Home » プリキュアが命がけで守ってくれる! VRChat「プリキュアバーチャルワールド」に感じられた濃すぎる原作への愛


VRChat 2023.12.10

プリキュアが命がけで守ってくれる! VRChat「プリキュアバーチャルワールド」に感じられた濃すぎる原作への愛

プリキュアバーチャルワールド」がVRChatで開催中です。今回のイベントで登場するプリキュアは「Yes!プリキュア5GoGo!」「ハートキャッチプリキュア!」「スマイルプリキュア!」の3作品。

一番古い「Yes!プリキュア5GoGo!」は2008年の作品で今年は15周年。現在ではNHK Eテレで「キボウノチカラ~オトナプリキュア’23」が放映中。キャラクターすらもすっかり大人になりました。

この時代差こそが、今回の「プリキュアバーチャルワールド」のキモです。かつて夢中になったプリキュアたちが持ってきたエモーショナルを、みんなで満喫できるのがこの空間です。

パーフェクトなプリキュア空間


“かわいい”を徹底したテーマとして見せている「プリキュアバーチャルワールド」。この世界に入ると、アニメで描かれた空間が一気に広がります。プリキュアといえば、カラーが大事です。メンバーを思わせる色がふんだんに使われつつ、ふんわりかわいいモデリングに心が刺激されます。でも、かわいさが子どもっぽいだけじゃない、少し大人びた背伸びのデザインがあるのも、プリキュアならでは。巧みなデザインが街の中にちりばめられています。

街の中はプリキュアの世界そのまま。ここで気付かされます。「自分たちは『プリキュアバーチャルワールド』を見る観客ではない、すでにプリキュアの世界の住人だ」ということ。この世界がバーチャルになったことで、眼の前にいるのは自分と同じレイヤーに存在する“本物”のプリキュアです。

プリキュアのきぐるみショーを見たことがある人はわかるかもしれません、あれはきぐるみですが、みんなが“本物”だと信じることで、本物のプリキュアになります。だからあのステージには子どもも大人も興奮できるのです。

VRChatの世界ではさらに“本物”度合いは高まります。自分たちはプリキュア博物館に来たわけじゃない。本物の動くプリキュアに会いに来たのです。

それを象徴するアイテムも販売されています。自分たちのアバターがプリキュアに出てくる学校の制服を身にまとうことができる、というものです(「MakeAvatar用)。これを身にまとって空間を歩くことで、プリキュアのアニメに出てきたクラスメイトのモブの子になることができます。

その上で、踊るプリキュアたちを観る。戦うプリキュアに守ってもらう。徹底して世界に入り込む体験が「プリキュアバーチャルワールド」には準備されています。

なになに、プリキュアを見たことないって? プリキュア文化を知らないって?

大丈夫! そんな人でもプリキュアは守ってくれます。それは他に類のない体験になるはずです。

プリキュアのバトルは町中で突然に

目玉のひとつ「バーチャルキャラクターショー」は、言うなればきぐるみヒーローショーのVR版です。ただそこは「自分たちがプリキュアの街に来ている」という趣向を壊すことなく作られています。ステージに当たる部分が完全に街の中にあるからです。

登場するのは「ハートキャッチプリキュア!」の面々。登場する彼女たちの様子は、2010年、13年前の姿そのままです。

町中でぼくらは、「ハートキャッチプリキュア!」の花咲つぼみや来海えりかと会うことができます。ショーではあるんですが、ばったり会った、という表現の方が会うくらい自然。

そこに敵役のデザトリアンがやってきて襲ってくるのですが….…ここからは「ハートキャッチプリキュア!」が好きだった人は、体験したらアニメの観え方が途端に強烈になると思います。

