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ゲーム・アプリ 2019.02.17

【PSVR】「Firewall Zero Hour」レビュー VR専用FPSという新時代の戦場がここに

主人公本人の視点でゲーム中の世界を移動し、ライフル、ピストルを始めとする銃火器で敵と戦うファーストパーソン・シューティングゲームこと「FPS」は、海外に限らず日本でも人気ジャンルのひとつとしての存在感を高めつつあります。

特に近年は四人一組のチーム同士が戦う競技性の高いFPS「タクティカル・シューター」が賑わいを見せていて、国内でも同ジャンルの作品を扱ったe-Sports大会が度々開催されているほか、世界大会への出場を果たすプロゲーマーのチームも誕生するなど、話題を呼んでいます。

そんな人気に呼応するかのように、フォロワーとされるタイトルも続々と発表・リリースされています。今回紹介する「Firewall Zero Hour(ファイアウォール・ゼロ・アワー)」もそのひとつですが、VR専用という点で唯一無二の作品となっています

機密データを巡る二つのチームの攻防

本作は2018年8月30日にPlayStation VR専用ソフトウェアとして、ソニー・インタラクティブエンタテインメントより発売されました。開発は、アメリカはカリフォルニア州サンタモニカを拠点とするVRスタートアップ企業「First Contact Entertainment」。同社はStarbreeze、Blizzard、Treyarch、Infinity Wardといった大手ゲーム会社に所属した経歴をもつベテランで構成されており、AAAのVRゲーム制作を目指すことが2016年に報じられていました

そんな同社が作り上げた本作の内容は、四人一組のチーム同士で戦うオンライン対戦型FPS。プレイヤーは匿名の契約者に雇われた傭兵となって、機密データを巡る戦いに身を投じます。

戦いでは両チームが「アタッカー」と「ディフェンダー」に分かれる形となります。「アタッカー」はその名の通りに攻撃側。戦いの舞台となるマップに隠された「アクセスポイント」を解放した後、機密データが格納されたラップトップ(ノートパソコン)のハッキングを実施し、全データの回収を目指します。

「ディフェンダー」は防衛側。「アタッカー」側にラップトップに格納されたデータを奪われないよう、迎撃に当たります。

勝敗は「アタッカー」側なら機密データの回収達成、「ディフェンダー」側なら一定時間の防衛を成し遂げることで決定されます。また、どちらのチームもメンバーが全員やられてしまった場合は、その時点で負けが確定。

仮にやられても制限時間内なら復活して再参戦できる、というのが一般的なFPSの対戦ではお馴染みですが、本作ではプレイヤーのステータスが「死亡」になると、二度と復活できなくなります。

ステータスは「通常状態」、「ノックダウン」、「死亡」の三種類があり、基本的に致命的なダメージを受けるとプレイヤーは「ノックダウン」状態になります。その状態で仲間から蘇生措置を受ければ戦闘に復帰できますが、一切受けず時間が経過してしまったり、相手から追い討ちの一撃を喰らえば「死亡」のステータスへ変化し、退場となります。

そのため、戦いでは仲間と連携して行動することが何より重視されます。また、本作はボイスチャットによる音声コミュニケーションにも対応。これを活用することで、仲間同士とより緻密な戦術を駆使した戦いができるようになります。

ボイスチャットがあれば、「死亡」のステータスになったプレイヤーにも好機が。実は同ステータスになったプレイヤーは何もできなくなる訳ではありません。戦闘の舞台となるマップをあらゆる角度から見渡せるようになります。当然、味方と敵がどこにいるのかも丸わかりです。そして、この状態でもボイスチャットは可能。

なので、現在も戦っている味方へ敵がどこにいるかの情報を伝えれば、不意討ちを仕掛けられたり、時には相手が仕掛けようとしている戦術の回避に一役買うこともできます。もちろん逆も然りなので、場合によっては策を凝らした巧妙な一手を喰らうことも。

分かりやすいルールでありながら、仲間と連携し、多彩な戦略を練って実行に移す面白さを堪能できる仕上がりになっています。昨今のFPSらしく、経験値によるレベルアップ、それに応じて増えていく武器、そしてキャラクターごとに設定された固有能力「スキル」と追加の能力を付加できる「サブスキル」など、育成・カスタマイズ周りも充実。やり込めばやり込むほど、プレイヤー独自の戦闘スタイルを作り出せます。

そこにVR専用ならではの圧倒的な現実味が加わり、唯一無二の体験を提供します。

戦場の恐怖、銃で戦う生々しさに溢れたVR体験

単刀直入に言いまして、本作の戦闘時における臨場感は圧巻です。

何より、覗き込んだ先に現実とサイズの変わらない観葉植物、机、ドア、階段などのオブジェクトが存在し、相手もプレイヤーとほぼ変わらない背丈で現れ、こちらに銃口を向けて攻撃してくるので、“撃たれている!”と思わずヒヤッするほどの恐怖感があります

戦闘の舞台となるマップも現実とほぼ変わらないサイズで描写されているため、戦場や紛争地帯にいるかのような雰囲気は抜群。狭い部屋や廊下を移動する時の情景たるや、ライブカメラで録画された特殊部隊によるテロリストのアジト突入映像そのもので、時折ニュース番組やドキュメンタリー番組で目にする、あの場に自分が入り込んでしまったかのような気分に浸れます。

