VRコンソーシアムが開催したVR作品のコンテスト、VRC2015クリエイティブアワードの授賞式が6月6日に行われました。各受賞作品と評価のポイントを紹介します。今回は授賞式での審査員のコメントもまとめました。
各作品の詳細はアワードの公式サイトより御覧ください
最優秀賞
Eye Play the Piano /Eye Play the Piano プロジェクトチーム
身体にハンデキャップにのある人々にとって、楽器の演奏は通常困難でした。しかし、視線追跡機能を持ったVRヘッドマウントディスプレイ(VRHMD)「FOVE」と連動するピアノシステムにより、障害を持つ子供がたった4カ月の練習でクリスマスコンサートを実現しました。
コンテンツ開発では、テクノロジーありき、個人的興味などの範囲では様々な取り組みがなされます。しかしそれに留まらずに、課題があってそれを解決するという一連の流れが出来ている所が素晴らしいと感じました。審査員一同、あっという間に合意しました。
理化学研究所チームリーダー 藤井直敬氏
優秀賞
Sports Visual Reality with JaclIn Head
超人と呼ばれるトップアスリートの視野を、全方位VRで体験できます。ただのVRではなく、スポーツ選手が激しく動いたり、回転した時のブレなどを補正する技術が凄いとのこと。
もの凄くスピード感があり、気持ちよかったです。これは見ている人をどんどん引っ張っていく力があると感じました。VRというのはヴァーチャルにリアリティを再現するという事ですが、結局リアリティをどれだけ見ている人に体験させるかという事だと思います。本作品は現実のアスリートが見ている視点ですので、まさに現実を超えたリアリティを感じられるところが印象的でした。
森美術館館長 南條史生氏
審査員特別賞
RomoCart/ 河本健
日常空間とゲームの世界を融合するVRシステムです。部屋の空間を認識して、ゲームにフィードバックするシステムとなっており、HMDで見るようなVRでなく現実世界が「異世界」になる感覚を楽しめます。
誰もが持っているiPhoneなどのプロダクトを上手に組み合わせている点が素晴らしいと感じました。また、普段自分が暮らしている場所が、あのようなバトル空間になってしまうのは楽しいだろうという話に審査員全員がなりまして、急遽審査員特別賞をつくらせて頂きました。
デジタルハリウッド大学長 杉山知之氏
CG部門賞
「進撃の巨人展」360°シアター“哮”/「進撃の巨人展」制作委員会
圧倒的な力を持つ巨人とそれに抗う人間達の戦いを描いた、進撃の巨人の世界に没入できます。3DCGによって作りこまれた街と、VR内で立体機動装置を装着して駆け抜けるシミュレーションは必見です。
審査員全員からの評価が高い作品でした。シームレスで視点が移動しないVRがほとんどですが、その中でも「視点が変えられて、さらに映画的な手法を持ち込んだ時にどうなるのか」という所に、最初に取り組んだ点が素晴らしいと感じました。ますます新しい時代の映画やアニメを予感させるものになっています。
慶応義塾大学院特任教授 水口哲也氏
パノラマ部門賞
RE:MINISCIA/NHKエンタープライズ
従来型の映像とVRの組み合わせによって制作された、実写VRで物語を語るための手法を模索したトライアル作品。役者はGoPro10台を頭に配置して演技をしつつ撮影を行っています。
パノラマを映像作品に組み込むには、特殊なつくりかたや技法が必要なのですが、本作品は2Dの映像とパノラマがうまく組み合わされていました。それを先導して制作したという点で、賞に値すると思います。
メディアアーティスト 落合陽一氏
インタラクティブ部門
津波体験ドライビングシミュレーター/愛知工科大学工学部
沿岸住民の危機意識向上や、津波発生時の新たな対策の必要性などを啓発する事を目的としてつくられた作品です。運転時に津波に遭遇した際のシミュレーションが体験できます。
作品を見せて頂いたのですが、怖かったです。浮いてしまってハンドルが効かなくなる所や、下から水が湧き上がってくるところが印象的でした。この怖いという感覚がとても重要だと思っています。「災害は忘れた頃にやってくる。」という言葉ありますが、具体的には2世代を過ぎた所から忘れ始めるとのことです。今までどれ程頑張っても、忘れられてきた災害というものが、もしかしたらこういった取組によって、他人事ではなく自分の事として伝わってくるかもしれません。そういった可能性があると感じました。
慶応義塾大院教授 稲見昌彦氏
(参考)
VRCクリエイティブアワード公式サイト
http://vrc.or.jp/award/