基本的にここでの戦闘は殴る蹴る系の肉弾戦がメイン。バーチャルをフルに生かしてボコボコにするアクションが観られます。スピード感もあって爽快なんですが、デザトリアンがはちゃめちゃに怖い。こんなにコミカルな見た目だから、アニメに出てきたらニコニコしつつ「プリキュアがんばれー」なんて応援しながら観られるとは思うんですが、いざ目の前で、リアルサイズの敵とプリキュアが戦闘を始めると、迫力があるなんてものじゃない。巻き込まれたら多分死ぬ。彼女たちは割りとインファイターなので懐に潜り込んで攻撃をするわけですが、本気で押しつぶされそうになるので観ていてぎょっとします。「プリキュアがんばれー」どころじゃないよ、ぼくらを助けるためにそんな痛そうな……はやく逃げて!! ああ、プリキュア活動って命がけだったんだ。

3DVRの映像で重量感を出すのはなかなか難しいのですが、エフェクトをうまく活用することで視覚的にデザトリアンの攻撃の重たさ、それをガツンと受け止めるプリキュアたちの反作用の力のベクトルのぶつかりあいが見られます。

また空間をうまく用いることで、戦闘の角度を多方向から表現しているのも見せ方のうまいところ。どこから見ても破綻なく、激しいアクションをし、プリキュアの力強さを余すところなく見せています。

キャラクターIPの本格格闘アクションを見せるのは、VRChatの公的なイベントだと珍しいかもしれませんが、ここまでできれば色んなアニメの名シーンがVRChat上でVR再現できそうだと感じさせるほどに、クオリティは、ずば抜けて高いです。

危険が眼の前に迫ってくる感覚と、それを打ち破るプリキュアのたくましさ美しさは、どう言葉で書いても伝わりません。仮に映像を録画しても全然伝わりません。

VRで見てください。VR機器を買ってください、レンタルしてください。「ハートキャッチプリキュア!」が好きだったなら、絶対損しませんから。プリキュアに守られる体験をするには、VRが必要なんです。

ミュージックステージでは「Yes!プリキュア5GOGO!」「ハートキャッチプリキュア!」「スマイルプリキュア!」の3作品とVTuberたちのステージが観られます。

ちなみにぼくは取材のときに「ひとつだけお見せできますよ」と言われたので、迷わず「Yes!プリキュア5GOGO!」を選びました。

プリキュアシリーズは初代から、少女たちの人間関係を、朝見るにはぎょっとするほど深く掘り下げることがありました。特に「プリキュア5」シリーズはいまだに、リアリティでいうとトップレベルだと思います。仲間たちと不和が生じたり、トラウマで心が砕けそうになったりと、落ち着かない展開もありました。敵もブラック企業における会社員の苦しみを、リアルにシビアに描いていたものだから、一緒に観ていたお父さんたちが苦しむなんてこともありました。

このあたりを知っている人なら、とある入り口入ってすぐに貼られているブンビーさんの写真を観て涙が出るかもしれません。スタッフがいかに「プリキュア5」シリーズを愛しているのか、この1枚で十分すぎるほどわかります。

ミュージックステージでは、プリキュアたちが眼の前にいる感覚を観客が隅々まで楽しめる施策がなされています。まず舞台のかなり近くまで行くことができる。裏に回って観ることもできる。上の方から見下ろすように観ることができる。360度あらゆる角度から観られるようになっています。

またダンスフォーメーションも凝っており、あらゆる角度で、色々なプリキュアと目が合うように構成されています。

キャラクターショーの方が「町中で出会って助けてくれるプリキュア」だとしたら、ミュージックステージは「みんなが憧れているプリキュア」を観ることができます。ここはできれば、推しのプリキュアの通う学校制服を身にまとって、心の距離を極限まで近くして観るとベターでしょう。

ステージはアーカイブ期間であれば何度でも観られるそうなので「今回は至近距離で!」「次は上から!」など決め打ちで見に行けば楽しさアップです。

スタッフはプリキュア大好きすぎ!