また、本作ではPS4の従来型コントローラ(DUALSHOCK 4)のほか、別売りの「シューティングコントローラー」にも対応。前者で操作する際も、銃の照準合わせ(エイム)はモーションコントロールで実施するのですが、後者ならその形状も相まって、本物の銃さながらの感覚で動かせます

しかも、銃火器に備え付けられた照準器は、コントローラをプレイヤーの顔付近にまで持ってくれば覗き込めます。その状態から相手に命中させた時の手応えも驚くほどの生々しさ。照準器の赤ドットに相手の身体を重ねた状態で撃てば、確実に命中するようになっているのもそれを一層引き立てており、嫌でも本物の銃を撃っている気持ちにさせられます。

モーションコントロールに完全対応していることから、持ち方を変えて銃を撃てるのも魅力です。特に「ブラインドショット」……相手を視認せず、遮蔽物に身体を隠した状態で銃だけ出して撃てるのは、本作の操作系とVR専用ゆえに成し得た独自性と有難味に溢れています。ブラインドショット自体は一般的なFPSにおいても実装されている例がありますが、相手へ命中できる保証が高く、被弾も防げるメリットも持ち合わせている本作はある意味、革新的な仕様と言えるかもしれません。

このような操作における恩恵が多々得られることから、本作をプレイするにあたっては「シューティングコントローラー」の使用を強くおすすめいたします。従来型コントローラによる操作も決して悪くはありませんが、照準器を覗き込むワクワク感、命中させた時の生々しさはシューティングコントローラーだけの特権。実際に使ってみれば、その良さを思い知るはずです。

また、FPSと言えば「酔いやすい」ことにも定評があるジャンル。本作の移動も一般的なFPS同様にリニア方式(地続き式)になっているため、VRとの組み合わせは悪い意味で鬼に金棒かと思ってしまいますが、速度は緩やか、かつ激しいアクションも少なめなので、(個人差はありますが)意外に酔いにくい。戦闘に要する時間も短めで、戦闘開始までに1分ほどの休憩が挟まれるのも酔いにくさに貢献しています。

ルール周りにもそのことへの配慮が見え、それぞれのチームごとに何を成し、どこへ向かえばよいのかのガイドがハッキリ示されるため、戦闘がテンポ良く展開されて長期戦となりにくいのも起因していそうです。「死亡」のステータスになると復帰できなくなるのも、裏を返せば移動の必要がなくなることからプレイヤーの休憩にも繋がるなど、なかなか考えられています。

とはいえ、始めて間もない頃は感覚に慣れていないこともあって、少し酔いやすくあります。筆者は後退移動時に違和感を覚え、若干の酔いを発症することがありましたので、これからプレイされる方は参考にいただければと思います。


最終的にはほとんど酔いを発症することもなく遊べるようになりました。

発売後の定期的なアップデート実施など、今後の発展も楽しみな一本

メニュー周りのインターフェース、ウィンドウも視認性がよく、雰囲気を損ねないデザインにまとめられていて使い勝手は良好。グラフィックも鮮明で、相手やオブジェクトの位置を違和感なく認識できます。ローカライズも、戦闘中に指示を送る「ハンドラー」なるオペレーターの音声は日本語吹き替え仕様であるなど、総じて丁寧。戦闘時の没入感を損ねません。

オンライン対戦型FPSということで、オフラインのソロプレイに関しては「トレーニング」だけ。オンラインではマッチングから戦闘開始までの待ち時間が長く、全員揃っても休憩を兼ねてか1分ほど待つのは長すぎる感が否めません。当然ながら、この最中に誰かしら抜ければカウントダウンはリセットされ、再び集まったら1分待つことになるので、余計にもどかしく感じさせられます。

さらに、マッチングは基本的に海外も含めた混合式であることに加え、P2P形式(端末間通信)のためホストのプレイヤーが抜けてしまうと自動的に解散となるのも、少し気になるところです。VR接続中、ボイスチャットがデフォルトでONになっていることにも注意が必要です。

そのような難はありますが、発売後も定期的にアップデートが行われており、2018年12月18日には新マップが追加。最新のアップデート(2019年1月18日配信:バージョン1.13)では切断プレイヤーへのペナルティ実装やスキル調整も行われており、今後の動向によっては新たなルールが追加され、より遊び込める内容へと進化を遂げるかもしれません

VR専用のFPSという点でも唯一無二で、プレイした時の臨場感と現実味も圧巻の本作。まさに新時代のFPSと断言できる一本で、同ジャンルの好きなプレイヤーなら要プレイです。シューティングコントローラーによる操作感も素晴らしく、FPSはちょっと……というプレイヤーも一度は体験してみる価値があります。これからのFPSがどのように進化するのか、その未来の一端を見ることになるでしょう。

ソフトウェア概要

タイトル

Firewall Zero Hour(ファイアウォール・ゼロ・アワー)

価格

PS4パッケージ版:4,900円(税別)
PS4ダウンロード版:5,292円(税込)

プラットフォーム

PS4(PSVR専用)

開発・発売元

ソニー・インタラクティブエンタテインメント
First Contact Entertainment

購入サイト

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備考

CERO D(17歳以上対象)

(参考)Firewall Zero Hour 公式Webサイト


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