリストは、音楽や映像を共感覚的に融合させたゲームを生み出しているゲームデザイナー・水口哲也氏の他、ハプティクス研究を行う慶大院メディアデザイン研究科准教授・南澤孝太氏、クリエイティブ集団Rhizomatiks ・佐藤文彦氏。モデレーターは慶大院メディアデザイン研究科委員長・稲蔭正彦氏が務めました。

キーワードは「シナスタジア」

去年のPlayStation Experience 2015でゲームデザイナー水口哲也が発表したのは、PlayStation VR対応ゲーム『Rez Infinite』。2001年にPlayStation2向けに制作された、音楽や映像がインタラクティブな体験によって交錯する新感覚のゲーム『Rez』がVRで体験できるゲームとしてPlayStation VR向けに生まれ変わりました。

水口氏の作品には、これまでもKinectを使って指揮者のように演奏を楽しめるXbox360向けゲーム『Child of Eden』がありました。こうしたゲームの根本にあるのは、シナスタジアという言葉に集約されます。シナスタジアとは、視覚や聴覚といった感覚が交錯するところに生まれる新しい印象という意味の言葉です。視覚、聴覚、触覚などの複数の感覚を同時に感じた際のシナスタジア。それをどのようにゲームエンターテイメントに落とし込むのかを、課題として取り組んでいると言います。

「必ずVR化しようと思っていた」。『Rez』で、音を目で耳でそして体で”体験”するために、初代『Rez』の開発当初からVRという言葉は水口氏の頭の中にあったと言います。『Rez infinite』ではVRの世界観の中で、太鼓で叩かれた音やギターのつまびく音が全身で感じられますが、そのRezの大本にある共感覚性というテーマは、スイス滞在時に参加したStreet Paradeだったと語ります。

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人々はだんだんと音楽にノッてくるとグルーブ感を感じます。水口氏は何故このグルーブ感が起こるのかについて、音楽によって人々が盛り上がるプロセスをこのフェスを通して考え始めたとのこと。そして、コールに対して反応があるということ。バラバラだったリズムが1つにまとまっていくと気持ちよく感じること、これらの組み合わせことがグルーブ感を生み出すと結論付けました。

そのグルーブ感を再現し、ゲーム化したものが初代『Rez』です。『Rez』では、適当にボタンを押していても、奏でられる音は次第に音楽化していきます。

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『Rez』におけるシナスタジアを支えている技術が、シナスタジアスーツ。音の触感を全身で感じられるスーツです。触覚・聴覚・視覚という3つの感覚をVR内で没入体験できるプロジェクトが産学共同で行われました。

今まで触感情報を伝えるデバイスは、1個1千万円など、価格も高い上にゴツゴツした部分があり扱いにくいものでした。今回使用されたものは音を使用した技術による小型のもの。コップの中にいれたものの触り心地を伝えられるなど、かなり繊細に表現できます。技術的には、音を使用してスピーカーでモノを振動させる原理の応用です。シナスタジアスーツには、合計26個の触感デバイスが埋め込まれ、体験者の体に音を伝える役目を果たしています。研究サイドから開発に携わった南澤氏は、「ものを触った時の感触はサラサラ、こんこん、ゴツゴツといった音で表現する。それは結局、ものを触った時に起こる音が耳に入っているからです」と音と触覚の関係性についても興味深い言及をしています。

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右のコップにいれたビー玉の感触が、左のコップ触覚伝達デバイス(紙コップ底面に装着)を通して伝えられている様子。左のコップには、ビー玉を入れていないのにも関わらず、ビー玉が入った時の感触が感じられます。

全体のパッケージを務めたのが、佐藤氏。「Rez infinite」プロジェクトの成功には、ライゾマティクスのプロジェクト実行力が鍵となりました。体験者でなくても楽しめることを考えると、振動は目で見る事ができません。光を使う事で、どの部分が振動しているのかを分かりやすくするためにスーツの開発にも携わっています。

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中毒性の高い共感覚体験

講演で語られたシナスタジアスーツで実現する『Rez Infinte』。ライターkureが体験してきました。

まずはシナスタジアスーツを装着。体にぴったりと装着する必要から、着させてもらうのに2人がかりです。

スーツ自体がかなりの重さなのと腕をガッチリとマジックテープでとめるのでコントローラーを持つために女性の筆者は肘を曲げるのすらきつく感じます。

PS VRを被ってDualshock4コントローラーを持ったらスタート。自機の後方に自分がいる三人称視点、移動は自動のシューティングです。ステージはワイヤーで構成されたようなシンプルな電脳空間です。その中を減速することなく猛スピードで飛びながら、壁、天井、床から浮かび上がったり沈んだりするブロックのような敵を撃ち落とします。操作方法はXボタンを押しながらアナログステックでカーソルを動かし敵に合わせ、ボタンから指を離すと攻撃です。シナスタジアスーツを着た状態でVR内の中で敵を倒すと連動して振動が体に伝わってきます。

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ステージがぐるぐる回り、敵が前後に入れ替わるなど、これまで見たことないダイナミックなシューティングゲームです。しかも驚くことにこれだけ動きの激しい映像の中にいたのに酔いを感じませんでした。

グルーヴ感を得るには連続して敵を打ち落とさないとならないのですが、頭の動きとカーソルが連動しないシューティングはなかなか難しいです。

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最初は単発でしか当たらず、振動を感じても「なるほど、こんな風に響くのか」と感じるだけでした。ですが連続で敵を破壊していくと、自分が発射した攻撃音と敵に当たった際の破壊音の繰り返しが音楽のように押し寄せてきます。低音の振動が腹や足に当たるようにズンズンと感じられると、自分の体とCGのブロックが音の細胞のようにも思え、見えてる映像が曲そのものに感じてくるのです。

特に四角いブロックが人型に集まってる敵を撃つと、当たったブロックが壊れ同時に自分の体の同じ部分にも、同じような壊れ方の振動を感じました。撃って壊すたびに振動と音が繰り返されると、目の前にいる体が欠けてる敵自体が、まるで自分自身であるような感覚になりました。撃って敵に当たる度に自分の体も壊れていく感覚があるのです。今までに味わったことのない感覚で、この感覚がシナスタジアではないでしょうか。

低音と振動を感じながらVR空間内で飛び回わるので、いい意味でバランス感覚がなくなり、倒れそうなほどの浮遊感が合わさってクセになるような中毒性を感じました。

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遊んでいると、コントローラーよりPerception NeuronやOculus Touch、PS moveなどのより直感的に身体や手を動かせるコントローラーで体験してみたくなります。更に直感的になり、体全体で踊ってしまうような感覚を得られるはずです。

今回以前に発売された「Rez」を再現したようなステージになったのは当時VRで作りたかったが不可能でできなかった、現在になって可能になったためVR化してみたかったとのこと。Oculus TouchやPS moveの対応も可能とのことなので非常に楽しみです。

2月26日から3月21日「MEDIA AMBITION TOKYO 2016」森タワー52階でも体験展示がおこなわれます。

PlayStation VR向けに販売される際はスーツの装着はなく、コントローラーのみでの操作になるのではないかと思われますが、視覚と聴覚のもたらすシアスタジアを早く家庭でも体験してみたいですね。


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