Home » 誰でもVRに「自分の手」を持ち込める時代が到来? 「ContactGlove」体験レビュー


話題 2022.12.14

誰でもVRに「自分の手」を持ち込める時代が到来? 「ContactGlove」体験レビュー

12月17日(土)より、グローブ型VRコントローラーContactGloveが「Kickstarter」にて販売予約が開始されます。Diver-X株式会社が開発する「一般ユーザー向けのVRグローブ」という、なかなかに前例のない意欲的なデバイスに、関心を抱く方は多いことでしょう。

MoguLive編集部は今回、「ContactGlove」の触覚フィードバック未搭載版を先行で体験しました。本記事では「ContactGlove」の基本的な仕様から、VRコントローラーとして使えるかどうか、そして「自分の手」をVRに持ち込むとどうなるか、などをお伝えします。

基本構造をチェック。見た目の割に意外と軽いかも?

「ContactGlove」のメインとなるのは2つのグローブです。そして「SteamVR」と連携させるには、グローブに「SteamVR」対応のモーショントラッカーを取り付ける必要があります。想定されているのは「Tundraトラッカー」と「VIVEトラッカー」とのことです。

今回は「Tundraトラッカー」で体験することに。トラッカーは手首に取り付ける形ですが、「Tundraトラッカー」の重量は45gほど。思っているよりも重さは感じません。

「Tundraトラッカー」を装着した状態の「ContactGlove」の重量は、実測値で152g。コントローラーとしてはなかなか軽めです。

比較対象として「Meta Quest 2」のコントローラーの重量も計測してみたところ、実測値は150gほど。「Meta Quest 2」コントローラーとほぼ同じ重量が、手全体に分散すると思えば、「思っているよりも重くない」と感じるのも納得かもしれません。

ちなみに「VIVEトラッカー」を装着した状態も体験してみましたが、こちらはさすがに重め。「VIVEトラッカー3.0」なら、かろうじて……といったところ。基本的には「Tundraトラッカー」の併用がオススメです。

グローブ自体の装着感は、可もなく不可もなくといったところ。ただし、グローブそのものは現在改良中で、改良型はよりフィット感が増していました。

新感覚。指先だけでコントローラー入力ができる

実際に両手にはめて体験してみます。まずは、PCに接続し、キャリブレーションを完了します。大きな流れは以下の通り。

  1. グローブとPCを接続。専用のドングルをPCに差した状態で、グローブ側のスイッチを1クリックするだけ。
  2. 指の動きを検知するためのキャリブレーション作業を実施。専用ソフト「Diving Station」にて、指示通り特定の形に指を動かすことで行います。
  3. キャリブレーションが完了し、ちゃんと指の動きが「Diving Station」に反映されればOK!


(キャリブレーションの様子。手を指示された形状にすることで行う)


(キャリブレーション完了後、基幹ソフト「Diving Station」にて手の3Dモデルが実際の手に合わせて動くようになる)

ここから基本操作を学んでいきます。「ContactGlove」は、グローブ型デバイスとして指の動きを取得できるのみならず、一般的なVRコントローラーと同じように、ボタン操作やスティック操作も指の動きだけで再現できるのが大きな特徴です。


(「Diving Station」の画面。各操作を検知すると、対応操作アイコンが発色する)

まずはトリガー操作。これは人差し指で「トリガーを引く」動きをします。文字通りのわかりやすい操作です。


次にグリップ操作。これも文字通り片手で「握る」動作をすればOK……ですが、実はキーになるのは中指・薬指・小指の動き。この3本で「握る」動作をすれば反応します。

ボタン操作は、特定の指の側面を親指の腹でタッチすることで再現されます。対応関係は以下の通り。

  • Aボタン:人差し指の第一関節
  • Bボタン:人差し指の第二関節
  • システムボタン:薬指の第一関節

そしてスティック操作は、親指と中指を触れた状態で、前後左右に傾けることで行なえます。やや慣れが必要ですが、「親指と中指でスティックをつまんで傾ける」ようなイメージを持つとスムーズに飲み込めると思います。


(「Diving Station」の閾値設定画面)

なお、「Diving Station」では、各種操作において「どのくらい指を動かせばいいか、傾ければいいか」を判定する“閾値(しきいち)”も自由に設定できます。人によってはもちろん、VRゲームによっても適切な値は変わってくるため、この設定はありがたいところです。

キャリブレーションが完了した状態の動きはこのような感じ。指の動きがしっかりとVRの手に反映されています!

VRゲームで遊んでみる。「自分の手」でVR世界に触れる感動!

