米オースティンにて開催されたSXSW 2017にて、トム・クルーズ主演映画『The Mummy(原題)』の一部シーンをVRで体験する展示が行われました。
米VRメディアVR Scoutによる体験レポートから一部を抜粋してその内容を紹介します。
『The Mummy』は、眠りからさめた古代の王女が人類に恐怖をもたらすのに対し、トム・クルーズらがこれに立ち向かう作品となっています。なお本作は、ユニバーサルピクチャーズが今後続けて打ち出す予定の「ユニバーサルモンスターズ」シリーズの第1作目となります。
本展示で設けられた客席は、VR映画視聴用にデザインされた、モーション・チェアPositron Voyager。この卵型の椅子に座るところから、すでに没入体験が始まっているようにも感じられるものでした。
体験が始まると、トム・クルーズがこれからどんな体験をするのかを観客に語りかけてきます。米国で間もなく公開される映画本編では、飛行機が墜落するさなかに無重力でスタントを繰り広げるシーンがあり、既に公開されているトレーラーでもこのシーンを見ることができます。
SXSW2017の展示では、まさにこの無重力下のシーンの撮影の様子を見ながら、同時に観客もPositron Voyagerの駆動により無重力を疑似体験するものとなっていました。
「トム・クルーズと共演のアナベル・ウォーリスがこのスタントに挑戦すると知ったとき、ぜひ360度映像におさめなくてはと思いました」と、ユニバーサルピクチャーズのLeigh Godfrey副社長。「トム・クルーズの大がかりなスタントを見つつ、同時に無重力を体験するというのは、ほとんどの人が決して経験できないことです。360度撮影によってそんな特別な機会を提供できました」
楽しくも困難だった無重力下での撮影
360度撮影を担当したVR製作スタジオ「5th Wall」のChris Olimpo氏によると、無重力下での撮影は驚くほど困難を極めたとのこと。飛行機の急上昇に次ぐ急降下によって、22~27秒ほど間に無重力となる環境が生じます。この間、通常の撮影で使われるようなカメラスタビライザは使用できず、様々な物や演者が飛び交っているわずかな時間でそれぞれのシーンを撮影しなければならなかったとのこと。
撮影スタッフがカメラを制御しようと周りをぎこちなく漂っている様子は、よくDVDのおまけ映像で見られるような、舞台セットでの撮影裏の様子とは全く異なるものでした。無重力下での撮影は最初は楽しそうにも見えますが、14テイクと何度もテイクを重ねるごとに、その楽しさもなくなり、撮影の困難さが伝わってきます。
没入感を高めるPositron Voyager
今回展示されていたVR体験のポイントは、撮影裏の視聴だけではなく、体験者も無重力を感じること。映像でトム・クルーズが飛行機で浮いている間は、観客もまた浮いている感覚を得る必要があります。
今回使用されているポッド型のチェアPositron Voyagerが採用されたのは、無重力の感覚を再現するためでした。飛行機内が無重力になると、椅子が上下に傾いて浮かんでいるような感覚になるほか、より没入度の高い体験をもたらすハプティクスオーディオが備え付けられています。
VR Scoutの記者は、「『The Mummy』の体験は、VRという分野に限らず、撮影裏を紹介する革新的な展示方法でした。ユニバーサルピクチャーズのようなスタジオが、VRの限界を押し広げてくれることは楽しみでなりません。今後、さらなる野心的なアイデアを打ち出してくれるのか、気になります」と体験レポートを締めくくっています。
(参考)
We Tried ‘The Mummy’ VR Zero Gravity Experience(英語)
http://vrscout.com/news/mummy-zero-gravity-vr-experience-sxsw/