12月9日に行われた「The Game Awards 2022」にて「FINAL FANTASY XIV」(以下、FF14)が2年連続「Best Community Support」と「Best Ongoing Game」を受賞しました。
「Best Community Support」では、コミュニティへの反応や透明性、「Best Ongoing Game」では、ゲーム発売後の継続的なアップデートが評価されたとのことです。
ノミネートされた作品には「APEX LEGENDS」や「原神」といった有力タイトルが揃っています。何故FF14が2年連続受賞できたのか、FF14の運営が行ってきた取り組みについて紹介していきます。
ファンとの双方向のやり取り
FF14の運営が評価されている点にプロデューサー兼ディレクターの吉田直樹さんの存在があります。吉Pが愛称として親しまれ「The Game Awards 2022」の紹介にも使われているから海外にも浸透しています。
吉田直樹さんは、FF14以前では「ドラゴンクエスト モンスターバトルロード」のディレクターや「ドラゴンクエスト10」のチーフプランナーとして活躍。FF14にはサービス当初に問題となったゲーム内容を解決するために、プロデューサー兼ディレクターとして参加することになりました。
吉田直樹さんがFF14の顔として浸透しているのには、プロデューサーに就任してから表舞台に多く立ち、情報発信と双方向でのやり取りを繰り返しているのが理由だと考えられます。
ユーザーとのコミュニケーションという意味で大きな軸の1つとなっているのがYouTubeの生配信「プロデューサーレターLIVE」(以下、PLL)です。
現在では珍しくないYouTubeによる情報発信ですが、FF14では10年以上も前から行われており、2011年から執筆時まで第74回まで配信されています。
配信スタイルは、吉田直樹さんとコミュニティチームの室内俊夫さんがスライドと実機でのプレイ映像を交えながら紹介する方式。海外ユーザーを意識した取り組みが多く行われており、スライドには日本語に合わせ英語を表記、重要な発表がある回には通訳を挟みながら配信を行います。
(FINAL FANTASY XIV Letter from the Producer LIVE Part LXXIVより引用)
配信時間が短い回でも2時間ほどで長く、新情報の発表前後ではFF14とは関係ない話題を話すこともあり、腰を据えて視聴するような雰囲気になります。音声・映像が正しく流せているのか確認するテスト配信の時間では、趣味のスノーボードを話したり、ワンピースの話題が飛び出たりとコメントを見ながらフリートークをしています。芸能人でもない開発スタッフ2人の雑談で場を繋げられるのも、プレイヤーから愛されているからかもしれません。
PLLで配信する際には第1回から現在まで、ユーザーと相互でのやり取りを大切にしている節があります。第1回PLLの当時からもTwitterのハッシュタグ「#XIVLive」を使って、視聴者から質問を募集し、放送内で実際に回答する時間を設けていました。
双方向でのやり取りは現在でも行われ、コメントの内容を見て検討、実際に実行に移す場面も見られます。
実際にあった例には、コンテンツの名称に「蛮族クエスト」を変更するべきではないかといった内容のコメントを見て、名称変更を検討したことがありました。
そもそも、視聴者からこのようなコメントが出た背景には、名称と実態が合わなくなったことがあります。当初の蛮族クエストは、敵対する種族の中で友好的な集まりと交渉するストーリーでしたが、アップデートを重ねるとメインストーリーで敵対する種族との和解が行われたり、そもそも敵対しない種族たちとも交渉を始めたりした流れがありました。
そこで視聴者のコメントを見て、名前を変えてもいいかもしれないと反応したうえで、「ちょっとメモしてもらってもいい?」とスタッフに指示していました。その後テキストに表示される「蛮族」は、メインストーリーの状況を考慮して変更しないが、UIに表示される「蛮族」には別の名前にするべきということになり、「蛮族クエスト」は「友好部族クエスト」に変更されました。
後日のPLLにて、UIの変更量が多いことからゲーム内での変更は即座にできなかったものも、開発内部ではすぐに変更。ゲーム内でも「友好部族クエスト」の表記になっています。
