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VRChat 2023.06.26

【VRChat】書を立体で表現する。美術館ワールドの「三次元書道」展示会に、書道の神髄を見る

「平面に存在する書道作品を、三次元空間で自由に表現できるなら?」

そんなコンセプトのもと生み出された「三次元書道」を鑑賞できるワールドが、VRChatにあります。

VRChatワールド「VMoVA」は、「仮想芸術」を展示するミュージアムです。展示作品のジャンルに制限はなく、様々なアート作品を展示する場であることが入場口にて説明されています。

この「VMoVA」にて、現在開かれている展示会が「THICKNESS OF CALLIGRAPHY」薄煙(Boyan)さんというアーティストが創作した「三次元書道」が、コンセプトや”研究フェーズ”ごとに展示されています。

書を空間に、自由に書く

「三次元書道」とはなにか。その着想は、点・線・面・立体の関係性から始まります。

点を動かせば線に、線を動かせば面に、面を動かせば立体になる。そして、書道で扱う毛筆の筆先は「面」です。しかし、毛筆を動かして生まれた書道作品は、立体ではなく平面です。

なぜなら、筆が動く先は紙という平面だから。ならば、紙ではなく空間に書いてみたら?――薄煙さんの「三次元書道」の探求は、こうした考えから出発しました。

最初は漢字の「一」の立体化から出発した「三次元書道」は、まずは「形」に注目した作品から制作されます。

様々な漢字を、いろいろな形状で立体化した作品。

「躰(からだ)」という字を、「皮膚」「血管」「骨」に分けて表現した作品。

漢字ではない立体物まで。いずれも、線を空間に走らせることで「形」を作っています。

そして、次第に単なる立体化を飛び出し、独自の表現へと発展していきます。

水あめを練るような形状の「麦芽糖字」

巻物のような筆致を描く「絵巻字」

木彫りのように文字を形どる「木雕体」

などなど、いろいろなアプローチから生まれた「書体」ごとに、作品が展示されています。作品だけでなく、制作手法の解説も記されているので、あわせて読みながら鑑賞していくのがオススメです。

展示空間の装飾は最小限で、空間は大小さまざま。現実ではありえないような巨大な空間に、見上げるほどに巨大な書を展示した区画もあり、VR空間の自由さもフル活用した展示が堪能できます。

「形」から「意」、そして「神髄」へ

迫力満点の「三次元書道」を生み出した薄煙さんは、現在はInstagramなどを中心に作品を発表しています。

また、薄煙さんは様々な書道家の作品を「三次元書道」として再解釈した作品も制作しており、この展示会でもいくつかが展示されています。

類を見ない表現である「三次元書道」を、薄煙さんはなぜ研究し、制作を続けているのか。展示順路には、薄烟さん自身の生い立ちを伝えるエピソードも紹介されています。

企業勤めのビジュアルデザイナーが、どのように「三次元書道」研究の道へ進んだのか。過去の場面を思わせる空間とともに知ることができます。

制作と研究の末、薄煙さんは書道の「形」から、書道家が書にこめる「意」へ、やがては書道そのものに宿る「神髄」へと注力していきます。

「氷」で書道が”凝固”する瞬間を表現する「透明字」

書道の”動き”を「液体」で表現する「液体字」

書道家が捉えた”一瞬の変化”を「布」で捉える「布料字」

いずれも、「書道」というものを薄煙さん自身の目で捉えた作品です。「書道」を超えた新表現の域に届く作品は、可能であればぜひVRで見てほしいところです……!

 

本ワールドのアップデートは継続的に続いており、中国語、英語の解説に加え、先日には日本語の解説も追加されました(翻訳はタカオミさん、sabakichiさんが担当)。各展示は解説と合わせて鑑賞するとさらに理解が深まるため、入口でチェックしてみてください。そして、新たな展示会の開催も予告されており、先行きにも期待したいワールドです。

現実のあらゆる制約から解き放たれた、「書道」より生まれし新境地の表現を体験できる場所。ぜひとも訪れてみてください。

ワールドへのアクセスはこちら(PC接続型VRヘッドセット、および高スペックPCが必要です)。
https://vrchat.com/home/world/wrld_a26efb21-45fb-4f63-8cf6-68a3ed68f5a4

(参考)VRChat


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