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ゲーム・アプリ 2019.10.09

VRで絵を描き、世界に輝きを取り戻す高揚感 「アッシュと魔法の筆」【TGS2019】

2017年、フランス・パリで開催された「PlayStation Live From Paris Games Week 2017」で初お披露目され、独創的なゲームシステムと美しい映像で注目を集めた「アッシュと魔法の筆」。2019年10月10日の発売を目前に控えた同作ですが、千葉・幕張メッセで開催された「東京ゲームショウ2019」に出展しています。

今回は、本タイトルのお披露目当初は無かったPlayStation VR(PSVR)専用のゲームモードを体験できる機会を得られましたので、その模様をレポートします。

廃れた港町に魔法の筆で活気を取り戻す、アクションアドベンチャー

「アッシュと魔法の筆」は港町「デンスカ」に暮らす絵が好きな少年「アッシュ」が、“かいぶつ”と名付けた不思議な生き物と共に、魔法の筆を使って水質汚染が原因で廃れた町のあちこちに絵を描き、活気を取り戻していくという物語が繰り広げられるアクションアドベンチャーゲームです。

開発を手がけたのは「Pixelopus」。2014年にPlayStation 4のほか、PlayStation Vita、PlayStation 3でダウンロードソフトとして配信されたフライトアクションゲーム「Entwined」の制作実績で知られるSIEの開発スタジオです。SIE屈指の若手メンバーが揃ったスタジオで、本作は同作に続く二作目となります。

主な内容はデンスカの町中を歩きながら、タイトルにもなっている「魔法の筆」を用いて壁に様々な絵を描き、明かりや彩りを復活させて闇を払っていくというものです。魔法の筆で描いた絵には生命が吹き込まれるようになっていて、そこに描かれた景色、生き物たちは完成と同時に動き出します。その仕組みを活かしてストーリーを進め、やがては大きな困難に立ち向かっていくのです。

本作はアッシュの活躍を描くメインゲーム(本編)に加えて、「ポタリと不思議なキャンバス」、「VRフリーペイントモード」なる二つのモードが収録されています。この二つがPSVRで遊ぶ専用のゲームモードとなっています。メインゲームの方はPSVRには対応していませんので、あらかじめご注意を。モードに関してもゲームスタート時点では選択できず、一旦、メインゲームを進める必要があるとのことです。

また、VRモードをプレイするに当たっては別売のPlayStation Move モーションコントローラーが二本必要となります。メインゲームと異なり、PlayStation 4の標準コントローラ(DUALSHOCK 4)には対応していませんので、その点もあらかじめご注意ください。

VR空間内に絵を描き、世界を広げ、華やかにしていく高揚感

今回、出展されたデモで遊べたのは「ポタリと不思議なキャンパス」。目前に広がる壁に魔法の筆で絵を描き、明かりを灯しながら世界を広げていくという内容です。筆の操作は右手に持ったMoveで行います。左手のMoveは「スケッチブック」。筆で描くオブジェクトを変更する際に用います。木、草、虹などの様々な種類があり、対応するアイコンを選択すると、筆を使った時にそのオブジェクトが描かれるという仕組みです。これで壁に好きなように絵を描いて、薄暗い世界に光を宿していきます。


(「アッシュと魔法の筆」公式Webサイトより)

Moveを使った操作は単純明快の一言。どのオブジェクトも、決められた軌跡(線)を描くだけであっという間に現れるので、思うがままに壁を彩り豊かなものへと一変させられます。始めは僅かしか描けないオブジェクトも、一定の条件を満たすと増えていき、木にリンゴを植え付けたり、空に太陽と月を描いて昼夜を変更するといった大胆なこともできるようになります。

ガイド役の“かいぶつ”の存在もありがたいです。次に何を描けばいいのか、どんなことをすれば世界が広がっていくのかと吹き出しに表示されるアイコンと自らのリアクションで教えてくれますので、一つの目的を持ちながら遊んでいけます。何より、“かいぶつ”がとても可愛い。リンゴが欲しいと言われて木に植え付けた後、それを落としてあげると近くに駆け寄ってはしゃぐように喜んだり、時にはハートマークを出してこちらに親愛の気持ちを表明してきたりと、まるでペットの動物を相手にしているかのような嬉しさがあります。こちらに近寄ってくることもあり、それが等身大の大きさで表現されているのも現実味を感じさせます。

開発のPixelopusが手掛けた過去作「Entwined」はグラフィックの美しさが異彩を放つ作品でした。今回の「アッシュと魔法の筆」でもその持ち味は存分に発揮されていて、思わず見とれてしまうほど彩り豊かな映像がVR空間内いっぱいに描かれます。デモは薄暗い密室空間から始まり、そこから順を追っていくにつれて青空の広がる開放感あふれる大草原へと出るのですが、そこまでの光を交えた演出が素晴らしく、小声で「おお……」と呟いてしまう迫力がありました。


(「Entwined」)

余談になりますが、前作「Entwined」も各ステージ終盤のドラゴンになって空を舞うエリアに入る前、本作と似たような演出とそこからの衝撃がありましたが、再びそれが描かれている、しかもVRで体験できるようになったということで、同作を遊んだプレイヤーとしては感無量となった次第です。あれから5年経ってのこの表現という、年月の経過も重々しく感じました。

シンプルながらも美しい映像と演出で楽しませてくれる力作

デモは大草原へと出て、スケッチブックに描けるオブジェクトが増え、色々試せそうになったところで終了となりました。どうもその先にも何かイベントが用意されていたようでしたので、時間が許されるのなら見てみたかったところです。

なお、デモでは豊富なオブジェクトを描けましたが、製品版はメインゲームの進展に応じて描けるものが増えていくという連動形式になっているようです。また、もう一つのモードである「VRフリーペイントモード」に関しては今回、試遊はできず。ただ、モードの名前が示している通り、自由気ままにVR空間でお絵かきができるという、これと言ってゲーム的な要素もない内容なのかもしれません。

基本的に“かいぶつ”の指示に沿って壁に絵を描いていくのがプレイの大半だったため、ゲームとしては結構シンプルな作りでしたが、映像の美しさ、どんどん広がっていく世界を描いた演出と美しいグラフィックはとても見応えがありました。製品版だと、あれからどこまで先があるのか、そして“かいぶつ”はどんなリアクションをしてくれるのか、色々確かめてみたい気持ちが湧いてきます。

SIEとしてもプロモーションに力を入れているようで、イベント中にお話をうかがった吉田修平氏も本作をあしらった名刺を使われているなど、侮りがたいゲームになっていることを感じさせる本作。気になる発売日は10月10日。メインゲームの方も遊び応え十分の謎解きアドベンチャーに完成されているようですので、興味のある方は公式サイトなどをチェックしてみましょう。

それにしても、「Entwined」は美しいアートワークから想像もつかないほど歯応え抜群のアクションゲームになってましたが、本作はどんな塩梅なのでしょうか。あの難易度に一喜一憂した人間としては、そこも気になって仕方がないこの頃です。


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