このロボットをご存知でしょうか? 知っていたら相当なもの。「スマイルプリキュア!」35話にだけ出てくるハッピーロボです。確かに当時話題になりましたが、いやいやそんなみんな覚えている存在じゃないですよ。VR空間では、もちろん当然等身大サイズです。しかもときどき動きます。

この異常なまでのこだわりは、今回のイベント会場の各所で発見できます。無料で入れる区間でも探せるので実際にチェックしてみてほしいのですが、スタッフがいかに過去のプリキュアを、それぞれの作品として愛しているか伝わってきます。

プリキュア等の「ニチアサ」は、毎年作品が変わります。おもちゃ業界としてはもう昨年の作品のグッズはワゴンセール行き、次の作品が商戦ターゲットになります。これは子ども相手の商売としては仕方ないです。

新作はもちろん好きだけど、でも自分にとって一番はこれ!というのは割りとプリキュアファンが抱えている感情だと思います。ぼくはやっぱり「プリキュア5」シリーズ2作品は特別中の特別で「過去の作品」と言い捨てたくはありません。

「スマイルプリキュア!」は2012年の作品です。2011年に東日本大震災があり、テレビでは被災の様子が連日どこのチャンネルでも映され続けました。日本中が、子どもも含め大きな不安を抱えかねない状況でした。そんななか流れた次の年の「スマイルプリキュア!」は、何も考えずに笑えるような、ふわふわきらきらした作品でした。プリキュアのかわいさにどれだけの子どもが心の傷を癒やされたことか。それを見た老若男女はどれだけ笑顔になれたことか。

そんなこともあるからなのか、「スマイルプリキュア!」が今でも一番好きだという人は結構見かけます。

今回のイベントで「スマイルプリキュア!」が歌い、踊り、ハッピーロボが動きます。かつて好きだった人にとっては、楽しくて、愛しくて、ちょっと懐かしくてエモを感じられると思います。制作したスタッフが、そのくらい「スマイルプリキュア!」が好きなのが、伝わってくるからです。

「絶対にもう出ないと思っていたプリキュアの新規グッズが出た」というのは、IPコンテンツにおいて福音になると思います。今回は3作品ですが、いずれ他のプリキュア、ひいては他のアニメ作品のイベントがVRChatで行われたら、物理グッズ、あるいはデジタルグッズが新規に再び出るかもしれない、という可能性を作ってくれました。

プリキュアはいわゆる女児向けアニメで、ターゲット層が小学生前の女の子だというのも、今回のイベントをちょっと特殊にしているかもしれません。全年齢対象ではないけれども、実際に観ていた層は「女児」と「大人のお兄さんお姉さん」なわけで、その双方が十数年たつことで、あらゆるものが変わります。

当時、5歳だった子どもは、成人してVRの知識がそこそこあるくらいまでに成長しているでしょう。20歳だった大人は35歳になって、VRヘッドセットを買うことができるようになっているかもしれません。中には子どもがいて、その子どもが今のプリキュアを好きかもしれません。

VR技術を使ってキャラクターショーを見せるというのは、技術面を楽しむ意味でも確かに重要なのですが、なにより「リアルイベントが難しそうな作品のイベントの場所を確保できる」という強みがあります。

実際のところ子どもたちは現実の遊園地のイベントには、やっぱり最新のプリキュアが出てほしいわけで、どんなにファンが望んでも十数年前のプリキュアを出して、しかもテーマパーク級のイベントにするのは無理です。だからこそ、メタバースは新しいイベント空間として、プリキュアのような長寿シリーズにはもってこいのように思えます。


(プリキュアとツーショットを撮る著者)

「プリキュアバーチャルワールド」自体は無料なので、是非会期中に足を運んでみてください。ミュージックステージとバーチャルキャラクターショーは有料で、アーカイブ期間中は何度でも観ることができます。

プリキュアバーチャルワールド詳細はこちら。
https://gugenka.inc/precurevirtualworld


VR/AR/VTuber専門メディア「Mogura」が今注目するキーワード