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業界動向 2018.08.10

データで見るVR/AR産業の現状 法人向けの活用に期待集まる

VR/AR/MR(XR)に関するイベントサービスを運営するVR Intelligenceと市場調査企業SuperDataは、XR産業に関するレポート「XR Industry Survey 2018」を公表しました。
デベロッパー、エンドユーザー、アナリストら業界の専門家595名にアンケートを行ったもので、特にエンタープライズ分野での普及の鍵を見つける上で、興味深い結果を示しています。

成長分野

過去12ヶ月間で成長している分野

過去12ヶ月間の成長について、VR/AR、コンシューマー向け/エンタープライズ向けで4つに分けて質問しました。他の調査と同様、コンシューマー向けに比較してエンタープライズ向けが成長しているという結果となりました。またコンシューマー向けVRは、デバイスの普及の遅れもあるのか、最も期待に比して伸びていないとの回答となりました。


(分野別過去12ヶ月の成長、エンタープライズ向けが堅調に成長)

今後12ヶ月で優先する分野

今後12ヶ月でどの分野を優先するかという質問も、この成長を反映した回答となりました。エンタープライズ向けへの優先度が高いことが、顕著に見て取られます。一方コンシューマー向けについては、市場の拡大のためには投資が先か、成長が先か、という状況に陥っているとも考えられます。


(分野別今後12ヶ月間の優先度、エンタープライズ向けの優先度が高い)

今後注力する産業

今後注力する産業については、ゲームと並んで教育がトップであることが特徴的です。一方で需要サイドから見るとAEC(Architecture, Engineering, Construction)へのニーズが2位につけているというデータも有り、この分野に注力する企業はよりビジネスを進めやすい可能性があります。


(今後注力する産業分野、教育向けが高いが激戦も予想される)

戦略・投資

今後12ヶ月間の投資対象

今後12ヶ月間の投資する対象については、既存・新製品の開発、マーケティング等の回答が高い割合を占めました。この回答からは、企業が現状の成長に満足しておらず、より高い成長率を求めている様子が伺えます。


(今後12ヶ月間の投資対象、R&D;やマーケティングが多く、人材面は少ない)

投資が必要な分野・投資を行う分野

投資が必要と考えている分野(技術)と、実際に投資を行う予定の分野を比較すると、興味深い現状が見えてきます。例えば視野角(FOV)やヘッドセットの快適性については半数以上が投資が必要と回答する一方、投資を行うとの回答は2割程度にとどまります。質問への回答者のうちハードウェアメーカーは7%である点を考慮しても、このギャップは注目すべき点と考えられます。


(投資が必要な分野と実際に投資を行う分野、FOV、デバイスの快適性などにギャップが見られる)

普及の障壁

VR/AR普及の障壁

VR/AR普及の障壁となるものについては、昨年同様「コンテンツ不足」「ヘッドセットの価格」がトップとなりました。しかし「ヘッドセットの価格」という回答の割合が減っている点は、注目に値します。Oculus Goや、Mirage Soloといった比較的安価な一体型ヘッドセットが登場しており、普及の障壁を低くしているとも考えられます。


(VR/AR普及の障壁、デバイス価格は引き続き上位だが、割合は低下している)

普及までの年数

ではVR/ARがメインストリームになるまで普及するには、今後何年かかるのでしょうか。これについては、ARの方が普及が早いという回答になっています。背景として、ARKitやARCoreといったプラットフォームの存在、「ポケモンGO」のようなモバイル向けアプリの成功が挙げられます。またスナップチャットといったSNSがAR機能を採用している点も、ARをよりアクセスしやすくしていると言えます。


(普及にかかる年数、ARの方が短いという回答の傾向)

ビジネスにおける導入

導入済みユーザーの分野別割合

既にVR/ARを導入しているユーザーについてその分野を調べると、教育が23%とトップになっています。しかし割合は昨年秋の調査時の31%から下落しており、よりVR/ARを導入する産業が多様化していることが伺えます。


(ユーザーの分野別割合、教育がトップだが前年よりも多様化の傾向)

VR/ARの導入方法

VR/ARの導入については、「両方」を導入する企業が半数を占めています。また「ARのみ」導入する企業が僅か5%と少数にとどまる点も特徴的です。


(VR/ARの導入方法、両方導入する割合が高い)

用途別VR/ARの利用割合

VR/ARの用途別に見ると、VRを利用する割合が高いものの、マーケティングや製造といった用途でARが迫る様子も見て取れます。より高い没入感を実現できる点から、教育やトレーニングにVRを用いる割合が高くなっています。


(用途別の利用状況、教育分野ではVRの割合が顕著に高い)

ビジネスへの影響

VR/ARがビジネスに与える影響については、VRで8割以上、ARで7割近くが、「ポジティブな影響がある」と回答しています。VRの方が産業の歴史が長く、より企業のニーズに応えるコンテンツを提供できていることから、この回答の差が出たと考えられます。


(VR/ARのビジネスへの影響、「ポジティブ」の割合はVRが高い)

未導入の理由

逆にVR/ARを未導入の企業にとっては、何がネックになっているのでしょうか。回答から言えるのは、導入するにははっきりしたユースケースの説明が必要だという点です。エンタープライズ向けのマーケティングでは、ケース説明や競合企業のデータ、採算といった明確な裏付けが重要になるでしょう。


(VR/ARを未導入の理由、ユースケースが不明瞭との回答が多い)

今後興味のある分野

未導入のユーザーに対して今後興味のある分野を調査すると、導入済みの企業とは異なる傾向が見られます。すなわち、実際にはVRを利用するユーザーが多いにもかかわらず、興味のある分野としてはARの比率が高くなっているのです。
理由の推定は難しいですが、VRは実際に体験しないと内容がわからない一方、ARは第3者の視点でも理解できる、という点があるかもしれません。いずれにせよ、VRソリューションを導入させるためには、利点を伝えることにより努力が必要そうです。


(未導入ユーザーが興味を持つ分野、VRよりもARの割合が高い)

今後の投資予定

VR/AR導入済み、未導入双方のユーザーに今後の投資予定を質問したところ、結果には明確な差が出ました。導入済みの場合は6割以上が「確実に投資する」と答えた一方、未導入では3割程度にとどまりました。

この結果からは、効果を体感するには実際に導入し、トライしてみることが重要だと言えます。VR/ARの普及を進めるためにも、まずは多くのユーザーに体験してもらうことが肝心だということです。

XR産業の現状に関するより詳細な分析は、12月6日~7日にサンフランシスコで開催する「VRX 2018」で発表される予定です。現在ウェブサイトにて参加登録を受け付けています(早期登録による割引あり)。


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