それでは実際に「ContactGlove」を使ってVRゲームを体験してみます。まずは「The Lab」から。メインフロアに置かれた弓を手にとってみました。

左手で弓を持ち、右手で矢をつがえ、引く。一連の動作をコントローラーではなく「自分の手」で行うと、本当に自分の両手に弓と矢があるような感覚が芽生えます。筆者もこれまでいろいろなVRデバイスに触れてきましたが、「自分の手でVRに触れる」没入感はハンパじゃありません。

「弓を引く」というアクションはもちろんですが、(メカな)犬を撫でるだけでも「自分の手で触れる」という感覚があると、体験の質は一変します。「犬を撫でるコントローラー操作」と「犬を撫でる」の間には、大きな差があります。

もうひとつ、手を活用するコンテンツとして「Aperture Hand Lab」も体験しました。VALVE INDEXコントローラーのチュートリアル的ゲームですが、「ContactGlove」でももちろんフルに楽しめます。むしろ、自分の手を直接使える分、VALVE INDEXコントローラーよりも楽しめました。


(ロボット相手のじゃんけんも握手も、自分の手でやるとひと味ちがいます)

そして、なんと「Beat Saber」も遊べました。Beat Saber」で必要なのは「腕の動き」だけなので、「ContactGlove」でも問題なく遊べるのです。むしろ、コントローラーを握る必要がないため、人によってはVRコントローラーを使うよりも疲れないかもしれません。

ただし、今回の体験ではトラッカー固定パーツが試作段階だったため、「Beat Saber」プレイ中は時折トラッカーが外れることも。製品版でのブラッシュアップを期待したいところです。

このほか、「Virtual Motion Capture」とも連携できるよう開発が進んでおり、VTuber向け用途も見据えられているようです。筆者の所感ですが、「mocopi」と組み合わされば頭部・両手・指先・両足・腰の動きをトラッキングできる3DVTuber環境が個人でも持てるようになり、可能性がかなり広がりそうです。

「VRChat」でも動作チェック。操作感はちょっと独特

続いて、多くの人が気になるであろう「VRChat」との連携を体験しました。

まず、移動操作は通常のVRコントローラーと同様に、左手のスティック操作で移動、右手のスティック操作で回転します。操作感覚はけっこう独特です。慣れればひょいひょいと移動できますが、「とっさの移動」はやや難しいかもしれません。

各種ボタン操作も、コントローラーの操作を「ContactGlove」の操作に置き換えるだけで行なえます。クイックメニューの開閉やクリック、Expression Menuのオープンと操作まで実行できました。

ただし、Expression Menuは現時点では「指を傾ける」操作が必要なので、選択時にメニューごと傾くのが難点ではあります。

カメラも操作できました。ただし、「グリップしながらトリガーを引く」という操作を要求されるため、「ContactGlove」では「中指・薬指・小指で握り、人差し指を引く」という操作になります。イメージ的には「銃を握りながらトリガーを引く」ような感じです。

もちろん、指の動きも取得できます。細かい手の表情はVALVE INDEXコントローラーよりもつけやすい印象です。

総合すると、基本的な操作はおおむね問題なしです。複雑な操作はやや難しく、ゲームワールドなど「オブジェクトをつかみながらひんぱんに移動する」といった場面は、普通のコントローラーに分があります。一方で、「誰かに触れる」「指先までフルに使って表現する」という場面では間違いなく有効でしょう。

ちなみに「VRChat」の連携はまだまだ開発段階とのことで、今後さらに細やかな指の動きを反映できるように開発を進めていくとのことです。

得手不得手はあるが、新鮮で唯一無二な体験を”手にできる”

VRコントローラーとして「ContactGlove」を見ると、全体的な操作感は意外とVALVE INDEXコントローラーに近いように感じました。各種ボタンやスティック操作が「指の動き」に置き換わり、VALVE INDEXコントローラーにあった「握る部分」をオミットしたものと表現できます。

そして、グローブ型デバイスであるため「コントローラーを握る」という感覚はゼロ。「自分の手」でVRの世界に触れて、アイテムを動かせる体験は、なかなかに新鮮です。特に、弓などの武器を握るVRゲームや、ユーザーなどに触れられるソーシャルVRでは、没入感を大きく引き上げることでしょう。率直に述べると、めちゃくちゃクセになりそうです。

一方で、「なにかを持ちながら動く」「状況に応じて臨機応変に移動する」といった場面では、とっさの移動に習熟が必要そうなこともあり、やや苦手かもしれません。幸いにも、「ContactGlove」起動中でも、普通のVRコントローラーに操作を切り替える制御ができるらしく、普段愛用しているコントローラーとの併用がベストかもしれません。

また、手袋という構造上、蒸れやすいという点はややネック。その場合は、鑑定士などが身につける薄手の白手袋などをインナーのようにつけることで、手汗などはカバーできるかもしれない、とのことです。

得手不得手ははっきりしており、操作感の好みも出てきそうなデバイスですが、自分の手とともにVRコンテンツを体験できる唯一無二なデバイスです。より深いVRを求める人には、ぜひその手にはめてみるべきでしょう!

「ContactGlove」は、12月17日(土)より「Kickstarter」にて販売予約が始まります。なお、今回筆者が体験できなかった、触覚フィードバック搭載版は、12月22日(木)〜12月23日(金)に開催されるXR Kaigi 2022にて体験できるかもしれないとのこと。詳細が判明次第、MoguLiveにてご紹介できればと思います。

「ContactGlove」販売ページはこちら。

https://www.kickstarter.com/projects/diver-x/contact-glove?lang=ja

公式サイトはこちら。
https://diver-x.jp/ContactGlove/


VR/AR/VTuber専門メディア「Mogura」が今注目するキーワード