暗い中、何も置かれていない台の上に懐中電灯を向けると、何もないはずが見たことのある彫刻の影が映る、そんな不思議な展示が『不可視彫像/Invisible Sculpture』です。
フリーランス/メディアアーティスト・坪倉輝明氏が制作した『不可視彫像/Invisible Sculpture』は2017年6月1日(木)に御茶ノ水ソラシティ カンファレンスセンターで、開催された「VRクリエイティブアワード2017」でVRCアワード審査員特別賞を受賞した作品です。
何もない台の上には見たことある彫刻がある
『不可視彫像/Invisible Sculpture』は実際には何も置かれていない台に懐中電灯の光を照らすと台の上に載っているように彫刻の影が見える展示です。
左右から光を当てると、そこに彫刻があるかのように、影の位置や形が変わります。近づき過ぎて懐中電灯がそこにあるかのように当たり、台から落ちてしまいます。本物の彫刻と違うのは数秒で、上から新しい彫刻が降ってくることです。
見たことのあるシルエットですが、どんな彫刻が載っているのかは、そばにあるVRヘッドホンを被ると見ることができます。
実は手に持っている懐中電灯は本物の懐中電灯ではなく、VRヘッドマウントディスプレイHTC Viveのコントローラーです。どの方向を向いているか、彫刻との距離など、正しい影の形をリアルタイムでシミュレーションし、懐中電灯で彫刻に光が当たっているかのような映像を、プロジェクターから投影しています。
仕組みを説明されても不思議な展示です。元々美術館で展示するために開発されたとのこと。使われている台も美術館でよく見かけるようなシンプルな台です。彫刻との組み合させで非常に現実にありそうなので懐中電灯から光がでてなくても、光がでているように思いこんでしまいます。
VRというと現在はヘッドマウントディスプレイを使うことが主流になっていますが、装着時間がかかることや1回につき1人など、体験人数が少なくなってしまうことが難点です。『不可視彫像/Invisible Sculpture』はその難点を解決するアイデアです。
誰でもその場にいる人なら見ることができ、懐中電灯を持つだけでなので短時間で体験できます。
何もないのにある。何もないのに当たって落ちる。何もなくても存在感を確かに感じる、不思議なVR体験です。