このように生配信中に検討することは珍しいことではなく、開発陣による一方的な情報公開の場ではありません。視聴者からのコメントにも即座に答えられる背景には、責任者であるプロデューサー兼ディレクターの吉田直樹さん自身がFF14について熟知していることも大きいでしょう。ユーザーとの対話を続けていった結果、開発陣とコミュニティの間でやり取りをする土壌が生まれたのではないかと考えています。
透明性のある運営からの回答
プレイヤーとの交流以外にもトラブルに対する対応も評価されるポイントだと考えられます。ゲーム内の機能を利用して1対1でのQ&Aを設けることもあります。
Q&Aに参加しているプレイヤーは先着順で、その場で質問を聞いてから回答するため、開発陣が想定していない質問が飛び交います。現状抱えている問題点について詳しく聞かれる場面や、質問者に説得され要望が通る場面もありました。
質問はゲームバランスに関する質問から欲しいアイテムの実装、世界観の設定まで幅広く聞かれています。質問の中にはゲームに関係ない人生相談もあり、開発者としてのみならず相談できる頼れる人としても認識されている側面もあります。
実現できない質問に対しては、なぜ実現できないのか技術的な説明も含めて開発側の状況を開示しつつ説明するように心がけている場面が多く見られます。開発陣とユーザー側のそれぞれの事情や意見のやり取りをすることで、お互いを理解できる有意義な場となっていると思います。
開発側の状況を積極的に開示する姿勢は、トラブル発生時の運営からの発表にも垣間見えます。拡張パッケージ「暁月のフィナーレ」が発売されたときはプレイヤーの人数からログインできない事態が発生しましたが、運営から混雑についてのアナウンスが定期的に行われました。
アナウンスの内容では、エラーが発生している問題と原因が細かく書かれ、対処方法について種類別に提示されています。問題について詳細にまとめつつも、ユーザーに関わる部分であるサーバーメンテナンスなどのお知らせは、目に付きやすい冒頭に書かれていて読みやすいように工夫されています。
トラブルは起きないのが1番ですが、透明性の高い運営が行われていることはうかがえるのではないでしょうか。
運営陣とプレイヤーとの距離感の近さ
プロデューサー兼ディレクターの吉田直樹さんが顔役として広く知られていますが、それ以外の運営陣にもプレイヤーとの接点を持つ機会を用意しています。いくつかの生配信の中でスタッフ募集も兼ねて、スタッフと仕事について紹介する時間を設けています。
これまでに紹介してきたスタッフはシナリオ制作やプロジェクトマネージャー、ゲームUIデザイナーなどとプレイヤーが関わる職種から直接関係ない職種まであります。シナリオ制作の回では、各スタッフの紹介、企画から実際に実装されるまでの流れといった内容を扱いました。
(第73回 FFXIVプロデューサーレターLIVE|第8回 14時間生放送より引用)
(第73回 FFXIVプロデューサーレターLIVE|第8回 14時間生放送より引用)
プレイヤーとしては、好きなストーリーは誰が書いたのか、印象的なギミックは一体誰が考えたのか気になることがあります。コンテンツごとに誰が作ったのか紹介してもらえるのは、FF14を遊んでいるときに誰が作っているのだろうという楽しみが生まれます。
また、昨今では「星のカービィ」などを手掛けた桜井政博さんのYouTubeチャンネル等でも「ゲームの作り方」に注目が集まっていますが、FF14という現在進行形で運営しているゲームの作り方を紹介しているのも珍しい取り組みではないでしょうか。
ここまで、FF14の運営は、プレイヤーと双方向でやり取りをしつつ、開示できる情報は発信するように心がけていることを伝えられたかと思います。運営から積極的に情報を発信することは、プレイヤー間のやり取りをするときに憶測で話すのではなく、過去に発言した内容を参考に話せます。
運営に透明性があると、プレイヤー間で膨れ上がる不信感に対しても対処でき、プレイヤーにとってもメリットと考えられます。運営とのやり取りが明確であることで、プレイヤー間でも「自分のアイデアを汲み取ってくれるかもしれない」という期待感が生まれ、結果として提案されたアイデアが、ゲームに反映されやすくなるのではないでしょうか。
FF14公式サイトはこちら(※1月6日までコンプリートパックが50%オフセール中)。
体験版のフリートライアルも遊べます。
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