フレームアニメーションの有名スタジオがVRアニメに挑戦
「Aripi -Wings-」は、子供の頃に空を自由に飛べることを夢見ていた宇宙飛行士の話です。ある日、ささいな事件が大きなトラブルにつながって宇宙船は制御不能に陥り、地球に墜落してしまいます。
墜落した宇宙飛行士は”夢の翼”を広げ、子供時代に戻りたいと願います。”Aripi”はルーマニア語で”翼”を意味しています。翼は自由と想像力の飛躍を表現していますが、別の深い意味も隠されています。
制作を手掛けたのは、東ヨーロッパのモルドバ共和国にあるアニメーションスタジオSimpals Studio。今回が初のVRアニメーション作品です。
Simpals Studioはこれまでフレームアニメーション作品で数々の国際映画祭で評価を得ていましたが、VRアニメーションを制作するためには、今までのアニメーションの制作の考え方を変えなければならず、かなり苦労したそうです。
制作期間は18ヶ月にも渡り、約30人の専門スタッフがこのプロジェクトに関わって完成しました。Dmitri Voloshin監督は、空を自由に飛ぶ体験ができるこの作品を多くの人たちに体験して欲しいと語っています。
オススメのポイント
1. 高品質な3DVRアニメーション
完成した作品は非常にクオリティが高いです。360度映像で立体視できるため、本当に宇宙空間にいる感覚や落下する感覚を体験できます。またVR酔いを起こさぬよう、視点を動かすのではなく、キャラクターがダイナミックに動いています。
各シーンにも体験者を飽きさせないように様々な工夫が見られます。
2. 楽しくて清々しいショートストーリー
VR映画はショートストーリーと非常に親和性があると思っています。通常のフレーム映画のように長尺な作品をVRヘッドマウントで見ようとすると疲れてしまいますが、この作品のように10分弱の作品は疲れもなく、快適に見ることができます。
ただしショートストーリーは納得感のある作品を作ることが難しいという問題もあります。しかし、この作品の場合はVRとしての体験価値も考えながら、ストーリーとしても完成された作品に仕上がっています。
3. 2D、360度3D、6Dofと3つのバージョンでできる体験
本作は2Dバージョンと360度3Dバージョン、6Dofバージョンがリリースされています。ぜひ機会があれば全てのバージョンを見比べていただきたいです。
2Dバージョンはいわゆるフレーム映像です。見慣れているということもあるかもしれませんが、物語が非常に伝わりやすいですし、監督の意図が各カットやフレームから伝わってきます。
360度3Dバージョンはキャラクターの存在感が増し、空を飛んでいる感覚や宇宙のシーンでの無重力感が体験できます。ただ、視点の置き場を間違えると物語が伝わりづらくなります。
6Dofバージョンは没入感がさらに高くなります。さらにユーザーの立ち位置も自分の意思で変えられるため、自分が物語の中に存在している意識も出てきます。それゆえに物語の中でのユーザーの役割を考えておかないと、ただ存在しているだけで、何にも影響しない幽霊のような無視される存在になってしまいます。
ぜひ皆様もこれらの3つのバージョンを体験してみて、VR映画作品ならではの魅力を見つけていただければと思います。
作品データ
タイトル |
Aripi -Wings- |
ジャンル |
アニメーション |
監督 |
Dmitri Voloshin |
制作年 |
2019年 |
本編尺 |
8分11秒 |
制作国 |
モルドバ |
体験できるサイト |
6Dofバージョン |
この連載では取り上げてほしいVR映画作品を募集しております。
自薦他薦は問いません。オススメ作品がありましたら下記問い合わせ先まで送ってください。よろしくお願いします。
VR映画ガイドお問い合わせ:[email protected]